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零章
祓花
しおりを挟む槐:『人ならざる者に出会ったなら この戸を叩け』
尾先:依頼か?
槐:客に対して失礼だね
不躾にも程がある
尾先:悪いな
仕事上、態度良く接してないんだよ
槐:悪くない
君が本物だとして依頼するよ
尾先:名前
槐:……クララ
とでも名乗っておくよ
尾先:……眩草か
槐:意外だね、学があるんだ
尾先:馬鹿にしてるのか?
偽名を使う時は、ある程度意味を持つ
依頼者が名を隠すのは何故だ?
槐:少しの興味と好奇心
君たちみたいな人に憧れている
尾先:ある程度、この業界のことは
知っていて、自分に力が無いと
槐:そう捉えてくれて構わない
尾先:……とりあえず
暇つぶし程度に聞いてやるよ
槐:私の依頼は、簡潔
地縛霊の除霊だよ
尾先:……嫌なモンを思いだすな
槐:もしかして、地縛霊は専門外かな?
尾先:いや、最近会ったやつが
同じ依頼をしてきただけだ
槐:それは悪いね
同じ内容で面白くないだろうけど
尾先:霊感があるのか?
槐:私は、色が見える
尾先:色?
槐:霊そのものを認識はしていない
見ているのは、色
色で判断しているよ
尾先:珍しい目だな
槐:地縛霊は緑、浮遊霊は青
動物は黄色、それ以外は見えないかな
尾先:なるほど
槐:色の中にもう一色混じっていて
それが危険度を表している
尾先:赤、黒、白だな
槐:見ているのかな?
尾先:大体似たようなもんだからな
槐:私が見たモノは……緑と黒
尾先:黒……被害は?
槐:私には一切
依頼理由は黒だから
尾先:何故、俺に?
槐:……大門 真を知っている
ある関係で知り合いなんだ
尾先:……厄介やモン連れてきやがって
槐:一応、父親なんだろう?
尾先:どうだか
槐:あまり言わないでおくよ
さて、受けてくれるなら早速
尾先:まぁ、行ってみるか
【間】
道中
槐:名を聞かないんだね
尾先:偽名を使いたいなら使えばいい
この業界じゃ、名前は縛りだ
槐:それに契約も、だね
尾先:そこまで解っているなら一々突っ込むな
槐:本物と会うのは二度目
真と君
どちらが凄いのかな?
尾先:……さぁな
槐:案外、可愛いところがあるんだ?
少し心理学をかじっていてね
人であれば、少しは表情を読み解ける
尾先:それで?
槐:必死に隠しているつもりだね
私にはしっかり見ているよ
尾先:無駄話は終わりだ
槐:……もう、気づいたのかい?
尾先:色で見るんだったな
こっちは見えもするが
気配の方が解りやすい
槐:……なるほど
尾先:まだ先だろうが……
【間】
尾先:あれか
槐:私には色すら見えてない
尾先:行くぞ
近くに行き、霊を発見する
尾先:地縛霊……か
種別がそうであるだけで別物だな
槐:別物?
尾先:通った人間と目を合わそうと頭が動いている
見える人間……または、チャンネルが
偶々合った人間に取り憑くタイプだ
槐:何のために?
尾先:霊に理由を求めるな
人の範疇を超える
ただの遊びかもな
槐:そういう見解、か
尾先:はぁ……
どうやら普通の依頼で助かった
槐:え?……あぁ
前の依頼者のことかな?
尾先:目の前で名付けしたんだよ
槐:……そこまで
馬鹿じゃないけど……
尾先:だから、助かったんだよ
なんとなく目的も理解した
槐:目的?
!?……なっ
尾先:じっとしてろ
クダ
尾先:『喰え』
【間】
槐:まさか……
君に動物霊が憑いているのは解っていた
君から黄色が見えたから
だが、何だそれは……色が、複雑だ
尾先:クダに
『見させてもらった』ようだな
槐:真が君を紹介した理由が解ったよ
地縛霊でも人を取り憑き殺す力を
持った霊体を一撃で
尾先:黒だろうがなんだろうが
やる事は変わらないからな
俺は尾先だ、解るか?
槐:改めて自己紹介をしよう
私は槐
この目の特異さゆえに、心霊学者をしているよ
尾先……憑物筋だね
尾先:あぁ、俺は
自分に取り憑いた霊を使役する
コイツは狐の霊体のクダだ
心霊学者か、それでアイツと
槐:そう、真とはそれでね
しかし、面白い奴を紹介すると言われたが……
これは、想像以上だよ
尾先:依頼の半分は俺の観察と言ったところか
アイツから何を言われたか知らねーけど
槐:悪く思わないでくれ
これも私の仕事なんだ
尾先:安くはねーぞ
槐:それも心得ている
ふふ、仕事が終われば愛想は良いね
尾先:霊体が何か解るまでは
必要以上に接しはしない
それくらい知ってるだろ?
槐:いや、私は唯の学者
君たちのルールは知らないよ
尾先:じゃあそれも覚えて
教材の一部にしてくれ
槐:心得たよ
尾先:これで依頼は達成だな
じゃあな、お客サマ
槐:また、いつか
遊びに行かせてもらうよ
尾先:……暇つぶし程度に相手はしてやるよ
そう言い、尾先は帰っていく
槐:……ふふ
面倒見は良さそうだね
叩け、叩け
人ならざる者に出会ったならこの戸を叩け
うん、いい謳い文句じゃないか?
怪異相談所ってところかな
ふふ、真に話してあげよう
君の息子、とても面白いよ
……またね
尾先 仁狐くん
0:祓花 終
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