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白昼の衝撃
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愛を誓い合う一段上がった祭壇、純白のウエディングドレス、華やかなバージンロード。
いつか私も誰かとするのだろうか。
自分がそこにいる姿があまりに想像できなくて、憧れや羨望の輪郭すら掴めなかった。
そんなことよりも、一週間遅らせた仕事のことばかり考えていた。
神父を前にした儀式が終了すると、親戚同士で談笑しながら別の会場へ移動する。
観音開きに放たれた扉を通過すると、中には客用の丸テーブルがたくさん、前には主役たちが座る横長のテーブルが一つ置かれていた。
至るところにピンクや白い花が飾られ、女の子らしい空間が演出されている。
まりちゃんの趣味だろう。小さな頃から可愛いものが好きだったから。
お色直しまでの繋ぎの会話が終わり、閉じられていた扉が再び開く。
一礼した新郎新婦が、よくわからない英語の曲とともに入場してくる。
司会者のアナウンスに乗せた足が、後方の席から順に回る。
高い天井にぶら下がったシャンデリアが、花嫁のカラードレスに煌めきを添える。
胸の端に薔薇の花を咲かせた、バルーン裾の真っ赤な衣装。
綺麗だな、と素直に思えなかったのは、余計な感情が邪魔をしたからだろうか。
進行の時間を無視して、祝いの言葉を理由に新郎新婦を呼び止める年配者たち。
それでも徐々に近づいてきた二人は、やがて私とお母さんのいるテーブル席へやって来た。
周りの人たちに習い、シャンパングラス片手に立ち上がる。
「おめでとう、まりちゃん」
「ありがとう、ちーちゃん、久しぶりだねぇ」
無垢にも見える笑顔で、私のグラスにシャンパンを注ぐ。
何気ない仕草とやり取りが、親に連動して張り合っていた、過去の記憶を垣間見せた。
いつか私も誰かとするのだろうか。
自分がそこにいる姿があまりに想像できなくて、憧れや羨望の輪郭すら掴めなかった。
そんなことよりも、一週間遅らせた仕事のことばかり考えていた。
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観音開きに放たれた扉を通過すると、中には客用の丸テーブルがたくさん、前には主役たちが座る横長のテーブルが一つ置かれていた。
至るところにピンクや白い花が飾られ、女の子らしい空間が演出されている。
まりちゃんの趣味だろう。小さな頃から可愛いものが好きだったから。
お色直しまでの繋ぎの会話が終わり、閉じられていた扉が再び開く。
一礼した新郎新婦が、よくわからない英語の曲とともに入場してくる。
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高い天井にぶら下がったシャンデリアが、花嫁のカラードレスに煌めきを添える。
胸の端に薔薇の花を咲かせた、バルーン裾の真っ赤な衣装。
綺麗だな、と素直に思えなかったのは、余計な感情が邪魔をしたからだろうか。
進行の時間を無視して、祝いの言葉を理由に新郎新婦を呼び止める年配者たち。
それでも徐々に近づいてきた二人は、やがて私とお母さんのいるテーブル席へやって来た。
周りの人たちに習い、シャンパングラス片手に立ち上がる。
「おめでとう、まりちゃん」
「ありがとう、ちーちゃん、久しぶりだねぇ」
無垢にも見える笑顔で、私のグラスにシャンパンを注ぐ。
何気ない仕草とやり取りが、親に連動して張り合っていた、過去の記憶を垣間見せた。
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