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エピローグ
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「俺が作ったおにぎりを、夢穂に食ってもらいたい」
夢穂の胸にほわわん、とあたたかな花が咲く。
神は砕けてもおにぎりは作れない。
器用なのか不器用なのか、よくわからないあやかしだ。
だけど影雪といると心が落ち着く。
一番素直で、好きな自分でいられる。
時の流れがゆっくりに感じられる、この永遠の刹那は、二人にとってかけがえのないものだった。
ふふっ、と口に手を当て声を出して笑う夢穂に、影雪が不思議そうに顔だけ向けた。
「何かおかしかったか?」
「ううん、一生懸命作ってくれて、可愛いなって思っただけよ」
握っていた米が、ぐしゃっと音を立てぺちゃんこになる。
可愛いのはお前だろう。
眩しい笑顔の夢穂に褒められた影雪は、嬉しさと驚きのあまり手が滑った。
せっかくうまく三角になりかけていたおにぎりは、握力により煎餅のように変わり果てた姿になっていた。
「あらら、力が入っちゃったわね、でも私が食べるから大丈夫よ」
いつも上手に作れなくても、夢穂は美味しそうに全部食べてくれる。
影雪はそれが嬉しくて、これから先もずっと夢穂におにぎりを作りたいと思ったのだ。
「……夢穂の寿命が来るまでには、もっと上手く作れるようになって……必ずあの世にも持っていくから」
それは影雪なりの、ちくはぐな愛の誓いだった。
夢穂の胸にほわわん、とあたたかな花が咲く。
神は砕けてもおにぎりは作れない。
器用なのか不器用なのか、よくわからないあやかしだ。
だけど影雪といると心が落ち着く。
一番素直で、好きな自分でいられる。
時の流れがゆっくりに感じられる、この永遠の刹那は、二人にとってかけがえのないものだった。
ふふっ、と口に手を当て声を出して笑う夢穂に、影雪が不思議そうに顔だけ向けた。
「何かおかしかったか?」
「ううん、一生懸命作ってくれて、可愛いなって思っただけよ」
握っていた米が、ぐしゃっと音を立てぺちゃんこになる。
可愛いのはお前だろう。
眩しい笑顔の夢穂に褒められた影雪は、嬉しさと驚きのあまり手が滑った。
せっかくうまく三角になりかけていたおにぎりは、握力により煎餅のように変わり果てた姿になっていた。
「あらら、力が入っちゃったわね、でも私が食べるから大丈夫よ」
いつも上手に作れなくても、夢穂は美味しそうに全部食べてくれる。
影雪はそれが嬉しくて、これから先もずっと夢穂におにぎりを作りたいと思ったのだ。
「……夢穂の寿命が来るまでには、もっと上手く作れるようになって……必ずあの世にも持っていくから」
それは影雪なりの、ちくはぐな愛の誓いだった。
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