眠りの巫女と野良狐

碧野葉菜

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眠りの巫女の運命は?

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 気づけばいつも、夢を見ていた。
 自分の寝言で起きたこともある。
 時間をかけ眠りについても、夜中に何度も起き、結局本を読んで朝まで過ごしたりした。
 それは日に日にひどくなっていった。
 少しずつ、少しずつ、夢穂の暗い穴を広げ、全身を蝕むように。

 身体よりも、心が辛かった。
 眠りの巫女である夢穂の心身が安定しないことで、みんなに迷惑がかかる。
 今すぐにでもなんとかしなければと、夢穂は必死に奔走し、迷走した。
 誰にも悟られないようにと、笑顔で取り繕い、気丈に振る舞った。
 夢穂の部屋の押し入れには、エコバックほどの大きさをした布袋が置かれている。
 衣類の収納ケースと、布団の奥に隠れたその中には、役立たずのアロマオイルが詰め込まれていた。
 夢穂は自分に、匂い袋を作ることができない。
 自分の眠りを、祈ることもできない。
 薬草が自身を癒せないのと同じように、与え続けて消耗するしかない。

 アロマの香り、マッサージ、半身浴……睡眠を促すのにいいと言われていることは全部試したが、効果は得られなかった。
 眠りの巫女には、無意味だった。
 ついに友人にまで危険が及んだのがいい証拠だ。
 こんなことになるのは、私が穢れているせいだからと、夢穂は禊をした。
 通常、年の瀬に一度、数分すれば済む儀式だ。
 いくら八月とはいえ、夜中の癒枕寺神社は冷える。
 夢穂は何時間も、冷水に浸っていた。
 こうすれば穢れが流され、すべてが元に戻ると信じたかった。
 全身から熱が遠のき、目眩が襲った時、泉から夢穂を引き上げたのは影雪だった。
 隣で横になっているはずの夢穂がいないことに気づき、飛び起きて探しに来た。
 「無茶をするな」と影雪はつぶやきながら、切なげに目を細めていた。
 夢穂は初めて慕った相手の、悲哀を込めた表情に胸が絞られる思いだった。
 眠りの巫女でなければ、もっと手放しに恋ができただろうか?
 好きなことだけ考えて暮らせただろうか?
 こんな状況に陥っても、助けに来てくれた影雪に喜ぶ自分を、夢穂は激しく責めた。
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