57 / 206
奇妙な仲間たち
20
しおりを挟む
「……未國さん、お客様がお呼びデス」
先ほど受付で立っていた、話し方のぎこちない社員だ。
他に来客があったことを知らせに来たらしい。
未國さんは「ああ、わかった」と言うと、ツノを消し去りながら私を横切った。
獣の姿を見られても落ち着き払った様子に、二人の共通点が確かになる。
未國さんのあとに続いて部屋を出ると、ドアの傍らで手足を揃えて待機している彼女の前に立った。ヒールを履いてちょうど私と同じ目線になる。
ものは試しだ。
そう思った私は白鳥さんのまん丸い鳥目を動じず見据えた。
「あの……」
「なんでスカ?」
「せめて……六時にしていただけないでしょうか?」
数秒、静けさが流れる。
相変わらず張り付けた笑顔の彼女は、ようやく目元の筋肉を緩めたかと思うとこう答えた。
「じゃあ、真ん中デ」
夜遅くまで資格の勉強や仕事の復習、予習をしている私にとって早朝五時の目覚ましは辛い。
これで多少、マシになればいいのだけれど。
仕事内容とは特に関係ないことを考えながら、深々と頭を下げると踵を返す。
「どうか迷える仔羊の、道標となりますよう」
見送る未國さんの言葉の意図を、この時の私はまだ知る由もなかった。
先ほど受付で立っていた、話し方のぎこちない社員だ。
他に来客があったことを知らせに来たらしい。
未國さんは「ああ、わかった」と言うと、ツノを消し去りながら私を横切った。
獣の姿を見られても落ち着き払った様子に、二人の共通点が確かになる。
未國さんのあとに続いて部屋を出ると、ドアの傍らで手足を揃えて待機している彼女の前に立った。ヒールを履いてちょうど私と同じ目線になる。
ものは試しだ。
そう思った私は白鳥さんのまん丸い鳥目を動じず見据えた。
「あの……」
「なんでスカ?」
「せめて……六時にしていただけないでしょうか?」
数秒、静けさが流れる。
相変わらず張り付けた笑顔の彼女は、ようやく目元の筋肉を緩めたかと思うとこう答えた。
「じゃあ、真ん中デ」
夜遅くまで資格の勉強や仕事の復習、予習をしている私にとって早朝五時の目覚ましは辛い。
これで多少、マシになればいいのだけれど。
仕事内容とは特に関係ないことを考えながら、深々と頭を下げると踵を返す。
「どうか迷える仔羊の、道標となりますよう」
見送る未國さんの言葉の意図を、この時の私はまだ知る由もなかった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
今夜のご飯も一緒に食べよう~ある日突然やってきたヒゲの熊男はまさかのスパダリでした~
松本尚生
BL
瞬は失恋して職と住み処を失い、小さなワンルームから弁当屋のバイトに通っている。
ある日瞬が帰ると、「誠~~~!」と背後からヒゲの熊男が襲いかかる。「誠って誰!?」上がりこんだ熊は大量の食材を持っていた。瞬は困り果てながら調理する。瞬が「『誠さん』って恋人?」と尋ねると、彼はふふっと笑って瞬を抱きしめ――。
恋なんてコリゴリの瞬と、正体不明のスパダリ熊男=伸幸のお部屋グルメの顛末。
伸幸の持ちこむ謎の食材と、それらをテキパキとさばいていく瞬のかけ合いもお楽しみください。
異世界着ぐるみ転生
こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生
どこにでもいる、普通のOLだった。
会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。
ある日気が付くと、森の中だった。
誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ!
自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。
幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り!
冒険者?そんな怖い事はしません!
目指せ、自給自足!
*小説家になろう様でも掲載中です
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・
マーラッシュ
ファンタジー
何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。
異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。
ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。
断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。
勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。
ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。
勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。
プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。
しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。
それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。
そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。
これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。
ひきこもり みそ子の日常
味噌村 幸太郎
エッセイ・ノンフィクション
キャッチコピー
「みそ子ちゃん(♂)の日記かも?」
おっす、オラみそ子(♂)ちゃん。19歳(+20)。2021年時点。
適当に書いてるだけだから期待しないでね!
あとうつっぽいから耐性のない人は、やめたほうがいいかも~
※大変申し訳ないのですが。
他サイトにて、コメント欄にてトラブルなどがあったので。
このブログにおいて。基本、頂いたコメントに、返信などは致しておりません。
作品に関しては、バシバシご指摘ツッコミなんでもOKです。
僕も喜んでご返事させていただきます。
華都のローズマリー
みるくてぃー
ファンタジー
ひょんな事から前世の記憶が蘇った私、アリス・デュランタン。意地悪な義兄に『超』貧乏騎士爵家を追い出され、無一文の状態で妹と一緒に王都へ向かうが、そこは若い女性には厳しすぎる世界。一時は妹の為に身売りの覚悟をするも、気づけば何故か王都で人気のスィーツショップを経営することに。えっ、私この世界のお金の単位って全然わからないんですけど!?これは初めて見たお金が金貨の山だったという金銭感覚ゼロ、ハチャメチャ少女のラブ?コメディな物語。
新たなお仕事シリーズ第一弾、不定期掲載にて始めます!
クラブ「純」のカウンターから
相良武有
現代文学
バーテンダー嶋木がクラブ「純」のカウンターから、常連客や一見客、純子ママやオーナー岡林、同級生の孤児遼子や庭師後藤、印刻師菅原等の人生模様を自らの生と重ね合わせて綴る無力感や挫折感、喪失や苦悩、改軌や再生などを浮き彫りに捉えた骨太の長編物語である
冥府の花嫁
七夜かなた
キャラ文芸
杷佳(わか)は、鬼子として虐げられていた。それは彼女が赤い髪を持ち、体に痣があるからだ。彼女の母親は室生家当主の娘として生まれたが、二十歳の時に神隠しにあい、一年後発見された時には行方不明の間の記憶を失くし、身籠っていた。それが杷佳だった。そして彼女は杷佳を生んですぐに亡くなった。祖父が生きている間は可愛がられていたが、祖父が亡くなり叔父が当主になったときから、彼女は納屋に押し込められ、使用人扱いされている。
そんな時、彼女に北辰家当主の息子との縁談が持ち上がった。
自分を嫌っている叔父が、良い縁談を持ってくるとは思わなかったが、従うしかなく、破格の結納金で彼女は北辰家に嫁いだ。
しかし婚姻相手の柊椰(とうや)には、ある秘密があった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる