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白昼の衝撃

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「ねえ、ちづちゃん、僕は思うんだ。この店を始めてからたくさんの人に知り合った。生い立ちも違えば境遇も違う、見た目や中身もさまざまで、人の数だけ悩みもあって、その分いろんな道がある。みんながみんなに認められるなんて無理だろうし、そんな必要もないんだって」

 猫宮さんは真剣だった。
 今までどれだけの人と出会ってきたのだろう。
 細く、丸く、自在に変化する球体は、過去の出来事を巡らせるようだった。

「辛いなら切り離せばいい。それは逃げじゃなく、決別という立派な選択肢だ。卒業……と言ってもいいかもしれないね」

 柔らかな物腰はそのままに、キッパリと意志を告げる。
 控えめな照明さえ煌めきに変える瞳は、真っ直ぐに私を見つめていた。
 切り離す。決別。卒業。
 そんな言葉が頭の中をこだまする。
 やがてその文字は鋭利な切先となり、私の頑なな殻に傷をつける。
 きっと、痛いんだ。
 殻を破るのは怖い。 
 その先の世界を見るのが怖い。
 だけど、刹那の痛みで飛び立つことができたなら――。

「もちろんいい縁なら修復を勧めるよ。でも、ちづちゃんの苦しんでいる姿を見たら、とてもそんな気にならない。なにを選んだって、ちづちゃんが決めたことなら、僕は全力で応援するから」

 この人が与えてくれたナイフなら、恐怖よりも希望が勝る、そんな気がした。
 
「……そんなこと、言われたら……私、また泣いちゃいますよぉ」

 お日様を浴びた水面のように乱反射する光。
 視界がぼやけたのは涙ぐんだせいだけじゃない。
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