眠りの巫女と野良狐

碧野葉菜

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やってみなくちゃ始まりません。

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「薬草ならここに来る時に通った野原にあった、そこに行くか」
「うん、そうしよう、影雪って野草に詳しいの?」
「森で過ごす時間も多いからな、自然と詳しくなる」
「なるほど」

 夢穂も育った環境が自然豊かな癒枕寺神社のため、気づけば植物のことをよく知っていた。
 その知識を活かし、薬の効能が期待できる草が、香りを定着させるのに適していると判断した。それからずっと薬草を使っている。

 次は歩くと言っても影雪がしつこく運びたがるので、夢穂はあきらめて抱っこされることにした。
 こちらも四季があるのだろう、向こうと同じ真夏ではあったが、日差しは気持ち柔らかく感じる。
 どこも空気が澄んでいて、影雪が移動するのに合わせ、爽やかな風が夢穂の黒髪を靡かせた。
 この世界も悪くないかもしれない。
 影雪の腕に大人しく収まりながら、夢穂はそんなことを考えていた。
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