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虎と桜
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桜子:『街を歩く
そこには、行列のできた店や、写真映えを気にしたメニュー、外観、雰囲気を纏った店が、そこら中に並んでいる
それを“表”だとする
そんな表から少し外れて“裏”に行く
そこには、映えを気にしない店がある
あるのは、“こだわり”
マスターこだわりの珈琲だったり、こだわりのアンティークだったり
そんな場所は、ゆっくりと時間が流れる
私は、それが好きだ
ゆっくりと流れる時間の中で、私は一人、この時間を
私の世界に閉じ込めるのだ』
ーーーーーーーーー
大通りを外れて裏路地へ入る
桜子:こんにちは
Cafe village と書かれた看板
裏路地にひっそりと佇む店があった。
店の中に入ると、店主から
お好きな席に
と、声がかかる
桜子:あ、また増えてる
マスター、これどこで見つけてくるんだろ?
机に飾ってある小さな人形たち
それを横目にメニューを取る
桜子:すみません、カフェラテ…
えっと、マンデリンで
注文を終え、一息つく
小さな人形たちに少し、目を奪われ
ふと、考えしまう。
桜子:『やっぱりこの時間が私は好きだとそう思う
ゆっくり流れるこの時間がーーだけど』
彪子:遅れましたーー!あっ
桜子:『ゆっくりと流れる時間は終わりを告げた』
【間】
桜子:(うん、やっぱり美味しい)
『カフェラテが届き、一息
カウンターの奥では、さっき入ってきた
女の子が急いで準備を始めていた』
彪子:マスター、珍しいですね
若いお客様ですよ!こんな辺鄙な場所にねー!
桜子:(聞こえてますけど…まぁ、いいか)
『ゆっくりと流れていたはずの時間は、少しだけ、早くなっていた気がした』
彪子:ねぇ、マスター…
桜子:『女の子はマスターとコソコソと何かを話している
正直、目の前でやられると気になってしまう
そんな気を逸らす為に一口、飾ってある人形で手遊びを始めていたら』
彪子:あのー、お隣いいですか?
桜子:え?あ、えっと
彪子:今、お客様少なくて
マスターに言ったら喋っていいよって
桜子:はぁ…
彪子:あ、迷惑でした?
桜子:『正直、そうだと言いたい
私は、この一人の時間を楽しむために、ここに来ているから
だけど、私の口から出た言葉に、私自身が驚いた』
……いいですよ
彪子:わぁ!やったー!
私、最近ここでバイト始めて
歳が近そうな人が来るのが初めてで
桜子:あぁ、そうなんですか
私も最近なので、ここを知ったのは
彪子:表には行かないんですか?
桜子:え?表?
彪子:あ!えっと、表っていうのは
ほら、こんな辺鄙なところじゃなくて
今時のお店っていうか
ほら、飲まれてるカフェラテも普通でしょ?もっとラテアートしてるお店とか
桜子:私は、こっちの方が好き
こだわりがあるみたいで
だから、表より裏が好き
彪子:似てますね、私たち
桜子:どこが、ですか?
彪子:裏の方が好きなところとか、その人形とか
桜子:いや、人形は別に…手持ち無沙汰というか…
好きなんですか?こういう店
彪子:好きじゃないとバイトしないですよ!
ちなみに、その右から四番目からは、私が持ってきたやつです
桜子:なるほど
…表と裏、たしかに私もそう呼んでました
彪子:ちょっと驚いた顔してたんで、なんとなく気付きました
桜子:…よく、見てるんですね
彪子:接客業なので!
桜子:『よく笑うその顔が印象的だった
それが、私と虎との出会い』
【間】
桜子:歳って聞いても大丈夫ですか?
彪子:二十歳ですよ
桜子:あ、同じ
彪子:え!てことは中央ですか!?
桜子:え、は、はい
彪子:わぁ!私、西宮の方!
桜子:あー…あの
彪子:そんな 怪訝な顔しないでくださいよ
評判ほど悪くない大学ですよ!
桜子:あ、ごめんなさい
意外と近くに住んでるんですね
彪子:仲良くなれそうですね!
桜子:いや…それはどうですかね
彪子:はっきり言いますね~
桜子:…私、あまりその
友達とかそういうの慣れてなくて
彪子:だから一人で?
桜子:…半分かな
一人の時間が好きっていうのもあるし
彪子:じゃあ私、本当にお邪魔しちゃった!?
桜子:あ、いや、そういうわけじゃ
彪子:じゃあ、友達になりましょう!
桜子:え!?
彪子:同い年だし、大学も近いし
同じ辺鄙な場所を…いや!裏を愛する者として!
桜子:いや、愛してはないかも
彪子:えー!そこは愛しましょうよー!
あ!じゃあ、自己紹介しよう!
桜子:…安藤です
彪子:下の名前は?
桜子:えっと…桜子、です
彪子:可愛い名前!
桜子:…似合わないでしょ?
彪子:何が?
桜子:桜子ってもっとこう、可愛い感じの子の名前というか…
例えば、あなたみたいに
彪子:あはは、可愛いって言われた
桜子:私は、そういう可愛さっていうのに疎いし、自分を可愛いとも思わないし
彪子:うーん、確かに可愛いというより
綺麗というか、格好良さもある
桜子:そういうの苦手ってこともあって
髪もずっとショートだし
目を伏せ、髪をいじる
自分の見た目は、自分がよく分かっていると
そう雰囲気を纏わせながら
彪子:私は好きだよ
桜子:っ…、ありがとう
彪子:照れてる、可愛い
桜子:はい!次、次はそっち!
彪子:やっぱり似てる、私たち
桜子:似てる?
彪子:私の名前、虎子っていうの
桜子:虎!?
彪子:あはは、ビックリだよね
桜子:あ、いや似合わないっていうか
彪子:嘘。本当は彪子、西村彪子
あ、ちょっと待ってね
そう言うと、注文用の紙とペンを取り出し、それに名前を書く彪子
彪子:これ、これで彪子
桜子:あ、虎だ
彪子:見つかちゃった!
話せば長いんだよー、聞く?
桜子:聞いて欲しそうなんだけど?
彪子:私の両親がね、不良なの
桜子:どうリアクションしていいのか困る
彪子:レディースと暴走族だったんだって
桜子:えぇ…じゃあ、あなたも
彪子:彪子でいいよ
私はそんな二人から生まれたけど、全くそっちに興味なくて
桜子:確かに、そんな感じはするけど
虎子って最初の嘘はなんだったの?
彪子:本当は虎子って付けたかったみたい
ただね、虎子って調べると
店内をキョロキョロと見渡し、顔を近づける彪子は、小声で耳打ちする
彪子:お尻の穴って意味があるらしいよ
桜子:そうなの?
彪子:そ、だけど虎をどうしても入れたくて色々調べたら、これになったんだって
桜子:凄い名前だね
彪子:私もね?似合わないと思う
だけど、この名前好きだよ
桜子:そうなの?
彪子:うん、名は体を表すっていうけど、そうじゃなくてもいいと思うし
実際、不良じゃないし
あ!タバコとか興味持ったこともないよ?けど、かっこいいでしょ?虎!
桜子:…かっこいい
私も、似合わないと思うけど、桜は好き、毎年どこかに見に行くから
彪子:両親と?
桜子:ううん、一人で
一人の時間が好きだから
彪子:次は、一緒に行く?
桜子:え?
彪子:まだ春は先だけど、予約
桜子:…考えとく
彪子:楽しみだね
桜子:行くとは言ってないけど
彪子:ふふ、行ってくれる気がしてる
桜子:考えとく
彪子:それとね、彪子って嫌いじゃないけど、両親が付けたかった本当の名前
実はちょっと気に入ってる
私はよく友達に、顔が天然っぽいって言われる
桜子:なんか、ちょっとわかる気がするけど
彪子:可愛いっていうことだなって、良いように解釈してるけどね!
けど、かっこよくなってみたい
桜子みたいな、クールで大人な
桜子:…そんなもんじゃないよ
ただ、人と話すのが苦手なだけ
彪子:虎のスカジャンかっこいいし
桜子:こ、これは、たまたま!
確かにそういう趣味はあるけどさ…
彪子:人って、自分に無いものに憧れるんだって
鼻が低い人は、高い人を好きになりがちとか、身長が低い子は、高い人を求めたり
だから、私は少しでもかっこよくなってみたくて、虎子って言ってみた
桜子:十分…
彪子:ん?
桜子:私は、十分かっこいいと思う
だから、虎って呼ぶ
彪子:……是非!
桜子:『その時の虎の顔は満開の桜の様だった』
【間】
数日後、Cafe villageへ向かう
桜子:こんにちは
店主からお好きな席に
と声がかかる
桜子:あ、また増えてる
彪子:いらっしゃいませー、桜
桜子:また増やしたの?これ
彪子:良いガチャ見つけてねー!
あ、待ってて!注文取ってくる!
桜子:(へぇ、珍しい……若いお客さんが来てる)
彪子:マスター、注文でーす
カフェモカとアイスコーヒー二つ
それと、モンブランとプリン、チキンサンドーー
手際よく注文を伝える彪子
慣れているのがよく分かる
桜子:ちゃんと仕事してるんだなぁ
彪子:え?何か言った?
桜子:ううん、虎が真面目に働いてるとこ、珍しいなって
彪子:普段、人少ないからねー
桜も、いっぱい頼んで良いんだよ~
桜子:いつもので
彪子:はーい
桜子:うわっ、これ光るんだ
彪子:いいでしょー!新しい子
桜子:こういうの好きなところは、虎って感じはしないね
彪子:虎だって可愛いの好きかもしれないじゃん
桜子:それじゃ、言ってたこと変わってくるんだけど?
彪子:それはそれ、これはこれ
桜子:虎のそういうところは見習いたいわ
彪子:ねぇ、クイズしない?
桜子:クイズ?
彪子:珍しい若いお客様が3人来ています
さて、あの3人の関係性は?
桜子:趣味悪くない?それ
彪子:まぁまぁ、カフェラテ来るまでの暇つぶしだと思って
桜子:……男2人に女の子が1人
座り位置からして、カップル…いや、友達?
