64 / 175
眠りは世界を救う、のでしょうか?
21
しおりを挟む
その時、影雪に後ろから片腕を掴まれた夢穂は、バランスを崩しそうになる。
振り向き様に見上げた影雪は不安そうに眉を下げていて、夢穂は無性に彼を安心させたい気持ちに駆られた。
「大丈夫よ、取って食べられるわけじゃないんだから」
夢穂は優しく影雪の手を退け笑ってみせると、畳を踏みしめ残月の前に正座した。
壇上にいる残月は、夢穂を見下ろしながら満足そうな笑みを浮かべた。
「なかなかに気概のある娘と見た、どれ、ちと覗いてやろう」
夢穂がその意味を模索するより先に、残月の切れ長の瞳がカッと見開かれた。
途端、夢穂は頭の天辺を引っ張られたように、前のめりになる。
その後、立ちくらみのような目眩が起き、一瞬だが視界が白く霞んだ。
まるで身体の表面を一枚持って行かれたような、奇妙な感覚だった。
「な、なに、今何をしたの?」
「貴様の記憶を我に取り込んだだけである」
慌てる夢穂に、残月は悪びれる様子もなく答えた。
夢穂は恐怖よりも、感心する気持ちの方が勝っていたかもしれない。
「なんて便利な術なの、羨ましいくらい」
「これはあやかしの中でも我だけが成せる技、貴様ら人間とは格が違うのだ、残念であったな」
くく、と小バカにするように笑う残月にむっとする夢穂だったが、事実なので反論しようもない。
派手さといい、自信家ぶりといい、影雪と足して二で割ればちょうどいいのでは、と夢穂は思った。
「ほう、なるほど……そういうことであったか」
残月は夢穂の記憶を吟味するよう、頷きながら言った。
夢穂は背筋に力を入れると、改めて残月に目的を話すことにした。
「私の記憶を読んだならわかってると思うけど、空間が不安定になってる原因を探しに来たの。私は……空間の歪みと眠りが関係してるんじゃないか、って感じてるから、何かわかることがあれば教えてほしいと思って」
真剣に訴える様子の夢穂に対し、残月は片膝に置いた腕で頬杖をつき、特に関心もなさそうだった。
振り向き様に見上げた影雪は不安そうに眉を下げていて、夢穂は無性に彼を安心させたい気持ちに駆られた。
「大丈夫よ、取って食べられるわけじゃないんだから」
夢穂は優しく影雪の手を退け笑ってみせると、畳を踏みしめ残月の前に正座した。
壇上にいる残月は、夢穂を見下ろしながら満足そうな笑みを浮かべた。
「なかなかに気概のある娘と見た、どれ、ちと覗いてやろう」
夢穂がその意味を模索するより先に、残月の切れ長の瞳がカッと見開かれた。
途端、夢穂は頭の天辺を引っ張られたように、前のめりになる。
その後、立ちくらみのような目眩が起き、一瞬だが視界が白く霞んだ。
まるで身体の表面を一枚持って行かれたような、奇妙な感覚だった。
「な、なに、今何をしたの?」
「貴様の記憶を我に取り込んだだけである」
慌てる夢穂に、残月は悪びれる様子もなく答えた。
夢穂は恐怖よりも、感心する気持ちの方が勝っていたかもしれない。
「なんて便利な術なの、羨ましいくらい」
「これはあやかしの中でも我だけが成せる技、貴様ら人間とは格が違うのだ、残念であったな」
くく、と小バカにするように笑う残月にむっとする夢穂だったが、事実なので反論しようもない。
派手さといい、自信家ぶりといい、影雪と足して二で割ればちょうどいいのでは、と夢穂は思った。
「ほう、なるほど……そういうことであったか」
残月は夢穂の記憶を吟味するよう、頷きながら言った。
夢穂は背筋に力を入れると、改めて残月に目的を話すことにした。
「私の記憶を読んだならわかってると思うけど、空間が不安定になってる原因を探しに来たの。私は……空間の歪みと眠りが関係してるんじゃないか、って感じてるから、何かわかることがあれば教えてほしいと思って」
真剣に訴える様子の夢穂に対し、残月は片膝に置いた腕で頬杖をつき、特に関心もなさそうだった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
殿下、側妃とお幸せに! 正妃をやめたら溺愛されました
まるねこ
恋愛
旧題:お飾り妃になってしまいました
第15回アルファポリス恋愛大賞で奨励賞を頂きました⭐︎読者の皆様お読み頂きありがとうございます!
