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出会いの夜
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「これ、食べないんですか?」
大きく開かれた蜂蜜色の瞳に、戸惑う私の姿が映る。
猫宮さんが「これ」と言ったのは、私のテーブル前に長らく控えているパフェのことだ。
「ほう、お前は甘いものに目がないのか」
「美味しそうでちね」
横からコメントを述べる牛とネズミ。
好き嫌い以前に、夜中にこんなものを食べるなんて身体に悪いに決まっている。
なのに――。
「いらないなら僕が食べちゃおっかな」
「あーーーっ!!」
ズイと伸びてきた手に、思わずパフェをかばうように引ったくる。その勢いで載っかっていた生クリームが崩れ、若干私のタイトスカートにこぼれた。
「なっ、なにするんですか! あなた店主ですよねっ? お、お客さんの料理を食べようだなんて」
「別に店主が食べちゃダメなんて決まりはないので。気にしないでください」
ダメだ。ここでは外……一般の人間社会の常識が通じない。
そんなことよりも、どうして私は反射的にパフェを守ってしまったのだろう。
食べないなら、どうなっても放っておけばいい話なのに。
そっとテーブルに戻したガラス器に盛られた甘味は、私を食べてと言わんばかりにキラキラ輝いている。
「いいじゃないですか、一口だけ食べてみたら?」
正した姿勢で食い入るように見つめる私に、猫宮さんが誘い水を出す。
大きく開かれた蜂蜜色の瞳に、戸惑う私の姿が映る。
猫宮さんが「これ」と言ったのは、私のテーブル前に長らく控えているパフェのことだ。
「ほう、お前は甘いものに目がないのか」
「美味しそうでちね」
横からコメントを述べる牛とネズミ。
好き嫌い以前に、夜中にこんなものを食べるなんて身体に悪いに決まっている。
なのに――。
「いらないなら僕が食べちゃおっかな」
「あーーーっ!!」
ズイと伸びてきた手に、思わずパフェをかばうように引ったくる。その勢いで載っかっていた生クリームが崩れ、若干私のタイトスカートにこぼれた。
「なっ、なにするんですか! あなた店主ですよねっ? お、お客さんの料理を食べようだなんて」
「別に店主が食べちゃダメなんて決まりはないので。気にしないでください」
ダメだ。ここでは外……一般の人間社会の常識が通じない。
そんなことよりも、どうして私は反射的にパフェを守ってしまったのだろう。
食べないなら、どうなっても放っておけばいい話なのに。
そっとテーブルに戻したガラス器に盛られた甘味は、私を食べてと言わんばかりにキラキラ輝いている。
「いいじゃないですか、一口だけ食べてみたら?」
正した姿勢で食い入るように見つめる私に、猫宮さんが誘い水を出す。
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