…男2人は同い年くらいかな
けど、女の子は若そうな気がするけど
……うん、じゃあカップルとその友達
彪子:ぶっぶー!残念!
あの二人は兄妹、それで一人で座ってる方が、兄の友達かな!
桜子:なんで?
彪子:顔似てるし、距離がカップルの距離じゃない
あれは家族って感じがする
けど仲良い方だね、ちょっと近い
桜子:……なんで分かるの?
彪子:接客業だから!
桜子:嘘
彪子:あはは、すぐ言うー!
注文聞いた時に、分かっちゃった
けど、あの二人知ってる
桜子:え?そうなの?
彪子:うん、同じ大学の先輩
向こうは全然知らないだろうけどね
桜子:じゃあ、なんで虎は知ってるの?
彪子:結構有名なんだよー
めっちゃモテる
桜子:…確かに顔は整ってるけど
彪子:それでね、そんなにモテるのに、本人は人類皆友達~って思ってる人だから
余計、色々言われてて
桜子:あー…、時々いるよねそういう人
彪子:ま、ちょっとした有名人
桜子:ふーん…
彪子:あ、できたみたい
カフェラテが届く
やはり、そこにはラテアートはなく
シンプルなものだった
彪子:はい、おまたせ
桜子:ありがと
彪子:桜は夏、何するの?
桜子:えっ?決めてないけど
彪子:あの3人は夏フェスに行くんだって
桜子:へぇ…
彪子:……
桜子:……行く?
彪子:え!?何!?何!?
桜子:……、どこか行く?
彪子:行く!
桜子:っ…、絶対言わせた
彪子:さぁ、何のことでしょう?
桜子:その時、虎の奢りね
彪子:お昼くらいだったら任せてよ!
桜子:も~…、全然ダメージ受けないじゃん…
彪子:楽しみだね、桜
桜子:『虎の満開の笑顔が咲く度に、私の世界に色が付いていく』
【間】
季節は変わり、夏
Cafe villageへ
桜子:こんにちは
彪子:あ!きたきた~
桜子:はい、これ
彪子:おぉー!できた!?海に行った時の!
桜子:うん、けど久しぶりに見たなぁ
インスタントカメラっていつぶりだろ
彪子:私は小学校の頃は撮ってたよ
桜子:よく覚えてるね
彪子:あー!凄い綺麗!
桜子:へぇ、結構よく撮れてるね
彪子:ね、良い感じだね
あ、これ…
桜子:ん?…あ!ちょ!それ!
彪子:あはは!めっちゃかっこいい!
桜子:アンタが隠し撮りしたやつでしょ!それは返して!
彪子:黄昏てるなぁー
桜子:いいから!
彪子:だめー!これは飾る!
桜子:いや!飾らなくていいから!
彪子:はい、ご注文どうぞー
桜子:はぁ…本当にもう
【間】
数日後、Cafe villageにて
桜子:それで、それは何かな?虎
彪子:ふふーん、いいでしょー!
桜子:飾るって自分の部屋じゃなかったの?
彪子:そんな事、言ったかな?
桜子:アンタのそういうと、本当…もう
彪子:いいでしょ?別にお客様から見えないし、マスターも良いって言ったし
桜子:ちょっと!マスター!なんで!?
彪子:それに、ほら!これと、これと…あとこれ
マスター写ってるし、私と桜とマスターの思い出コルクボード
桜子:本当調子いいんだから
…けど、写真増えたね
彪子:なんだかんだ遊んだね、私たち
桜子:…そうだね
彪子:これからも写真増やさないと
桜子:…虎のそういうとこ
私は好きだ……よ
桜子の言葉を待たず、カメラのシャッター音が聞こえる
そこには、シャッターを押す彪子
桜子:何してんの?
彪子:桜が好きって言ってくれた記念
桜子:言ってないし
彪子:言った
桜子:嫌いじゃないって言ったの
それ何?
彪子:ううん、言った
チェキ、買ったんだ~
桜子:写真は返して
彪子:やだ、貴重な一枚、これも飾るー!
あ、映ってきた!
おぉー!いい感じ!
段々と映り出す写真を得意気に見せる
桜子:…まぁ、確かに
彪子:……でしょ?
【間】
季節は変わり、秋
Cafe villageへ向かう
桜子:こんにちは
彪子:お、きたきた!待ってたよ
桜子:え?
彪子:いつもの、だよね?
桜子:う、うん
じゃあ、それで
彪子:待ってて!
桜子:?
【間】
彪子:おまたせ!
桜子:ありがと…え?何これ?
彪子:ど、どう?
桜子:…可愛い
彪子:よかったー…
カフェラテが届く
そこには今までのシンプルなものではなかった
桜子:ラテアートかぁ
写真ではよく見てたけど、本物初めて見たかも
彪子:そうなの?あ、そっか裏だもんね
桜子:ふふっ、そう、裏だから
彪子:そんな裏に表を持ってきてみました
桜子:なるほどね…
ふと、カウンターの奥に目をやると
そこにコーヒーカップの残骸を見つける
彪子の努力が窺える
桜子:……うん、じゃあ評価します
彪子:え!?あ、はい!
桜子:初めてにしては上出来
けど、まだまだ改善の余地あり
って感じかな
彪子:そこは精進しまーす
桜子:けど、私は好きだ……
また桜子の言葉を待たず、チェキのシャッター音が鳴る
やはり、そこにはシャッターを押す彪子の姿
桜子:よ……何してるの?
彪子:桜の好きだよ記念
桜子:虎、アンタまた…
貸して!
彪子:うわぁ!何ー!
桜子:はい、撮るよ
彪子:え?何で!?
桜子:虎ばっかり撮るから、私の写真が増えるでしょ
それに…はいチーズ
彪子:?
桜子:……はい、はじめてのラテアート記念
彪子:あっ
桜子:どう?
彪子:…へへっ、いい感じ
【間】
季節は変わり、冬
Cafe villageでの二人の会話が聞こえる
彪子:決めた
桜子:急にどうしたの?
彪子:私、チャレンジする
桜子:うん?チャレンジ?
彪子:ねぇ、桜
その服、どこで買うの?
桜子:服?あぁ…これ?
彪子:初めて会った時も着てたよね
虎のスカジャン
桜子:そういえば、そうだったかな?
彪子:私、そういうの着たことない
けど、ずっと気になってた
桜が着てるの見て、ずっと
桜子:……よし、わかった
バイト終わるまで待ってるから、買いに行こう、虎
彪子:うん!
【間】
彪子:お待たせ!
桜子:じゃあ、行こう
彪子:どこ?大通り出る感じ?
桜子:確かにそっちにもあるけど、私も思い出したことがあって
彪子:?何を?
桜子:裏を愛する者同士
表じゃなくて、裏で買おう
彪子:……
あれれ~?愛しては、ないんじゃなかった?
桜子:……
ううん、愛してる、今は言える
彪子:心境の変化ですかー
ま、私はなんとなくわかってたけどね!
初めて会った時から愛してる者同士って
桜子:なんでわかったの?
彪子:接客業だから!
桜子:ははっ、言うと思った
よし、改めて言うと恥ずかしいから終わり!
彪子:はいはい、終わりね
【間】
大通りではなく、裏路地に
さらに階段を降りて、地下へ
そんな場所に桜子が行く服屋があった
桜子:ここだよ
彪子:うわぁー…桜って感じの店
桜子:なにそれ
…まぁ、確かにストリート系ばっかりだけどさ
彪子:こういうの初めてだから新鮮
桜子:虎、スカジャンこっち
彪子:え!?こんな種類あるの?
桜子:まぁね、これはほら、アニメのキャラクターのやつ
こっちは…結構男っぽいやつ
あとは……
彪子:あ
桜子:?どうした?
彪子:私、これがいい
桜子:……これ?
彪子:うん!
桜子:じゃあ、それにしよう
決めた服をレジへ持って行く
彪子:あ!えっと着て帰ります!
桜子:え?マジ?
彪子:よいしょっ…と
あははー、今の服には似合わないかな?
桜子:ううん、大丈夫
かっこいいよ、虎
彪子:そう?かっこいい?
桜子:うん
彪子:あ、そだ
写真撮ってもらっていいですか?
桜子:撮るの?
彪子:記念でしょ?スカジャンデビュー!
桜子:あはは、そうだね
店員に写真を撮ってもらう二人
彪子:おおー!なんかエモい!
桜子:なるほど、これがエモいか
……私が虎で、虎が桜のスカジャンか
彪子:双子コーデってやつ?
それとも、お互いの名前を交換した…
うーん、名刺交換コーデとか!
桜子:ぷっ、何そのネーミング!
彪子:あはは!いいじゃん!
笑い合う二人
桜子:…うん、エモい
彪子:ありがとう、桜
桜子:うん、また行こう
彪子:……うん!桜!
桜子:『街を歩く
そこには、行列のできた店や
写真映えを気にしたメニュー、外観、雰囲気を纏った店が、そこら中に並んでいる
それを“表”だとする
そんな表から少し外れて“裏”に行く
そこには、映えを気にしない店がある
あるのは、“こだわり”
マスターこだわりの珈琲だったり
こだわりのアンティークだったり
そんな場所は、ゆっくりと時間が流れる
私は、それが好きだ
だから、私はこの店に行く』
まだ冬の香りが残る中、春へと移り変わろうとしている、そんな日に
Cafe villageへ向かう
桜子:こんちは
彪子:あ!いらっしゃいませ!
桜子:『だけど、最近私の目的は変わった
私は、彼女に会いに行く
この気持ちは友情が、恋か
そんなものは、どうでもいい
ただーー』
彪子:いつもの?
桜子:…ううん、今日はブラック、アイスで
彪子:意外!何で?
桜子:うーん…まぁ、チャレンジってやつ?
彪子:あはは!わかった、ブラックね
桜子:『ただ、ゆっくりと流れる時間の中に少しだけ
写真映えのような彩ができたのだ』
桜子:……ねぇ、虎
彪子:んー?何ー?
桜子:明日
桜子:桜、見に行かない?
