オサキ怪異相談所

てくす

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閑話

談笑怪談

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ある日の事
オサキの元に電話があった。

尾先:あぁ、そうなったか
   じゃあ、安静にしておけ
   もう大丈夫だろう
   ……そうだな、その件に関しては

茜:あの電話って、もしかして

骸:どうやら回復したようだね
  ……取られた髪を戻しただけなのにって顔だね

茜:女は髪が命って言葉の通りなんですよね?

骸:性別に関係なく、命の代わりなのは間違いないね
  髪はよく、そういう風に扱われる
  よくある怪談話に髪を使うのもそのせいかな
  儀式や封印にも使われたりするし、血や爪、指や排泄物と違って
  髪だけは命の割合が多い

茜:排泄物って…えっ?

骸:穢れという言葉があるように
  汚いものにも相応の力があるよ
  この業界であれば、使う人も少なくないかな
  例えば、清酒を円を描くように自分の周りに撒く
  その後に、自分の尿で手を濡らす

茜:なんでそんな事…

骸:酒は、妖怪たちが好んでることもある
  近寄って来た妖怪の気をそらせる
  逆に手は穢された呪いのようなもので     
  自分を清酒に寄って来た妖怪と誤認させる
  この二つの役割により怪異から身を隠せる、一種の結界だよ
  と、これは真似しても出来ないけどね

尾先:それなりに知識と手順があるからな
   お前がこの通り真似しても気づかれる
   ……まぁ、やろうとは思わないだろうが

茜:絶対にやらないです!

尾先:そこまで否定するな
   これも手段なんだよ

骸:フフ、この手の儀式や結界
  封印とかそういうことを知りたいなら
  知り合いのおおとりって人を紹介するよ
  色んなものを知ってるからね

茜:遠慮します……

尾先:最近、色々忙しかったから、久しぶりの談笑だな
   骸も最近よく居座るな

骸:あぁ、此処は今、僕にとっては
  パワースポットみたいなものだからね

茜:どこがパワースポットなんですか!?
  心霊スポットですよ!

骸:言い得て妙だね

尾先:俺の家なんだが?
   まぁいい、お前ら暇か?

骸:予定はないけど

茜:私も別に予定はないですけど

尾先:それじゃあ、暇つぶしだ
   茜、話題あるか?

茜:そんな急に言われても……
  あ!そういえば骸さん
  骸さんが色々教えてくれたり
  説明したりするとき、アニメとか引き合いに出しますけど
  もしかして、骸さんってそういうの見るんですか?

尾先:なんだその話題は……
   いや、確かに気にはなるが

骸:意外かい?

尾先:見てるのか?

骸:うーん、その役割としては見てないけど
  僕にとっては資料だからさ

茜:資料、ですか?

骸:都市伝説の怪異とかって
  自然発生と違って人が想像して生み出すモノだから
  ゲームも、アニメも漫画も、小説も映画も全部見るよ
  ジャンルは偏ってるけどね

茜:ホラーとかミステリーものだけってことですか?

骸:あとは恋愛もね
  人の気持ちを知るのも必要だから
  負の感情が出やすいからさ、恋愛ものって

尾先:意外だな

茜:骸さんが恋愛もの……

骸:恋愛ってハッキリしてるでしょ?
  誰かが結ばれれば、誰かは結ばれない
  恋人が死ぬ展開もあるね
  意外と負の感情が転がってる
  そういうのを鵜呑みにした人は
  また怪異を生みやすいからさ

茜:怪異を生みやすい?
  恋愛映画で、ですか?

骸:恋愛映画だけじゃなくて
  茜ちゃんも最初は恋愛のことだったでしょ?

茜:……そういえば…

骸:良くも悪くも人の感情が動きやすいから
  どの瞬間に人は感情が動くのか
  そういった機微を見つける為、だね

茜:なんでそこまでするんですか?

尾先:怪異は人の範疇を超えるからな
   骸ほど全てを網羅しようとは思わないが、やってることは正しいだろうな

骸:あとは怪異ってそんなに頻繁に現れないでしょ?
  暇な時間もあるってことだよ
  けど、オサキが言ってるように人の範疇を超える
  どれだけ考えても、その上をいく
  だとしても、材料は多い方がいい

尾先:知識として利用できるものは利用する
   俺が色々調べろとお前に言うのもそれだな

茜:確かに、知っていれば対処もできますね
  けど、ネットで調べられるものは
  そんなに期待もできないんですよね?

尾先:だとしても、それも知識だ
   そこから一歩踏み出して
   書いてあったことがAだとすれば、自分でBやCのシナリオを用意する
   そこまでやれて、初めて俺の助手だな

茜:……精進します

骸:今僕たちが話していることも忘れないでね
  いつか、役に立つかもしれない
  さて、じゃあ次は僕の番

尾先:いいネタでもあるのか?

骸:茜ちゃんが空間系の怪異に強いことが解ったことだし
  そっちの話をしようかな

茜:禁足地とかですか?

骸:今回は禁足地じゃなくて
  異世界について
  っていうのはどうかな?

尾先:異世界か
   タイムリーではあるな

茜:そっち系も見るんですか?骸さん

骸:あはは、確かに流行ってはいるね
  けど僕の話はファンタジーじゃないよ
  怪異の異世界だ

尾先:禁足地、そして境界を越えただろ?
   言うなれば、アレも異世界だ

茜:そうなんですか?

尾先:空間が歪んだような感覚があったんだろ?
   あれが異世界への入り口だと思えば解りやすい

茜:異世界というか、別の空間に行ったような……
  あ、それが異世界ですね!

骸:そう、本当に違う世界に行くわけじゃなくて
  別の時間軸、空間…あとは怪異が作った結界だったり
  一応、今いる場所と別の場所に行くことを異世界としてる
  昔、流行ったものがあってね

尾先:聞いたことあるんじゃないか?
   異世界に行く方法

茜:……そういえば
  昔、男の子たちが話してたような…

尾先:エレベーターだったり、呪文だったり
   鍵となるものは色々あるが
   そういう話が出回った時期がある

骸:僕が話す異世界はそれ
  先ずは、時間について話そう

茜:時間ですか
  ある時間に異世界に行ける話ですか?

骸:そういう話もあるね
  ただ、この異世界関係の話は共通点も多くて
  時間に関しては名前が付いている
  解るかい?

茜:名前ですか
  ……逢魔時?

尾先:お、今日は察しがいいな
   他は知ってるか?

茜:他ですか?
  えー…うーん…

骸:時間に名前が付いてるものは
  逢魔時、または黄昏時とも言う
  他は、丑三つ時、夕暮れ時とか

茜:あ!言われたら分かりますね!

尾先:まだまだだな

茜:今覚えたからいいんです!
  それで、その時間に異世界に行けるんですか?

骸:さっきも言ったけど、そういう話もある
  ただ、この話は違ってね
  異世界に迷い込んだ時、その場所は夕暮れ時が多いんだ
  僕たちが行った禁足地や境界を越えたのは
  自分から行ったし、手順を踏んだりしたことで
  時間に縛られたりは無かったけど

尾先:夕暮れ時が多い理由もあるらしいな
   共通することは結構多いと俺も聞いたことがある
   あとは、人が消えるとかな

茜:人が消える?

尾先:境界には色々な鍵があるのは話したな?
   同じように電車を例に出すか
   異世界に行く鍵が駅だとする
   いつもと変わらず駅に行き、ふと携帯に目を落とす
   次に顔を上げた時、そこは異世界だった

茜:なんですか、それ
  そういうことがあるんですか?

骸:これも一種の神隠しだけど
  駅という鍵、世界から一度目を離すのも鍵かもね

茜:世界から目を離す…って
  携帯を見たその一瞬?その一瞬で移動した‥?

尾先:結局、人は目で見たもので認識する
   景色から目を離した時に移動する
   その時、別の知らない場所に移動していたり
   さっきまで人が居たのに誰一人いなくなることもある

茜:それが人が消える話ってことですか
  急に人が居なくなったら焦りますね

骸:この手の話はこういう共通点が多いんだ
  だから、知っていれば移動したと解りやすいね
  と、これが異世界の話

茜:昔だったら信じられませんけど
  今は信じられるからなぁ…
  気をつけます

骸:茜ちゃんの場合、空間の歪みが見えてたから、それが先に見えるかもね
  何もないのに空間が歪んでいたら注意した方がいい

茜:わ、わかりました…

尾先:じゃあ、次は俺の番か

骸:へぇ、オサキは何を話すのかな?

茜:尾先さん、すぐに追々って言うから
  何か一つ教えてくださいよ

尾先:……あー、そうだな

骸:ハハ、逃げてたツケが回って来たかな?

尾先:追々って俺が言ってるのは
   その内、嫌でも知ることになる可能性が高いからだ
   別に逃げてるわけじゃない
   骸もいることだからな
   少し、都市伝説の話でもするか

骸:都市伝説?僕が知らない話かな?

尾先:あぁ、多分な
   知らないでも考察して解るかもしれんが

骸:それでも情報としてはありがたいね

茜:そんな都市伝説を知っているんですか?

尾先:骸は動画配信サイトは見てるのか?

骸:見てるよ
  茜ちゃんの質問と被るけど
  最近はそこでしか配信されないものもあったり
  素人が動画投稿してたりするからね
  心霊系の配信者もたまに

茜:聞けば聞くほど意外というか…
  推しとかいます?

骸:流石にそこまでじゃないよ
  そうだね、あえて言えば
  僕の推しはオサキかな?

尾先:冗談でもやめてくれ

骸:都市伝説を語る人は多いけど
  僕の知らないものを語る人は少ないかな
  考察がたまに核心に近い人もいるから
  そういう面で見ると面白いんだけどね

茜:あくまで情報収集ってことですね
  けど、やっぱりそんな骸さんを想像できない!

尾先:じゃあ、知ってるかもしれないな
   動画を撮影中に取り憑かれて、消えた配信者の話だ

茜:えっ、そんなのあるんですか!?

尾先:登録者が少なくて、そんなに話題になってない
   壮大なドッキリとも言われているがな
   まぁ、動画を見たんだがアタリだ

骸:ひとりかくれんぼ、かな?

尾先:いや、降霊術系じゃない

骸:その手の動画は、僕でも見つけられそうだけど
  ふぅん、知らないかも

茜:骸さんのその言い方って
  何個かそういう動画があるってことですか?

骸:まぁ、霊が映ったり、心霊写真系の動画で、本物はあることにはあるよ
  オサキの話を遮って悪いけど
  一つ、これも話しておこうかな

茜:何ですか?

骸:心霊写真や動画の注意点
  昔のモノには注意すること

茜:昔のもの?

尾先:簡単な話だな
   現代の技術ではCGだったり
   そう見せることができるようになった
   写真も加工技術が発達した
   俺たちみたいに霊感があって残穢を見れば、本物か偽物か判断はできる

茜:黒いモヤだったりですよね
  私も尾先さんの手伝いで見たから
  その時、教えてもらいましたね

尾先:あぁ、だがあの時は
   心霊写真の見分け方ってだけだ

骸:つまり、昔のモノを注意するべきなのは
  現代の技術が介入できないって点だね
  昔はそんな技術が無かった分、おかしな事が起こるのは
  本当におかしな事が起こったからなんだ
  だから、昔のモノは少ないんだ
  単に残ってないってわけじゃなくて、ある方が珍しいモノだからね

茜:なるほど、覚えておきます

尾先:さて、俺の話だな
   まぁ、つまりは本物で
   動画撮影中に取り憑かれ、消えた配信者
   それが半年前の出来事で、今も見つかっていない
   配信者は男二人組
   俺が見た感じ霊道は無さそうだった
   企画は、まぁよくある心霊映画の話をしていたな
   あとは呼ばれた

茜:呼ばれた?……霊に?

尾先:あぁ

茜:その怪異って何なんですか?

骸:……うん、普通の霊だろうね
  悪霊が正しいかな
  多分、偶々呼ばれて取り憑かれた類だね
  怪異譚として語るほどの話ではないね

尾先:だと思うだろ?

骸:…へぇ?

茜:なんか、競ってます?二人

尾先:骸の上を取るのは難しいからな
   取れる時にマウントは取るべきだな

骸:少し調子に乗りすぎじゃないかな?オサキ

茜:そ、それで!続きは!?

尾先:二人組の内、一人が呼ばれて最初に消えた
   数日後に、残った一人も呼ばれたわけだが
   その呼んだ相手が最初の一人だった
   霊が呼んだのは確かだろうが
   呼んでる相手が更新されているんだよ

茜:新しい犠牲者に成り変わってる…?
  それとも死んでしまった恨みとか

骸:面白い
  ……色々考えられるけど
  茜ちゃんの説も十分ありそうだね

尾先:お前はどう見る?

骸:もし、怪異譚としてより強力にするなら
  大元がいてもいいよね?

茜:大元、ですか……
  あ、解りました!
  大元の悪霊がいて、取り憑いた人たちを使って
  もっと人に取り憑かせてるってことですか?

尾先:数珠繋ぎの霊体
   俺もその考えだ

骸:なるほど
  それが本当なら被害も増えそうだね
  大元から一体、幾つの数珠が出てることかな?

茜:大丈夫なんですか、それ

骸:この話を僕にしたということは
  そういうこと?オサキ

尾先:お前は俺を自分勝手に使うだろ?
   偶には俺に使われろ、骸

茜:あれ?えっと…もしかして…
  この話って、まさか

骸:アッハハ、茜ちゃん
  楽しい時間の始まりだね

茜:ちょ、尾先さん!

尾先:まぁ、談笑もここまでだ
   二人とも予定は無いらしいからな

茜:もしかして、最初から…
  凪!尾先さんが!

骸:さて、僕を使う以上
  楽しませてね、オサキ

尾先:あぁ、暇つぶし程度にはな



談笑怪談  終
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