虎と桜

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虎と桜

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桜子:『街を歩く
そこには、行列のできた店や、写真映えを気にしたメニュー、外観、雰囲気を纏った店が、そこら中に並んでいる
それを“表”だとする
そんな表から少し外れて“裏”に行く
そこには、映えを気にしない店がある
あるのは、“こだわり”
マスターこだわりの珈琲だったり、こだわりのアンティークだったり
そんな場所は、ゆっくりと時間が流れる
私は、それが好きだ
ゆっくりと流れる時間の中で、私は一人、この時間を
私の世界に閉じ込めるのだ』

ーーーーーーーーー


大通りを外れて裏路地へ入る


桜子:こんにちは


Cafe village と書かれた看板
裏路地にひっそりと佇む店があった。
店の中に入ると、店主から
お好きな席に
と、声がかかる


桜子:あ、また増えてる
マスター、これどこで見つけてくるんだろ?


机に飾ってある小さな人形たち
それを横目にメニューを取る


桜子:すみません、カフェラテ…
えっと、マンデリンで


注文を終え、一息つく
小さな人形たちに少し、目を奪われ
ふと、考えしまう。


桜子:『やっぱりこの時間が私は好きだとそう思う
ゆっくり流れるこの時間がーーだけど』

彪子:遅れましたーー!あっ

桜子:『ゆっくりと流れる時間は終わりを告げた』


【間】



桜子:(うん、やっぱり美味しい)
『カフェラテが届き、一息
カウンターの奥では、さっき入ってきた
女の子が急いで準備を始めていた』

彪子:マスター、珍しいですね
若いお客様ですよ!こんな辺鄙へんぴな場所にねー!

桜子:(聞こえてますけど…まぁ、いいか)
『ゆっくりと流れていたはずの時間は、少しだけ、早くなっていた気がした』

彪子:ねぇ、マスター…

桜子:『女の子はマスターとコソコソと何かを話している
正直、目の前でやられると気になってしまう
そんな気を逸らす為に一口、飾ってある人形で手遊びを始めていたら』

彪子:あのー、お隣いいですか?

桜子:え?あ、えっと

彪子:今、お客様少なくて
マスターに言ったら喋っていいよって

桜子:はぁ…

彪子:あ、迷惑でした?

桜子:『正直、そうだと言いたい
私は、この一人の時間を楽しむために、ここに来ているから
だけど、私の口から出た言葉に、私自身が驚いた』
……いいですよ

彪子:わぁ!やったー!
私、最近ここでバイト始めて
歳が近そうな人が来るのが初めてで

桜子:あぁ、そうなんですか
私も最近なので、ここを知ったのは

彪子:表には行かないんですか?

桜子:え?表?

彪子:あ!えっと、表っていうのは
ほら、こんな辺鄙へんぴなところじゃなくて
今時のお店っていうか
ほら、飲まれてるカフェラテも普通でしょ?もっとラテアートしてるお店とか

桜子:私は、こっちの方が好き
こだわりがあるみたいで
だから、表より裏が好き

彪子:似てますね、私たち

桜子:どこが、ですか?

彪子:裏の方が好きなところとか、その人形とか

桜子:いや、人形は別に…手持ち無沙汰というか…
好きなんですか?こういう店

彪子:好きじゃないとバイトしないですよ!
ちなみに、その右から四番目からは、私が持ってきたやつです

桜子:なるほど
…表と裏、たしかに私もそう呼んでました

彪子:ちょっと驚いた顔してたんで、なんとなく気付きました

桜子:…よく、見てるんですね

彪子:接客業なので!

桜子:『よく笑うその顔が印象的だった
それが、私と虎との出会い』


【間】


桜子:歳って聞いても大丈夫ですか?

彪子:二十歳ですよ

桜子:あ、同じ

彪子:え!てことは中央ですか!?

桜子:え、は、はい

彪子:わぁ!私、西宮の方!

桜子:あー…あの

彪子:そんな 怪訝けげんな顔しないでくださいよ
評判ほど悪くない大学ですよ!

桜子:あ、ごめんなさい
意外と近くに住んでるんですね

彪子:仲良くなれそうですね!

