猫の罪深い料理店~迷子さんの拠り所~

碧野葉菜

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奇妙な仲間たち

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「私はただ……猫の置き物がないのか、聞いただけなんですけど」

 そのセリフを聞いた彼は、一瞬キョトンとすると、ほっほっと声を上げて愉快そうに笑った。
 私からすればなにが可笑しいのか不明だが、彼にとっては腑に落ちたらしく、納得いった面持ちで改めてこちらを見た。

「なるほど、そういう経緯でしたか、ならばその腕飾りは置き物を渡すまでの仮土産かもしれませんね。まあ、昔から気まぐれな猫のすることはよくわかりませんが」

 仮……?
 そっか。その話が事実なら、ありもしない猫の置き物を申し立てた私への配慮だったとか。
 確かに猫は気まぐれなイメージがあるけれど、猫宮さんもそうなのだろうか?
 今のところあの店に関することは、猫宮さんだけでなく全部よくわからない。

「……これって、他の人たちには見えないんですか?」
「でしょうね、私たち十二支にしか」

 ならば、受付で「いいもの」と言ったあの鶏ガラのような女性も。
 そして、つまり、今私の目の前にいる紳士も――。

「あなたは……」
「見ての通りです」

 彼は、あえて自分が何者かを口にはしなかった。十二支はみんなそうなのだろうか。
 見ればわかる。この国で育った者なら、悩まなくても答えを知っている。
 頭の上からにょきにょきと生える、耳を囲むように内巻きに伸びるアンモナイトに似た二双の尖り。
 黒の横目や名前からも予想はついたが、やっぱり彼は未年――シープのようだ。
 見方によっては可愛いのかもしれないが、私はこの独特の雰囲気に不気味さを覚える。

「未國、社長も」
「未國でいいです、社長はいりません」

 たった数時間前までは実際会ったこともない、雲の上のような存在だったのに。
 猫宮さんの店をきっかけに、これほど垣根が薄らぐとは。
 人智を超えた不思議な個体に、肩書きは良くも悪くも無力な気がした。
 それなのに、人間と同じく職業に就いて労働しているのか。
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