虎と桜 終
そこには、行列のできた店や、写真映えを気にしたメニュー、外観、雰囲気を纏った店が、そこら中に並んでいる
それを“表”だとする
そんな表から少し外れて“裏”に行く
そこには、映えを気にしない店がある
あるのは、“こだわり”
マスターこだわりの珈琲だったり、こだわりのアンティークだったり
そんな場所は、ゆっくりと時間が流れる
私は、それが好きだ
ゆっくりと流れる時間の中で、私は一人、この時間を
私の世界に閉じ込めるのだ』
ーーーーーーーーー
大通りを外れて裏路地へ入る
桜子:こんにちは
Cafe village と書かれた看板
裏路地にひっそりと佇む店があった。
店の中に入ると、店主から
お好きな席に
と、声がかかる
桜子:あ、また増えてる
マスター、これどこで見つけてくるんだろ?
机に飾ってある小さな人形たち
それを横目にメニューを取る
桜子:すみません、カフェラテ…
えっと、マンデリンで
注文を終え、一息つく
小さな人形たちに少し、目を奪われ
ふと、考えしまう。
桜子:『やっぱりこの時間が私は好きだとそう思う
ゆっくり流れるこの時間がーーだけど』
彪子:遅れましたーー!あっ
桜子:『ゆっくりと流れる時間は終わりを告げた』
【間】
桜子:(うん、やっぱり美味しい)
『カフェラテが届き、一息
カウンターの奥では、さっき入ってきた
女の子が急いで準備を始めていた』
彪子:マスター、珍しいですね
若いお客様ですよ!こんな辺鄙な場所にねー!
桜子:(聞こえてますけど…まぁ、いいか)
『ゆっくりと流れていたはずの時間は、少しだけ、早くなっていた気がした』
彪子:ねぇ、マスター…
桜子:『女の子はマスターとコソコソと何かを話している
正直、目の前でやられると気になってしまう
そんな気を逸らす為に一口、飾ってある人形で手遊びを始めていたら』
彪子:あのー、お隣いいですか?
桜子:え?あ、えっと
彪子:今、お客様少なくて
マスターに言ったら喋っていいよって
桜子:はぁ…
彪子:あ、迷惑でした?
桜子:『正直、そうだと言いたい
私は、この一人の時間を楽しむために、ここに来ているから
だけど、私の口から出た言葉に、私自身が驚いた』
……いいですよ
彪子:わぁ!やったー!
私、最近ここでバイト始めて
歳が近そうな人が来るのが初めてで
桜子:あぁ、そうなんですか
私も最近なので、ここを知ったのは
彪子:表には行かないんですか?
桜子:え?表?
彪子:あ!えっと、表っていうのは
ほら、こんな辺鄙なところじゃなくて
今時のお店っていうか
ほら、飲まれてるカフェラテも普通でしょ?もっとラテアートしてるお店とか
桜子:私は、こっちの方が好き
こだわりがあるみたいで
だから、表より裏が好き
彪子:似てますね、私たち
桜子:どこが、ですか?
彪子:裏の方が好きなところとか、その人形とか
桜子:いや、人形は別に…手持ち無沙汰というか…
好きなんですか?こういう店
彪子:好きじゃないとバイトしないですよ!
ちなみに、その右から四番目からは、私が持ってきたやつです
桜子:なるほど
…表と裏、たしかに私もそう呼んでました
彪子:ちょっと驚いた顔してたんで、なんとなく気付きました
桜子:…よく、見てるんですね
彪子:接客業なので!
桜子:『よく笑うその顔が印象的だった
それが、私と虎との出会い』
【間】
桜子:歳って聞いても大丈夫ですか?
彪子:二十歳ですよ
桜子:あ、同じ
彪子:え!てことは中央ですか!?
桜子:え、は、はい
彪子:わぁ!私、西宮の方!
桜子:あー…あの
彪子:そんな 怪訝な顔しないでくださいよ
評判ほど悪くない大学ですよ!
桜子:あ、ごめんなさい
意外と近くに住んでるんですね
彪子:仲良くなれそうですね!
桜子:いや…それはどうですかね
彪子:はっきり言いますね~
桜子:…私、あまりその
友達とかそういうの慣れてなくて
彪子:だから一人で?
桜子:…半分かな
一人の時間が好きっていうのもあるし
彪子:じゃあ私、本当にお邪魔しちゃった!?
桜子:あ、いや、そういうわけじゃ
彪子:じゃあ、友達になりましょう!
桜子:え!?
彪子:同い年だし、大学も近いし
同じ辺鄙な場所を…いや!裏を愛する者として!
桜子:いや、愛してはないかも
彪子:えー!そこは愛しましょうよー!
あ!じゃあ、自己紹介しよう!
桜子:…安藤です
彪子:下の名前は?
桜子:えっと…桜子、です
彪子:可愛い名前!
桜子:…似合わないでしょ?
彪子:何が?