桜子:いや…それはどうですかね

彪子:はっきり言いますね~

桜子:…私、あまりその
友達とかそういうの慣れてなくて

彪子:だから一人で?

桜子:…半分かな
一人の時間が好きっていうのもあるし

彪子:じゃあ私、本当にお邪魔しちゃった!?

桜子:あ、いや、そういうわけじゃ

彪子:じゃあ、友達になりましょう!

桜子:え!?

彪子:同い年だし、大学も近いし
同じ辺鄙へんぴな場所を…いや!裏を愛する者として!

桜子:いや、愛してはないかも

彪子:えー!そこは愛しましょうよー!
あ!じゃあ、自己紹介しよう!

桜子:…安藤です

彪子:下の名前は?

桜子:えっと…桜子、です

彪子:可愛い名前!

桜子:…似合わないでしょ?

彪子:何が?

桜子:桜子ってもっとこう、可愛い感じの子の名前というか…
例えば、あなたみたいに

彪子:あはは、可愛いって言われた

桜子:私は、そういう可愛さっていうのに疎いし、自分を可愛いとも思わないし

彪子:うーん、確かに可愛いというより
綺麗というか、格好良さもある

桜子:そういうの苦手ってこともあって
髪もずっとショートだし


目を伏せ、髪をいじる
自分の見た目は、自分がよく分かっていると
そう雰囲気を纏わせながら


彪子:私は好きだよ

桜子:っ…、ありがとう

彪子:照れてる、可愛い

桜子:はい!次、次はそっち!

彪子:やっぱり似てる、私たち

桜子:似てる?

彪子:私の名前、虎子っていうの

桜子:虎!?

彪子:あはは、ビックリだよね

桜子:あ、いや似合わないっていうか

彪子:嘘。本当は彪子あやこ、西村彪子
あ、ちょっと待ってね


そう言うと、注文用の紙とペンを取り出し、それに名前を書く彪子


彪子:これ、これで彪子

桜子:あ、虎だ

彪子:見つかちゃった!
話せば長いんだよー、聞く?

桜子:聞いて欲しそうなんだけど?

彪子:私の両親がね、不良なの

桜子:どうリアクションしていいのか困る

彪子:レディースと暴走族だったんだって

桜子:えぇ…じゃあ、あなたも

彪子:彪子でいいよ
私はそんな二人から生まれたけど、全くそっちに興味なくて

桜子:確かに、そんな感じはするけど
虎子って最初の嘘はなんだったの?

彪子:本当は虎子って付けたかったみたい
ただね、虎子って調べると


店内をキョロキョロと見渡し、顔を近づける彪子は、小声で耳打ちする


彪子:お尻の穴って意味があるらしいよ

桜子:そうなの?

彪子:そ、だけど虎をどうしても入れたくて色々調べたら、これになったんだって

桜子:凄い名前だね

彪子:私もね?似合わないと思う
だけど、この名前好きだよ

桜子:そうなの?

彪子:うん、名は体を表すっていうけど、そうじゃなくてもいいと思うし
実際、不良じゃないし
あ!タバコとか興味持ったこともないよ?けど、かっこいいでしょ?虎!

桜子:…かっこいい
私も、似合わないと思うけど、桜は好き、毎年どこかに見に行くから

彪子:両親と?

桜子:ううん、一人で
一人の時間が好きだから

彪子:次は、一緒に行く?

桜子:え?

彪子:まだ春は先だけど、予約

桜子:…考えとく

彪子:楽しみだね

桜子:行くとは言ってないけど

彪子:ふふ、行ってくれる気がしてる

桜子:考えとく

彪子:それとね、彪子って嫌いじゃないけど、両親が付けたかった本当の名前
実はちょっと気に入ってる
私はよく友達に、顔が天然っぽいって言われる

桜子:なんか、ちょっとわかる気がするけど

彪子:可愛いっていうことだなって、良いように解釈してるけどね!
けど、かっこよくなってみたい
桜子みたいな、クールで大人な

桜子:…そんなもんじゃないよ
ただ、人と話すのが苦手なだけ

彪子:虎のスカジャンかっこいいし

桜子:こ、これは、たまたま!
確かにそういう趣味はあるけどさ…

彪子:人って、自分に無いものに憧れるんだって
鼻が低い人は、高い人を好きになりがちとか、身長が低い子は、高い人を求めたり
だから、私は少しでもかっこよくなってみたくて、虎子って言ってみた

桜子:十分…

彪子:ん?

桜子:私は、十分かっこいいと思う
だから、虎って呼ぶ

彪子:……是非!


桜子:『その時の虎の顔は満開の桜の様だった』



【間】


数日後、Cafe villageへ向かう

桜子:こんにちは

店主からお好きな席に
と声がかかる

桜子:あ、また増えてる

彪子:いらっしゃいませー、桜

桜子:また増やしたの?これ

彪子:良いガチャ見つけてねー!
あ、待ってて!注文取ってくる!

桜子:(へぇ、珍しい……若いお客さんが来てる)

彪子:マスター、注文でーす
カフェモカとアイスコーヒー二つ
それと、モンブランとプリン、チキンサンドーー


手際よく注文を伝える彪子
慣れているのがよく分かる

桜子:ちゃんと仕事してるんだなぁ

彪子:え?何か言った?

桜子:ううん、虎が真面目に働いてるとこ、珍しいなって

彪子:普段、人少ないからねー
桜も、いっぱい頼んで良いんだよ~

桜子:いつもので

彪子:はーい

桜子:うわっ、これ光るんだ

彪子:いいでしょー!新しい子

桜子:こういうの好きなところは、虎って感じはしないね

彪子:虎だって可愛いの好きかもしれないじゃん

桜子:それじゃ、言ってたこと変わってくるんだけど?

彪子:それはそれ、これはこれ

桜子:虎のそういうところは見習いたいわ

彪子:ねぇ、クイズしない?

桜子:クイズ?

彪子:珍しい若いお客様が3人来ています
さて、あの3人の関係性は?

桜子:趣味悪くない?それ

彪子:まぁまぁ、カフェラテ来るまでの暇つぶしだと思って

桜子:……男2人に女の子が1人
座り位置からして、カップル…いや、友達?
…男2人は同い年くらいかな
けど、女の子は若そうな気がするけど
……うん、じゃあカップルとその友達

彪子:ぶっぶー!残念!
あの二人は兄妹、それで一人で座ってる方が、兄の友達かな!

桜子:なんで?

彪子:顔似てるし、距離がカップルの距離じゃない
あれは家族って感じがする
けど仲良い方だね、ちょっと近い

桜子:……なんで分かるの?

彪子:接客業だから!

桜子:嘘

彪子:あはは、すぐ言うー!
注文聞いた時に、分かっちゃった
けど、あの二人知ってる

桜子:え?そうなの?

彪子:うん、同じ大学の先輩
向こうは全然知らないだろうけどね

桜子:じゃあ、なんで虎は知ってるの?

彪子:結構有名なんだよー
めっちゃモテる

桜子:…確かに顔は整ってるけど

彪子:それでね、そんなにモテるのに、本人は人類皆友達~って思ってる人だから
余計、色々言われてて

桜子:あー…、時々いるよねそういう人

彪子:ま、ちょっとした有名人

桜子:ふーん…

彪子:あ、できたみたい


カフェラテが届く
やはり、そこにはラテアートはなく
シンプルなものだった


彪子:はい、おまたせ

桜子:ありがと

彪子:桜は夏、何するの?

桜子:えっ?決めてないけど

彪子:あの3人は夏フェスに行くんだって

桜子:へぇ…

彪子:……

桜子:……行く?

彪子:え!?何!?何!?

桜子:……、どこか行く?

彪子:行く!

桜子:っ…、絶対言わせた

彪子:さぁ、何のことでしょう?

桜子:その時、虎の奢りね

彪子:お昼くらいだったら任せてよ!

桜子:も~…、全然ダメージ受けないじゃん…

彪子:楽しみだね、桜

桜子:『虎の満開の笑顔が咲く度に、私の世界に色が付いていく』



【間】


季節は変わり、夏
Cafe villageへ

桜子:こんにちは

彪子:あ!きたきた~

桜子:はい、これ

彪子:おぉー!できた!?海に行った時の!

桜子:うん、けど久しぶりに見たなぁ
インスタントカメラっていつぶりだろ

彪子:私は小学校の頃は撮ってたよ

桜子:よく覚えてるね

彪子:あー!凄い綺麗!

桜子:へぇ、結構よく撮れてるね

彪子:ね、良い感じだね
あ、これ…

桜子:ん?…あ!ちょ!それ!

彪子:あはは!めっちゃかっこいい!

桜子:アンタが隠し撮りしたやつでしょ!それは返して!

彪子:黄昏てるなぁー

桜子:いいから!

彪子:だめー!これは飾る!

桜子:いや!飾らなくていいから!

彪子:はい、ご注文どうぞー

桜子:はぁ…本当にもう


【間】



数日後、Cafe villageにて

桜子:それで、それは何かな?虎

彪子:ふふーん、いいでしょー!

桜子:飾るって自分の部屋じゃなかったの?

彪子:そんな事、言ったかな?

桜子:アンタのそういうと、本当…もう

彪子:いいでしょ?別にお客様から見えないし、マスターも良いって言ったし

桜子:ちょっと!マスター!なんで!?

彪子:それに、ほら!これと、これと…あとこれ
マスター写ってるし、私と桜とマスターの思い出コルクボード

桜子:本当調子いいんだから
…けど、写真増えたね

彪子:なんだかんだ遊んだね、私たち

桜子:…そうだね

彪子:これからも写真増やさないと

桜子:…虎のそういうとこ
私は好きだ……よ


桜子の言葉を待たず、カメラのシャッター音が聞こえる
そこには、シャッターを押す彪子


桜子:何してんの?

彪子:桜が好きって言ってくれた記念

桜子:言ってないし

彪子:言った

桜子:嫌いじゃないって言ったの
それ何?

彪子:ううん、言った
チェキ、買ったんだ~

桜子:写真は返して

彪子:やだ、貴重な一枚、これも飾るー!
あ、映ってきた!
おぉー!いい感じ!


段々と映り出す写真を得意気に見せる


桜子:…まぁ、確かに

彪子:……でしょ?



【間】



季節は変わり、秋
Cafe villageへ向かう

桜子:こんにちは

彪子:お、きたきた!待ってたよ

桜子:え?

彪子:いつもの、だよね?

桜子:う、うん
じゃあ、それで

彪子:待ってて!

桜子:?


【間】


彪子:おまたせ!

桜子:ありがと…え?何これ?

彪子:ど、どう?

桜子:…可愛い

彪子:よかったー…


カフェラテが届く
そこには今までのシンプルなものではなかった

桜子:ラテアートかぁ
写真ではよく見てたけど、本物初めて見たかも

彪子:そうなの?あ、そっか裏だもんね

桜子:ふふっ、そう、裏だから

彪子:そんな裏に表を持ってきてみました

桜子:なるほどね…


ふと、カウンターの奥に目をやると
そこにコーヒーカップの残骸を見つける
彪子の努力が窺える


桜子:……うん、じゃあ評価します

彪子:え!?あ、はい!

桜子:初めてにしては上出来
けど、まだまだ改善の余地あり
って感じかな

彪子:そこは精進しまーす

桜子:けど、私は好きだ……


また桜子の言葉を待たず、チェキのシャッター音が鳴る
やはり、そこにはシャッターを押す彪子の姿


桜子:よ……何してるの?

彪子:桜の好きだよ記念

桜子:虎、アンタまた…
貸して!

彪子:うわぁ!何ー!

桜子:はい、撮るよ

彪子:え?何で!?

桜子:虎ばっかり撮るから、私の写真が増えるでしょ
それに…はいチーズ

彪子:?

桜子:……はい、はじめてのラテアート記念

彪子:あっ

桜子:どう?

彪子:…へへっ、いい感じ



【間】




季節は変わり、冬
Cafe villageでの二人の会話が聞こえる


彪子:決めた

桜子:急にどうしたの?

彪子:私、チャレンジする

桜子:うん?チャレンジ?

