猫の罪深い料理店～迷子さんの拠り所～

白昼の衝撃

13

　社内のシンプルな丸い掛け時計が十二時を過ぎた頃、藤本さんに誘われお昼ご飯を食べた。
　初めてビルの屋上に行き、端のベンチに肩を並べて座った。比較的早い時間だったので、ほとんど人はいなかった。
　女同士、二人きりで食事をするなんていつぶりだろう。
　友達と呼べる存在がいない私は、学生時代でもそんな記憶がない。
　勉強ばかりだった青春期、ガリ勉で愛想がないと陰口を叩かれるか、なき者として扱われるかどちらかだった。
　あの時は私ではなく周りが悪いと思っていたけれど、今なら自分にも非があったのではと可能性を挙げられる。
　あんなふうに遊んでいたらバカになる。
　そんなお母さんの教えのままに、みんなを軽蔑した眼差しで見ていた。
　私はあなたたちとは違う。
　そんな気持ちが滲み出ている者と誰が仲良くしたがるだろう。
　本心では楽しそうな彼らの輪を羨ましがっていたくせに。
　藤本さんとは、いろんなことを話した。
　猫宮さんの店で漏らしたような母との過去を。
　藤本さんはコンビニのサンドウィッチを頬張りながら、時折頷いた。
　私は手作りのお弁当を少しずつ口に運びながら、彼女の生い立ちを聞いた。
　正社員だとか派遣社員だとか、高学歴だとか高卒だとか、そんなことはどうでもよかった。
　最後にデザートの抹茶ティラミスを恵んでもらった。
　また今度お返しをしようと思う。
　スウィーツタイムを楽しんでいると、私たちの居場所を突き止めた笹原くんがドアを開いて飛び込んできた。
　申し訳ないけれど、私たちは入れ違いにオフィスに戻った。