桜子:桜子ってもっとこう、可愛い感じの子の名前というか…
例えば、あなたみたいに
彪子:あはは、可愛いって言われた
桜子:私は、そういう可愛さっていうのに疎いし、自分を可愛いとも思わないし
彪子:うーん、確かに可愛いというより
綺麗というか、格好良さもある
桜子:そういうの苦手ってこともあって
髪もずっとショートだし
目を伏せ、髪をいじる
自分の見た目は、自分がよく分かっていると
そう雰囲気を纏わせながら
彪子:私は好きだよ
桜子:っ…、ありがとう
彪子:照れてる、可愛い
桜子:はい!次、次はそっち!
彪子:やっぱり似てる、私たち
桜子:似てる?
彪子:私の名前、虎子っていうの
桜子:虎!?
彪子:あはは、ビックリだよね
桜子:あ、いや似合わないっていうか
彪子:嘘。本当は彪子、西村彪子
あ、ちょっと待ってね
そう言うと、注文用の紙とペンを取り出し、それに名前を書く彪子
彪子:これ、これで彪子
桜子:あ、虎だ
彪子:見つかちゃった!
話せば長いんだよー、聞く?
桜子:聞いて欲しそうなんだけど?
彪子:私の両親がね、不良なの
桜子:どうリアクションしていいのか困る
彪子:レディースと暴走族だったんだって
桜子:えぇ…じゃあ、あなたも
彪子:彪子でいいよ
私はそんな二人から生まれたけど、全くそっちに興味なくて
桜子:確かに、そんな感じはするけど
虎子って最初の嘘はなんだったの?
彪子:本当は虎子って付けたかったみたい
ただね、虎子って調べると
店内をキョロキョロと見渡し、顔を近づける彪子は、小声で耳打ちする
彪子:お尻の穴って意味があるらしいよ
桜子:そうなの?
彪子:そ、だけど虎をどうしても入れたくて色々調べたら、これになったんだって
桜子:凄い名前だね
彪子:私もね?似合わないと思う
だけど、この名前好きだよ
桜子:そうなの?
彪子:うん、名は体を表すっていうけど、そうじゃなくてもいいと思うし
実際、不良じゃないし
あ!タバコとか興味持ったこともないよ?けど、かっこいいでしょ?虎!
桜子:…かっこいい
私も、似合わないと思うけど、桜は好き、毎年どこかに見に行くから
彪子:両親と?
桜子:ううん、一人で
一人の時間が好きだから
彪子:次は、一緒に行く?
桜子:え?
彪子:まだ春は先だけど、予約
桜子:…考えとく
彪子:楽しみだね
桜子:行くとは言ってないけど
彪子:ふふ、行ってくれる気がしてる
桜子:考えとく
彪子:それとね、彪子って嫌いじゃないけど、両親が付けたかった本当の名前
実はちょっと気に入ってる
私はよく友達に、顔が天然っぽいって言われる
桜子:なんか、ちょっとわかる気がするけど
彪子:可愛いっていうことだなって、良いように解釈してるけどね!
けど、かっこよくなってみたい
桜子みたいな、クールで大人な
桜子:…そんなもんじゃないよ
ただ、人と話すのが苦手なだけ
彪子:虎のスカジャンかっこいいし
桜子:こ、これは、たまたま!
確かにそういう趣味はあるけどさ…
彪子:人って、自分に無いものに憧れるんだって
鼻が低い人は、高い人を好きになりがちとか、身長が低い子は、高い人を求めたり
だから、私は少しでもかっこよくなってみたくて、虎子って言ってみた
桜子:十分…
彪子:ん?
桜子:私は、十分かっこいいと思う
だから、虎って呼ぶ
彪子:……是非!
桜子:『その時の虎の顔は満開の桜の様だった』
【間】
数日後、Cafe villageへ向かう
桜子:こんにちは
店主からお好きな席に
と声がかかる
桜子:あ、また増えてる
彪子:いらっしゃいませー、桜
桜子:また増やしたの?これ
彪子:良いガチャ見つけてねー!
あ、待ってて!注文取ってくる!
桜子:(へぇ、珍しい……若いお客さんが来てる)
彪子:マスター、注文でーす
カフェモカとアイスコーヒー二つ
それと、モンブランとプリン、チキンサンドーー
手際よく注文を伝える彪子
慣れているのがよく分かる
桜子:ちゃんと仕事してるんだなぁ
彪子:え?何か言った?
桜子:ううん、虎が真面目に働いてるとこ、珍しいなって
彪子:普段、人少ないからねー
桜も、いっぱい頼んで良いんだよ~
桜子:いつもので
彪子:はーい
桜子:うわっ、これ光るんだ
彪子:いいでしょー!新しい子
桜子:こういうの好きなところは、虎って感じはしないね
彪子:虎だって可愛いの好きかもしれないじゃん
桜子:それじゃ、言ってたこと変わってくるんだけど?
彪子:それはそれ、これはこれ
桜子:虎のそういうところは見習いたいわ
彪子:ねぇ、クイズしない?
桜子:クイズ?
彪子:珍しい若いお客様が3人来ています
さて、あの3人の関係性は?
桜子:趣味悪くない?それ
彪子:まぁまぁ、カフェラテ来るまでの暇つぶしだと思って
桜子:……男2人に女の子が1人
座り位置からして、カップル…いや、友達?
