眠りの巫女と野良狐

碧野葉菜

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エピローグ

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 業華の自然、かつ迅速な誘導により沙子はあやかしたちのいる部屋から離れていった。
 とはいえ、沙子は業華以外に無関心のため、わざわざ気を回す必要もなかったかもしれない。
 美菜に関しては追いかける獄樹の背中にある羽を見て「あたしも一緒に飛びたい!」と叫んでいるくらいだ。
 美菜にとって最も大事なのは自分好みのイケメンであるかどうかなので、得体の知れない生命体でも特に問題ないようだ。

 夢穂は額に手をやると、ため息をつきながらふらふらと居間に舞い戻った。
 しかしせっかくの和の空間も、金塊の光が邪魔をして落ち着かない。

「……ここに来るあやかしたちっていつも同じメンバーだけど、どうやって決めてるの?」
「そんなもの我の好き嫌いに決まっておろう」
「だよね」

 夢穂はあきれたようにつぶやきながら肩を落とした。
 世界が一つに戻ったからといって、すべてが繋がるような形になったわけではない。
 相変わらず出入り口は例の鳥居のままだ。
 ただし、通紋がなくても誰でも入れるようになった。
 道と呼ばれていた次元の狭間が消えたことで、異空間を跨ぐ奇妙な感覚もなくなった。
 例えるなら、昔一つだった大陸が分かれ、船で往来が可能になった、というところだろうか。
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