オサキ怪異相談所

てくす

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スピンオフ 怪異蒐集譚

天命

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骸:カバネ、何か依頼を受けてたかい?

樺涅:……これがそう見えるの?

骸:確認だよ、一応ね

樺涅:先生って、時々意地悪だよね
   知ってるくせに、解ってるくせに
   知らないふりをする

骸:何故だか、解るかい?

樺涅:興味ない

骸:はっきりと物事を言うのは良くないんだ
  特に僕たちの場合は、ね

樺涅:そう……

銀色:話は終わったかい?

骸:やぁ、久しぶりだね銀色

樺涅:ほら、知り合いだった

銀色:まぁなぁ
   帰ってきたついでに寄っただけだ
   茶ぁとか、そういう気遣いは無しだ

樺涅:ごめんなさい
   最初から出す気なかった

銀色:いい子を育ててるなぁ、骸?

骸:あはは、誰に似たんだろうね

銀色:いや、お前んとこなら大丈夫だろうけどな
   普通は出されたモンなんか口付けんからなぁ

樺涅:そんなことはしない
   ちょっと印象悪すぎ

骸:警戒はこの業界じゃ日常茶飯事だから
  悪く思わないことだよ

銀色:骸は特化というより、全般だからなー
   まぁ、俺に使うなんて馬鹿な真似もせんだろう

樺涅:それで、要件は?

銀色:いや、だからなぁ?
   寄っただけなんだよ、本当に
   面白い話でもあれば飛びつくが
   何もないなら俺の土産話が良いか?

骸:あー、最近面白い人に会ったよ
  オサキって言ってさ

銀色:オサキ?……憑物筋か?
   あそこは絶えたと聞いていたが、生き残りがいたのか

骸:生き残りというか元凶というか

銀色:ふぅん?
   ソイツとは一度会ってみたいな

骸:まぁ、すぐにでも会えるんじゃない?

樺涅:未来でも見えてる?

骸:流石にそんな力は、この眼に無いよ

銀色:こういう業界、お得意のヤツさ
   言えば叶ったりするんだよ
   悪い意味が多いがな

樺涅:アナタは何?凄く黒いんだけど

銀色:あぁ、俺か?
   俺はなァ……



【間】




尾先:25万……まぁ安くはないか
   地縛霊に関しては、まぁ…うーん
   骸のやつ……いや、頼りたくはねぇな……
   出張するのはいいんだが、はぁ…

未那実:ねぇ、オッサン
    アンタ、妖怪に憑かれてるよ

尾先:あ?誰だ?

未那実:祓ってあげようか?

尾先:おいおい、高校生くらいか?
   補導の時間は過ぎてるぞ、家に帰れ

未那実:ねぇ!本当に妖怪が……

尾先:知ってるよ、これは俺の所有物だ

未那実:はぁ?

尾先:あと、俺は二十代だ
   オッサンじゃねーよ

未那実:うっせーよ!その妖怪を祓ってやるって……

尾先:はぁ……霊感があるのはわかったが
   話しかける相手は選べ

未那実:ウッ……ちょっ……

尾先:俺は憑いてる霊体を使役できる
   祓って貰わなくて結構
   これは俺のモノだ

尾先の発する異様な圧に嘔吐する未那実

未那実:ウッ……オェっ…

尾先:分かったら帰れ、不良少女

未那実:ちょ……と、待ちなさ……い!




【間】



銀色:と、まぁ呪い関係は俺の得意とするところだ
   誰かを殺したくなったら頼っていいぞ?
   即死だろうが、ジワジワ殺そうがお手のものだ
   まぁ、金はたんまり貰うがな?

樺涅:頼らないから、大丈夫

銀色:誰にでもは売らねーよ?骸んとこのお前だから売るんだ

樺涅:じゃあ、霊や妖怪は殺せる?

銀色:あー……まぁ、うん
   モノによるな

樺涅:そう
   じゃあ、私は?

銀色:無理

樺涅:じゃあ、頼らない

骸:ハハッ!仲良くなったようで嬉しいよ

樺涅:……そう見える?先生

銀色:にしても、……はぁ、人魚に肉人にくびとかぁ?
   あと三尸虫さんしちゅうも無いな?

樺涅:そこまで見えるの?

銀色:呪い関連に関わってるとな
   目も肥えるんだよ、ある程度はな
   龍脈も弄ったりするもんで……感度ビンビンだ

樺涅:言葉が汚い

骸:おじさんだから、勘弁してあげて

銀色:言うなぁ~骸ォ

骸:けど、間違いなく呪術やそれに関連したことで、銀色以上は居ないよ
  色々あって日本にもあまり滞在できないし

樺涅:そうなの?

銀色:基本は海外飛び回ってるからな
   というより、一箇所に留まるとダメなんだ

樺涅:へぇ



【間】



尾先:…………

未那実:…………

尾先:なんで付いてくるんだよ

未那実:はぁ?帰り道が同じだけでしょ?

尾先:はぁ……

未那実:ねぇ、占ってあげようか?

尾先:かまってちゃんか?
   生憎、占いとかそんなもんに頼る人種じゃないんでな

未那実:いいから、ねぇ、見てあげる

尾先:あのな、いい加減

未那実:あれ?アンタ、家族が……

尾先:おい

未那実:え?

尾先:何、見たんだ?

未那実:えっ、いや、なんだろ……

尾先:もう口に出すな、いいか?

未那実:はぁ?何よ?聞いたり、言うなって言ったり

尾先:俺の過去の断片を見たな?
   それができるってことは逆もあり得るな?

未那実:いや、ちょっと、何、いきなり

尾先:お前、誰かに同じような占いしたか?

未那実:えっ、少しだけ

尾先:占いについて学んだことは?

未那実:そんなことある訳ないでしょ?

尾先:未来について確定したことは?

未那実:はぁ?どういう意味?

尾先:未来を見て、話したことは?

未那実:一人…だけ、もうすぐ結婚するって話はしたけど

尾先:どんな風に?

未那実:だから!2年後に結婚するって言ったの!

尾先:『かもしれない』とは言わなかったのか?

未那実:はぁ?

尾先:結婚するかもしれない、結婚相手が見つかるかもしれない
   そんな言い方じゃなくて、結婚するって言ったのか?

未那実:うん、そうだけど

尾先:はぁ……まぁ、そのくらいなら大丈夫なのか…

未那実:ねぇ、さっきから何?

尾先:お前、死ぬぞ?

未那実:……えっ?



【間】



骸:なんで日本に帰ってきたの?

銀色:あぁ、久々の里帰りついでに
   龍脈巡ってやろうかと思ったりな
   あとは、まぁ観光か

樺涅:嘘っぽい

銀色:そんなことは無いんだがな~

骸:じゃあ、当分は日本に?

銀色:あぁ、今回はそのつもりだが
   こればっかりは分からんからな

骸:それもそうか
  ん?

銀色:電話か?
   骸が携帯を持ってるのは意外というか、似合わないというか

骸:ある程度、連絡がついた方がいい時もあってね
  時代に合わせていかないと
  なんでもできるって訳でもないし
  じゃあちょっと失礼するよ

電話を取る骸
その主は尾先だった

尾先:骸か?やっと繋がった

骸:やぁ、オサキ
  何?何かあった?

尾先:いや、俺の話じゃないんだが
   占いや呪いについて少しな

骸:タイミング完璧だね

尾先:は?どういうことだ?

骸:今さ、その件に関してプロというか
  凄く、凄ーい人がいるんだよ

尾先:……楽しそうだな?

骸:アッハ!分かるかい?

尾先:あぁ

銀色:俺の話でもしてるのか?