…男2人は同い年くらいかな
けど、女の子は若そうな気がするけど
……うん、じゃあカップルとその友達
彪子:ぶっぶー!残念!
あの二人は兄妹、それで一人で座ってる方が、兄の友達かな!
桜子:なんで?
彪子:顔似てるし、距離がカップルの距離じゃない
あれは家族って感じがする
けど仲良い方だね、ちょっと近い
桜子:……なんで分かるの?
彪子:接客業だから!
桜子:嘘
彪子:あはは、すぐ言うー!
注文聞いた時に、分かっちゃった
けど、あの二人知ってる
桜子:え?そうなの?
彪子:うん、同じ大学の先輩
向こうは全然知らないだろうけどね
桜子:じゃあ、なんで虎は知ってるの?
彪子:結構有名なんだよー
めっちゃモテる
桜子:…確かに顔は整ってるけど
彪子:それでね、そんなにモテるのに、本人は人類皆友達~って思ってる人だから
余計、色々言われてて
桜子:あー…、時々いるよねそういう人
彪子:ま、ちょっとした有名人
桜子:ふーん…
彪子:あ、できたみたい
カフェラテが届く
やはり、そこにはラテアートはなく
シンプルなものだった
彪子:はい、おまたせ
桜子:ありがと
彪子:桜は夏、何するの?
桜子:えっ?決めてないけど
彪子:あの3人は夏フェスに行くんだって
桜子:へぇ…
彪子:……
桜子:……行く?
彪子:え!?何!?何!?
桜子:……、どこか行く?
彪子:行く!
桜子:っ…、絶対言わせた
彪子:さぁ、何のことでしょう?
桜子:その時、虎の奢りね
彪子:お昼くらいだったら任せてよ!
桜子:も~…、全然ダメージ受けないじゃん…
彪子:楽しみだね、桜
桜子:『虎の満開の笑顔が咲く度に、私の世界に色が付いていく』
【間】
季節は変わり、夏
Cafe villageへ
桜子:こんにちは
彪子:あ!きたきた~
桜子:はい、これ
彪子:おぉー!できた!?海に行った時の!
桜子:うん、けど久しぶりに見たなぁ
インスタントカメラっていつぶりだろ
彪子:私は小学校の頃は撮ってたよ
桜子:よく覚えてるね
彪子:あー!凄い綺麗!
桜子:へぇ、結構よく撮れてるね
彪子:ね、良い感じだね
あ、これ…
桜子:ん?…あ!ちょ!それ!
彪子:あはは!めっちゃかっこいい!
桜子:アンタが隠し撮りしたやつでしょ!それは返して!
彪子:黄昏てるなぁー
桜子:いいから!
彪子:だめー!これは飾る!
桜子:いや!飾らなくていいから!
彪子:はい、ご注文どうぞー
桜子:はぁ…本当にもう
【間】
数日後、Cafe villageにて
桜子:それで、それは何かな?虎
彪子:ふふーん、いいでしょー!
桜子:飾るって自分の部屋じゃなかったの?
彪子:そんな事、言ったかな?
桜子:アンタのそういうと、本当…もう
彪子:いいでしょ?別にお客様から見えないし、マスターも良いって言ったし
桜子:ちょっと!マスター!なんで!?
彪子:それに、ほら!これと、これと…あとこれ
マスター写ってるし、私と桜とマスターの思い出コルクボード
桜子:本当調子いいんだから
…けど、写真増えたね
彪子:なんだかんだ遊んだね、私たち
桜子:…そうだね
彪子:これからも写真増やさないと
桜子:…虎のそういうとこ
私は好きだ……よ
桜子の言葉を待たず、カメラのシャッター音が聞こえる
そこには、シャッターを押す彪子
桜子:何してんの?
彪子:桜が好きって言ってくれた記念
桜子:言ってないし
彪子:言った
桜子:嫌いじゃないって言ったの
それ何?
彪子:ううん、言った
チェキ、買ったんだ~
桜子:写真は返して
彪子:やだ、貴重な一枚、これも飾るー!
あ、映ってきた!
おぉー!いい感じ!
段々と映り出す写真を得意気に見せる
桜子:…まぁ、確かに
彪子:……でしょ?
【間】
季節は変わり、秋
Cafe villageへ向かう
桜子:こんにちは
彪子:お、きたきた!待ってたよ
桜子:え?
彪子:いつもの、だよね?
桜子:う、うん
じゃあ、それで
彪子:待ってて!
桜子:?
【間】
彪子:おまたせ!
桜子:ありがと…え?何これ?
彪子:ど、どう?
桜子:…可愛い
彪子:よかったー…
カフェラテが届く
そこには今までのシンプルなものではなかった
桜子:ラテアートかぁ
写真ではよく見てたけど、本物初めて見たかも
彪子:そうなの?あ、そっか裏だもんね
桜子:ふふっ、そう、裏だから
彪子:そんな裏に表を持ってきてみました
桜子:なるほどね…
ふと、カウンターの奥に目をやると
そこにコーヒーカップの残骸を見つける
彪子の努力が窺える
桜子:……うん、じゃあ評価します
彪子:え!?あ、はい!
桜子:初めてにしては上出来
けど、まだまだ改善の余地あり
って感じかな
彪子:そこは精進しまーす
桜子:けど、私は好きだ……
また桜子の言葉を待たず、チェキのシャッター音が鳴る
やはり、そこにはシャッターを押す彪子の姿
桜子:よ……何してるの?
彪子:桜の好きだよ記念
桜子:虎、アンタまた…
貸して!
彪子:うわぁ!何ー!
桜子:はい、撮るよ
彪子:え?何で!?
桜子:虎ばっかり撮るから、私の写真が増えるでしょ
それに…はいチーズ
彪子:?
桜子:……はい、はじめてのラテアート記念
彪子:あっ
桜子:どう?
彪子:…へへっ、いい感じ
【間】
季節は変わり、冬
Cafe villageでの二人の会話が聞こえる
彪子:決めた
桜子:急にどうしたの?
彪子:私、チャレンジする
桜子:うん?チャレンジ?
彪子:ねぇ、桜
その服、どこで買うの?
桜子:服?あぁ…これ?
彪子:初めて会った時も着てたよね
虎のスカジャン
桜子:そういえば、そうだったかな?
彪子:私、そういうの着たことない
けど、ずっと気になってた
桜が着てるの見て、ずっと
桜子:……よし、わかった
バイト終わるまで待ってるから、買いに行こう、虎
彪子:うん!
【間】
彪子:お待たせ!
桜子:じゃあ、行こう
彪子:どこ?大通り出る感じ?
桜子:確かにそっちにもあるけど、私も思い出したことがあって
彪子:?何を?
桜子:裏を愛する者同士
表じゃなくて、裏で買おう
彪子:……
あれれ~?愛しては、ないんじゃなかった?
桜子:……
ううん、愛してる、今は言える
彪子:心境の変化ですかー
ま、私はなんとなくわかってたけどね!
初めて会った時から愛してる者同士って
桜子:なんでわかったの?
彪子:接客業だから!
桜子:ははっ、言うと思った
よし、改めて言うと恥ずかしいから終わり!
彪子:はいはい、終わりね
【間】
大通りではなく、裏路地に
さらに階段を降りて、地下へ
そんな場所に桜子が行く服屋があった
桜子:ここだよ
彪子:うわぁー…桜って感じの店
桜子:なにそれ
…まぁ、確かにストリート系ばっかりだけどさ
彪子:こういうの初めてだから新鮮
桜子:虎、スカジャンこっち
彪子:え!?こんな種類あるの?
桜子:まぁね、これはほら、アニメのキャラクターのやつ
こっちは…結構男っぽいやつ
あとは……
彪子:あ
桜子:?どうした?
彪子:私、これがいい
桜子:……これ?
彪子:うん!
桜子:じゃあ、それにしよう
決めた服をレジへ持って行く
彪子:あ!えっと着て帰ります!
桜子:え?マジ?
彪子:よいしょっ…と
あははー、今の服には似合わないかな?
桜子:ううん、大丈夫
かっこいいよ、虎
彪子:そう?かっこいい?
桜子:うん
彪子:あ、そだ
写真撮ってもらっていいですか?
桜子:撮るの?
彪子:記念でしょ?スカジャンデビュー!
桜子:あはは、そうだね
店員に写真を撮ってもらう二人
彪子:おおー!なんかエモい!
桜子:なるほど、これがエモいか
……私が虎で、虎が桜のスカジャンか
彪子:双子コーデってやつ?
それとも、お互いの名前を交換した…
うーん、名刺交換コーデとか!
桜子:ぷっ、何そのネーミング!
彪子:あはは!いいじゃん!
笑い合う二人
桜子:…うん、エモい
彪子:ありがとう、桜
桜子:うん、また行こう
彪子:……うん!桜!
桜子:『街を歩く
そこには、行列のできた店や
写真映えを気にしたメニュー、外観、雰囲気を纏った店が、そこら中に並んでいる
それを“表”だとする
そんな表から少し外れて“裏”に行く
そこには、映えを気にしない店がある
あるのは、“こだわり”
マスターこだわりの珈琲だったり
こだわりのアンティークだったり
そんな場所は、ゆっくりと時間が流れる
私は、それが好きだ
だから、私はこの店に行く』
まだ冬の香りが残る中、春へと移り変わろうとしている、そんな日に
Cafe villageへ向かう
桜子:こんちは
彪子:あ!いらっしゃいませ!
桜子:『だけど、最近私の目的は変わった
私は、彼女に会いに行く
この気持ちは友情が、恋か
そんなものは、どうでもいい
ただーー』
彪子:いつもの?
桜子:…ううん、今日はブラック、アイスで
彪子:意外!何で?
桜子:うーん…まぁ、チャレンジってやつ?
彪子:あはは!わかった、ブラックね
桜子:『ただ、ゆっくりと流れる時間の中に少しだけ
写真映えのような彩ができたのだ』
桜子:……ねぇ、虎
彪子:んー?何ー?
桜子:明日
桜子:桜、見に行かない?
虎と桜 終
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