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奇妙な仲間たち
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一仕事終えた私が会社に戻ると、田崎部長のデスク前に藤本さんがいた。
部長の席は、私の席と横並び、デスク二つ分ほど離れた先にある。
私が自分のデスクにたどり着く頃、ちょうど振り返った藤本さんと目が合った。
こってりつけたマスカラが滲んで、パンダのようになっている。
藤本さんはフンッと顔を背けると、ヒールの踵を響かせオフィスを出ていった。
おいおい、またサボりか。
そんなセリフが喉元まで出かかるけれど、なんとか飲み込んだ。どうせ化粧を直しに洗面所にでも行くのだろう。
小さな背中が視界から去ると、チラッと部長を窺い見る。
「若い女性に注意をするのは、なんとも難しいね。そんないやらしい目で私を見ているのかと、逆に怒られてしまったよ」
部長はデスクに両肘を置き、組んだ手の甲の上に顎を乗せてため息混じりに言った。
話の内容からして、彼女の服装について注意してくれたらしい。
どうせ口だけだろうと思っていたのに、意外といいところもあるのかと感じたが。
「涙は女の武器だからねぇ、泣いて済むとは羨ましいばかりだ」
いつも一言多い上に、女性差別とも取れる発言が含まれている。
なにが一番問題って、本人にまったく自覚がないところだ。この年代の男性には多いのだろうか。父親とは縁薄く、仕事以外で年上男性と関わることがない私にはよくわからない。
いっそ数百歳とか、それだけ年齢が離れていれば、世代なんて気にしなくて済むのかもしれない。
そんなことを考えるのは、人ならざる者たちとの縁ができたからだろうか。
彼らのことを思うと、年齢や性別の違いがちっぽけに感じた。
部長の席は、私の席と横並び、デスク二つ分ほど離れた先にある。
私が自分のデスクにたどり着く頃、ちょうど振り返った藤本さんと目が合った。
こってりつけたマスカラが滲んで、パンダのようになっている。
藤本さんはフンッと顔を背けると、ヒールの踵を響かせオフィスを出ていった。
おいおい、またサボりか。
そんなセリフが喉元まで出かかるけれど、なんとか飲み込んだ。どうせ化粧を直しに洗面所にでも行くのだろう。
小さな背中が視界から去ると、チラッと部長を窺い見る。
「若い女性に注意をするのは、なんとも難しいね。そんないやらしい目で私を見ているのかと、逆に怒られてしまったよ」
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話の内容からして、彼女の服装について注意してくれたらしい。
どうせ口だけだろうと思っていたのに、意外といいところもあるのかと感じたが。
「涙は女の武器だからねぇ、泣いて済むとは羨ましいばかりだ」
いつも一言多い上に、女性差別とも取れる発言が含まれている。
なにが一番問題って、本人にまったく自覚がないところだ。この年代の男性には多いのだろうか。父親とは縁薄く、仕事以外で年上男性と関わることがない私にはよくわからない。
いっそ数百歳とか、それだけ年齢が離れていれば、世代なんて気にしなくて済むのかもしれない。
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