骸:あぁ、ちょっと待ってね
  場を整えておくから……

樺涅:また何かありそう
   お茶、用意した方がいいかな

銀色:こりゃ想定外に長居になりそうだ
   茶ァ、貰おうか

樺涅:ふふっ、淹れてあげる

銀色:あぁ、頼む



【間】



骸:いらっしゃい

尾先:邪魔する

未那実:ウッ……何…ここ

樺涅:こっち、座って

銀色:どうも

尾先:……あぁ、アンタか?

銀色:オサキなんだってな、お前
   大変だったな

尾先:知ってるのか?

銀色:あぁ、あそこにも龍脈があっただろ?
   知らんかもしれんが

尾先:いや、知っている
   ……本題に入るが大丈夫か?

骸:うん、その女の子のこと、かな?

尾先:あぁ

樺涅:ねぇ、この子……同類?

尾先:樺涅と、という意味か?

樺涅:そうね、それでいい

尾先:俺も聞いた話であって解らんが
   未那実、さっきの話をしてくれ

未那実:その前に、なんなの?コイツら

骸:あらら、不良少女だ

銀色:おーおー、威勢がいいねぇ
   俺たちに囲まれてソレが言えるかぁ?

未那実:えっ、ちょっと、まって
    何……こいつら……

尾先:見えたか?

未那実:嘘……でしょ?
    なんで、生きてる……の?

銀色:ほぉ?目が良いな?
   俺はまだしも、骸のまで見えてんのか?

未那実:黒過ぎて…何も見えない……
    見えるモノがみえない…?

樺涅:先生、これって

骸:うん、かなり霊感が強いね
  今まで苦労してそうだ
  はい、じゃあひけらかすのは終わり

未那実:ウッ……

樺涅:あ、ちょっと待って

尾先:……

未那実:オェッ……

樺涅:大丈夫?

銀色:見える割に耐性がないんだなぁ

骸:で、話はなんだい?

尾先:この状態じゃ喋れねぇか
   俺もさっき会ったばかりだから
   詳しくはわからないんだが

骸:あれ?ナンパ?

尾先:だったら、どれだけ良かったか……

銀色:だろうなぁ、この感じなら
   ナンパより面倒くせぇモン、引き当てたな

尾先:それで、最初は俺のクダを祓うとか言い出してな
   無視してたんだが

樺涅:無視できることじゃなさそうだけど?
   ちょっと見せたでしょ?

尾先:……あぁ、そうだけどな

骸:カバネ、そこは突っ込まなくていいよ

樺涅:あ、そう

尾先:次は占うと言い出して、それで俺の過去の断片を見やがった
   ソレができるってことはで詰めたんだが

銀色:天命漏らしか

尾先:察しがいいな

銀色:お前じゃ対処ができないレベル、或いは
   面倒くさくなっただけかもしれんが
   頼る相手が、骸って時点で難問だろ
   骸も俺がいるってことで嬉々としていたしな
   状況を見て判断するに間違いはないはずだ

骸:流石、と言いたいところだけど
  天命漏らしにしては元気だね、この子

未那実:天命……漏らし…?

尾先:お前がやった、未来を確定して伝えることは禁忌なんだよ
   俺が説明しても意味がなさそうだったからな
   骸に解らせてもらった方が話が入ると思ったってのが
   まぁ、俺の思惑だな

樺涅:先生、めんどくさいのに絡まれた
   お金いっぱい貰おう

骸:確か欲しいモノがあるんだっけ?カバネ

樺涅:ちょうどいいカモが来た

尾先:お前ら……いや、そうなるよなぁ……

銀色:ハハハ!楽しい話もここまでにしとこうぜ
   顔色もいい、どうやらすんでに留まったか

そう言い、未那実に顔を近づける銀色

未那実:ちょ、顔が……近い

銀色:色気付いてんじゃねぇよ餓鬼
   はーん、なるほどォなァ?
   さては過去に強い方か

未那実:過去に強い?

銀色:オサキを見て、まず過去を先に見たんだろう?
   過去を見ることに長けてるってこったな
   未来もそこそこ見えてはいるようだが、まだ甘いな

未那実:私、見えるよ
    オッサンの未来だって……えっ?
    何これ……

銀色:死にたいのか?俺の未来なんぞ見たら
   それこそ、吐くだけじゃ済まんぜ

未那実:ヒッ……

樺涅:銀色の未来を見たら駄目だよ
   アナタはまだ普通だから
   取り込まれて戻れなくなる
   少し近いけど

未那実:普通……?近い?

樺涅:まだそこまで黒くないから
   黒くなったら戻れない

未那実:意味分かんない

骸:一般人が知ることじゃない
  今すぐにでも忘れた方がいい
  取り返しがつかなくなる前に
  ってことだよ

未那実:は、はぁ…?

銀色:……なるほどなぁ
   難儀、不運、可哀想、地獄だ
   お前に当て嵌める言葉はどれも負だなぁ

未那実:私を……見た?

銀色:俺はお前以上に過去も未来も見えるぞ
   お前より遥かに占いについても知ってる
   オママゴトじゃねーからな

尾先:聞いてもいいのか?

銀色:それはコイツ次第だろうな
   とても軽く口にすることじゃねーわな

骸:銀色がそう言うなら、そうなんだろうね
  さて、どうしようか
  記憶を消すなんて大層なことやるにしても準備もしてないし

樺涅:食べる?

骸:いや、それだと負荷が大き過ぎて
  この子が廃人だよ

樺涅:そっか

未那実:何?なんの話をしてるの?

骸:キミをどうするか、だよ
  このまま放り出したら死ぬだろうし
  キミのプライベートに首を突っ込むのも
  キミの許可なしじゃ、やりたくないって

未那実:あなた達は何なの?
    普通じゃない

骸:あぁ…自己紹介がまだだったね
  先に会ったのはオサキか

尾先:俺は話したからいい

骸:じゃあ僕だね
  僕の名前は骸
  これはあだ名であり、ハンドルネームであり
  二つ名だったり、通り名だったり、異名と
  まぁそんなもんだよ
  それと……

未那実:えっ……ひっ……な、に……
    アッ……

骸:はい、おしまい
  こんな眼を持っているよ

未那実:はぁ……はぁ……
    何……今の……

骸:ん?

未那実:凄く……

骸:キミ……危険だね

未那実:……え?

樺涅:私は樺涅
   先生の所で一緒に住んでる
   不老不死

未那実:えっ、不老不死?

樺涅:そう、死なないの

未那実:嘘でしょ?

骸:本当だよ

未那実:……いい、見ないでおく

銀色:賢明な判断だ
   俺は銀色、同じく偽名だ
   呪術、占いとかそっち方面の専門
   人を殺したい時は俺に言え
   金は貰うがな

未那実:何それ、誰でも殺せるの?

銀色:人なら、な

未那実:じゃあ、その人殺してみてよ

尾先:は?何で俺を

銀色:無理だな

未那実:はぁ?

銀色:人なら、と言った筈だ
   そいつを殺すなら今は無理だ
   逆に殺される

未那実:何よ、ここにいる全員が人じゃない訳?

骸:見方によっては人じゃないし
  ちゃんと人でもあるよ

未那実:意味、わかんない

骸:じゃあ、次はキミの番だね

未那実:……未那実、高二

銀色:はぁー!若いなぁ

骸:過去について僕たちに知られたくないことは?

未那実:……いいよ、全部話して

銀色:いいのか?

未那実:だって、こんな人かも分からない人たちに話した所でどうなるって言うの?

樺涅:気が強い、それとも不安の裏返し?

未那実:分かったようなこと言わないで

樺涅:そう、じゃあいいけど

尾先:許しも得たところで、話してもらおうか

銀色:じゃあ、俺から言うが
   自分で言いたきゃ自分で言え

未那実:わかった

銀色:現状、こいつに家族はいないようだ
   家も無いからラブホみたいなところに住んでるな?
   金は、その占い紛いと除霊紛いで稼いでいるようだが
   見たところ天命漏らしは既でで終わってる
   そこは命拾いしたと言ってもいいが
   除霊紛いで、霊には目を付けられていることには違いないだろう
   タイミング良かったと言えるな

未那実:マジで見えてるの?

銀色:間違ってるか?

未那実:当たり過ぎてて怖いだけ

骸:家族がいない?死別?

銀色:いや、虐待だろうな

尾先:逃げ出したってことか

銀色:親達は探してもいないだろう
   捜索願いも出てないだろうし
   学校も行ってる気配ないしな

樺涅:学校……

骸:羨ましいかい?

樺涅:ううん

未那実:……ねぇ、なんでちゃんと言わないの?全部見たんでしょ?

銀色:それはまた後で教えてやる
   そんでまぁ、今ここで対処すれば命は助かるだろう
   ただ、保護はどうする?
   結局、聞く耳なきゃ死ぬぜ

骸:未来は?

銀色:見たくねぇな

骸:それは、どうして?もう見たんでしょ?

銀色:見てねぇ

骸:銀色、嘘は良くないね
  改変しようとしてないかい?

銀色:……

尾先:そこの話は、俺にはよく分からんが
   命が助かるってことは死ぬ可能性もあるわけだ

銀色:あぁ、天命漏らしは人だけじゃないからな
   霊や妖怪に取り憑かれて口割られたら終わりだろ

樺涅:私のような不老不死とまではいかないけど
   霊も妖怪も寿命なんてあってないようなものだから

銀色:吸うだけ吸ってバイバイだな

尾先:あぁ、目は付けられているんだったな

銀色:あとは機会を窺っていた、ということだな
   馬鹿だからなぁ
   “いつでもやれる”で放置してたんだろ

骸:時間が無限にある分、急ぎじゃないからね
  悪戯に近いモノだよ、人の命なんて玩具だ

未那実:ねぇ、そろそろ教えて
    私、死ぬの?

銀色:お前がやろうとしていたのは天命漏らしだ
   占い師になりてぇなら学ばなきゃいけない
   というより、自衛の為の知識だよ

未那実:身を守る為の?

銀色:あぁ、占い師じゃなくてもだ
   怪異と関わるんだったら知らなきゃ死ぬ

尾先:それを知りもしないで俺に言うから
   お前は運が良かったと言うべきか……

骸:今回の場合は、良かったで済まそうか

尾先:納得できないけどな

未那実:それで、何なの?その天命漏らしって
    言っちゃいけないことがあるの?

骸:過去、現在、未来
  生きている今も、死後のことも
  全ての時間は等しく流れていて
  それを見ることができる人間がいる
  その見方に違いがある、それが占いだったり、天啓だったり

未那実:天啓?

尾先:神なんかにお告げをされた奴らだ
   占い師以外に、予言者、未来予知なんてのも
   聞いたことがあるだろう?

樺涅:それら全てに禁忌があって
   天命漏らしはその一つ
   本来、未来なんて誰にも解らない
   解ったとしても話しちゃいけない

未那実:何で駄目なの?
    教えてあげて、それがなんで悪くなるの?
    結婚のことだって、病気になるって教えるのだって
    誰かの為になることじゃない!

銀色:知りもしない、確定していない未来を話すってことはなァ
   前借りなんだよ

未那実:前借り……?

骸:寿命だよ
  知らない未来を知ったら、その分寿命が削られる
  話した方も、話された方もね

未那実:嘘……
    じゃあ、私がやってたことって

樺涅:アナタはまだ大丈夫
   だけど、それでも危なかった

未那実:……

銀色:対人たいひとだった場合は、まだいい方だ
   遣り様はいくらでもあるからな
   だが、さっきも言ったが妖怪や霊にやられてみろ
   何十年、何百年先の未来を話せば
   どうなるか解るな?
   しかも、相手は寿命なんざ削られても屁でもねぇ

未那実:死ぬ……

尾先:あぁ、そうなるな
   それで力も碌に知らずに除霊もしていた
   何件かは運良く対処していたのかもしれんが
   目も付けられているみたいだからな
   遅かったら最悪の未来だったな

未那実:わた……し、他の人も巻き込んで……

樺涅:良かったね、誰も巻き込まなくて
   無知は人を殺すよ

未那実:……

銀色:俺が占いをよく知っていると言ったな
   お前の過去を話す時も確定して言わなかっただろ?
   そういうことなんだよ、過去も未来も確定はしない
   占いを受けたことはあるか?
   ほぼ、どいつも当たり障りないことを言うだろう
   それは天命漏らしを行わない為なんだよ

骸:もし、逆に確定して話すような占い師がいたとしたら
  それは無知な愚か者か、死にたがりか
  人の寿命を奪う怪異かもね?
  それと、知識がある本物を見分ける指標にもなるね

未那実:何も知らなかった……私は…馬鹿だ

尾先:……

樺涅:それで?先生
   この子、どうするの?

骸:うん、僕の家は樺涅がいるし

尾先:おい、待て、俺の家も無理だぞ
   そんな余裕なんてねぇよ

銀色:おいおい、待て、なんで俺を見てるんだ?

樺涅:あぁ、そっか
   呪術の専門だった

銀色:いや!おい!なんで!

骸:未来を見たんでしょ?銀色

銀色:お前!骸!見えねぇ未来を話すな!

未那実:何の話……?私別に一人でいいんだけど

樺涅:アナタはもっと学ぶべき
   学校にも行く気がないんだったら
   こっちの事知った方がいい

骸:やっぱり羨ましいんだね、カバネ

樺涅:違う

尾先:俺も賛成だ
   霊感が強いのは重宝するだろう

銀色:だったらお前が連れて行け!

尾先:呪術は専門外だ

銀色:んだと!?狐だろうが!

尾先:興味なくてな

銀色:グッ……!!

未那実:今日のことで色々知ったけど
    気をつけるだけじゃ駄目なの?

骸:今は大丈夫だけど
  目が付けられているのが問題かな
  一人で対処できないヤツが来たらって思うとね
  その点、銀色は強いから大丈夫

銀色:お前の方が強いだろうが!

骸:無意識に結界張って、歩く要塞みたいな人に言われたくないな
  気づいてる?銀色って時々、透明人間になるんだよ

未那実:えっ?

樺涅:結界が強過ぎて認識できないほど
   境界がブレるの?

尾先:いや、嘘だろ?

骸:それを無意識でやるのが銀色だよ

尾先:おいおい…バケモノかよ

銀色:……おい、餓鬼

未那実:私のこと?

銀色:あぁ、俺の弟子になるか?

未那実:えっ、いや、どうすればいいの?

銀色:親もいねぇ、住む場所無ぇ
   だったら自立するまでは弟子にしてやるよ

骸:諦めたみたいだね

銀色:これ以上ゴネたら、何言われるかわからねぇからな

未那実:…えっと、私は

銀色:お前は俺に近い
   呪術に関わりが深いんだろうな
   だったら力の扱い方やその他諸々教えてやるってことだ
   ただ、俺は一箇所に留まれねぇ
   海外生活も多いぞ

未那実:……行く、お願いします!

銀色:……はぁ
   まぁ、そういう未来か

尾先:なんとか収まったようだな

樺涅:今回はオサキの依頼ってことでいいよね?
   銀色の報酬はその子

銀色:いや、おい、巫山戯んな

樺涅:ふーん

銀色:おい、お前、そんなキャラか?

樺涅:はい、これがウチの請求

尾先:あぁ……いや、おい、巫山戯んな

骸:仲が良くて何よりだよ
  さて、名前どうしようか

未那実:名前?

骸:こっちに関わるなら名前は捨てないとね
  名は縛りや契約の力があるから
  公にするもじゃないよ

未那実:そっか、新しく生まれ変わるみたいなもんか

骸:強いね、それでいいよ

銀色:俺の弟子だろ?だったらお前は織紙だ

未那実:オリガミ?

銀色:可愛く、七夕の織姫の織でも使え
   紙は、ちり紙だがな

未那実:何それ、ちょっと言い方酷いんだけど

銀色:俺が銀色なのは、折り紙の銀が好きだからだ
   偽名なんざ、そんなもんだ

未那実:織紙……わかった
    それでいいよ

銀色:はぁー、ちょっと遊びに来たつもりが、とんだ拾い物だ
   明日の昼に此処に来い
   色々準備もあるだろうからな

未那実:……はい

骸:さ、一件落着ってことで
  帰る時は棚に触らないようにね
  危ないモノあるから、さ




【間】




尾先:あれでよかったのか?

骸:銀色が良いって言ったなら良いんだよ

尾先:そうか

骸:銀色はね、強いんだ
  それこそ、日本の十本指に入るよ

尾先:どういうことだ?

骸:特殊な人間がいるとして、その中でも最も優れてる
  十人の内の一人ってこと

尾先:じゃあお前も、その一人だな

骸:ハハッ、僕からすればオサキもそうなんだけど

尾先:俺が?そんなわけないだろ

骸:そう、今は、ね

尾先:……

骸:惹かれ合うように、出逢うのかもね

尾先:……あぁ、そうかもな

樺涅:十本指、私は入らない?

骸:あはっ、カバネの立ち位置は難しそうだ

尾先:じゃあな、俺も帰る

骸:うん、またね

樺涅:厄介ごとは持ってこないでね

尾先:善処はしてやるよ



そして、数年後ーー。



織紙:クソ、死ね

尾先:お前……

織紙:なんでいるのよ

尾先:逆に聞きたいくらいなんだが?

骸:やぁ、二人とも
  いつからそんなに仲悪くなったんだい?

織紙:やっほー!骸ちゃん!
   相変わらず可愛いわ

尾先:お前はいつからそんなに仲良くなったんだ?

骸:色々あって、関わって行くうちに

尾先:じゃあ俺もそっくりそのまま返す

織紙:もう、師匠がインドに行っちゃって
   久々の帰国だったのにつまんないから来ちゃった

骸:ウチは溜まり場じゃないよ、織紙

樺涅:ん、じゃあこれ

骸:あぁ!そうか

尾先:なんだ?

骸:じゃあ、仲良くなるついでに
  3人で面白いことでもしない?

樺涅:先生、私も

尾先:面白いことって……また除霊かよ…

織紙:骸ちゃんとなら何処にでも行くわ!
   オサキはそこら辺で殺されてなさい

骸:ハハ、じゃあ、行こうか
  二人の仲が良くなる未来だといいね


天命 終
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リスナーさんや読者の方から聞いた体験談【本当にあった怖い話】を基にして書いたオムニバスになります。 完結としますが、体験談が追加され次第更新します。 LINEオプチャにて、体験談募集中✨ あなたの体験談、投稿してみませんか? 投稿された体験談は、YouTubeにて朗読させて頂く場合があります。 【邪神白猫】で検索してみてね🐱 ↓YouTubeにて、朗読中(コピペで飛んでください) https://youtube.com/@yuachanRio ※登場する施設名や人物名などは全て架空です。

オカルト嫌いJKと言霊使いの先輩書店員

眼鏡猫
ホラー
書店でアルバイトをする女子高生、如月弥生(きさらぎやよい)は大のオカルト嫌い。そんな彼女と同じ職場で働く大学生、琴乃葉紬玖(ことのはつぐむ)は自称霊感体質だそうで、弥生が発する言霊により悪いモノに覆われていると言う。一笑に付す弥生だったが、実は彼女には誰にも言えないトラウマを抱えていた。

すべて実話

さつきのいろどり
ホラー
タイトル通り全て実話のホラー体験です。 友人から聞いたものや著者本人の実体験を書かせていただきます。 長編として登録していますが、短編をいつくか載せていこうと思っていますので、追加配信しましたら覗きに来て下さいね^^*

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

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