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白昼の衝撃
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途端、ざわざわといろめき立つ社内の空気に、あっけに取られていた私は急いで訂正を持ちかける。
「ちょ、ちょっと笹原くんっ、誤解を生むような発言はやめなさい!」
「だから僕、か、課長のためにカッコよくなりまする!」
ダメだ。まったく声が届かない。
興奮という名のスパイスで聴覚まで麻痺しているようだ。
「まずは手始めにボクシングジムに入会してきました、たまたま繁寅のジムが近所にあったので」
なんだか聞き覚えのある名前に、瞳孔を開く。
もやしっ子体型の笹原くんがボクシングなんて、似合わないにもほどがある。サンドバッグ相手でもやられるのではと危惧してしまう。
「繁寅って世界チャンピオンの?」
「そうですよ! 身体バキバキなのですっ、女性は細マッチョが好きだというのでこれを目指しまする!」
「よくそんな有名なジム、すぐに入会できたね」
「厳しすぎて誰も続かないらしいです!」
笹原くんが黒いスラックスのポケットからスマートフォンを出すと、藤本さんが横につけて画面を覗き込む。
世界チャンピオンだとか、身体がバキバキだとか、気になる要素が次々と増えていく。
確かに「あの彼」なら指導が厳しそうに見えるけれど。
「最近このミーチューバーにハマっててですね、有名人の友達が多いらしく、動画で紹介しているのですよ。繁寅もここに出ていたのです」
「あたしも知ってるー、動画再生数やばいやつでしょ?」
ネットなど勉強や仕事に関わる調べ物の時にしか使わない。
そんな私にとって今流行りのSNSな話題はハードルが高く、フェードアウトすべく現在地からそろりと離れる。
「ちょ、ちょっと笹原くんっ、誤解を生むような発言はやめなさい!」
「だから僕、か、課長のためにカッコよくなりまする!」
ダメだ。まったく声が届かない。
興奮という名のスパイスで聴覚まで麻痺しているようだ。
「まずは手始めにボクシングジムに入会してきました、たまたま繁寅のジムが近所にあったので」
なんだか聞き覚えのある名前に、瞳孔を開く。
もやしっ子体型の笹原くんがボクシングなんて、似合わないにもほどがある。サンドバッグ相手でもやられるのではと危惧してしまう。
「繁寅って世界チャンピオンの?」
「そうですよ! 身体バキバキなのですっ、女性は細マッチョが好きだというのでこれを目指しまする!」
「よくそんな有名なジム、すぐに入会できたね」
「厳しすぎて誰も続かないらしいです!」
笹原くんが黒いスラックスのポケットからスマートフォンを出すと、藤本さんが横につけて画面を覗き込む。
世界チャンピオンだとか、身体がバキバキだとか、気になる要素が次々と増えていく。
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「最近このミーチューバーにハマっててですね、有名人の友達が多いらしく、動画で紹介しているのですよ。繁寅もここに出ていたのです」
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