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スピンオフ 怪異蒐集譚
天命
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骸:カバネ、何か依頼を受けてたかい?
樺涅:……これがそう見えるの?
骸:確認だよ、一応ね
樺涅:先生って、時々意地悪だよね
知ってるくせに、解ってるくせに
知らないふりをする
骸:何故だか、解るかい?
樺涅:興味ない
骸:はっきりと物事を言うのは良くないんだ
特に僕たちの場合は、ね
樺涅:そう……
銀色:話は終わったかい?
骸:やぁ、久しぶりだね銀色
樺涅:ほら、知り合いだった
銀色:まぁなぁ
帰ってきたついでに寄っただけだ
茶ぁとか、そういう気遣いは無しだ
樺涅:ごめんなさい
最初から出す気なかった
銀色:いい子を育ててるなぁ、骸?
骸:あはは、誰に似たんだろうね
銀色:いや、お前んとこなら大丈夫だろうけどな
普通は出されたモンなんか口付けんからなぁ
樺涅:そんなことはしない
ちょっと印象悪すぎ
骸:警戒はこの業界じゃ日常茶飯事だから
悪く思わないことだよ
銀色:骸は特化というより、全般だからなー
まぁ、俺に使うなんて馬鹿な真似もせんだろう
樺涅:それで、要件は?
銀色:いや、だからなぁ?
寄っただけなんだよ、本当に
面白い話でもあれば飛びつくが
何もないなら俺の土産話が良いか?
骸:あー、最近面白い人に会ったよ
オサキって言ってさ
銀色:オサキ?……憑物筋か?
あそこは絶えたと聞いていたが、生き残りがいたのか
骸:生き残りというか元凶というか
銀色:ふぅん?
ソイツとは一度会ってみたいな
骸:まぁ、すぐにでも会えるんじゃない?
樺涅:未来でも見えてる?
骸:流石にそんな力は、この眼に無いよ
銀色:こういう業界、お得意のヤツさ
言えば叶ったりするんだよ
悪い意味が多いがな
樺涅:アナタは何?凄く黒いんだけど
銀色:あぁ、俺か?
俺はなァ……
【間】
尾先:25万……まぁ安くはないか
地縛霊に関しては、まぁ…うーん
骸のやつ……いや、頼りたくはねぇな……
出張するのはいいんだが、はぁ…
未那実:ねぇ、オッサン
アンタ、妖怪に憑かれてるよ
尾先:あ?誰だ?
未那実:祓ってあげようか?
尾先:おいおい、高校生くらいか?
補導の時間は過ぎてるぞ、家に帰れ
未那実:ねぇ!本当に妖怪が……
尾先:知ってるよ、これは俺の所有物だ
未那実:はぁ?
尾先:あと、俺は二十代だ
オッサンじゃねーよ
未那実:うっせーよ!その妖怪を祓ってやるって……
尾先:はぁ……霊感があるのはわかったが
話しかける相手は選べ
未那実:ウッ……ちょっ……
尾先:俺は憑いてる霊体を使役できる
祓って貰わなくて結構
これは俺のモノだ
尾先の発する異様な圧に嘔吐する未那実
未那実:ウッ……オェっ…
尾先:分かったら帰れ、不良少女
未那実:ちょ……と、待ちなさ……い!
【間】
銀色:と、まぁ呪い関係は俺の得意とするところだ
誰かを殺したくなったら頼っていいぞ?
即死だろうが、ジワジワ殺そうがお手のものだ
まぁ、金はたんまり貰うがな?
樺涅:頼らないから、大丈夫
銀色:誰にでもは売らねーよ?骸んとこのお前だから売るんだ
樺涅:じゃあ、霊や妖怪は殺せる?
銀色:あー……まぁ、うん
モノによるな
樺涅:そう
じゃあ、私は?
銀色:無理
樺涅:じゃあ、頼らない
骸:ハハッ!仲良くなったようで嬉しいよ
樺涅:……そう見える?先生
銀色:にしても、……はぁ、人魚に肉人かぁ?
あと三尸虫も無いな?
樺涅:そこまで見えるの?
銀色:呪い関連に関わってるとな
目も肥えるんだよ、ある程度はな
龍脈も弄ったりするもんで……感度ビンビンだ
樺涅:言葉が汚い
骸:おじさんだから、勘弁してあげて
銀色:言うなぁ~骸ォ
骸:けど、間違いなく呪術やそれに関連したことで、銀色以上は居ないよ
色々あって日本にもあまり滞在できないし
樺涅:そうなの?
銀色:基本は海外飛び回ってるからな
というより、一箇所に留まるとダメなんだ
樺涅:へぇ
【間】
尾先:…………
未那実:…………
尾先:なんで付いてくるんだよ
未那実:はぁ?帰り道が同じだけでしょ?
尾先:はぁ……
未那実:ねぇ、占ってあげようか?
尾先:かまってちゃんか?
生憎、占いとかそんなもんに頼る人種じゃないんでな
未那実:いいから、ねぇ、見てあげる
尾先:あのな、いい加減
未那実:あれ?アンタ、家族が……
尾先:おい
未那実:え?
尾先:何、見たんだ?
未那実:えっ、いや、なんだろ……
尾先:もう口に出すな、いいか?
未那実:はぁ?何よ?聞いたり、言うなって言ったり
尾先:俺の過去の断片を見たな?
それができるってことは逆もあり得るな?
未那実:いや、ちょっと、何、いきなり
尾先:お前、誰かに同じような占いしたか?
未那実:えっ、少しだけ
尾先:占いについて学んだことは?
未那実:そんなことある訳ないでしょ?
尾先:未来について確定したことは?
未那実:はぁ?どういう意味?
尾先:未来を見て、話したことは?
未那実:一人…だけ、もうすぐ結婚するって話はしたけど
尾先:どんな風に?
未那実:だから!2年後に結婚するって言ったの!
尾先:『かもしれない』とは言わなかったのか?
未那実:はぁ?
尾先:結婚するかもしれない、結婚相手が見つかるかもしれない
そんな言い方じゃなくて、結婚するって言ったのか?
未那実:うん、そうだけど
尾先:はぁ……まぁ、そのくらいなら大丈夫なのか…
未那実:ねぇ、さっきから何?
尾先:お前、死ぬぞ?
未那実:……えっ?
【間】
骸:なんで日本に帰ってきたの?
銀色:あぁ、久々の里帰りついでに
龍脈巡ってやろうかと思ったりな
あとは、まぁ観光か
樺涅:嘘っぽい
銀色:そんなことは無いんだがな~
骸:じゃあ、当分は日本に?
銀色:あぁ、今回はそのつもりだが
こればっかりは分からんからな
骸:それもそうか
ん?
銀色:電話か?
骸が携帯を持ってるのは意外というか、似合わないというか
骸:ある程度、連絡がついた方がいい時もあってね
時代に合わせていかないと
なんでもできるって訳でもないし
じゃあちょっと失礼するよ
電話を取る骸
その主は尾先だった
尾先:骸か?やっと繋がった
骸:やぁ、オサキ
何?何かあった?
尾先:いや、俺の話じゃないんだが
占いや呪いについて少しな
骸:タイミング完璧だね
尾先:は?どういうことだ?
骸:今さ、その件に関してプロというか
凄く、凄ーい人がいるんだよ
尾先:……楽しそうだな?
骸:アッハ!分かるかい?
尾先:あぁ
銀色:俺の話でもしてるのか?
骸:あぁ、ちょっと待ってね
場を整えておくから……
樺涅:また何かありそう
お茶、用意した方がいいかな
銀色:こりゃ想定外に長居になりそうだ
茶ァ、貰おうか
樺涅:ふふっ、淹れてあげる
銀色:あぁ、頼む
【間】
骸:いらっしゃい
尾先:邪魔する
未那実:ウッ……何…ここ
樺涅:こっち、座って
銀色:どうも
尾先:……あぁ、アンタか?
銀色:オサキなんだってな、お前
大変だったな
尾先:知ってるのか?
銀色:あぁ、あそこにも龍脈があっただろ?
知らんかもしれんが
尾先:いや、知っている
……本題に入るが大丈夫か?
骸:うん、その女の子のこと、かな?
尾先:あぁ
樺涅:ねぇ、この子……同類?
尾先:樺涅と、という意味か?
樺涅:そうね、それでいい
尾先:俺も聞いた話であって解らんが
未那実、さっきの話をしてくれ
未那実:その前に、なんなの?コイツら
骸:あらら、不良少女だ
銀色:おーおー、威勢がいいねぇ
俺たちに囲まれてソレが言えるかぁ?
未那実:えっ、ちょっと、まって
何……こいつら……
尾先:見えたか?
未那実:嘘……でしょ?
なんで、生きてる……の?
銀色:ほぉ?目が良いな?
俺はまだしも、骸のまで見えてんのか?
未那実:黒過ぎて…何も見えない……
見えるモノがみえない…?
樺涅:先生、これって
骸:うん、かなり霊感が強いね
今まで苦労してそうだ
はい、じゃあ衒らかすのは終わり
未那実:ウッ……
樺涅:あ、ちょっと待って
尾先:……
未那実:オェッ……
樺涅:大丈夫?
銀色:見える割に耐性がないんだなぁ
骸:で、話はなんだい?
尾先:この状態じゃ喋れねぇか
俺もさっき会ったばかりだから
詳しくはわからないんだが
骸:あれ?ナンパ?
尾先:だったら、どれだけ良かったか……
銀色:だろうなぁ、この感じなら
ナンパより面倒くせぇモン、引き当てたな
尾先:それで、最初は俺のクダを祓うとか言い出してな
無視してたんだが
樺涅:無視できることじゃなさそうだけど?
ちょっと見せたでしょ?
尾先:……あぁ、そうだけどな
骸:カバネ、そこは突っ込まなくていいよ
樺涅:あ、そう
尾先:次は占うと言い出して、それで俺の過去の断片を見やがった
ソレができるってことはで詰めたんだが
銀色:天命漏らしか
尾先:察しがいいな
銀色:お前じゃ対処ができないレベル、或いは
面倒くさくなっただけかもしれんが
頼る相手が、骸って時点で難問だろ
骸も俺がいるってことで嬉々としていたしな
状況を見て判断するに間違いはないはずだ
骸:流石、と言いたいところだけど
天命漏らしにしては元気だね、この子
未那実:天命……漏らし…?
尾先:お前がやった、未来を確定して伝えることは禁忌なんだよ
俺が説明しても意味がなさそうだったからな
骸に解らせてもらった方が話が入ると思ったってのが
まぁ、俺の思惑だな
樺涅:先生、めんどくさいのに絡まれた
お金いっぱい貰おう
骸:確か欲しいモノがあるんだっけ?カバネ
樺涅:ちょうどいいカモが来た
尾先:お前ら……いや、そうなるよなぁ……
銀色:ハハハ!楽しい話もここまでにしとこうぜ
顔色もいい、どうやら既に留まったか
そう言い、未那実に顔を近づける銀色
未那実:ちょ、顔が……近い
銀色:色気付いてんじゃねぇよ餓鬼
はーん、なるほどォなァ?
さては過去に強い方か
未那実:過去に強い?
銀色:オサキを見て、まず過去を先に見たんだろう?
過去を見ることに長けてるってこったな
未来もそこそこ見えてはいるようだが、まだ甘いな
未那実:私、見えるよ
オッサンの未来だって……えっ?
何これ……
銀色:死にたいのか?俺の未来なんぞ見たら
それこそ、吐くだけじゃ済まんぜ
未那実:ヒッ……
樺涅:銀色の未来を見たら駄目だよ
アナタはまだ普通だから
取り込まれて戻れなくなる
少し近いけど
未那実:普通……?近い?
樺涅:まだそこまで黒くないから
黒くなったら戻れない
未那実:意味分かんない
骸:一般人が知ることじゃない
今すぐにでも忘れた方がいい
取り返しがつかなくなる前に
ってことだよ
未那実:は、はぁ…?
銀色:……なるほどなぁ
難儀、不運、可哀想、地獄だ
お前に当て嵌める言葉はどれも負だなぁ
未那実:私を……見た?
銀色:俺はお前以上に過去も未来も見えるぞ
お前より遥かに占いについても知ってる
オママゴトじゃねーからな
尾先:聞いてもいいのか?
銀色:それはコイツ次第だろうな
とても軽く口にすることじゃねーわな
骸:銀色がそう言うなら、そうなんだろうね
さて、どうしようか
記憶を消すなんて大層なことやるにしても準備もしてないし
樺涅:食べる?
骸:いや、それだと負荷が大き過ぎて
この子が廃人だよ
樺涅:そっか
未那実:何?なんの話をしてるの?
骸:キミをどうするか、だよ
このまま放り出したら死ぬだろうし
キミのプライベートに首を突っ込むのも
キミの許可なしじゃ、やりたくないって
未那実:あなた達は何なの?
普通じゃない
骸:あぁ…自己紹介がまだだったね
先に会ったのはオサキか
尾先:俺は話したからいい
骸:じゃあ僕だね
僕の名前は骸
これはあだ名であり、ハンドルネームであり
二つ名だったり、通り名だったり、異名と
まぁそんなもんだよ
それと……
未那実:えっ……ひっ……な、に……
アッ……
骸:はい、おしまい
こんな眼を持っているよ
未那実:はぁ……はぁ……
何……今の……
骸:ん?
未那実:凄く……
骸:キミ……危険だね
未那実:……え?
樺涅:私は樺涅
先生の所で一緒に住んでる
不老不死
未那実:えっ、不老不死?
樺涅:そう、死なないの
未那実:嘘でしょ?
骸:本当だよ
未那実:……いい、見ないでおく
銀色:賢明な判断だ
俺は銀色、同じく偽名だ
呪術、占いとかそっち方面の専門
人を殺したい時は俺に言え
金は貰うがな
未那実:何それ、誰でも殺せるの?
銀色:人なら、な
未那実:じゃあ、その人殺してみてよ
尾先:は?何で俺を
銀色:無理だな
未那実:はぁ?
銀色:人なら、と言った筈だ
そいつを殺すなら今は無理だ
逆に殺される
未那実:何よ、ここにいる全員が人じゃない訳?
骸:見方によっては人じゃないし
ちゃんと人でもあるよ
未那実:意味、わかんない
骸:じゃあ、次はキミの番だね
未那実:……未那実、高二
銀色:はぁー!若いなぁ
骸:過去について僕たちに知られたくないことは?
未那実:……いいよ、全部話して
銀色:いいのか?
未那実:だって、こんな人かも分からない人たちに話した所でどうなるって言うの?
樺涅:気が強い、それとも不安の裏返し?
未那実:分かったようなこと言わないで
樺涅:そう、じゃあいいけど
尾先:許しも得たところで、話してもらおうか
銀色:じゃあ、俺から言うが
自分で言いたきゃ自分で言え
未那実:わかった
銀色:現状、こいつに家族はいないようだ
家も無いからラブホみたいなところに住んでるな?
金は、その占い紛いと除霊紛いで稼いでいるようだが
見たところ天命漏らしは既でで終わってる
そこは命拾いしたと言ってもいいが
除霊紛いで、霊には目を付けられていることには違いないだろう
タイミング良かったと言えるな
未那実:マジで見えてるの?
銀色:間違ってるか?
未那実:当たり過ぎてて怖いだけ
骸:家族がいない?死別?
銀色:いや、虐待だろうな
尾先:逃げ出したってことか
銀色:親達は探してもいないだろう
捜索願いも出てないだろうし
学校も行ってる気配ないしな
樺涅:学校……
骸:羨ましいかい?
樺涅:ううん
未那実:……ねぇ、なんでちゃんと言わないの?全部見たんでしょ?
銀色:それはまた後で教えてやる
そんでまぁ、今ここで対処すれば命は助かるだろう
ただ、保護はどうする?
結局、聞く耳なきゃ死ぬぜ
骸:未来は?
銀色:見たくねぇな
骸:それは、どうして?もう見たんでしょ?
銀色:見てねぇ
骸:銀色、嘘は良くないね
改変しようとしてないかい?
