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閑話
談笑怪談
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ある日の事
オサキの元に電話があった。
尾先:あぁ、そうなったか
じゃあ、安静にしておけ
もう大丈夫だろう
……そうだな、その件に関しては
茜:あの電話って、もしかして
骸:どうやら回復したようだね
……取られた髪を戻しただけなのにって顔だね
茜:女は髪が命って言葉の通りなんですよね?
骸:性別に関係なく、命の代わりなのは間違いないね
髪はよく、そういう風に扱われる
よくある怪談話に髪を使うのもそのせいかな
儀式や封印にも使われたりするし、血や爪、指や排泄物と違って
髪だけは命の割合が多い
茜:排泄物って…えっ?
骸:穢れという言葉があるように
汚いものにも相応の力があるよ
この業界であれば、使う人も少なくないかな
例えば、清酒を円を描くように自分の周りに撒く
その後に、自分の尿で手を濡らす
茜:なんでそんな事…
骸:酒は、妖怪たちが好んでることもある
近寄って来た妖怪の気をそらせる
逆に手は穢された呪いのようなもので
自分を清酒に寄って来た妖怪と誤認させる
この二つの役割により怪異から身を隠せる、一種の結界だよ
と、これは真似しても出来ないけどね
尾先:それなりに知識と手順があるからな
お前がこの通り真似しても気づかれる
……まぁ、やろうとは思わないだろうが
茜:絶対にやらないです!
尾先:そこまで否定するな
これも手段なんだよ
骸:フフ、この手の儀式や結界
封印とかそういうことを知りたいなら
知り合いの鳳って人を紹介するよ
色んなものを知ってるからね
茜:遠慮します……
尾先:最近、色々忙しかったから、久しぶりの談笑だな
骸も最近よく居座るな
骸:あぁ、此処は今、僕にとっては
パワースポットみたいなものだからね
茜:どこがパワースポットなんですか!?
心霊スポットですよ!
骸:言い得て妙だね
尾先:俺の家なんだが?
まぁいい、お前ら暇か?
骸:予定はないけど
茜:私も別に予定はないですけど
尾先:それじゃあ、暇つぶしだ
茜、話題あるか?
茜:そんな急に言われても……
あ!そういえば骸さん
骸さんが色々教えてくれたり
説明したりするとき、アニメとか引き合いに出しますけど
もしかして、骸さんってそういうの見るんですか?
尾先:なんだその話題は……
いや、確かに気にはなるが
骸:意外かい?
尾先:見てるのか?
骸:うーん、その役割としては見てないけど
僕にとっては資料だからさ
茜:資料、ですか?
骸:都市伝説の怪異とかって
自然発生と違って人が想像して生み出すモノだから
ゲームも、アニメも漫画も、小説も映画も全部見るよ
ジャンルは偏ってるけどね
茜:ホラーとかミステリーものだけってことですか?
骸:あとは恋愛もね
人の気持ちを知るのも必要だから
負の感情が出やすいからさ、恋愛ものって
尾先:意外だな
茜:骸さんが恋愛もの……
骸:恋愛ってハッキリしてるでしょ?
誰かが結ばれれば、誰かは結ばれない
恋人が死ぬ展開もあるね
意外と負の感情が転がってる
そういうのを鵜呑みにした人は
また怪異を生みやすいからさ
茜:怪異を生みやすい?
恋愛映画で、ですか?
骸:恋愛映画だけじゃなくて
茜ちゃんも最初は恋愛のことだったでしょ?
茜:……そういえば…
骸:良くも悪くも人の感情が動きやすいから
どの瞬間に人は感情が動くのか
そういった機微を見つける為、だね
茜:なんでそこまでするんですか?
尾先:怪異は人の範疇を超えるからな
骸ほど全てを網羅しようとは思わないが、やってることは正しいだろうな
骸:あとは怪異ってそんなに頻繁に現れないでしょ?
暇な時間もあるってことだよ
けど、オサキが言ってるように人の範疇を超える
どれだけ考えても、その上をいく
だとしても、材料は多い方がいい
尾先:知識として利用できるものは利用する
俺が色々調べろとお前に言うのもそれだな
茜:確かに、知っていれば対処もできますね
けど、ネットで調べられるものは
そんなに期待もできないんですよね?
尾先:だとしても、それも知識だ
そこから一歩踏み出して
書いてあったことがAだとすれば、自分でBやCのシナリオを用意する
そこまでやれて、初めて俺の助手だな
茜:……精進します
骸:今僕たちが話していることも忘れないでね
いつか、役に立つかもしれない
さて、じゃあ次は僕の番
尾先:いいネタでもあるのか?
骸:茜ちゃんが空間系の怪異に強いことが解ったことだし
そっちの話をしようかな
茜:禁足地とかですか?
骸:今回は禁足地じゃなくて
異世界について
っていうのはどうかな?
尾先:異世界か
タイムリーではあるな
茜:そっち系も見るんですか?骸さん
骸:あはは、確かに流行ってはいるね
けど僕の話はファンタジーじゃないよ
怪異の異世界だ
尾先:禁足地、そして境界を越えただろ?
言うなれば、アレも異世界だ
茜:そうなんですか?
尾先:空間が歪んだような感覚があったんだろ?
あれが異世界への入り口だと思えば解りやすい
茜:異世界というか、別の空間に行ったような……
あ、それが異世界ですね!
骸:そう、本当に違う世界に行くわけじゃなくて
別の時間軸、空間…あとは怪異が作った結界だったり
一応、今いる場所と別の場所に行くことを異世界としてる
昔、流行ったものがあってね
尾先:聞いたことあるんじゃないか?
異世界に行く方法
茜:……そういえば
昔、男の子たちが話してたような…
尾先:エレベーターだったり、呪文だったり
鍵となるものは色々あるが
そういう話が出回った時期がある
骸:僕が話す異世界はそれ
先ずは、時間について話そう
茜:時間ですか
ある時間に異世界に行ける話ですか?
骸:そういう話もあるね
ただ、この異世界関係の話は共通点も多くて
時間に関しては名前が付いている
解るかい?
茜:名前ですか
……逢魔時?
尾先:お、今日は察しがいいな
他は知ってるか?
茜:他ですか?
えー…うーん…
骸:時間に名前が付いてるものは
逢魔時、または黄昏時とも言う
他は、丑三つ時、夕暮れ時とか
茜:あ!言われたら分かりますね!
尾先:まだまだだな
茜:今覚えたからいいんです!
それで、その時間に異世界に行けるんですか?
骸:さっきも言ったけど、そういう話もある
ただ、この話は違ってね
異世界に迷い込んだ時、その場所は夕暮れ時が多いんだ
僕たちが行った禁足地や境界を越えたのは
自分から行ったし、手順を踏んだりしたことで
時間に縛られたりは無かったけど
尾先:夕暮れ時が多い理由もあるらしいな
共通することは結構多いと俺も聞いたことがある
あとは、人が消えるとかな
茜:人が消える?
尾先:境界には色々な鍵があるのは話したな?
同じように電車を例に出すか
異世界に行く鍵が駅だとする
いつもと変わらず駅に行き、ふと携帯に目を落とす
次に顔を上げた時、そこは異世界だった
茜:なんですか、それ
そういうことがあるんですか?
骸:これも一種の神隠しだけど
駅という鍵、世界から一度目を離すのも鍵かもね
茜:世界から目を離す…って
携帯を見たその一瞬?その一瞬で移動した‥?
尾先:結局、人は目で見たもので認識する
景色から目を離した時に移動する
その時、別の知らない場所に移動していたり
さっきまで人が居たのに誰一人いなくなることもある
茜:それが人が消える話ってことですか
急に人が居なくなったら焦りますね
骸:この手の話はこういう共通点が多いんだ
だから、知っていれば移動したと解りやすいね
と、これが異世界の話
茜:昔だったら信じられませんけど
今は信じられるからなぁ…
気をつけます
骸:茜ちゃんの場合、空間の歪みが見えてたから、それが先に見えるかもね
何もないのに空間が歪んでいたら注意した方がいい
茜:わ、わかりました…
尾先:じゃあ、次は俺の番か
骸:へぇ、オサキは何を話すのかな?
茜:尾先さん、すぐに追々って言うから
何か一つ教えてくださいよ
尾先:……あー、そうだな
骸:ハハ、逃げてたツケが回って来たかな?
尾先:追々って俺が言ってるのは
その内、嫌でも知ることになる可能性が高いからだ
別に逃げてるわけじゃない
骸もいることだからな
少し、都市伝説の話でもするか
骸:都市伝説?僕が知らない話かな?
尾先:あぁ、多分な
知らないでも考察して解るかもしれんが
骸:それでも情報としてはありがたいね
茜:そんな都市伝説を知っているんですか?
尾先:骸は動画配信サイトは見てるのか?
骸:見てるよ
茜ちゃんの質問と被るけど
最近はそこでしか配信されないものもあったり
素人が動画投稿してたりするからね
心霊系の配信者もたまに
茜:聞けば聞くほど意外というか…
推しとかいます?
骸:流石にそこまでじゃないよ
そうだね、あえて言えば
僕の推しはオサキかな?
尾先:冗談でもやめてくれ
骸:都市伝説を語る人は多いけど
僕の知らないものを語る人は少ないかな
考察がたまに核心に近い人もいるから
そういう面で見ると面白いんだけどね
茜:あくまで情報収集ってことですね
けど、やっぱりそんな骸さんを想像できない!
尾先:じゃあ、知ってるかもしれないな
動画を撮影中に取り憑かれて、消えた配信者の話だ
茜:えっ、そんなのあるんですか!?
尾先:登録者が少なくて、そんなに話題になってない
壮大なドッキリとも言われているがな
まぁ、動画を見たんだがアタリだ
骸:ひとりかくれんぼ、かな?
尾先:いや、降霊術系じゃない
骸:その手の動画は、僕でも見つけられそうだけど
ふぅん、知らないかも
茜:骸さんのその言い方って
何個かそういう動画があるってことですか?
骸:まぁ、霊が映ったり、心霊写真系の動画で、本物はあることにはあるよ
オサキの話を遮って悪いけど
一つ、これも話しておこうかな
茜:何ですか?
骸:心霊写真や動画の注意点
昔のモノには注意すること
茜:昔のもの?
尾先:簡単な話だな
現代の技術ではCGだったり
そう見せることができるようになった
写真も加工技術が発達した
俺たちみたいに霊感があって残穢を見れば、本物か偽物か判断はできる
茜:黒いモヤだったりですよね
私も尾先さんの手伝いで見たから
その時、教えてもらいましたね
尾先:あぁ、だがあの時は
心霊写真の見分け方ってだけだ
骸:つまり、昔のモノを注意するべきなのは
現代の技術が介入できないって点だね
昔はそんな技術が無かった分、おかしな事が起こるのは
本当におかしな事が起こったからなんだ
だから、昔のモノは少ないんだ
単に残ってないってわけじゃなくて、ある方が珍しいモノだからね
茜:なるほど、覚えておきます
尾先:さて、俺の話だな
まぁ、つまりは本物で
動画撮影中に取り憑かれ、消えた配信者
それが半年前の出来事で、今も見つかっていない
配信者は男二人組
俺が見た感じ霊道は無さそうだった
企画は、まぁよくある心霊映画の話をしていたな
あとは呼ばれた
茜:呼ばれた?……霊に?
尾先:あぁ
茜:その怪異って何なんですか?
骸:……うん、普通の霊だろうね
悪霊が正しいかな
多分、偶々呼ばれて取り憑かれた類だね
怪異譚として語るほどの話ではないね
尾先:だと思うだろ?
骸:…へぇ?
茜:なんか、競ってます?二人
尾先:骸の上を取るのは難しいからな
取れる時にマウントは取るべきだな
骸:少し調子に乗りすぎじゃないかな?オサキ
茜:そ、それで!続きは!?
尾先:二人組の内、一人が呼ばれて最初に消えた
数日後に、残った一人も呼ばれたわけだが
その呼んだ相手が最初の一人だった
霊が呼んだのは確かだろうが
呼んでる相手が更新されているんだよ
茜:新しい犠牲者に成り変わってる…?
それとも死んでしまった恨みとか
骸:面白い
……色々考えられるけど
茜ちゃんの説も十分ありそうだね
尾先:お前はどう見る?
骸:もし、怪異譚としてより強力にするなら
大元がいてもいいよね?
茜:大元、ですか……
あ、解りました!
大元の悪霊がいて、取り憑いた人たちを使って
もっと人に取り憑かせてるってことですか?
尾先:数珠繋ぎの霊体
俺もその考えだ
骸:なるほど
それが本当なら被害も増えそうだね
大元から一体、幾つの数珠が出てることかな?
茜:大丈夫なんですか、それ
骸:この話を僕にしたということは
そういうこと?オサキ
尾先:お前は俺を自分勝手に使うだろ?
偶には俺に使われろ、骸
茜:あれ?えっと…もしかして…
この話って、まさか
骸:アッハハ、茜ちゃん
楽しい時間の始まりだね
茜:ちょ、尾先さん!
尾先:まぁ、談笑もここまでだ
二人とも予定は無いらしいからな
茜:もしかして、最初から…
凪!尾先さんが!
骸:さて、僕を使う以上
楽しませてね、オサキ
尾先:あぁ、暇つぶし程度にはな
談笑怪談 終
オサキの元に電話があった。
尾先:あぁ、そうなったか
じゃあ、安静にしておけ
もう大丈夫だろう
……そうだな、その件に関しては
茜:あの電話って、もしかして
骸:どうやら回復したようだね
……取られた髪を戻しただけなのにって顔だね
茜:女は髪が命って言葉の通りなんですよね?
骸:性別に関係なく、命の代わりなのは間違いないね
髪はよく、そういう風に扱われる
よくある怪談話に髪を使うのもそのせいかな
儀式や封印にも使われたりするし、血や爪、指や排泄物と違って
髪だけは命の割合が多い
茜:排泄物って…えっ?
骸:穢れという言葉があるように
汚いものにも相応の力があるよ
この業界であれば、使う人も少なくないかな
例えば、清酒を円を描くように自分の周りに撒く
その後に、自分の尿で手を濡らす
茜:なんでそんな事…
骸:酒は、妖怪たちが好んでることもある
近寄って来た妖怪の気をそらせる
逆に手は穢された呪いのようなもので
自分を清酒に寄って来た妖怪と誤認させる
この二つの役割により怪異から身を隠せる、一種の結界だよ
と、これは真似しても出来ないけどね
尾先:それなりに知識と手順があるからな
お前がこの通り真似しても気づかれる
……まぁ、やろうとは思わないだろうが
茜:絶対にやらないです!
尾先:そこまで否定するな
これも手段なんだよ
骸:フフ、この手の儀式や結界
封印とかそういうことを知りたいなら
知り合いの鳳って人を紹介するよ
色んなものを知ってるからね
茜:遠慮します……
尾先:最近、色々忙しかったから、久しぶりの談笑だな
骸も最近よく居座るな
骸:あぁ、此処は今、僕にとっては
パワースポットみたいなものだからね
茜:どこがパワースポットなんですか!?
心霊スポットですよ!
骸:言い得て妙だね
尾先:俺の家なんだが?
まぁいい、お前ら暇か?
骸:予定はないけど
茜:私も別に予定はないですけど
尾先:それじゃあ、暇つぶしだ
茜、話題あるか?
茜:そんな急に言われても……
あ!そういえば骸さん
骸さんが色々教えてくれたり
説明したりするとき、アニメとか引き合いに出しますけど
もしかして、骸さんってそういうの見るんですか?
尾先:なんだその話題は……
いや、確かに気にはなるが
骸:意外かい?
尾先:見てるのか?
骸:うーん、その役割としては見てないけど
僕にとっては資料だからさ
茜:資料、ですか?
骸:都市伝説の怪異とかって
自然発生と違って人が想像して生み出すモノだから
ゲームも、アニメも漫画も、小説も映画も全部見るよ
ジャンルは偏ってるけどね
茜:ホラーとかミステリーものだけってことですか?
骸:あとは恋愛もね
人の気持ちを知るのも必要だから
負の感情が出やすいからさ、恋愛ものって
尾先:意外だな
茜:骸さんが恋愛もの……
骸:恋愛ってハッキリしてるでしょ?
誰かが結ばれれば、誰かは結ばれない
恋人が死ぬ展開もあるね
意外と負の感情が転がってる
そういうのを鵜呑みにした人は
また怪異を生みやすいからさ
茜:怪異を生みやすい?
恋愛映画で、ですか?
骸:恋愛映画だけじゃなくて
茜ちゃんも最初は恋愛のことだったでしょ?
茜:……そういえば…
骸:良くも悪くも人の感情が動きやすいから
どの瞬間に人は感情が動くのか
そういった機微を見つける為、だね
茜:なんでそこまでするんですか?
尾先:怪異は人の範疇を超えるからな
骸ほど全てを網羅しようとは思わないが、やってることは正しいだろうな
骸:あとは怪異ってそんなに頻繁に現れないでしょ?
暇な時間もあるってことだよ
けど、オサキが言ってるように人の範疇を超える
どれだけ考えても、その上をいく
だとしても、材料は多い方がいい
尾先:知識として利用できるものは利用する
俺が色々調べろとお前に言うのもそれだな
茜:確かに、知っていれば対処もできますね
けど、ネットで調べられるものは
そんなに期待もできないんですよね?
尾先:だとしても、それも知識だ
そこから一歩踏み出して
書いてあったことがAだとすれば、自分でBやCのシナリオを用意する
そこまでやれて、初めて俺の助手だな
茜:……精進します
骸:今僕たちが話していることも忘れないでね
いつか、役に立つかもしれない
さて、じゃあ次は僕の番
尾先:いいネタでもあるのか?
骸:茜ちゃんが空間系の怪異に強いことが解ったことだし
そっちの話をしようかな
茜:禁足地とかですか?
骸:今回は禁足地じゃなくて
異世界について
っていうのはどうかな?
尾先:異世界か
タイムリーではあるな
茜:そっち系も見るんですか?骸さん
骸:あはは、確かに流行ってはいるね
けど僕の話はファンタジーじゃないよ
怪異の異世界だ
尾先:禁足地、そして境界を越えただろ?
言うなれば、アレも異世界だ
茜:そうなんですか?
尾先:空間が歪んだような感覚があったんだろ?
あれが異世界への入り口だと思えば解りやすい
茜:異世界というか、別の空間に行ったような……
あ、それが異世界ですね!
骸:そう、本当に違う世界に行くわけじゃなくて
別の時間軸、空間…あとは怪異が作った結界だったり
一応、今いる場所と別の場所に行くことを異世界としてる
昔、流行ったものがあってね
尾先:聞いたことあるんじゃないか?
異世界に行く方法
茜:……そういえば
昔、男の子たちが話してたような…
尾先:エレベーターだったり、呪文だったり
鍵となるものは色々あるが
そういう話が出回った時期がある
骸:僕が話す異世界はそれ
先ずは、時間について話そう
茜:時間ですか
ある時間に異世界に行ける話ですか?
骸:そういう話もあるね
ただ、この異世界関係の話は共通点も多くて
時間に関しては名前が付いている
解るかい?
茜:名前ですか
……逢魔時?
尾先:お、今日は察しがいいな
他は知ってるか?
茜:他ですか?
えー…うーん…
骸:時間に名前が付いてるものは
逢魔時、または黄昏時とも言う
他は、丑三つ時、夕暮れ時とか
茜:あ!言われたら分かりますね!
尾先:まだまだだな
茜:今覚えたからいいんです!
それで、その時間に異世界に行けるんですか?
骸:さっきも言ったけど、そういう話もある
ただ、この話は違ってね
異世界に迷い込んだ時、その場所は夕暮れ時が多いんだ
僕たちが行った禁足地や境界を越えたのは
自分から行ったし、手順を踏んだりしたことで
時間に縛られたりは無かったけど
尾先:夕暮れ時が多い理由もあるらしいな
共通することは結構多いと俺も聞いたことがある
あとは、人が消えるとかな
茜:人が消える?
尾先:境界には色々な鍵があるのは話したな?
同じように電車を例に出すか
異世界に行く鍵が駅だとする
いつもと変わらず駅に行き、ふと携帯に目を落とす
次に顔を上げた時、そこは異世界だった
茜:なんですか、それ
そういうことがあるんですか?
骸:これも一種の神隠しだけど
駅という鍵、世界から一度目を離すのも鍵かもね
茜:世界から目を離す…って
携帯を見たその一瞬?その一瞬で移動した‥?
尾先:結局、人は目で見たもので認識する
景色から目を離した時に移動する
その時、別の知らない場所に移動していたり
さっきまで人が居たのに誰一人いなくなることもある
茜:それが人が消える話ってことですか
急に人が居なくなったら焦りますね
骸:この手の話はこういう共通点が多いんだ
だから、知っていれば移動したと解りやすいね
と、これが異世界の話
茜:昔だったら信じられませんけど
今は信じられるからなぁ…
気をつけます
骸:茜ちゃんの場合、空間の歪みが見えてたから、それが先に見えるかもね
何もないのに空間が歪んでいたら注意した方がいい
茜:わ、わかりました…
尾先:じゃあ、次は俺の番か
骸:へぇ、オサキは何を話すのかな?
茜:尾先さん、すぐに追々って言うから
何か一つ教えてくださいよ
尾先:……あー、そうだな
骸:ハハ、逃げてたツケが回って来たかな?
尾先:追々って俺が言ってるのは
その内、嫌でも知ることになる可能性が高いからだ
別に逃げてるわけじゃない
骸もいることだからな
少し、都市伝説の話でもするか
骸:都市伝説?僕が知らない話かな?
尾先:あぁ、多分な
知らないでも考察して解るかもしれんが
骸:それでも情報としてはありがたいね
茜:そんな都市伝説を知っているんですか?
尾先:骸は動画配信サイトは見てるのか?
骸:見てるよ
茜ちゃんの質問と被るけど
最近はそこでしか配信されないものもあったり
素人が動画投稿してたりするからね
心霊系の配信者もたまに
茜:聞けば聞くほど意外というか…
推しとかいます?
骸:流石にそこまでじゃないよ
そうだね、あえて言えば
僕の推しはオサキかな?
尾先:冗談でもやめてくれ
骸:都市伝説を語る人は多いけど
僕の知らないものを語る人は少ないかな
考察がたまに核心に近い人もいるから
そういう面で見ると面白いんだけどね
茜:あくまで情報収集ってことですね
けど、やっぱりそんな骸さんを想像できない!
尾先:じゃあ、知ってるかもしれないな
動画を撮影中に取り憑かれて、消えた配信者の話だ
茜:えっ、そんなのあるんですか!?
尾先:登録者が少なくて、そんなに話題になってない
壮大なドッキリとも言われているがな
まぁ、動画を見たんだがアタリだ
骸:ひとりかくれんぼ、かな?
尾先:いや、降霊術系じゃない
骸:その手の動画は、僕でも見つけられそうだけど
ふぅん、知らないかも
茜:骸さんのその言い方って
何個かそういう動画があるってことですか?
骸:まぁ、霊が映ったり、心霊写真系の動画で、本物はあることにはあるよ
オサキの話を遮って悪いけど
一つ、これも話しておこうかな
茜:何ですか?
骸:心霊写真や動画の注意点
昔のモノには注意すること
茜:昔のもの?
尾先:簡単な話だな
現代の技術ではCGだったり
そう見せることができるようになった
写真も加工技術が発達した
俺たちみたいに霊感があって残穢を見れば、本物か偽物か判断はできる
茜:黒いモヤだったりですよね
私も尾先さんの手伝いで見たから
その時、教えてもらいましたね
尾先:あぁ、だがあの時は
心霊写真の見分け方ってだけだ
骸:つまり、昔のモノを注意するべきなのは
現代の技術が介入できないって点だね
昔はそんな技術が無かった分、おかしな事が起こるのは
本当におかしな事が起こったからなんだ
だから、昔のモノは少ないんだ
単に残ってないってわけじゃなくて、ある方が珍しいモノだからね
茜:なるほど、覚えておきます
尾先:さて、俺の話だな
まぁ、つまりは本物で
動画撮影中に取り憑かれ、消えた配信者
それが半年前の出来事で、今も見つかっていない
配信者は男二人組
俺が見た感じ霊道は無さそうだった
企画は、まぁよくある心霊映画の話をしていたな
あとは呼ばれた
茜:呼ばれた?……霊に?
尾先:あぁ
茜:その怪異って何なんですか?
骸:……うん、普通の霊だろうね
悪霊が正しいかな
多分、偶々呼ばれて取り憑かれた類だね
怪異譚として語るほどの話ではないね
尾先:だと思うだろ?
骸:…へぇ?
茜:なんか、競ってます?二人
尾先:骸の上を取るのは難しいからな
取れる時にマウントは取るべきだな
骸:少し調子に乗りすぎじゃないかな?オサキ
茜:そ、それで!続きは!?
尾先:二人組の内、一人が呼ばれて最初に消えた
数日後に、残った一人も呼ばれたわけだが
その呼んだ相手が最初の一人だった
霊が呼んだのは確かだろうが
呼んでる相手が更新されているんだよ
茜:新しい犠牲者に成り変わってる…?
それとも死んでしまった恨みとか
骸:面白い
……色々考えられるけど
茜ちゃんの説も十分ありそうだね
尾先:お前はどう見る?
骸:もし、怪異譚としてより強力にするなら
大元がいてもいいよね?
茜:大元、ですか……
あ、解りました!
大元の悪霊がいて、取り憑いた人たちを使って
もっと人に取り憑かせてるってことですか?
尾先:数珠繋ぎの霊体
俺もその考えだ
骸:なるほど
それが本当なら被害も増えそうだね
大元から一体、幾つの数珠が出てることかな?
茜:大丈夫なんですか、それ
骸:この話を僕にしたということは
そういうこと?オサキ
尾先:お前は俺を自分勝手に使うだろ?
偶には俺に使われろ、骸
茜:あれ?えっと…もしかして…
この話って、まさか
骸:アッハハ、茜ちゃん
楽しい時間の始まりだね
茜:ちょ、尾先さん!
尾先:まぁ、談笑もここまでだ
二人とも予定は無いらしいからな
茜:もしかして、最初から…
凪!尾先さんが!
骸:さて、僕を使う以上
楽しませてね、オサキ
尾先:あぁ、暇つぶし程度にはな
談笑怪談 終
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