猫の罪深い料理店~迷子さんの拠り所~

碧野葉菜

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奇妙な仲間たち

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 定時の午後五時半を過ぎると、社員たちは各々に自分の席を立ち、上司に挨拶をしてオフィスをあとにする。
 時間が経つほど数は減っていき、七時半になる頃には私を含めて三人しか残っていなかった。
 コンプライアンスや法律の協定などで、残業時間は厳しく取り締まられている。
 それで仕事の効率が上がればいいのだが、普段やるべきことを放置して、結局納期直前に焦って時間外をすれば意味がない。 
 かといって仕事を減らせば利益も減り、給料も減ってやる気もなくなる。
 タイムイズマネーと言うけれど、時間だけあってもどうしようもない。
 プライベートを蔑ろにしてきた私はそう思っていたはずだった……けれど。

「あの……隅田川課長?」

 声をかけられハッとして顔を上げると、丸メガネ越しの小さな目と視線が合った。
 坊ちゃん刈りの頼りない青年は、おどおどした様子で私のデスク前に立っている。
 定時と同時にそそくさと帰ろうとした彼を止め、今日の仕事のやり直しを命じたのだった。
 チラチラ腕時計を確認していた私はゴホン、と一つ咳払いをすると、笹原くんが胸に抱いていた資料を受け取った。

「なーんか、怪しくないですか、かちょー」

 横から間延びした声を投げてくるのは、パンダ目を綺麗に拭き取った藤本さん。
 合コンがある今日に限ってマスカラを持ってくるのを忘れたとか。
 こだわりで取り寄せしている製品があるらしく、それを使わないと気分が乗らないので今夜はキャンセルしたらしい。
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