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怪異戯曲
天魔が咲う
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天満:さぁ、始めよう
音と詞は無いが、演劇だ
演じるも、踊るも謳うも自由だろ?
それじゃあ……
『御披露目』だ
怪異戯曲・天魔が咲う
叶芽:はぁ……つまんない人生
こんな田舎じゃ何も起きないし
学校からの帰り道
独り言を吐き捨て、石を蹴り歩く
辺りは山と田に囲まれ、長閑な風が吹く
叶芽:どこかにイケメン落ちてないかなー、なんて
……普通、一億円とかだっけ?
……ん?なにあれ?
天満:本当に何も無いな!
田舎は空気が美味いって言うだろ?
なぁ、空気に味があるのか確かめよう
喜邏:そんな暇あります?天満くん
空気に味があるなら
既に味わったことがありますよ
天満:田舎だけ特別ってことは?
喜邏:……なるほど
有り得ませんね
天満:ノリ悪~
叶芽:なにしてるんだろ……
(ていうか、あれ何?顔に……布?)
触らぬ何とかに祟り無しっと
何事もなかったかのように通り過ぎようとする叶芽
しかし、それに気づかれた
喜邏:第一村人発見です
天満:はっはー!
話聞かなきゃなぁ?
叶芽:い!?
天満:田舎の人間は人情味あるんじゃないのか?
余所者を避けるのは感心しないなぁ
叶芽:ふ……不審者……!!
天満:どこがだ!!
今、此処に着いたばかりだっての
それにこっちは探し物してんだよ
喜邏:ふふふ、不審者だって天満くん
天満:誰も俺とは言ってないだろ?喜邏ぁ?
叶芽:どっちもです!
喜邏:!?何故……
叶芽:顔に布貼っつけてるし!目隠ししてるし!
天満:……へぇ
喜邏:探す手間が省けそうですね
天満:悪いな、女
少し付き合ってもらうぜ
叶芽:えっ、え……いや、え?
叶芽:(確かにつまんない人生と言ったのは私です
だけど、これは望んで無いです、神様!
これが出会いで、運命なら
私は呪われているのでしょうか!?)
天満:駅から最寄りのコンビニまで車で15分
食材を買いに行くなら20分
栄えていると言える場所まで30分以上
喜邏:バスは1時間に一本あれば良し
あ、あれ見たことないお店ですね
叶芽:(この人、見えてるの…?)
……ホームセンターです
喜邏:知っていますよ
田舎を中心に出店しているものですね
都会に進展せず、田舎の地域密着ってヤツですね
戦略型店舗、素晴らしいです
叶芽:詳しいですね……
喜邏:田舎に行くと聞いていましたからね
お、あれは農業組合のやつですね!
叶芽:なんか恥ずかしいからやめてください!
天満:誇れよ、自分の住んでいる場所だろ?
まぁ今時ってやつは、都会に憧れるもんか
喜邏:天満くんも若いくせに何を今時なんて
叶芽:何処から来たんですか?二人とも
天満:山も畑も、無いところからだよ
叶芽:ははっ……羨ましいです
あ、ここです
天満:こういうのは好きだぜ、俺は
喜邏:私もですよ
叶芽:入りましょう
三人はひっそりと佇む喫茶店に入る
叶芽:それで……その、話って
天満:再度確認だ
俺のイケてるツラ、見えてるか?
喜邏:……
叶芽:イケてるツラは見えません
喜邏:ふふふ、イケてないみたい天満くん
天満:残念だなぁ、俺の顔が見れないなんて
喜邏:えぇ、とても
叶芽:なんで顔を隠してるんですか?
天満:信じるか信じないかはお前次第
叶芽:は?
天満:俺たちは特殊な仕事をしている
此処に来たのも仕事の為
顔を隠しているのも、こいつが目隠ししてるのも
それに関係している事だ
叶芽:はぁ
天満:お前、霊感はあるか?
叶芽:霊感?
いや、ないですけど
天満:へぇ?
じゃあ俺から質問
"ひとひと"って聞いた事あるか?
叶芽:ひとひと?
喜邏:漢字でこう書きます
喜邏はメモ帳を取り出し、書く
そこには『人人』と書かれている
叶芽:あ、にんじん様ですか?
喜邏:にんじん様、ですか
こっちが正しそうですね
天満:まぁ、現地人がそう呼ぶなら、そうだろうな
それ、詳しく話せるか?
叶芽:いや、大人が子どもに言い聞かせる
昔話ですよ?夜に出歩かないための
天満:注意喚起か
叶芽:山も近いし、夜行性の動物に襲われたり
田舎っていっても夜は危ないから
そのための話ですよ
天満:それでいい
叶芽:17時になるとサイレンが鳴るんです
小学生までは、そのサイレンが鳴ったら
家に帰るのが学校でもルールにあって
あ、ちょうど鳴った
外からサイレンの音が響く
天満:それで?
叶芽:今のサイレンは普通ですけど
時々、違うサイレンが鳴るんです
それが、にんじん様が人攫いをした時
天満:へぇ?
叶芽:だから、夜に出歩いた人が攫われた
次はお前の番になるかもしれない
サイレンが鳴る前に家に帰れ
夜は家で過ごせ
っていうのが、親とかが聞かせる話です
天満:実際は違うと?
叶芽:実際にサイレンは鳴りますけど
此処ら辺一体は町内放送が流れるんです
いつもと違うサイレンは
町内や近くの地域で行方不明者が出たってことかダムの放流とか
お知らせなんですよ
まぁ、行方不明はほとんど老人ですけど
喜邏:なるほど、にんじん様に攫われた、と
叶芽:そんなわけ!
ボケてるおじいちゃん、おばあちゃんですよ
大体すぐに見つかりますし
喜邏:確認したんですか?
叶芽:いや……確認ていうか
町内放送で名前から歳まで放送されますし
消防団とか捜索に行くし
喜邏:けど、それがにんじん様じゃない
という、確証もない訳でしょう?
叶芽:いやいや、どう考えても作り話ですから!
天満:作り話じゃなかったら、どうする?
叶芽:え?
天満:確かにボケたジジババが勝手に消えるのは
よくある話かもしれねぇな
だが、にんじん様も嘘かどうか解らねぇだろ?
叶芽:それは……
天満:喜邏、どう思う?
喜邏:天満くんの仰せのままに
天満:そりゃ、責任転嫁だろ
じゃあ、選択してもらうか
叶芽:な、なんですか!?
天満:疑問に答えてやるよ……叶芽だったか?
ただし、答えたらお前も知る事になる
それが、何だろうが受け入れるか?
叶芽:ちょ、なんですか、いきなり
天満:答えて欲しけりゃイエスだ
忘れて帰るなら、そのまま帰れ
叶芽:……なんか、ムカつく
天満:あぁ、こっちも事情があるんでな
叶芽:いいです、聞きます
天満:『天幕』
叶芽:えっ……なにこれ?
天満:俺は呪禁師ってやつなんだ
聞いた事ないだろ?
呪いに言葉じゃなくて禁止の字を書いて
じゅごんだ
邪を祓う術も使えれば、厭魅
つまり、邪術と言って呪い殺す術も知っている
これもその一つ
空間を仕切り、音を遮断する
喜邏:今から語る言葉は、聞かせられませんから
解るとおもいますが、他言無用ですよ
叶芽:一体……なんなんですか…
天満:まずはお前のことだ
俺のこの布は、蔵面ってやつだが
呪物の一つで、喜邏の目隠しも同じだ
ある力が込められている
叶芽:力?
天満:霊、或いは霊感がある者しか見ることができない
叶芽:えっ……
喜邏:本来、顔を見せない為のものですが
私たちは見せる相手を選択しています
この面を外す時は、そういう時です
天満:霊感がなけりゃ、俺のツラは拝める
だが、お前は違った
それは、霊感があるってことだ
叶芽:何を言ってるんですか
そんものあるわけないでしょ
天満:霊感っていうのは色々あってな
先天的に持つ者もいる
家系や、そういう星の元に生まれた奴だ
後天的に宿るやつもいる
邪に魅入られた奴、死に触れた奴とかな
叶芽:生まれて今まで幽霊なんて見てないし
死に触れるってそんなこともないです!
天満:それと自覚してない奴
叶芽:自覚?
天満:100メートルを9秒で走る才能がある奴が
自分の身体が病弱で走ることを知らずに成長したら
その才能に気づくことなく終わるだろうな
叶芽:霊を見る機会がなかった…?
喜邏:察しが良いのは嫌いじゃないですよ
さて、話を聞いたということは
それは、触れたと同義
つまり、あなたはもう、こちら側
叶芽:!?
辺りを見渡す叶芽
天満:無駄だ
ここには何もいねーよ
それに、天幕の中だ
見ることもできないからな
叶芽:私……これからもしかして…
天満:人の話は聞かないとダメだと学校で教わるよな
本当は違うってのは知らなかったか?
人の話ってのはな
聞いていい人からしか、聞いちゃ駄目なんだよ
喜邏:選択というはいつも自己責任ですからね
叶芽:あなたたちの仕事って霊媒師?
天満:まぁ、それでいい
やってることは変わらないからな
叶芽:私は、どうすれば……
天満:そうだな
夜、家を抜け出せるか?
叶芽:えっ……できます
天満:訳アリか?
叶芽:……死に触れたこと、ありますから
喜邏:嘘はよくないですが
少しは自覚しましたか
叶芽:けど、物心つく前だったし
……両親が死んだのは
天満:なるほどなァ
施設か?
叶芽:いえ、祖母の家です
父の実家って聞いてます
天満:あんまり心配はさせたくないな
ま、けど仕方ない
こういうのは、出会ったら終わりだからな
叶芽:……他人事ですね
それはそうですけど
天満:まぁ、今回の俺たちがやることは
稀も稀だ
別に霊感がある奴なんざ、そこらにいるからな
だが、教えたからには責任は持ってやるよ
喜邏:では、夜にまたあのバス停に来てください
私たちは少し、調べますから
叶芽:……はい
【間】
そして、夜ーー。
叶芽:……
(そういえば、夜に出歩いたのっていつぶりだろ
……ちょっと怖い…
それも全部、昼間に変な話聞いたからじゃん
なんで……私は此処に来たんだろう……)
天満:来ないと思ったよ
叶芽:!?
天満:嘘だ、妄想だ
幽霊なんているはずないってさ
叶芽:本当にそう思いますよ
喜邏:でも、此処に来たと言うことは
本心で感じているんでしょう?
叶芽:それは……そうかも
天満:嘘だ妄想だついでに
話でもしながら向かおうぜ
天満:まずは妄想を現実にしようか
喜邏
喜邏:あまり見せびらかすモノではないですが
そう言うと首から下げているモノを
胸元から取り出す喜邏
叶芽:ひっ!?なにこれ……
喜邏:何故、目隠しをしているのに
誰の介助も要らず歩けると思いますか?
叶芽:えっ?
喜邏:こんな夜道でも、天満くんは手を取ってくれません
転んだら危ないでしょう?
叶芽:その目隠しが薄い布で見えてるから、とか
喜邏:それは面白い発想
確かにそれも考えられますね
じゃあ、そちらから私の目は見えるんですね?
叶芽:……全然見えない
喜邏:ちなみに
目隠しの中身は目を瞑っていますよ
叶芽:じゃあ、ソレが?
天満:百々目鬼
喜邏は、その妖怪から目を手に入れている
叶芽:妖怪!?
天満:幽霊がいるなら、妖怪だっているさ
都市伝説も、呪具も全部
纏めて、怪異と呼ぶがな
喜邏の首から下げている目が動く
黒目だけが、動いている
それは、普通では考えられない現象だった
叶芽:なにそれ……なんで動いて
喜邏:私の目と繋がってますから
天満:まぁ、世の中にはこういう奴もいるってわけ
どうだ?少しは妄想が現実になったか?
叶芽:信じられませんけど、それは……
天満:じゃあ、本題に入る
俺たちが此処にきた理由
にんじん様を殺す為だ
叶芽:にんじん様を殺す?
ただの、作り話なのに?
天満:にんじん様の様な話は幾らでもある
だが、あまりに信じすぎたものは怪異に成る
それが、都市伝説怪異だ
行方不明になる奴がいるんだろ?
じゃあ、それがにんじん様の仕業じゃないって保証は誰がするんだ?
お前と別れたあと、聞いて回ったがな
サイレンが変わることは一切無いってよ
叶芽:……えっ
天満:霊感がある奴しか聞こえ方が変わらない
なぁ、怪異が標的にするのは何も
健康な人間だけじゃないぜ?
ボケたジジババだろうが、変わらないんだよ
叶芽:じゃ、じゃあ今までの全部……
天満:残念なことだな
この地域の行方不明は全部にんじん様だ
叶芽:嘘っ……
喜邏:ふふふ、噂をすれば
天満:あぁ、お出ましか
叶芽:な、なに……あれ
喜邏:にんじん様
人を行方不明にする霊障を引き起こす
気まぐれで解放し、気まぐれでそのまま殺す
伝承は100年以上前から伝わっており
信仰の数が一定以上に達した為、怪異化
対象は、夜中に出歩く人間
依頼者のものと一致
人型、黒、異形有り、触れたら危険
認定、怪異『人人様』
天満:まぁ、B級クエストってとこか?
喜邏:天満くんなら、そのくらい
天満:じゃあ、叶芽
最後の妄想を現実にする時間だ
お前はそこで喜邏といろ
叶芽:何をするの?
天満:さぁ、始めよう
音と詞は無いが、演劇だ
演じるも、踊るも謳うも自由だろ?
それじゃあ……
『御披露目』だ
そう言い、蔵面を取る
そして、その目は紅く輝いていた
叶芽:赤い、目…?
天満:『三十四の禁』
じゃ、喜邏そいつ頼んだぜ
喜邏:仰せのままに
叶芽:あなた達は、一体……何なの?
喜邏:天満くんは、ずっと虐められていました
叶芽:いじめ?
喜邏:さっき、目を見たでしょう?
あんな綺麗な目を持っているのに
人は、それを不気味だと言う
何も知らないくせに、人とは違うと排斥する
昼間に霊感の話をしましたね?
叶芽:……はい
喜邏:天満くんは、先天的
生まれつき赤い目を持ち、霊が見えた
それは、家系ではなく
言葉を借りるなら、そういう星の元生まれた
不気味、悪魔の子、呪い、化け物
天満くんは親からもそう言われ育ちました
だけど、天満くんは強い人
自分の状態を理解し、呪禁師になった
殆ど独学で
叶芽:……想像できません
なんで霊媒師なんかを?
喜邏:そうですね、常人は無理でしょうね
天満くんは優しい人です
そんな自分が近くにいると迷惑だからと
中学を卒業と同時に家を出て
これを続けています
お金の為です、生きる為に
叶芽:生きる為、の仕事
喜邏:こういう依頼、したことないでしょう?
相場も何も解らないですから
結構、言い値なんですよ、ふふふ
叶芽:……理解、できます
じゃあ、あなたは?
喜邏:それと、私たちは病気を患っていまして
叶芽:病気?
喜邏:厨二病って知ってます?
叶芽:ふざけてるんですか?
喜邏:見てください
あんなに楽しそうに怪異と戯れて、咲って
赤い目、かっこいいだろ?と言わんばかりに
怪異に見せびらかせて倒すんです、いつも
怪異相手にあんなに遊ぶのは
天満くんくらいじゃないかなぁ?ふふふ
叶芽:確かに、楽しそう……なのかな?
天満:喜邏ぁ!余計な事喋ってるならヤれ!
喜邏:はいはい
では、私の病気も見せましょうか
叶芽:ヒッ!?
喜邏:手に目があるなんて
ビームでも出せそうですよね?
残念ながら出ませんが
叶芽:それは…?何?
喜邏:何も、百々目鬼から貰った目は
一つ、とは限らないという話です
『見つめろ』
その言葉を聞いた人人様は
喜邏の手にある目を見つめた
そして、人人様は動けなくなった
天満:『躰匚』
その瞬間、人人様は匣になった
天満:大した事ないな
喜邏、余計な事喋りすぎなんだよ
喜邏:暇だったので、つい
叶芽:綺麗な……目…
天満:はっ!憐れみならいらねーよ
叶芽:違っ!本心です!
天満:二人目だ
叶芽:え?
天満:コレを綺麗だと言った奴は
だが、残念
御披露目はこれで終わりだ
そう言い、蔵面を付け直す
叶芽:それ、普通の人は見えないのに
する意味あるんですか?
天満:この呪力で目の色が黒くなるんだよ
あとな、見れるってのは
見つかりやすくなるんだよ
良くも悪くもな
叶芽:なるほど
その箱、どうするんですか?
天満:然るべき所で対処する
ま、これでこの地域の行方不明も減るだろうな
叶芽:ありがとう…ございます……?
天満:依頼は別の奴からだ
お前から貰うもんじゃねーよ
俺たちがやってることはこういうことだ
だが、これは稀
お前の様にただ霊感があるやつは
見ても無視しとけばいい
叶芽:なんで、見せてくれたんですか?
喜邏:話だけでは信じれませんからね
体験すると話もすんなり理解できます
叶芽:確かに、そうですね
天満:これ、やるよ
叶芽:名刺……ですか?
天満:まぁ、何かあれば連絡しろ
報酬は要相談だがな
叶芽:相談しないで済むようにしたいです
あ、喜邏さんの話は聞けず仕舞いですね
喜邏:敢えて言っていませんから
うーん、そうですね
では、一つだけ
私も、死に触れた一人です
叶芽:だから、霊感が?
喜邏:さぁ、それはどうでしょうか
叶芽:意味深……
天満:じゃあな
今回のことを教訓に、不審者の話は聞くなよ
叶芽:やっぱり不審者じゃないですか!!
天満:ま、でも……
叶芽:えっ?
天満:お前は守られてきたんだろうな
今日のことは他言無用だが
どうしても話したい時は
お前のばあちゃんになら許可する
叶芽:それ、どういう……
喜邏:じゃ、そういうことみたいなので
寂しいからと追わないでくださいね
天満:またな
そう言うと、来た方向と逆方向に向かう二人
叶芽:あ、ちょ!
女の子一人残すな!夜道だぞ!
えっ、嘘、ちょっと!
何この最悪な別れ!!!
【間】
叶芽:(最悪の出会いに、最悪の別れ
あの後から、確かに霊が見える様になった
想像していたモノよりもリアルで
無視するのにも限界がきた私は
おばあちゃんに話す事にした)
叶芽:……えっ?
叶芽:(衝撃的な話だった
どうやら、おばあちゃんも霊感があり
サイレンのことは、知っていた
私にも何かあると昔から感じていたから
伝わっている話を変えて話してくれていたらしい)
叶芽:……私は、守られてきた…?
それって……いつから?
……つまんない人生…?
そんなわけ……なかったんだ…
叶芽は何かを決意した
その目は力強く、何かを見据えていた
そしてーー
一年後
天満:……どうぞ
叶芽:っ
天満:それで?何しに来たんだよ?
喜邏:天満くん、お客様
天満:じゃ、ねーよな?
叶芽:ここで働かせてください
天満:学校は?
叶芽:卒業しました
祖母からの許可も得てます
だから!
天満:理由は?
叶芽:……探したい怪異がいます
喜邏:……
天満:依頼じゃ駄目なんだな?
叶芽:はい
それと、天満さんから学びたいです
天満:……それ慣れねぇな
叶芽:え?
天満:俺のことは呼び捨てか君付けにしてくれ
呼ばれ慣れてないのは気持ち悪りぃ
叶芽:それって、じゃあ!
喜邏:私のことは、さん付けで
叶芽:はい!喜邏さん!
それと……天満くん…?
天満:はっは!なんで疑問なんだよ
ま、それでいい
叶芽、よろしくな
叶芽:よろしくお願いします!
叶芽:(これが出会いで、運命なら
私は呪われていても構わない
この人たちと、私は歩いていく)
天満:じゃあ、早速行こうか
……御披露目だ!
怪異戯曲・天魔が咲う 終
音と詞は無いが、演劇だ
演じるも、踊るも謳うも自由だろ?
それじゃあ……
『御披露目』だ
怪異戯曲・天魔が咲う
叶芽:はぁ……つまんない人生
こんな田舎じゃ何も起きないし
学校からの帰り道
独り言を吐き捨て、石を蹴り歩く
辺りは山と田に囲まれ、長閑な風が吹く
叶芽:どこかにイケメン落ちてないかなー、なんて
……普通、一億円とかだっけ?
……ん?なにあれ?
天満:本当に何も無いな!
田舎は空気が美味いって言うだろ?
なぁ、空気に味があるのか確かめよう
喜邏:そんな暇あります?天満くん
空気に味があるなら
既に味わったことがありますよ
天満:田舎だけ特別ってことは?
喜邏:……なるほど
有り得ませんね
天満:ノリ悪~
叶芽:なにしてるんだろ……
(ていうか、あれ何?顔に……布?)
触らぬ何とかに祟り無しっと
何事もなかったかのように通り過ぎようとする叶芽
しかし、それに気づかれた
喜邏:第一村人発見です
天満:はっはー!
話聞かなきゃなぁ?
叶芽:い!?
天満:田舎の人間は人情味あるんじゃないのか?
余所者を避けるのは感心しないなぁ
叶芽:ふ……不審者……!!
天満:どこがだ!!
今、此処に着いたばかりだっての
それにこっちは探し物してんだよ
喜邏:ふふふ、不審者だって天満くん
天満:誰も俺とは言ってないだろ?喜邏ぁ?
叶芽:どっちもです!
喜邏:!?何故……
叶芽:顔に布貼っつけてるし!目隠ししてるし!
天満:……へぇ
喜邏:探す手間が省けそうですね
天満:悪いな、女
少し付き合ってもらうぜ
叶芽:えっ、え……いや、え?
叶芽:(確かにつまんない人生と言ったのは私です
だけど、これは望んで無いです、神様!
これが出会いで、運命なら
私は呪われているのでしょうか!?)
天満:駅から最寄りのコンビニまで車で15分
食材を買いに行くなら20分
栄えていると言える場所まで30分以上
喜邏:バスは1時間に一本あれば良し
あ、あれ見たことないお店ですね
叶芽:(この人、見えてるの…?)
……ホームセンターです
喜邏:知っていますよ
田舎を中心に出店しているものですね
都会に進展せず、田舎の地域密着ってヤツですね
戦略型店舗、素晴らしいです
叶芽:詳しいですね……
喜邏:田舎に行くと聞いていましたからね
お、あれは農業組合のやつですね!
叶芽:なんか恥ずかしいからやめてください!
天満:誇れよ、自分の住んでいる場所だろ?
まぁ今時ってやつは、都会に憧れるもんか
喜邏:天満くんも若いくせに何を今時なんて
叶芽:何処から来たんですか?二人とも
天満:山も畑も、無いところからだよ
叶芽:ははっ……羨ましいです
あ、ここです
天満:こういうのは好きだぜ、俺は
喜邏:私もですよ
叶芽:入りましょう
三人はひっそりと佇む喫茶店に入る
叶芽:それで……その、話って
天満:再度確認だ
俺のイケてるツラ、見えてるか?
喜邏:……
叶芽:イケてるツラは見えません
喜邏:ふふふ、イケてないみたい天満くん
天満:残念だなぁ、俺の顔が見れないなんて
喜邏:えぇ、とても
叶芽:なんで顔を隠してるんですか?
天満:信じるか信じないかはお前次第
叶芽:は?
天満:俺たちは特殊な仕事をしている
此処に来たのも仕事の為
顔を隠しているのも、こいつが目隠ししてるのも
それに関係している事だ
叶芽:はぁ
天満:お前、霊感はあるか?
叶芽:霊感?
いや、ないですけど
天満:へぇ?
じゃあ俺から質問
"ひとひと"って聞いた事あるか?
叶芽:ひとひと?
喜邏:漢字でこう書きます
喜邏はメモ帳を取り出し、書く
そこには『人人』と書かれている
叶芽:あ、にんじん様ですか?
喜邏:にんじん様、ですか
こっちが正しそうですね
天満:まぁ、現地人がそう呼ぶなら、そうだろうな
それ、詳しく話せるか?
叶芽:いや、大人が子どもに言い聞かせる
昔話ですよ?夜に出歩かないための
天満:注意喚起か
叶芽:山も近いし、夜行性の動物に襲われたり
田舎っていっても夜は危ないから
そのための話ですよ
天満:それでいい
叶芽:17時になるとサイレンが鳴るんです
小学生までは、そのサイレンが鳴ったら
家に帰るのが学校でもルールにあって
あ、ちょうど鳴った
外からサイレンの音が響く
天満:それで?
叶芽:今のサイレンは普通ですけど
時々、違うサイレンが鳴るんです
それが、にんじん様が人攫いをした時
天満:へぇ?
叶芽:だから、夜に出歩いた人が攫われた
次はお前の番になるかもしれない
サイレンが鳴る前に家に帰れ
夜は家で過ごせ
っていうのが、親とかが聞かせる話です
天満:実際は違うと?
叶芽:実際にサイレンは鳴りますけど
此処ら辺一体は町内放送が流れるんです
いつもと違うサイレンは
町内や近くの地域で行方不明者が出たってことかダムの放流とか
お知らせなんですよ
まぁ、行方不明はほとんど老人ですけど
喜邏:なるほど、にんじん様に攫われた、と
叶芽:そんなわけ!
ボケてるおじいちゃん、おばあちゃんですよ
大体すぐに見つかりますし
喜邏:確認したんですか?
叶芽:いや……確認ていうか
町内放送で名前から歳まで放送されますし
消防団とか捜索に行くし
喜邏:けど、それがにんじん様じゃない
という、確証もない訳でしょう?
叶芽:いやいや、どう考えても作り話ですから!
天満:作り話じゃなかったら、どうする?
叶芽:え?
天満:確かにボケたジジババが勝手に消えるのは
よくある話かもしれねぇな
だが、にんじん様も嘘かどうか解らねぇだろ?
叶芽:それは……
天満:喜邏、どう思う?
喜邏:天満くんの仰せのままに
天満:そりゃ、責任転嫁だろ
じゃあ、選択してもらうか
叶芽:な、なんですか!?
天満:疑問に答えてやるよ……叶芽だったか?
ただし、答えたらお前も知る事になる
それが、何だろうが受け入れるか?
叶芽:ちょ、なんですか、いきなり
天満:答えて欲しけりゃイエスだ
忘れて帰るなら、そのまま帰れ
叶芽:……なんか、ムカつく
天満:あぁ、こっちも事情があるんでな
叶芽:いいです、聞きます
天満:『天幕』
叶芽:えっ……なにこれ?
天満:俺は呪禁師ってやつなんだ
聞いた事ないだろ?
呪いに言葉じゃなくて禁止の字を書いて
じゅごんだ
邪を祓う術も使えれば、厭魅
つまり、邪術と言って呪い殺す術も知っている
これもその一つ
空間を仕切り、音を遮断する
喜邏:今から語る言葉は、聞かせられませんから
解るとおもいますが、他言無用ですよ
叶芽:一体……なんなんですか…
天満:まずはお前のことだ
俺のこの布は、蔵面ってやつだが
呪物の一つで、喜邏の目隠しも同じだ
ある力が込められている
叶芽:力?
天満:霊、或いは霊感がある者しか見ることができない
叶芽:えっ……
喜邏:本来、顔を見せない為のものですが
私たちは見せる相手を選択しています
この面を外す時は、そういう時です
天満:霊感がなけりゃ、俺のツラは拝める
だが、お前は違った
それは、霊感があるってことだ
叶芽:何を言ってるんですか
そんものあるわけないでしょ
天満:霊感っていうのは色々あってな
先天的に持つ者もいる
家系や、そういう星の元に生まれた奴だ
後天的に宿るやつもいる
邪に魅入られた奴、死に触れた奴とかな
叶芽:生まれて今まで幽霊なんて見てないし
死に触れるってそんなこともないです!
天満:それと自覚してない奴
叶芽:自覚?
天満:100メートルを9秒で走る才能がある奴が
自分の身体が病弱で走ることを知らずに成長したら
その才能に気づくことなく終わるだろうな
叶芽:霊を見る機会がなかった…?
喜邏:察しが良いのは嫌いじゃないですよ
さて、話を聞いたということは
それは、触れたと同義
つまり、あなたはもう、こちら側
叶芽:!?
辺りを見渡す叶芽
天満:無駄だ
ここには何もいねーよ
それに、天幕の中だ
見ることもできないからな
叶芽:私……これからもしかして…
天満:人の話は聞かないとダメだと学校で教わるよな
本当は違うってのは知らなかったか?
人の話ってのはな
聞いていい人からしか、聞いちゃ駄目なんだよ
喜邏:選択というはいつも自己責任ですからね
叶芽:あなたたちの仕事って霊媒師?
天満:まぁ、それでいい
やってることは変わらないからな
叶芽:私は、どうすれば……
天満:そうだな
夜、家を抜け出せるか?
叶芽:えっ……できます
天満:訳アリか?
叶芽:……死に触れたこと、ありますから
喜邏:嘘はよくないですが
少しは自覚しましたか
叶芽:けど、物心つく前だったし
……両親が死んだのは
天満:なるほどなァ
施設か?
叶芽:いえ、祖母の家です
父の実家って聞いてます
天満:あんまり心配はさせたくないな
ま、けど仕方ない
こういうのは、出会ったら終わりだからな
叶芽:……他人事ですね
それはそうですけど
天満:まぁ、今回の俺たちがやることは
稀も稀だ
別に霊感がある奴なんざ、そこらにいるからな
だが、教えたからには責任は持ってやるよ
喜邏:では、夜にまたあのバス停に来てください
私たちは少し、調べますから
叶芽:……はい
【間】
そして、夜ーー。
叶芽:……
(そういえば、夜に出歩いたのっていつぶりだろ
……ちょっと怖い…
それも全部、昼間に変な話聞いたからじゃん
なんで……私は此処に来たんだろう……)
天満:来ないと思ったよ
叶芽:!?
天満:嘘だ、妄想だ
幽霊なんているはずないってさ
叶芽:本当にそう思いますよ
喜邏:でも、此処に来たと言うことは
本心で感じているんでしょう?
叶芽:それは……そうかも
天満:嘘だ妄想だついでに
話でもしながら向かおうぜ
天満:まずは妄想を現実にしようか
喜邏
喜邏:あまり見せびらかすモノではないですが
そう言うと首から下げているモノを
胸元から取り出す喜邏
叶芽:ひっ!?なにこれ……
喜邏:何故、目隠しをしているのに
誰の介助も要らず歩けると思いますか?
叶芽:えっ?
喜邏:こんな夜道でも、天満くんは手を取ってくれません
転んだら危ないでしょう?
叶芽:その目隠しが薄い布で見えてるから、とか
喜邏:それは面白い発想
確かにそれも考えられますね
じゃあ、そちらから私の目は見えるんですね?
叶芽:……全然見えない
喜邏:ちなみに
目隠しの中身は目を瞑っていますよ
叶芽:じゃあ、ソレが?
天満:百々目鬼
喜邏は、その妖怪から目を手に入れている
叶芽:妖怪!?
天満:幽霊がいるなら、妖怪だっているさ
都市伝説も、呪具も全部
纏めて、怪異と呼ぶがな
喜邏の首から下げている目が動く
黒目だけが、動いている
それは、普通では考えられない現象だった
叶芽:なにそれ……なんで動いて
喜邏:私の目と繋がってますから
天満:まぁ、世の中にはこういう奴もいるってわけ
どうだ?少しは妄想が現実になったか?
叶芽:信じられませんけど、それは……
天満:じゃあ、本題に入る
俺たちが此処にきた理由
にんじん様を殺す為だ
叶芽:にんじん様を殺す?
ただの、作り話なのに?
天満:にんじん様の様な話は幾らでもある
だが、あまりに信じすぎたものは怪異に成る
それが、都市伝説怪異だ
行方不明になる奴がいるんだろ?
じゃあ、それがにんじん様の仕業じゃないって保証は誰がするんだ?
お前と別れたあと、聞いて回ったがな
サイレンが変わることは一切無いってよ
叶芽:……えっ
天満:霊感がある奴しか聞こえ方が変わらない
なぁ、怪異が標的にするのは何も
健康な人間だけじゃないぜ?
ボケたジジババだろうが、変わらないんだよ
叶芽:じゃ、じゃあ今までの全部……
天満:残念なことだな
この地域の行方不明は全部にんじん様だ
叶芽:嘘っ……
喜邏:ふふふ、噂をすれば
天満:あぁ、お出ましか
叶芽:な、なに……あれ
喜邏:にんじん様
人を行方不明にする霊障を引き起こす
気まぐれで解放し、気まぐれでそのまま殺す
伝承は100年以上前から伝わっており
信仰の数が一定以上に達した為、怪異化
対象は、夜中に出歩く人間
依頼者のものと一致
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天満:まぁ、B級クエストってとこか?
喜邏:天満くんなら、そのくらい
天満:じゃあ、叶芽
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お前はそこで喜邏といろ
叶芽:何をするの?
天満:さぁ、始めよう
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演じるも、踊るも謳うも自由だろ?
それじゃあ……
『御披露目』だ
そう言い、蔵面を取る
そして、その目は紅く輝いていた
叶芽:赤い、目…?
天満:『三十四の禁』
じゃ、喜邏そいつ頼んだぜ
喜邏:仰せのままに
叶芽:あなた達は、一体……何なの?
喜邏:天満くんは、ずっと虐められていました
叶芽:いじめ?
喜邏:さっき、目を見たでしょう?
あんな綺麗な目を持っているのに
人は、それを不気味だと言う
何も知らないくせに、人とは違うと排斥する
昼間に霊感の話をしましたね?
叶芽:……はい
喜邏:天満くんは、先天的
生まれつき赤い目を持ち、霊が見えた
それは、家系ではなく
言葉を借りるなら、そういう星の元生まれた
不気味、悪魔の子、呪い、化け物
天満くんは親からもそう言われ育ちました
だけど、天満くんは強い人
自分の状態を理解し、呪禁師になった
殆ど独学で
叶芽:……想像できません
なんで霊媒師なんかを?
喜邏:そうですね、常人は無理でしょうね
天満くんは優しい人です
そんな自分が近くにいると迷惑だからと
中学を卒業と同時に家を出て
これを続けています
お金の為です、生きる為に
叶芽:生きる為、の仕事
喜邏:こういう依頼、したことないでしょう?
相場も何も解らないですから
結構、言い値なんですよ、ふふふ
叶芽:……理解、できます
じゃあ、あなたは?
喜邏:それと、私たちは病気を患っていまして
叶芽:病気?
喜邏:厨二病って知ってます?
