140 / 206
白昼の衝撃
40
しおりを挟む
「猫宮さん……私、ちゃんと、考えてみます。母のこと……逃げずに、自分とも向き合ってみます」
私の言葉に猫宮さんは、一瞬驚いたような、戸惑うような表情を見せた。
忙しなく長いまつ毛を瞬かせ、あちこちに視線を泳がせている。
「……あ、ああー、うん。でも、まだ、そんなに急いで決断しなくてもいいと思うけどね」
「……猫宮さん?」
初めて見る歯切れの悪い猫宮さんに、首を傾げて疑問符を投げかけた。
すると猫宮さんは宙を彷徨っていた瞳を中央に戻し、窺うように私を見た。
「ほら、ちづちゃんまだ若いんだし、ゆっくり……ゆっくり、考えたら、いいんじゃない、かな……?」
なぜか不安げに、探るような眼差しで口にする猫宮さんに、私は二、三度パチパチ瞼を開閉させた。
「……はい、そうします」
小さな返事を聞くと、猫宮さんは安堵したように穏やかな表情に戻った。
この時の私はまだ、彼の全貌を知らなかった。深い部分に触れようとすらしていなかった。
「それにしても猫宮さん、ずーっとずーっとって、今何歳なんですか?」
「やだなぁ、人外に年齢を聞くなんて、ちづちゃんのエッチ~」
「ええっ、なんでそうなるんですか!?」
両手で胸を隠しながら身を引く素振りをする猫宮さんに、焦って大きな声を出した。
あはは、と無邪気に笑う猫宮さんはとっても楽しそうで。からかわれるのは好きじゃないのに、この人にならいいな、と思わされてしまう。
私の言葉に猫宮さんは、一瞬驚いたような、戸惑うような表情を見せた。
忙しなく長いまつ毛を瞬かせ、あちこちに視線を泳がせている。
「……あ、ああー、うん。でも、まだ、そんなに急いで決断しなくてもいいと思うけどね」
「……猫宮さん?」
初めて見る歯切れの悪い猫宮さんに、首を傾げて疑問符を投げかけた。
すると猫宮さんは宙を彷徨っていた瞳を中央に戻し、窺うように私を見た。
「ほら、ちづちゃんまだ若いんだし、ゆっくり……ゆっくり、考えたら、いいんじゃない、かな……?」
なぜか不安げに、探るような眼差しで口にする猫宮さんに、私は二、三度パチパチ瞼を開閉させた。
「……はい、そうします」
小さな返事を聞くと、猫宮さんは安堵したように穏やかな表情に戻った。
この時の私はまだ、彼の全貌を知らなかった。深い部分に触れようとすらしていなかった。
「それにしても猫宮さん、ずーっとずーっとって、今何歳なんですか?」
「やだなぁ、人外に年齢を聞くなんて、ちづちゃんのエッチ~」
「ええっ、なんでそうなるんですか!?」
両手で胸を隠しながら身を引く素振りをする猫宮さんに、焦って大きな声を出した。
あはは、と無邪気に笑う猫宮さんはとっても楽しそうで。からかわれるのは好きじゃないのに、この人にならいいな、と思わされてしまう。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
異世界に来たようですが何も分かりません ~【買い物履歴】スキルでぼちぼち生活しています~
ぱつきんすきー
ファンタジー
突然「神」により異世界転移させられたワタシ
以前の記憶と知識をなくし、右も左も分からないワタシ
唯一の武器【買い物履歴】スキルを利用して異世界でぼちぼち生活
かつてオッサンだった少女による、異世界生活のおはなし

【完結】伯爵の愛は狂い咲く
白雨 音
恋愛
十八歳になったアリシアは、兄の友人男爵子息のエリックに告白され、婚約した。
実家の商家を手伝い、友人にも恵まれ、アリシアの人生は充実し、順風満帆だった。
だが、町のカーニバルの夜、それを脅かす出来事が起こった。
仮面の男が「見つけた、エリーズ!」と、アリシアに熱く口付けたのだ!
そこから、アリシアの運命の歯車は狂い始めていく。
両親からエリックとの婚約を解消し、年の離れた伯爵に嫁ぐ様に勧められてしまう。
「結婚は愛した人とします!」と抗うアリシアだが、運命は彼女を嘲笑い、
その渦に巻き込んでいくのだった…
アリシアを恋人の生まれ変わりと信じる伯爵の執愛。
異世界恋愛、短編:本編(アリシア視点)前日譚(ユーグ視点)
《完結しました》
香死妃(かしひ)は香りに埋もれて謎を解く
液体猫(299)
キャラ文芸
第8回キャラ文芸大賞にて奨励賞受賞しました(^_^)/
香を操り、死者の想いを知る一族がいる。そう囁かれたのは、ずっと昔の話だった。今ではその一族の生き残りすら見ず、誰もが彼ら、彼女たちの存在を忘れてしまっていた。
ある日のこと、一人の侍女が急死した。原因は不明で、解決されないまま月日が流れていき……
その事件を解決するために一人の青年が動き出す。その過程で出会った少女──香 麗然《コウ レイラン》──は、忘れ去られた一族の者だったと知った。
香 麗然《コウ レイラン》が後宮に現れた瞬間、事態は動いていく。
彼女は香りに秘められた事件を解決。ついでに、ぶっきらぼうな青年兵、幼い妃など。数多の人々を無自覚に誑かしていった。
テンパると田舎娘丸出しになる香 麗然《コウ レイラン》と謎だらけの青年兵がダッグを組み、数々の事件に挑んでいく。
後宮の闇、そして人々の想いを描く、後宮恋愛ミステリーです。
不定期投稿となります。
【完結】緑の手を持つ花屋の私と、茶色の手を持つ騎士団長
五城楼スケ(デコスケ)
ファンタジー
〜花が良く育つので「緑の手」だと思っていたら「癒しの手」だったようです〜
王都の隅っこで両親から受け継いだ花屋「ブルーメ」を経営するアンネリーエ。
彼女のお店で売っている花は、色鮮やかで花持ちが良いと評判だ。
自分で花を育て、売っているアンネリーエの店に、ある日イケメンの騎士が現れる。
アンネリーエの作る花束を気に入ったイケメン騎士は、一週間に一度花束を買いに来るようになって──?
どうやらアンネリーエが育てている花は、普通の花と違うらしい。
イケメン騎士が買っていく花束を切っ掛けに、アンネリーエの隠されていた力が明かされる、異世界お仕事ファンタジーです。
*HOTランキング1位、エールに感想有難うございました!とても励みになっています!
※花の名前にルビで解説入れてみました。読みやすくなっていたら良いのですが。(;´Д`)
話の最後にも花の名前の解説を入れてますが、間違ってる可能性大です。
雰囲気を味わってもらえたら嬉しいです。
※完結しました。全41話。
お読みいただいた皆様に感謝です!(人´∀`).☆.。.:*・゚
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
身代わり婚~暴君と呼ばれる辺境伯に拒絶された仮初の花嫁
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【決してご迷惑はお掛けしません。どうか私をここに置いて頂けませんか?】
妾腹の娘として厄介者扱いを受けていたアリアドネは姉の身代わりとして暴君として名高い辺境伯に嫁がされる。結婚すれば幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱いていたのも束の間。望まぬ花嫁を押し付けられたとして夫となるべく辺境伯に初対面で冷たい言葉を投げつけらた。さらに城から追い出されそうになるものの、ある人物に救われて下働きとして置いてもらえる事になるのだった―。

神様のミスで女に転生したようです
結城はる
ファンタジー
34歳独身の秋本修弥はごく普通の中小企業に勤めるサラリーマンであった。
いつも通り起床し朝食を食べ、会社へ通勤中だったがマンションの上から人が落下してきて下敷きとなってしまった……。
目が覚めると、目の前には絶世の美女が立っていた。
美女の話を聞くと、どうやら目の前にいる美女は神様であり私は死んでしまったということらしい
死んだことにより私の魂は地球とは別の世界に迷い込んだみたいなので、こっちの世界に転生させてくれるそうだ。
気がついたら、洞窟の中にいて転生されたことを確認する。
ん……、なんか違和感がある。股を触ってみるとあるべきものがない。
え……。
神様、私女になってるんですけどーーーー!!!
小説家になろうでも掲載しています。
URLはこちら→「https://ncode.syosetu.com/n7001ht/」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる