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出会いの夜

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 固まる私に見向きもせず、紅白饅頭のような着物姿の彼は円柱型のグラスを手にした。
 ――いや、だからどこから出てきたの。
 二回目なので最初より冷静に突っ込んでいると、彼は乳白色の液体を口にしてやや渋い表情を作った。
 
「これでは物足りんな」
「そう言うと思ったよ、牛坐はほんと、欲しがり屋さんなんだから」

 猫宮……さん、は私のパフェにチョコレートソースをかけた時と同じ要領で、今度は白いとろみを生み出した。
 テーブルに置かれたグラスの上から溢れ出す甘い香り。イチゴと相性抜群であろうそれが、飲み物の中に沈んでいく。
 これはもう、絶対に練乳だ。
 そして先にグラスに入っていたのは牛乳。
 つまり、乳足す乳だ。
 隣に座る闘牛人間は、強く掴んだグラスを口元へ運ぶと、背中を反らし一気に飲み干す。
 世にも奇妙な牛祭りだった。
 牛坐……さん、は空っぽになったグラスをテーブルに置くと、突然私を振り向いた。
 近距離で見つめられ、ドキリとする。
 艶っぽい方ではなく、恐怖の意味でだ。
 ただでさえ冷たい牛乳の一気飲みを見て、お腹がギュルッときそうなのに、これ以上の悪影響はやめてほしい。

「お前……丑年だな?」

 女を口説く時のような目でそんなことを言われるとは思わなかった。いや、口説かれたことなんてないから、ただの想像だけれど。
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