眠りの巫女と野良狐

碧野葉菜

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あやかしの世界に行ってみましょう。

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 夢穂と影雪が鳥居をくぐり、水色の波紋の中に消えていった後、寺院に戻った業華は観音の仏像の前に鎮座していた。

「あんなことを言い出したのは初めてですね、過去とは違う出来事に、明るい変化を期待してもよいのでしょうか」

 独り言をこぼしながら、何か受け取る時のように右手を差し出す。
 するとその手のひらから火の玉のようなものが浮かび上がった。

「さてと……ではこちらで、少し様子を見守らせていただくとしましょうか」

 魂のように揺らめく炎。
 その中央には、あちら側に移動した夢穂と影雪の姿が映っていた。

 業華はその灼熱を、読み取ることのできない無に近い表情で眺めていた。
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