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奇妙な仲間たち
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「……え? 未國ってあの、例の取引先の」
「そうですよ、私が今日行った四井住川銀行の社長です」
「え……ええーーっ!? そ、そうだったのか」
部長が仰天するのも無理はない。
馴染みのある大手銀行のトップが、私たちと同じ人間ではなかったのだから。
「私がこの店と繋がりがあることに気づいて、興味を持たれたようで」
「そうなのか、ならわしとも話してくれるだろうか!?」
やけに乗り気の部長を「さあ、どうでしょう」と受け流す。
社会的地位は別として、奔放に見える十二支たちがなにを考えているかは予測不能だ。
ちなみに受付嬢はたぶん酉年でした、と伝えると、部長は驚きと羨ましさを混ぜたような奇妙な顔をした。
昨夜、ここに来たばかりの私が、部長より多くの十二支に会っていることが不思議だったらしい。
なにかの縁か、偶然か、彼らを知るのはそう易いことではないようだ。
「すごいねちづちゃん、短期間でそんなに十二支に出会うなんて、いつかコンプリートできるかも!」
「ううむ、白鳥にまで会うとは……」
楽しそうに声を高くする猫宮さんに対して、牛坐さんは眉間に皺を寄せなにか考えているようだった。
「白鳥さんがどうかしたんですか?」
「いずれわかるか、知る必要もないか――」
「んじゃあ俺はそろそろ帰るぜ!」
牛坐さんの言葉は、大きな声と椅子を立つ音にかき消された。
いちいち驚きながら振り向いた後方には、テーブル席の前に立つ繁寅さんがいた。
「そうですよ、私が今日行った四井住川銀行の社長です」
「え……ええーーっ!? そ、そうだったのか」
部長が仰天するのも無理はない。
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「私がこの店と繋がりがあることに気づいて、興味を持たれたようで」
「そうなのか、ならわしとも話してくれるだろうか!?」
やけに乗り気の部長を「さあ、どうでしょう」と受け流す。
社会的地位は別として、奔放に見える十二支たちがなにを考えているかは予測不能だ。
ちなみに受付嬢はたぶん酉年でした、と伝えると、部長は驚きと羨ましさを混ぜたような奇妙な顔をした。
昨夜、ここに来たばかりの私が、部長より多くの十二支に会っていることが不思議だったらしい。
なにかの縁か、偶然か、彼らを知るのはそう易いことではないようだ。
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