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眠りの巫女の運命は?
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影雪は、部屋で夢穂を待っていた。
その畳の上には、布団が二組並んでいる。
二人が好き合っていると察した業華が、気を使い用意したものだ。
さすがに同じ布団で寝るのはいただけない、という思いからの行いだが、結局影雪は夢穂の方に転がってくるので、あまり意味を成していない。
部屋の壁にかけられた鳩時計が、影雪を急かすように時を刻む。
集中したいから、ついて来ないで。
そう、思い詰めた様子で夢穂に言われたが、いても立ってもいられない影雪は、腰を上げ早々と本殿に向かった。
「夢穂」と口にしながら、観音開きの扉を手前に引く。
すると、すぐに床に倒れている夢穂が視界に飛び込んできた。
血相を変え駆け寄った影雪は、横になっている夢穂の背を支えるようにして抱き起こした。
何度も名前を呼びかけると、長いまつ毛がほんの少し上下する。
わずかながらも反応を見せた夢穂に、影雪はひとまず安堵した。
「大丈夫か、いきなり転がっているから驚いた」
「……大丈夫、すぐにみんな、元通りになる、から」
「なんの話だ?」
夢穂は焦点の定まらない様子でぶつぶつ言うと、重たそうな瞼を擦った。
「もしかして眠いのか?」
「……うん、なんだか急に眠気、が」
そう言って夢穂は、今にも気を失いそうにまどろみ始めた。
ようやくしっかりとした睡眠が取れるかもしれない。
そう思った影雪は、ホッとする気持ちで夢穂を抱いたまま立ち上がった。
その畳の上には、布団が二組並んでいる。
二人が好き合っていると察した業華が、気を使い用意したものだ。
さすがに同じ布団で寝るのはいただけない、という思いからの行いだが、結局影雪は夢穂の方に転がってくるので、あまり意味を成していない。
部屋の壁にかけられた鳩時計が、影雪を急かすように時を刻む。
集中したいから、ついて来ないで。
そう、思い詰めた様子で夢穂に言われたが、いても立ってもいられない影雪は、腰を上げ早々と本殿に向かった。
「夢穂」と口にしながら、観音開きの扉を手前に引く。
すると、すぐに床に倒れている夢穂が視界に飛び込んできた。
血相を変え駆け寄った影雪は、横になっている夢穂の背を支えるようにして抱き起こした。
何度も名前を呼びかけると、長いまつ毛がほんの少し上下する。
わずかながらも反応を見せた夢穂に、影雪はひとまず安堵した。
「大丈夫か、いきなり転がっているから驚いた」
「……大丈夫、すぐにみんな、元通りになる、から」
「なんの話だ?」
夢穂は焦点の定まらない様子でぶつぶつ言うと、重たそうな瞼を擦った。
「もしかして眠いのか?」
「……うん、なんだか急に眠気、が」
そう言って夢穂は、今にも気を失いそうにまどろみ始めた。
ようやくしっかりとした睡眠が取れるかもしれない。
そう思った影雪は、ホッとする気持ちで夢穂を抱いたまま立ち上がった。
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