結婚式1月前に突然告白される。相手は男爵令嬢ですか、婚約破棄ですね。分かりました。えっ?違うの?嫌です。お飾り妃なんてなりたくありません。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
6年後に戦地から帰ってきた夫が連れてきたのは妻という女だった
白雲八鈴
恋愛
私はウォルス侯爵家に15歳の時に嫁ぎ婚姻後、直ぐに夫は魔王討伐隊に出兵しました。6年後、戦地から夫が帰って来ました、妻という女を連れて。
もういいですか。私はただ好きな物を作って生きていいですか。この国になんて出ていってやる。
ただ、皆に喜ばれる物を作って生きたいと願う女性がその才能に目を付けられ周りに翻弄されていく。彼女は自由に物を作れる道を歩むことが出来るのでしょうか。
番外編
謎の少女強襲編
彼女が作り出した物は意外な形で人々を苦しめていた事を知り、彼女は再び帝国の地を踏むこととなる。
私が成した事への清算に行きましょう。
炎国への旅路編
望んでいた炎国への旅行に行く事が出来ない日々を送っていたが、色々な人々の手を借りながら炎国のにたどり着くも、そこにも帝国の影が・・・。
え?なんで私に誰も教えてくれなかったの?そこ大事ー!
*本編は完結済みです。
*誤字脱字は程々にあります。
*なろう様にも投稿させていただいております。
【完結】王太子妃の初恋
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
カテリーナは王太子妃。しかし、政略のための結婚でアレクサンドル王太子からは嫌われている。
王太子が側妃を娶ったため、カテリーナはお役御免とばかりに王宮の外れにある森の中の宮殿に追いやられてしまう。
しかし、カテリーナはちょうど良かったと思っていた。婚約者時代からの激務で目が悪くなっていて、これ以上は公務も社交も難しいと考えていたからだ。
そんなカテリーナが湖畔で一人の男に出会い、恋をするまでとその後。
★ざまぁはありません。
全話予約投稿済。
携帯投稿のため誤字脱字多くて申し訳ありません。
報告ありがとうございます。
『別れても好きな人』
設樂理沙
ライト文芸
大好きな夫から好きな女性ができたから別れて欲しいと言われ、離婚した。
夫の想い人はとても美しく、自分など到底敵わないと思ったから。
ほんとうは別れたくなどなかった。
この先もずっと夫と一緒にいたかった……だけど世の中には
どうしようもないことがあるのだ。
自分で選択できないことがある。
悲しいけれど……。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
登場人物紹介
戸田貴理子 40才
戸田正義 44才
青木誠二 28才
嘉島優子 33才
小田聖也 35才
2024.4.11 ―― プロット作成日
💛イラストはAI生成自作画像
【完結】「心に決めた人がいる」と旦那様は言った
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
「俺にはずっと心に決めた人がいる。俺が貴方を愛することはない。貴女はその人を迎え入れることさえ許してくれればそれで良いのです。」
そう言われて愛のない結婚をしたスーザン。
彼女にはかつて愛した人との思い出があった・・・
産業革命後のイギリスをモデルにした架空の国が舞台です。貴族制度など独自の設定があります。
----
初めて書いた小説で初めての投稿で沢山の方に読んでいただき驚いています。
終わり方が納得できない!という方が多かったのでエピローグを追加します。
お読みいただきありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる