眠りの巫女と野良狐

碧野葉菜

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眠りは世界を救う、のでしょうか?

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「まあ、影雪様がお連れなら問題ないでございましょう」

 いろんな姿形の者に慣れているからか、それとも業華という遣い人を知っているからか、あやかしたちは夢穂が人間だとわかっても特に気にする様子はなかった。
 影雪と一緒にいるから、ということも大きなポイントのようだった。

「それはそうと影雪様、この後お時間はございますか? よろしければ新しいお召し物をこしらえようと思うのですが」
「いや、前にもらったばかりだ、今回はやめておく」

 影雪はカッパ童の誘いを、やんわりと断る。
 話の内容からして、呉服屋でもしているのかと思われた。

「またそのような、本当に欲のない方でございますね」
「これを気に入っているだけだ」
 
 影雪は胸元の黒い布を、提示するようにつまみ上げながら言った。
 どうやら影雪は、新しいものよりも気に入ったものを長く使いたいようだ。
 夢穂がそんなやり取りをなんとなく眺めていると、ふと影雪が何かに気づいたような顔をした。

「そうだ、俺はいいから、夢穂のをこしらえてやってくれないか」

 夢穂は目を丸くして影雪を凝視した。
 今度は何を言い出すのかと驚いた。
 しかしカッパ童は、それは名案だ、とでも言わんばかりににこりと笑った。

「夢穂殿、と申されるのですね」
「あ、は、はい」

 ぐるりと顔を向けられ、夢穂は背筋を伸ばした。

「もちろんでございますよ、さすが影雪様のお連れの方だけあってとても可憐でございますので、お召し物も変えられたらさらにお美しくなられますよ」
「えっ、ええ、でも」
「どうぞどうぞ、私の店はすぐそこでございますので」

 カッパ童は夢穂の話を聞こうともせず、さっさと歩き出してしまう。
 影雪もそれについて行くので、夢穂は結局断りきれずに誘いに乗る形になった。

 確かに、その店はすぐ近くにあった。
 数秒歩くと見えてくる、奇うさぎの八百屋の二軒先にある家屋。カッパ童はその前に立ち止まると、茶色い木造の引き戸を開けた。
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