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白昼の衝撃
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「これは僕が好きで出しただけ。ちづちゃんに食べてほしいなって」
料理を出現させた右手を引きながら、猫宮さんが言った。
「相手が望む料理以外も出せるんですか?」
「出せるよ。自分の頭で描けるものなら大体ね。よかったらどうぞ」
腕を後ろに回し、にこやかに促す。そんな猫宮さんを見ていると、なんとなくわかった気がする。
この店はがんばって、思い悩んで作ったものではないのだろう。
世話をしてくれた寿司屋への感謝と、人間に対する温情。
その気持ちが創造に繋がり、自然と形になったのだ。
食を提供する不思議な力も、誰かの役に立ちたいという思いやりから身についたに違いない。
「……あ、ありがとうございます。いただきます」
手を合わせて、食器と同じ赤茶色の小ぶりなスプーンを持つ。
野菜と魚、具材を少しずつ集め、最後にスープを掬う。
ふうふう、と軽く息を吹きかけ、ゆっくりと運んだスプーンを口に含んだ。
芳醇な風味がふわっと広がる。
野菜と魚の旨味をミルクの優しい甘さが包み込む、疲れた身体に染み渡る、ホッとする味わいだ。
「……お、おいひい、れす……すごく、とっても」
子供の頃、もっと国語を勉強しておけばよかった。
そう後悔してしまうほど、残念な語彙しか出てこない。
それでも猫宮さんには十分に感動が伝わったようで、嬉しそうに目を細めてくれた。
料理を出現させた右手を引きながら、猫宮さんが言った。
「相手が望む料理以外も出せるんですか?」
「出せるよ。自分の頭で描けるものなら大体ね。よかったらどうぞ」
腕を後ろに回し、にこやかに促す。そんな猫宮さんを見ていると、なんとなくわかった気がする。
この店はがんばって、思い悩んで作ったものではないのだろう。
世話をしてくれた寿司屋への感謝と、人間に対する温情。
その気持ちが創造に繋がり、自然と形になったのだ。
食を提供する不思議な力も、誰かの役に立ちたいという思いやりから身についたに違いない。
「……あ、ありがとうございます。いただきます」
手を合わせて、食器と同じ赤茶色の小ぶりなスプーンを持つ。
野菜と魚、具材を少しずつ集め、最後にスープを掬う。
ふうふう、と軽く息を吹きかけ、ゆっくりと運んだスプーンを口に含んだ。
芳醇な風味がふわっと広がる。
野菜と魚の旨味をミルクの優しい甘さが包み込む、疲れた身体に染み渡る、ホッとする味わいだ。
「……お、おいひい、れす……すごく、とっても」
子供の頃、もっと国語を勉強しておけばよかった。
そう後悔してしまうほど、残念な語彙しか出てこない。
それでも猫宮さんには十分に感動が伝わったようで、嬉しそうに目を細めてくれた。
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