眠りの巫女と野良狐

碧野葉菜

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エピローグ

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「ざ、残月、あなたまさか、最初からそこまで計算して……?」
「さて? なんのことやら、わからぬな、時に夢穂」

 徐に腰を上げた残月が、夢穂に歩み寄る。
 突如威圧感のある美形が眼前に迫った夢穂は、思わずたじろいだ。

「何もあやかしの男は影雪だけではない……我との間にもうけてもかまわぬのだぞ?」

 まさかの爆弾発言に、元野良狐もとのらぎつね現定住狐げんていじゅうぎつねが物申す。
 再び臨戦態勢に入った影雪は、八重太を放り出すと両手で夢穂を抱きしめた。

「少しでも見直した俺がバカだった、あの世で母さんにこっぴどく叱られるがいい」
「それはそれ、これはこれよ」

 影雪に負けじと、夢穂を反対側から抱き寄せ返す残月。
 あまりの衝撃にしばし固まっていた夢穂だったが、二人の騒がしいやり取りと左右に引っ張られる感覚で我に返った。
 制止の声をかける暇もなく、八重太が正面から飛びついてきたかと思うと、今度は背後から獄樹まですがりついてきて、現場は騒然とした。

「おい夢穂っ、あの女怪人をなんとかしやがれ!」
「みんなずりーぞ! おいらも姉ちゃんと結婚するっ」
「照れておるのか、い奴め」
「子供は十人がいいかと思い」

 全方向から挟み撃ちに遭い、もみくちゃにされた夢穂の額……否、顔全体に血管が浮き出る。
 人間とあやかしはきっとわかり合えるだろう。
 が、そのためにはまず、気まますぎる性質を叩き直す必要があるな、と夢穂は思った。

「全員、帰れーーーー!!」

 神をも慄く雄叫びがこだまし、業華の茶柱が立ったとか立ってないとか。
 寺院と神社が一緒になった、世にも珍しい癒枕寺神社。
 今日もとても平和です。




 ――了――
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