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奇妙な仲間たち
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「そろそろ帰って夜の自主練しねえとなぁ、こちとら世界戦控えてんだ」
「もう何回目だったかしら? 防衛戦、楽しみね」
広げた両腕の拳を胸の前でぶつけて見せる繁寅さんに、慣れた口調で合わせる卯瑠香さん。
そう言えば最初も試合がどうのって聞いたような。
「繁寅はボクサーしてるんだよ。で、卯瑠香はラウンドガール」
この点に関しては、イメージ通りすぎてなんの驚きもなかった。
二人して並ぶと、目がチカチカするくらい派手な出立ち。試合でもきっとこの様子で楽しくやっているのだろう。
「減量中は役に立つな、仕方ねえからまた来てやってもいいぜ」
「どっちでもいいよ~」
あははー、と心のこもっていない笑顔でひらひら手を振る猫宮さんに、繁寅さんは怒り浸透だった。
「猫宮ぁぁ! てめえはマジで一回勝負しやがれぇぇ!」
「繁ちゃんったらぁ、猫ちゃんは猫ショウなんだから本気になったらひとたまりもないでしょう」
卯瑠香さんは彼の背中をポンポン叩いて宥めると、こちらに向けてパチリとウインクをした。
そして未だ憤怒冷めやらぬ繁寅さんの手を取ると「また来るわね」と言って、瞬く間に姿を消した。
玄関に向かうことなく、その場でいなくなったのだ。
私たち人間とは違う、十二支と猫宮さんの特別な繋がりを見た気がした。
いや、それはそうと、今一番気になっているのは、先ほどの卯瑠香さんの台詞だ。
猫ショウ、だとか、本気になったらひとたまりもない、とか……。
「もう何回目だったかしら? 防衛戦、楽しみね」
広げた両腕の拳を胸の前でぶつけて見せる繁寅さんに、慣れた口調で合わせる卯瑠香さん。
そう言えば最初も試合がどうのって聞いたような。
「繁寅はボクサーしてるんだよ。で、卯瑠香はラウンドガール」
この点に関しては、イメージ通りすぎてなんの驚きもなかった。
二人して並ぶと、目がチカチカするくらい派手な出立ち。試合でもきっとこの様子で楽しくやっているのだろう。
「減量中は役に立つな、仕方ねえからまた来てやってもいいぜ」
「どっちでもいいよ~」
あははー、と心のこもっていない笑顔でひらひら手を振る猫宮さんに、繁寅さんは怒り浸透だった。
「猫宮ぁぁ! てめえはマジで一回勝負しやがれぇぇ!」
「繁ちゃんったらぁ、猫ちゃんは猫ショウなんだから本気になったらひとたまりもないでしょう」
卯瑠香さんは彼の背中をポンポン叩いて宥めると、こちらに向けてパチリとウインクをした。
そして未だ憤怒冷めやらぬ繁寅さんの手を取ると「また来るわね」と言って、瞬く間に姿を消した。
玄関に向かうことなく、その場でいなくなったのだ。
私たち人間とは違う、十二支と猫宮さんの特別な繋がりを見た気がした。
いや、それはそうと、今一番気になっているのは、先ほどの卯瑠香さんの台詞だ。
猫ショウ、だとか、本気になったらひとたまりもない、とか……。
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