101 / 206
白昼の衝撃
2
しおりを挟む
――買ってしまった。
昼食を見繕っているであろう、会社員ふうの男女に紛れて、コンビニスウィーツとやらを。
かぼちゃプリンを選んだのは、多少身体のことを考慮しているという後押しが欲しかったからだろうか。
なにはともあれ甘いものだ。
会社に着いたらすぐに冷蔵庫に入れて、お昼にこっそり一人で食べよう。
こんなに休憩時間が待ち遠しいのは初めてだった。
オフィスビルのエレベーターを降り、トートバッグに入れた乳白色の小袋を気にする。
それだけ持って歩かないのは、いかにもコンビニで買い物してきたと周りに知られないためだ。
自分で言うのもなんだが、私はできる女性で通っている。
女として価値を見出したことはなくても、キャリアを積むためにがむしゃらにやってきたつもりだ。
幸い結果もついてきている今現在、せっかく出来上がった隅田川千鶴という像を崩したくはなかった。
――なのに。
この数秒後、私の武装は脆くも砕け散ることになる。
「きゃあっ!」
前方から向かってきたなにかに、勢いよくぶつかり尻もちをついた。
同時に飛び出た乙女チックな悲鳴は私のものではない。
痛たた……と腰を撫でながら前を見ると、私と同じ体勢でピカピカの廊下に座り込んでいる彼女がいた。
相変わらず薄いブラウスから下着が透けているし、フリル裾のスカートは膝より足の付け根に近い。
昼食を見繕っているであろう、会社員ふうの男女に紛れて、コンビニスウィーツとやらを。
かぼちゃプリンを選んだのは、多少身体のことを考慮しているという後押しが欲しかったからだろうか。
なにはともあれ甘いものだ。
会社に着いたらすぐに冷蔵庫に入れて、お昼にこっそり一人で食べよう。
こんなに休憩時間が待ち遠しいのは初めてだった。
オフィスビルのエレベーターを降り、トートバッグに入れた乳白色の小袋を気にする。
それだけ持って歩かないのは、いかにもコンビニで買い物してきたと周りに知られないためだ。
自分で言うのもなんだが、私はできる女性で通っている。
女として価値を見出したことはなくても、キャリアを積むためにがむしゃらにやってきたつもりだ。
幸い結果もついてきている今現在、せっかく出来上がった隅田川千鶴という像を崩したくはなかった。
――なのに。
この数秒後、私の武装は脆くも砕け散ることになる。
「きゃあっ!」
前方から向かってきたなにかに、勢いよくぶつかり尻もちをついた。
同時に飛び出た乙女チックな悲鳴は私のものではない。
痛たた……と腰を撫でながら前を見ると、私と同じ体勢でピカピカの廊下に座り込んでいる彼女がいた。
相変わらず薄いブラウスから下着が透けているし、フリル裾のスカートは膝より足の付け根に近い。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説


高校生なのに娘ができちゃった!?
まったりさん
キャラ文芸
不思議な桜が咲く島に住む主人公のもとに、主人公の娘と名乗る妙な女が現われた。その女のせいで主人公の生活はめちゃくちゃ、最初は最悪だったが、段々と主人公の気持ちが変わっていって…!?
そうして、紅葉が桜に変わる頃、物語の幕は閉じる。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!
夕暮れカフェ◆ 公園通り恋物語◆
まゆら
キャラ文芸
桜ヶ丘公園通りで双子の姉妹夕陽と夕凪が営むカフェと下宿屋さざなみハイツの住人等、彼女たちを巡る人々の人間模様、恋模様。
可愛いもふもふ達も登場します!
のんびり、ゆったりとした物語。
あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~
深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公
じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい
…この世界でも生きていける術は用意している
責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう
という訳で異世界暮らし始めちゃいます?
※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです
※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています
【完結】守護霊さん、それは余計なお世話です。
N2O
BL
番のことが好きすぎる第二王子(熊の獣人/実は割と可愛い)
×
期間限定で心の声が聞こえるようになった黒髪青年(人間/番/実は割と逞しい)
Special thanks
illustration by 白鯨堂こち
※ご都合主義です。
※素人作品です。温かな目で見ていただけると助かります。

親友と婚約者に裏切られ仕事も家も失い自暴自棄になって放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました
空地大乃
ファンタジー
ダンジョンが当たり前になった世界。風間は平凡な会社員として日々を暮らしていたが、ある日見に覚えのないミスを犯し会社をクビになってしまう。その上親友だった男も彼女を奪われ婚約破棄までされてしまった。世の中が嫌になった風間は自暴自棄になり山に向かうがそこで誰からも見捨てられた放置ダンジョンを見つけてしまう。どことなく親近感を覚えた風間はダンジョンで暮らしてみることにするが、そこにはとても可愛らしいモンスターが隠れ住んでいた。ひょんなことでモンスターに懐かれた風間は様々なモンスターと暮らしダンジョン内でのスローライフを満喫していくことになるのだった。
小樽あやかし香堂
森原すみれ@薬膳おおかみ①②③刊行
キャラ文芸
【お香×あやかし×北海道小樽市】
26歳千草野紬(ちぐさのつむぎ)は、失業直後、子犬の落とし物を拾う。
子犬を追い辿り着いたのは、歴史の街――「小樽」。
その街で、香炉を手にした和装男子、橘紫苑(たちばなしおん)と出逢う。
香堂を営む紫苑が作りだすお香に、すっかり魅せられる紬。
ところが、魅せられるのは「人間」だけではないみたいで……!?
※ノベマ!、小説家になろうに同作掲載しております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる