猫の罪深い料理店～迷子さんの拠り所～

白昼の衝撃

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「いい年して……母親に褒められるのを期待して」

　彼女たち姉妹は昔からなにかと張り合っていたそうだ。
　看護師で医者と結婚し、スムーズに子供ができた姉。
　すべて先を越された母は、姉のあとを追うように結婚、保育士を辞めて妊活に勤しんだ。
　まだ若かったにも関わらず、不妊治療をしてまで設けた私に対し「あんたを作るのにどれだけ金がかかったか」と愚痴っていた。
　続いて勃発したのが娘の競い合い。
　私を医者に育て上げたかったのは、姉の旦那さんに負けないためだろう。
　医者以外にも医療に携わる職業はたくさんある。
　あえてそこを避けてITという違う道を選んだのは、私自身を見てほしかったからだ。

「結局私は母親中心で、自分だけじゃなにもできない……大人になりきれないダメな子供のままなんです」

　母親基準で生きてきた。
　それは離れていても変わらない呪いのようだった。
　あの人はとっくに私をあきらめて、楽な方に逃げていたのに。
　勝手に期待した私が悪い。
　がんばったご褒美が欲しくないなんて、嘘つきな自分も、勘違いで鼻を高くしている、傲慢で愚かな自分も――。

「大嫌いなんです。人より勉強できるって、仕事で結果出してるって、肩書きで武装しないと前を向いて歩けない……本当は、自信がないから」

　自分で自分を傷つける。
　目には見えない流れる血は、音もなく滴り落ちる。
　それでもここまで打ち明けられたのは、受け止めてくれる器があると信じられたからかもしれない。