彪子:ねぇ、桜
その服、どこで買うの?

桜子:服?あぁ…これ?

彪子:初めて会った時も着てたよね
虎のスカジャン

桜子:そういえば、そうだったかな?

彪子:私、そういうの着たことない
けど、ずっと気になってた
桜が着てるの見て、ずっと

桜子:……よし、わかった
バイト終わるまで待ってるから、買いに行こう、虎

彪子:うん!



【間】



彪子:お待たせ!

桜子:じゃあ、行こう

彪子:どこ?大通り出る感じ?

桜子:確かにそっちにもあるけど、私も思い出したことがあって

彪子:?何を?

桜子:裏を愛する者同士
表じゃなくて、裏で買おう

彪子:……
あれれ~?愛しては、ないんじゃなかった?

桜子:……
ううん、愛してる、今は言える

彪子:心境の変化ですかー
ま、私はなんとなくわかってたけどね!
初めて会った時から愛してる者同士って

桜子:なんでわかったの?

彪子:接客業だから!

桜子:ははっ、言うと思った
よし、改めて言うと恥ずかしいから終わり!

彪子:はいはい、終わりね


【間】


大通りではなく、裏路地に
さらに階段を降りて、地下へ
そんな場所に桜子が行く服屋があった


桜子:ここだよ

彪子:うわぁー…桜って感じの店

桜子:なにそれ
…まぁ、確かにストリート系ばっかりだけどさ

彪子:こういうの初めてだから新鮮

桜子:虎、スカジャンこっち

彪子:え!?こんな種類あるの?

桜子:まぁね、これはほら、アニメのキャラクターのやつ
こっちは…結構男っぽいやつ
あとは……

彪子:あ

桜子:?どうした?

彪子:私、これがいい

桜子:……これ?

彪子:うん!

桜子:じゃあ、それにしよう


決めた服をレジへ持って行く

彪子:あ!えっと着て帰ります!

桜子:え?マジ?

彪子:よいしょっ…と
あははー、今の服には似合わないかな?

桜子:ううん、大丈夫
かっこいいよ、虎

彪子:そう?かっこいい?

桜子:うん

彪子:あ、そだ
写真撮ってもらっていいですか?

桜子:撮るの?

彪子:記念でしょ?スカジャンデビュー!

桜子:あはは、そうだね


店員に写真を撮ってもらう二人


彪子:おおー!なんかエモい!

桜子:なるほど、これがエモいか
……私が虎で、虎が桜のスカジャンか

彪子:双子コーデってやつ?
それとも、お互いの名前を交換した…
うーん、名刺交換コーデとか!

桜子:ぷっ、何そのネーミング!

彪子:あはは!いいじゃん!


笑い合う二人


桜子:…うん、エモい

彪子:ありがとう、桜

桜子:うん、また行こう

彪子:……うん!桜!





桜子:『街を歩く
そこには、行列のできた店や
写真映えを気にしたメニュー、外観、雰囲気を纏った店が、そこら中に並んでいる
それを“表”だとする
そんな表から少し外れて“裏”に行く
そこには、映えを気にしない店がある
あるのは、“こだわり”
マスターこだわりの珈琲だったり
こだわりのアンティークだったり
そんな場所は、ゆっくりと時間が流れる
私は、それが好きだ
だから、私はこの店に行く』



まだ冬の香りが残る中、春へと移り変わろうとしている、そんな日に
Cafe villageへ向かう



桜子:こんちは

彪子:あ!いらっしゃいませ!


桜子:『だけど、最近私の目的は変わった
私は、彼女に会いに行く
この気持ちは友情が、恋か
そんなものは、どうでもいい
ただーー』


彪子:いつもの?

桜子:…ううん、今日はブラック、アイスで

彪子:意外!何で?

桜子:うーん…まぁ、チャレンジってやつ?

彪子:あはは!わかった、ブラックね


桜子:『ただ、ゆっくりと流れる時間の中に少しだけ
写真映えのような彩ができたのだ』


桜子:……ねぇ、虎

彪子:んー?何ー?

桜子:明日




桜子:桜、見に行かない?


虎と桜  終












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