4 / 175
はじめまして、野良狐です。
3
しおりを挟む
そしてしゃもじを放り出すと、大股開きで部屋に入り、人か獣かわからないものに近づいた。
「おお、やはり影雪ではありませんか! なぜここに……おやおや?」
僧侶は影雪と呼んだ彼の顔を両手のひらでがちりと掴み、遠慮なしにその左頬を凝視した。
黒水晶のように神秘的な瞳の下、頬に沿って雫のような黒い粒が三つ、続いていた。
「ほほう、雪のような涙のような、風情のある通紋ですねぇ、まさか同時代にもう一人これが現れようとは……吉報か、それとも不吉な予感か……」
影雪の白い頬を大福を潰すかのようにぺたんこにしながら、何やらぶつぶつと独り言を並べる僧侶。
やられている本人は、何を語るでもない目でされるがままになっている。
「お兄ちゃん、知り合いなの?」
蚊帳の外にいるような気分になった夢穂は、納得いかない様子で尋ねた。
すると僧侶はようやく影雪を離すと、夢穂を振り返った。
「ええ、古くからの、ね」
含み笑いをする僧侶に、夢穂は思い当たることがあった。
「もしかして、別世界の……?」
「当然でしょう、こちらの世界にこんなのがいたらみんなびっくりしますよ」
「人……獣?」
「あやかしですよ。人ならざるもの、とはいえ、獣ではありません。ねえ、影雪」
影雪はあぐらをかいたまま、確かめるように僧侶の顔をじっと見ていた。
「……お前、業華か?」
僧侶は一瞬真顔になったのち、にこりと微笑むとこう答えた。
「ええ。三年ほど前に会って以来ですね」
影雪は少し不思議そうに首を傾げた。
「お兄ちゃんが別世界とこの世界を移動できることは聞いてるけど、それ以上のことは知らないからちんぷんかんぷんだわ。詳しく説明してよ」
「そうですね、とりあえずは朝餉にしましょうか。せっかくの白米が冷めてしまいますので」
「おお、やはり影雪ではありませんか! なぜここに……おやおや?」
僧侶は影雪と呼んだ彼の顔を両手のひらでがちりと掴み、遠慮なしにその左頬を凝視した。
黒水晶のように神秘的な瞳の下、頬に沿って雫のような黒い粒が三つ、続いていた。
「ほほう、雪のような涙のような、風情のある通紋ですねぇ、まさか同時代にもう一人これが現れようとは……吉報か、それとも不吉な予感か……」
影雪の白い頬を大福を潰すかのようにぺたんこにしながら、何やらぶつぶつと独り言を並べる僧侶。
やられている本人は、何を語るでもない目でされるがままになっている。
「お兄ちゃん、知り合いなの?」
蚊帳の外にいるような気分になった夢穂は、納得いかない様子で尋ねた。
すると僧侶はようやく影雪を離すと、夢穂を振り返った。
「ええ、古くからの、ね」
含み笑いをする僧侶に、夢穂は思い当たることがあった。
「もしかして、別世界の……?」
「当然でしょう、こちらの世界にこんなのがいたらみんなびっくりしますよ」
「人……獣?」
「あやかしですよ。人ならざるもの、とはいえ、獣ではありません。ねえ、影雪」
影雪はあぐらをかいたまま、確かめるように僧侶の顔をじっと見ていた。
「……お前、業華か?」
僧侶は一瞬真顔になったのち、にこりと微笑むとこう答えた。
「ええ。三年ほど前に会って以来ですね」
影雪は少し不思議そうに首を傾げた。
「お兄ちゃんが別世界とこの世界を移動できることは聞いてるけど、それ以上のことは知らないからちんぷんかんぷんだわ。詳しく説明してよ」
「そうですね、とりあえずは朝餉にしましょうか。せっかくの白米が冷めてしまいますので」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2
1 / 2
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる