オサキ怪異相談所

てくす

文字の大きさ
上 下
39 / 45
怪異戯曲

天魔が咲う

しおりを挟む
天満:さぁ、始めよう
   音と詞は無いが、演劇だ
   演じるも、踊るも謳うも自由だろ?
   それじゃあ……
   『御披露目』だ



怪異戯曲・天魔が咲う



叶芽:はぁ……つまんない人生
   こんな田舎じゃ何も起きないし

学校からの帰り道
独り言を吐き捨て、石を蹴り歩く
辺りは山と田に囲まれ、長閑な風が吹く

叶芽:どこかにイケメン落ちてないかなー、なんて
  ……普通、一億円とかだっけ?
  ……ん?なにあれ?

天満:本当に何も無いな!
   田舎は空気が美味いって言うだろ?
   なぁ、空気に味があるのか確かめよう

喜邏:そんな暇あります?天満くん
   空気に味があるなら
   既に味わったことがありますよ

天満:田舎だけ特別ってことは?

喜邏:……なるほど
   有り得ませんね

天満:ノリ悪~

叶芽:なにしてるんだろ……
   (ていうか、あれ何?顔に……布?)
   触らぬ何とかに祟り無しっと

何事もなかったかのように通り過ぎようとする叶芽
しかし、それに気づかれた

喜邏:第一村人発見です

天満:はっはー!
   話聞かなきゃなぁ?

叶芽:い!?

天満:田舎の人間は人情味あるんじゃないのか?
   余所者を避けるのは感心しないなぁ

叶芽:ふ……不審者……!!

天満:どこがだ!!
   今、此処に着いたばかりだっての
   それにこっちは探し物してんだよ

喜邏:ふふふ、不審者だって天満くん

天満:誰も俺とは言ってないだろ?喜邏ぁ?

叶芽:どっちもです!

喜邏:!?何故……

叶芽:顔に布貼っつけてるし!目隠ししてるし!

天満:……へぇ

喜邏:探す手間が省けそうですね

天満:悪いな、女
   少し付き合ってもらうぜ

叶芽:えっ、え……いや、え?

叶芽:(確かにつまんない人生と言ったのは私です
   だけど、これは望んで無いです、神様!
   これが出会いで、運命なら
   私は呪われているのでしょうか!?)




天満:駅から最寄りのコンビニまで車で15分
   食材を買いに行くなら20分
   栄えていると言える場所まで30分以上

喜邏:バスは1時間に一本あれば良し
   あ、あれ見たことないお店ですね

叶芽:(この人、見えてるの…?)
   ……ホームセンターです

喜邏:知っていますよ
   田舎を中心に出店しているものですね
   都会に進展せず、田舎の地域密着ってヤツですね
   戦略型店舗、素晴らしいです

叶芽:詳しいですね……

喜邏:田舎に行くと聞いていましたからね
   お、あれは農業組合のやつですね!

叶芽:なんか恥ずかしいからやめてください!

天満:誇れよ、自分の住んでいる場所だろ?
   まぁ今時ってやつは、都会に憧れるもんか

喜邏:天満くんも若いくせに何を今時なんて

叶芽:何処から来たんですか?二人とも

天満:山も畑も、無いところからだよ

叶芽:ははっ……羨ましいです
   あ、ここです

天満:こういうのは好きだぜ、俺は

喜邏:私もですよ

叶芽:入りましょう


三人はひっそりと佇む喫茶店に入る


叶芽:それで……その、話って

天満:再度確認だ
   俺のイケてるツラ、見えてるか?

喜邏:……

叶芽:イケてるツラは見えません

喜邏:ふふふ、イケてないみたい天満くん

天満:残念だなぁ、俺の顔が見れないなんて

喜邏:えぇ、とても

叶芽:なんで顔を隠してるんですか?

天満:信じるか信じないかはお前次第

叶芽:は?

天満:俺たちは特殊な仕事をしている
   此処に来たのも仕事の為
   顔を隠しているのも、こいつが目隠ししてるのも
   それに関係している事だ

叶芽:はぁ

天満:お前、霊感はあるか?

叶芽:霊感?
   いや、ないですけど

天満:へぇ?
   じゃあ俺から質問
   "ひとひと"って聞いた事あるか?

叶芽:ひとひと?

喜邏:漢字でこう書きます

喜邏はメモ帳を取り出し、書く
そこには『人人』と書かれている

叶芽:あ、にんじん様ですか?

喜邏:にんじん様、ですか
   こっちが正しそうですね

天満:まぁ、現地人がそう呼ぶなら、そうだろうな
   それ、詳しく話せるか?

叶芽:いや、大人が子どもに言い聞かせる
   昔話ですよ?夜に出歩かないための

天満:注意喚起か

叶芽:山も近いし、夜行性の動物に襲われたり
   田舎っていっても夜は危ないから
   そのための話ですよ

天満:それでいい

叶芽:17時になるとサイレンが鳴るんです
   小学生までは、そのサイレンが鳴ったら
   家に帰るのが学校でもルールにあって
   あ、ちょうど鳴った

外からサイレンの音が響く

天満:それで?

叶芽:今のサイレンは普通ですけど
   時々、違うサイレンが鳴るんです
   それが、にんじん様が人攫いをした時

天満:へぇ?

叶芽:だから、夜に出歩いた人が攫われた
   次はお前の番になるかもしれない
   サイレンが鳴る前に家に帰れ
   夜は家で過ごせ
   っていうのが、親とかが聞かせる話です

天満:実際は違うと?

叶芽:実際にサイレンは鳴りますけど
   此処ら辺一体は町内放送が流れるんです
   いつもと違うサイレンは
   町内や近くの地域で行方不明者が出たってことかダムの放流とか
   お知らせなんですよ
   まぁ、行方不明はほとんど老人ですけど

喜邏:なるほど、にんじん様に攫われた、と

叶芽:そんなわけ!
   ボケてるおじいちゃん、おばあちゃんですよ
   大体すぐに見つかりますし

喜邏:確認したんですか?

叶芽:いや……確認ていうか
   町内放送で名前から歳まで放送されますし
   消防団とか捜索に行くし

喜邏:けど、それがにんじん様じゃない
   という、確証もない訳でしょう?

叶芽:いやいや、どう考えても作り話ですから!

天満:作り話じゃなかったら、どうする?

叶芽:え?

天満:確かにボケたジジババが勝手に消えるのは
   よくある話かもしれねぇな
   だが、にんじん様も嘘かどうか解らねぇだろ?

叶芽:それは……

天満:喜邏、どう思う?

喜邏:天満くんの仰せのままに

天満:そりゃ、責任転嫁だろ
   じゃあ、選択してもらうか

叶芽:な、なんですか!?

天満:疑問に答えてやるよ……叶芽だったか?
   ただし、答えたらお前も知る事になる
   それが、何だろうが受け入れるか?

叶芽:ちょ、なんですか、いきなり

天満:答えて欲しけりゃイエスだ
   忘れて帰るなら、そのまま帰れ

叶芽:……なんか、ムカつく

天満:あぁ、こっちも事情があるんでな

叶芽:いいです、聞きます

天満:『天幕』

叶芽:えっ……なにこれ?

天満:俺は呪禁師じゅごんしってやつなんだ
   聞いた事ないだろ?
   呪いに言葉じゃなくて禁止の字を書いて
   
   邪を祓う術も使えれば、厭魅えんみ
   つまり、邪術と言って呪い殺す術も知っている
   これもその一つ
   空間を仕切り、音を遮断する

喜邏:今から語る言葉は、聞かせられませんから
   解るとおもいますが、他言無用ですよ

叶芽:一体……なんなんですか…

天満:まずはお前のことだ
   俺のこの布は、蔵面ぞうめんってやつだが
   呪物の一つで、喜邏の目隠しも同じだ
   ある力が込められている

叶芽:力?

天満:霊、或いは霊感がある者しか見ることができない

叶芽:えっ……

喜邏:本来、顔を見せない為のものですが
   私たちは見せる相手を選択しています
   この面を外す時は、そういう時です

天満:霊感がなけりゃ、俺のツラは拝める
   だが、お前は違った
   それは、霊感があるってことだ

叶芽:何を言ってるんですか
   そんものあるわけないでしょ

天満:霊感っていうのは色々あってな
   先天的に持つ者もいる
   家系や、そういう星の元に生まれた奴だ
   後天的に宿るやつもいる
   邪に魅入られた奴、死に触れた奴とかな

叶芽:生まれて今まで幽霊なんて見てないし
   死に触れるってそんなこともないです!

天満:それと自覚してない奴

叶芽:自覚?

天満:100メートルを9秒で走る才能がある奴が
   自分の身体が病弱で走ることを知らずに成長したら
   その才能に気づくことなく終わるだろうな

叶芽:霊を見る機会がなかった…?

喜邏:察しが良いのは嫌いじゃないですよ
   さて、話を聞いたということは
   それは、触れたと同義
   つまり、あなたはもう、こちら側

叶芽:!?

辺りを見渡す叶芽

天満:無駄だ
   ここには何もいねーよ
   それに、天幕の中だ
   見ることもできないからな

叶芽:私……これからもしかして…

天満:人の話は聞かないとダメだと学校で教わるよな
   本当は違うってのは知らなかったか?
   人の話ってのはな
   聞いていい人からしか、聞いちゃ駄目なんだよ

喜邏:選択というはいつも自己責任ですからね

叶芽:あなたたちの仕事って霊媒師?

天満:まぁ、それでいい
   やってることは変わらないからな

叶芽:私は、どうすれば……

天満:そうだな
   夜、家を抜け出せるか?

叶芽:えっ……できます

天満:訳アリか?

叶芽:……死に触れたこと、ありますから

喜邏:嘘はよくないですが
   少しは自覚しましたか

叶芽:けど、物心つく前だったし
   ……両親が死んだのは

天満:なるほどなァ
   施設か?

叶芽:いえ、祖母の家です
   父の実家って聞いてます

天満:あんまり心配はさせたくないな
   ま、けど仕方ない
   こういうのは、出会ったら終わりだからな

叶芽:……他人事ですね
   それはそうですけど

天満:まぁ、今回の俺たちがやることは      
   稀も稀だ
   別に霊感がある奴なんざ、そこらにいるからな
   だが、教えたからには責任は持ってやるよ

喜邏:では、夜にまたあのバス停に来てください
   私たちは少し、調べますから

叶芽:……はい



【間】



そして、夜ーー。


叶芽:……
   (そういえば、夜に出歩いたのっていつぶりだろ
   ……ちょっと怖い…
   それも全部、昼間に変な話聞いたからじゃん
   なんで……私は此処に来たんだろう……)

天満:来ないと思ったよ

叶芽:!?

天満:嘘だ、妄想だ
   幽霊なんているはずないってさ

叶芽:本当にそう思いますよ

喜邏:でも、此処に来たと言うことは
   本心で感じているんでしょう?

叶芽:それは……そうかも

天満:嘘だ妄想だついでに
   話でもしながら向かおうぜ




天満:まずは妄想を現実にしようか
   喜邏

喜邏:あまり見せびらかすモノではないですが

そう言うと首から下げているモノを
胸元から取り出す喜邏

叶芽:ひっ!?なにこれ……

喜邏:何故、目隠しをしているのに
   誰の介助も要らず歩けると思いますか?

叶芽:えっ?

喜邏:こんな夜道でも、天満くんは手を取ってくれません
   転んだら危ないでしょう?

叶芽:その目隠しが薄い布で見えてるから、とか

喜邏:それは面白い発想
   確かにそれも考えられますね
   じゃあ、そちらから私の目は見えるんですね?

叶芽:……全然見えない

喜邏:ちなみに
   目隠しの中身は目を瞑っていますよ

叶芽:じゃあ、ソレが?

天満:百々目鬼どどめき
   喜邏は、その妖怪から目を手に入れている

叶芽:妖怪!?

天満:幽霊がいるなら、妖怪だっているさ
   都市伝説も、呪具も全部
   纏めて、怪異と呼ぶがな

喜邏の首から下げている目が動く
黒目だけが、動いている
それは、普通では考えられない現象だった

叶芽:なにそれ……なんで動いて

喜邏:私の目と繋がってますから

天満:まぁ、世の中にはこういう奴もいるってわけ
   どうだ?少しは妄想が現実になったか?

叶芽:信じられませんけど、それは……

天満:じゃあ、本題に入る
   俺たちが此処にきた理由
   にんじん様を殺す為だ

叶芽:にんじん様を殺す?
   ただの、作り話なのに?

天満:にんじん様の様な話は幾らでもある
   だが、あまりに信じすぎたものは怪異に成る
   それが、都市伝説怪異だ
   行方不明になる奴がいるんだろ?
   じゃあ、それがにんじん様の仕業じゃないって保証は誰がするんだ?
   お前と別れたあと、聞いて回ったがな
   サイレンが変わることは一切無いってよ

叶芽:……えっ

天満:霊感がある奴しか聞こえ方が変わらない
   なぁ、怪異が標的にするのは何も
   健康な人間だけじゃないぜ?
   ボケたジジババだろうが、変わらないんだよ

叶芽:じゃ、じゃあ今までの全部……

天満:残念なことだな
   この地域の行方不明は全部にんじん様だ

叶芽:嘘っ……

喜邏:ふふふ、噂をすれば

天満:あぁ、お出ましか

叶芽:な、なに……あれ

喜邏:にんじん様
   人を行方不明にする霊障を引き起こす
   気まぐれで解放し、気まぐれでそのまま殺す
   伝承は100年以上前から伝わっており
   信仰の数が一定以上に達した為、怪異化
   対象は、夜中に出歩く人間
   依頼者のものと一致
   人型、黒、異形有り、触れたら危険
   認定、怪異『人人様』

天満:まぁ、B級クエストってとこか?

喜邏:天満くんなら、そのくらい

天満:じゃあ、叶芽
   最後の妄想を現実にする時間だ
   お前はそこで喜邏といろ

叶芽:何をするの?

天満:さぁ、始めよう
   音と詞は無いが、演劇だ
   演じるも、踊るも謳うも自由だろ?
   それじゃあ……
   『御披露目』だ

そう言い、蔵面を取る
そして、その目は紅く輝いていた

叶芽:赤い、目…?

天満:『三十四の禁』
   じゃ、喜邏そいつ頼んだぜ

喜邏:仰せのままに

叶芽:あなた達は、一体……何なの?

喜邏:天満くんは、ずっと虐められていました

叶芽:いじめ?

喜邏:さっき、目を見たでしょう?
   あんな綺麗な目を持っているのに
   人は、それを不気味だと言う
   何も知らないくせに、人とは違うと排斥する
   昼間に霊感の話をしましたね?

叶芽:……はい

喜邏:天満くんは、先天的
   生まれつき赤い目を持ち、霊が見えた
   それは、家系ではなく
   言葉を借りるなら、そういう星の元生まれた
   不気味、悪魔の子、呪い、化け物
   天満くんは親からもそう言われ育ちました
   だけど、天満くんは強い人
   自分の状態を理解し、呪禁師になった
   殆ど独学で

叶芽:……想像できません
   なんで霊媒師なんかを?

喜邏:そうですね、常人は無理でしょうね
   天満くんは優しい人です
   そんな自分が近くにいると迷惑だからと
   中学を卒業と同時に家を出て
   これを続けています
   お金の為です、生きる為に

叶芽:生きる為、の仕事

喜邏:こういう依頼、したことないでしょう?
   相場も何も解らないですから
   結構、言い値なんですよ、ふふふ

叶芽:……理解、できます
   じゃあ、あなたは?

喜邏:それと、私たちは病気を患っていまして

叶芽:病気?

喜邏:厨二病って知ってます?

叶芽:ふざけてるんですか?

喜邏:見てください
   あんなに楽しそうに怪異と戯れて、咲って
   赤い目、かっこいいだろ?と言わんばかりに
   怪異に見せびらかせて倒すんです、いつも
   怪異相手にあんなに遊ぶのは
   天満くんくらいじゃないかなぁ?ふふふ

叶芽:確かに、楽しそう……なのかな?

天満:喜邏ぁ!余計な事喋ってるならヤれ!

喜邏:はいはい
   では、私の病気も見せましょうか

叶芽:ヒッ!?

喜邏:手に目があるなんて
   ビームでも出せそうですよね?
   残念ながら出ませんが

叶芽:それは…?何?

喜邏:何も、百々目鬼から貰った目は
   一つ、とは限らないという話です
   『見つめろ』

その言葉を聞いた人人様は
喜邏の手にある目を見つめた
そして、人人様は動けなくなった

天満:『躰匚ていほう

その瞬間、人人様は匣になった

天満:大した事ないな
   喜邏、余計な事喋りすぎなんだよ

喜邏:暇だったので、つい

叶芽:綺麗な……目…

天満:はっ!憐れみならいらねーよ

叶芽:違っ!本心です!

天満:二人目だ

叶芽:え?

天満:コレを綺麗だと言った奴は
   だが、残念
   御披露目はこれで終わりだ

そう言い、蔵面を付け直す

叶芽:それ、普通の人は見えないのに
   する意味あるんですか?

天満:この呪力で目の色が黒くなるんだよ
   あとな、見れるってのは
   見つかりやすくなるんだよ
   良くも悪くもな

叶芽:なるほど
   その箱、どうするんですか?

天満:然るべき所で対処する
   ま、これでこの地域の行方不明も減るだろうな

叶芽:ありがとう…ございます……?

天満:依頼は別の奴からだ
   お前から貰うもんじゃねーよ
   俺たちがやってることはこういうことだ
   だが、これは稀
   お前の様にただ霊感があるやつは
   見ても無視しとけばいい

叶芽:なんで、見せてくれたんですか?

喜邏:話だけでは信じれませんからね
   体験すると話もすんなり理解できます

叶芽:確かに、そうですね

天満:これ、やるよ

叶芽:名刺……ですか?

天満:まぁ、何かあれば連絡しろ
   報酬は要相談だがな

叶芽:相談しないで済むようにしたいです
   あ、喜邏さんの話は聞けず仕舞いですね

喜邏:敢えて言っていませんから
   うーん、そうですね
   では、一つだけ
   私も、死に触れた一人です

叶芽:だから、霊感が?

喜邏:さぁ、それはどうでしょうか

叶芽:意味深……

天満:じゃあな
   今回のことを教訓に、不審者の話は聞くなよ

叶芽:やっぱり不審者じゃないですか!!

天満:ま、でも……

叶芽:えっ?

天満:お前は守られてきたんだろうな
   今日のことは他言無用だが
   どうしても話したい時は
   お前のばあちゃんになら許可する

叶芽:それ、どういう……

喜邏:じゃ、そういうことみたいなので
   寂しいからと追わないでくださいね

天満:またな

そう言うと、来た方向と逆方向に向かう二人

叶芽:あ、ちょ!
   女の子一人残すな!夜道だぞ!
   えっ、嘘、ちょっと!
   何この最悪な別れ!!!



【間】




叶芽:(最悪の出会いに、最悪の別れ
   あの後から、確かに霊が見える様になった
   想像していたモノよりもリアルで
   無視するのにも限界がきた私は
   おばあちゃんに話す事にした)


叶芽:……えっ?


叶芽:(衝撃的な話だった
   どうやら、おばあちゃんも霊感があり
   サイレンのことは、知っていた
   私にも何かあると昔から感じていたから
   伝わっている話を変えて話してくれていたらしい)




叶芽:……私は、守られてきた…?
   それって……いつから?
   ……つまんない人生…?
   そんなわけ……なかったんだ…

叶芽は何かを決意した
その目は力強く、何かを見据えていた
そしてーー

一年後


天満:……どうぞ

叶芽:っ

天満:それで?何しに来たんだよ?

喜邏:天満くん、お客様

天満:じゃ、ねーよな?

叶芽:ここで働かせてください

天満:学校は?

叶芽:卒業しました
   祖母からの許可も得てます
   だから!

天満:理由は?

叶芽:……探したい怪異がいます

喜邏:……

天満:依頼じゃ駄目なんだな?

叶芽:はい
   それと、天満さんから学びたいです

天満:……それ慣れねぇな

叶芽:え?

天満:俺のことは呼び捨てか君付けにしてくれ
   呼ばれ慣れてないのは気持ち悪りぃ

叶芽:それって、じゃあ!

喜邏:私のことは、さん付けで

叶芽:はい!喜邏さん!
   それと……天満くん…?

天満:はっは!なんで疑問なんだよ
   ま、それでいい
   叶芽、よろしくな

叶芽:よろしくお願いします!

叶芽:(これが出会いで、運命なら
   私は呪われていても構わない
   この人たちと、私は歩いていく)

天満:じゃあ、早速行こうか
   ……御披露目だ!



怪異戯曲・天魔が咲う 終
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

怪異相談所の店主は今日も語る

くろぬか
ホラー
怪異相談所 ”語り部 結”。 人に言えない“怪異”のお悩み解決します、まずはご相談を。相談コース3000円~。除霊、その他オプションは状況によりお値段が変動いたします。 なんて、やけにポップな看板を掲げたおかしなお店。 普通の人なら入らない、入らない筈なのだが。 何故か今日もお客様は訪れる。 まるで導かれるかの様にして。 ※※※ この物語はフィクションです。 実際に語られている”怖い話”なども登場致します。 その中には所謂”聞いたら出る”系のお話もございますが、そういうお話はかなり省略し内容までは描かない様にしております。 とはいえさわり程度は書いてありますので、自己責任でお読みいただければと思います。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ヤムヤムガール! 〜ブルーム・アカデミーの悪夢記録〜

中靍 水雲
ホラー
オレンジの月が笑うとき、赤い悪夢が目を覚ます——夢見士たちはバクに乗り、悪夢を喰らいに夜空を駆ける! 夢見士———それは、パートナーのバクとともに人々の夢を守る職業のこと。 月が笑う夜に、悪夢はその顔をあらわす。 それぞれ性格の違う、色とりどりのバク。 そのなかから、夢見士は1匹をパートナーに選ぶ。 夢見士たちとパートナーのバクとともに悪夢を駆け抜け、人々を守っていた。 六門ククルは見習い夢見士。 夢見士の専門学校であるブルーム・アカデミーに通いはじめた、〝気にしい〟の女の子。 すぐに「ヤム……ヤム……」というので、パートナーのバク・バベルにいつもツッコミをいれられている。 夢はりっぱな夢見士になること! 「ヤミー!」な悪夢を食べることが大好きなバベルとともに、勉強にテストに頑張るぞ!と、思っていた、そのやさき…… 気にしいのククルに、クラスの強気な女子たちが目をつけてきて……? 悪夢×ホラーファンタジー×短編連作! こわーい悪夢も、ククルとバベルがパクッと食べちゃう! その悪夢、夢見士たちにおまかせあれ! 表紙イラスト:ノーコピーライトガール さま

感染した世界で~Second of Life's~

霧雨羽加賀
ホラー
世界は半ば終わりをつげ、希望という言葉がこの世からなくなりつつある世界で、いまだ希望を持ち続け戦っている人間たちがいた。 物資は底をつき、感染者のはびこる世の中、しかし抵抗はやめない。 それの彼、彼女らによる、感染した世界で~終わりの始まり~から一年がたった物語......

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

本当にあった怖い話「高岡古城公園」

じゅ〜ん
ホラー
俺が体験した実話です

禁踏区

nami
ホラー
月隠村を取り囲む山には絶対に足を踏み入れてはいけない場所があるらしい。 そこには巨大な屋敷があり、そこに入ると決して生きて帰ることはできないという…… 隠された道の先に聳える巨大な廃屋。 そこで様々な怪異に遭遇する凛達。 しかし、本当の恐怖は廃屋から脱出した後に待ち受けていた── 都市伝説と呪いの田舎ホラー

不動の焔

桜坂詠恋
ホラー
山中で発見された、内臓を食い破られた三体の遺体。 それが全ての始まりだった。 「警視庁刑事局捜査課特殊事件対策室」主任、高瀬が捜査に乗り出す中、東京の街にも伝説の鬼が現れ、その爪が、高瀬を執拗に追っていた女新聞記者・水野遠子へも向けられる。 しかし、それらは世界の破滅への序章に過ぎなかった。 今ある世界を打ち壊し、正義の名の下、新世界を作り上げようとする謎の男。 過去に過ちを犯し、死をもってそれを償う事も叶わず、赦しを請いながら生き続ける、闇の魂を持つ刑事・高瀬。 高瀬に命を救われ、彼を救いたいと願う光の魂を持つ高校生、大神千里。 千里は、男の企みを阻止する事が出来るのか。高瀬を、現世を救うことが出来るのか。   本当の敵は誰の心にもあり、そして、誰にも見えない ──手を伸ばせ。今度はオレが、その手を掴むから。

処理中です...