欲獣討伐

あれゆりは

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序章

第四話 wake up

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薬品の独特の香りで目を覚ました。

見慣れない真っ白な天井。

目をこすりながら体を起こす。

すると、横から聞き馴染んだクルミの声がする。

「ケイジ!目が覚めた!?」

相当心配したのか、目尻には大粒の涙を溜めていた。

「ここ、、、どこ?」

「病院!あんたあの夜どこ行ってたの!?」

今まで見たことも聞いたこともないほど怒っていた。と、いうよりも強く心配しすぎたのだろう。

「俺はどうなってた?」

「家のすぐ近くで血を垂らしながら倒れてたの!」

「血を、、、、、、」

なぜだ、、、?

「っ!」

思い出した。やつだ。ケムリグマに襲われたんだ。

途端に不安になり、全身を見なおす。

右手には包帯が巻いてあるが、足とか体は何の変化もなさそうだ。

その様子を気に掛けたクルミは

「右手、流血してたから消毒して包帯してくれたの。」

そう言った。

包帯には今も血が滲んでいる。

しかし、全体的に滲んでいるのではなく、手の拳の間に3つ点々と血が滲んでいる。

「変な傷だな」

「ん?なんか言った?」

クルミは後ろの花瓶に生けられた花を見ていて俺の言葉に気づかなかった。

「いや、、、何でもない。」

「そう、、、じゃ、私は用事あるから一旦帰らせてもらうね。あなたも大丈夫そうだし。」

「あ、あぁ。」

そう言って立ち上がると扉に向かって歩き出し、目の前で止まった。

「お大事にね。」

ざっと扉を開いて出ていった。

しーんと静まりかえる病室。

再び右手に目線を落とす。

奇妙な形の傷。気にならないはずがない。

左手で包帯の切れ端を探り、ぺりぺりと包帯と医療用テープを剥がす。

そして、ガーゼを外す。

そこには、

「っ!」

拳の間にできている傷から腕の中腹にかけて三つの筋ができている。

「なんだよ、、、これ、、、」

少し気味が悪いが手で触れてみる。

硬い。鉄などの金属ほどではないが、軟骨くらいの硬さがある。

「気持ち悪い、、、」

気分が悪くなってしまい、包帯だけ右手に巻きつける。

「、、、」

布団をかぶって再び眠りについた。



ーーーーー



『速報です。全国各地に大きな地割れが次々と発生している模様です。地割れ付近で中継がつながっております。リポーターの久保田さん、お願いします。』

『はーい!中継変わりました!リポーターの久保田でーす!』

『久保田さん、そちら今どのようになってらっしゃるんでしょうか?』

『こちら現在たくさんの自衛隊の方々が参入してですね、地割れした道路の立て直しを行なっています!』

『被害者はいらっしゃいますか?』

『地割れが起こる際に上にいた方が、割れ目の中に飲み込まれてしまったそうです。そちらの救助活動も並行して行われています!』

『ありがとうございました。続いて別の地域でも中継がつながっており』

そこでテレビの音は途切れた。

「地割れだってよ」

飯島哲也(41)

「変なこともあるのねえ、、、アスファルトの劣化かしら?」

飯島由紀子(40)

「さあな。アスファルトがそんなボロになるとは思えんが」

「あら、菜奈どこか行くの?」

ベージュのパーカーを着た2人の娘である彼女は飯島菜奈。

17歳。

豊満な体に黒髪ショートカット。

身長は高め。

「友梨奈の家行ってくるから。」

「気をつけて行ってこいよ。」

「うん。」

「気をつけてね。」

「わかった。気をつける。」

そう言ってから部屋の戸と玄関を通って外に出る。

すると、家の塀の向こう側に赤黒い液体が飛び散る。

一瞬目を疑う。

夢か?

ほおをつねる。

痛い。

夢ではない。

そう考えると途端に顔が白くなる。

家の中に戻ろうとした。

すると、横から強い衝撃がぶつかる。

その衝撃に身を倒す。

「痛、、、」



「っ!!!!!」



彼女に飛んできたもの。

人だ。

無惨に顔を引き裂かれ、胴体の下はない。

「っ!!!、、、!」

涙目になるのを堪え、力づくでそれを退ける。

ここは危険だ。

家族にその危険を伝えるため、家の扉を開ける。

リビングへの戸を開いて、その場から叫んだ。

「お母さん!お父さん!早くここを出て!」

緊迫したその表情を見て、2人は不思議な顔をした。

「どうしたの?何かあったなら話してごらん?」

「大丈夫か?菜奈。」

「いいから早く!3人とも死んじゃう!」

普段物静かな菜奈がそのように緊迫しているのを見て、両親は不気味ささえも覚えた。

「いったん落ち着きなさい。」

「そうだぞ。何かあったのか?」

「早くして!」

目には涙を溜めている。

「早く!」

より大きく叫ぶようにして2人に警告する。

次の瞬間、

目の前が更地になった。

「っ!!!!!」

机の上のティッシュ、食器棚の食器、毎晩見たテレビ。

座って話し合ったソファ、季節ごとに変えた絨毯、お父さんの趣味のゴルフバッグ。

大好きなお母さん。大事なお父さん。

全部なくなった。

そこには、柱の欠片や砕けたコンクリートがあるだけだった。

自分の立つ扉の先には何もない。

「え、、、?」

思考が止まる。

何が起きている。

自分の目の前を大きな弾丸が通り過ぎたように隣の家からそのまた隣まで一直線に更地になっている。

「なに、、、これ?」

目にあるはずの輝きが失われる。

道路の方からは悲鳴が聞こえる。

助けを求める声と断末魔。

「あ、、、あは、、、あはははは、、、」

死を覚悟したように、膝から崩れ落ちた。

ガラスの破片が皮膚に刺さる。

「死んじゃうんだ、、、私死んじゃうんだ、、、あははははは!」

声色と表情が一致しないほどに絶望、いや、もはや死ぬことを求めた。

「お母さん、、、お父さん、、、」

全身の力が抜け、死ぬ痛みを想像してまた絶望する。

「今、、、行くから、、、」

目から雫が溢れた。

後ろから声が聞こえる。

「菜奈ちゃん!早く逃げて!」

抜けた力を戻すように声の方を向く。

榊凛。

こちらに駆け寄る少女の名前。

「化け物がすぐそこにいるから!早く!」

「もう、、、いいよ」

「よくない!早く逃げるよ!立って‼︎‼︎」

「お母さんも、、、お父さんも、、、」

「 菜奈ちゃん‼︎  」

その瞬間、榊凛の後ろに、大きな影がこちらを覗く。

化け物。

たった一つのギョロついた目に、人より何倍も大きく角張った体。

大きな鱗を持つ猿のような姿の怪物。

「、、、やっと、死ぬ、、、」

「早く立って!死んじゃだめ‼︎」

化け物が大きな手を伸ばす。

「「、、、っ!!」」

その情景は絶体絶命と表す他ない。
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