眠りの巫女と野良狐

碧野葉菜

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歪みの原因はそれでしたか。

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「私、影雪との出会いが偶然なんて思えないわ、うまく言えないけど、何か強い力で引き寄せられたような、必然的なものを感じるの」

 夢穂の脳裏に、出会ってからこれまでの、影雪との記憶がフィルムのように蘇った。

「……なあんて、考えすぎかな、ロマンチストすぎるかも、ね?」

 夢穂はぺろ、と舌を覗かせて恥ずかしそうに隣を見た。

「……いや、俺もそう思う」

 影雪はあたたかな泉に濡れた銀色の髪を惜しみなく輝かせ、澄んだ瞳で天を仰いでいた。

「俺に通紋ができた時、あたたかく、何か生命的なものを感じた、そして氷天丸を振ればできた亀裂に吸い寄せられるように入った、まるで強烈な引力に従うようだった」

 影雪の薄い唇が、優しく時を刻むように言葉を紡ぐ。
 青闇に染められたその立ち姿は、神々しいほど美しかった。

「これはきっと運命というやつだ、俺と、夢穂の……」
「影雪……」

 夢穂は潤んだ瞳で、静かに影雪を見つめていた。

「……なんであなたがそこにいるの?」

 視線が絡み合った瞬間、夢穂の口から出た台詞に、影雪は固まった。
 そして急いで自分の身体を触りながら確認して見た。

「ま、まずい、気を抜いたら元の姿に」

 ハッと振り向いた先には、満面の笑みで全身をわななかせる夢穂がいた。

「落ち着け夢穂、話せばわかる」
「言い訳があるなら聞くけど?」
「獣の姿になれば夢穂と風呂に入れるかと思い」
「……そうね、ようくわかったわよ、あなたのことが」

 こめかみに青筋を浮かべる夢穂に、影雪はたじろいだ。 

「この、エロ狐ーー!!」

 野生動物が逃げ出す雄叫びとともに、顔面にお湯を浴びた影雪は、怒った夢穂は津波より怖いと思った。
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