叶芽:ふざけてるんですか?
喜邏:見てください
あんなに楽しそうに怪異と戯れて、咲って
赤い目、かっこいいだろ?と言わんばかりに
怪異に見せびらかせて倒すんです、いつも
怪異相手にあんなに遊ぶのは
天満くんくらいじゃないかなぁ?ふふふ
叶芽:確かに、楽しそう……なのかな?
天満:喜邏ぁ!余計な事喋ってるならヤれ!
喜邏:はいはい
では、私の病気も見せましょうか
叶芽:ヒッ!?
喜邏:手に目があるなんて
ビームでも出せそうですよね?
残念ながら出ませんが
叶芽:それは…?何?
喜邏:何も、百々目鬼から貰った目は
一つ、とは限らないという話です
『見つめろ』
その言葉を聞いた人人様は
喜邏の手にある目を見つめた
そして、人人様は動けなくなった
天満:『躰匚』
その瞬間、人人様は匣になった
天満:大した事ないな
喜邏、余計な事喋りすぎなんだよ
喜邏:暇だったので、つい
叶芽:綺麗な……目…
天満:はっ!憐れみならいらねーよ
叶芽:違っ!本心です!
天満:二人目だ
叶芽:え?
天満:コレを綺麗だと言った奴は
だが、残念
御披露目はこれで終わりだ
そう言い、蔵面を付け直す
叶芽:それ、普通の人は見えないのに
する意味あるんですか?
天満:この呪力で目の色が黒くなるんだよ
あとな、見れるってのは
見つかりやすくなるんだよ
良くも悪くもな
叶芽:なるほど
その箱、どうするんですか?
天満:然るべき所で対処する
ま、これでこの地域の行方不明も減るだろうな
叶芽:ありがとう…ございます……?
天満:依頼は別の奴からだ
お前から貰うもんじゃねーよ
俺たちがやってることはこういうことだ
だが、これは稀
お前の様にただ霊感があるやつは
見ても無視しとけばいい
叶芽:なんで、見せてくれたんですか?
喜邏:話だけでは信じれませんからね
体験すると話もすんなり理解できます
叶芽:確かに、そうですね
天満:これ、やるよ
叶芽:名刺……ですか?
天満:まぁ、何かあれば連絡しろ
報酬は要相談だがな
叶芽:相談しないで済むようにしたいです
あ、喜邏さんの話は聞けず仕舞いですね
喜邏:敢えて言っていませんから
うーん、そうですね
では、一つだけ
私も、死に触れた一人です
叶芽:だから、霊感が?
喜邏:さぁ、それはどうでしょうか
叶芽:意味深……
天満:じゃあな
今回のことを教訓に、不審者の話は聞くなよ
叶芽:やっぱり不審者じゃないですか!!
天満:ま、でも……
叶芽:えっ?
天満:お前は守られてきたんだろうな
今日のことは他言無用だが
どうしても話したい時は
お前のばあちゃんになら許可する
叶芽:それ、どういう……
喜邏:じゃ、そういうことみたいなので
寂しいからと追わないでくださいね
天満:またな
そう言うと、来た方向と逆方向に向かう二人
叶芽:あ、ちょ!
女の子一人残すな!夜道だぞ!
えっ、嘘、ちょっと!
何この最悪な別れ!!!
【間】
叶芽:(最悪の出会いに、最悪の別れ
あの後から、確かに霊が見える様になった
想像していたモノよりもリアルで
無視するのにも限界がきた私は
おばあちゃんに話す事にした)
叶芽:……えっ?
叶芽:(衝撃的な話だった
どうやら、おばあちゃんも霊感があり
サイレンのことは、知っていた
私にも何かあると昔から感じていたから
伝わっている話を変えて話してくれていたらしい)
叶芽:……私は、守られてきた…?
それって……いつから?
……つまんない人生…?
そんなわけ……なかったんだ…
叶芽は何かを決意した
その目は力強く、何かを見据えていた
そしてーー
一年後
天満:……どうぞ
叶芽:っ
天満:それで?何しに来たんだよ?
喜邏:天満くん、お客様
天満:じゃ、ねーよな?
叶芽:ここで働かせてください
天満:学校は?
叶芽:卒業しました
祖母からの許可も得てます
だから!
天満:理由は?
叶芽:……探したい怪異がいます
喜邏:……
天満:依頼じゃ駄目なんだな?
叶芽:はい
それと、天満さんから学びたいです
天満:……それ慣れねぇな
叶芽:え?
天満:俺のことは呼び捨てか君付けにしてくれ
呼ばれ慣れてないのは気持ち悪りぃ
叶芽:それって、じゃあ!
喜邏:私のことは、さん付けで
叶芽:はい!喜邏さん!
それと……天満くん…?
天満:はっは!なんで疑問なんだよ
ま、それでいい
叶芽、よろしくな
叶芽:よろしくお願いします!
叶芽:(これが出会いで、運命なら
私は呪われていても構わない
この人たちと、私は歩いていく)
天満:じゃあ、早速行こうか
……御披露目だ!
怪異戯曲・天魔が咲う 終
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