銀色:……
尾先:そこの話は、俺にはよく分からんが
命が助かるってことは死ぬ可能性もあるわけだ
銀色:あぁ、天命漏らしは人だけじゃないからな
霊や妖怪に取り憑かれて口割られたら終わりだろ
樺涅:私のような不老不死とまではいかないけど
霊も妖怪も寿命なんてあってないようなものだから
銀色:吸うだけ吸ってバイバイだな
尾先:あぁ、目は付けられているんだったな
銀色:あとは機会を窺っていた、ということだな
馬鹿だからなぁ
“いつでもやれる”で放置してたんだろ
骸:時間が無限にある分、急ぎじゃないからね
悪戯に近いモノだよ、人の命なんて玩具だ
未那実:ねぇ、そろそろ教えて
私、死ぬの?
銀色:お前がやろうとしていたのは天命漏らしだ
占い師になりてぇなら学ばなきゃいけない
というより、自衛の為の知識だよ
未那実:身を守る為の?
銀色:あぁ、占い師じゃなくてもだ
怪異と関わるんだったら知らなきゃ死ぬ
尾先:それを知りもしないで俺に言うから
お前は運が良かったと言うべきか……
骸:今回の場合は、良かったで済まそうか
尾先:納得できないけどな
未那実:それで、何なの?その天命漏らしって
言っちゃいけないことがあるの?
骸:過去、現在、未来
生きている今も、死後のことも
全ての時間は等しく流れていて
それを見ることができる人間がいる
その見方に違いがある、それが占いだったり、天啓だったり
未那実:天啓?
尾先:神なんかにお告げをされた奴らだ
占い師以外に、予言者、未来予知なんてのも
聞いたことがあるだろう?
樺涅:それら全てに禁忌があって
天命漏らしはその一つ
本来、未来なんて誰にも解らない
解ったとしても話しちゃいけない
未那実:何で駄目なの?
教えてあげて、それがなんで悪くなるの?
結婚のことだって、病気になるって教えるのだって
誰かの為になることじゃない!
銀色:知りもしない、確定していない未来を話すってことはなァ
前借りなんだよ
未那実:前借り……?
骸:寿命だよ
知らない未来を知ったら、その分寿命が削られる
話した方も、話された方もね
未那実:嘘……
じゃあ、私がやってたことって
樺涅:アナタはまだ大丈夫
だけど、それでも危なかった
未那実:……
銀色:対人だった場合は、まだいい方だ
遣り様はいくらでもあるからな
だが、さっきも言ったが妖怪や霊にやられてみろ
何十年、何百年先の未来を話せば
どうなるか解るな?
しかも、相手は寿命なんざ削られても屁でもねぇ
未那実:死ぬ……
尾先:あぁ、そうなるな
それで力も碌に知らずに除霊もしていた
何件かは運良く対処していたのかもしれんが
目も付けられているみたいだからな
遅かったら最悪の未来だったな
未那実:わた……し、他の人も巻き込んで……
樺涅:良かったね、誰も巻き込まなくて
無知は人を殺すよ
未那実:……
銀色:俺が占いをよく知っていると言ったな
お前の過去を話す時も確定して言わなかっただろ?
そういうことなんだよ、過去も未来も確定はしない
占いを受けたことはあるか?
ほぼ、どいつも当たり障りないことを言うだろう
それは天命漏らしを行わない為なんだよ
骸:もし、逆に確定して話すような占い師がいたとしたら
それは無知な愚か者か、死にたがりか
人の寿命を奪う怪異かもね?
それと、知識がある本物を見分ける指標にもなるね
未那実:何も知らなかった……私は…馬鹿だ
尾先:……
樺涅:それで?先生
この子、どうするの?
骸:うん、僕の家は樺涅がいるし
尾先:おい、待て、俺の家も無理だぞ
そんな余裕なんてねぇよ
銀色:おいおい、待て、なんで俺を見てるんだ?
樺涅:あぁ、そっか
呪術の専門だった
銀色:いや!おい!なんで!
骸:未来を見たんでしょ?銀色
銀色:お前!骸!見えねぇ未来を話すな!
未那実:何の話……?私別に一人でいいんだけど
樺涅:アナタはもっと学ぶべき
学校にも行く気がないんだったら
こっちの事知った方がいい
骸:やっぱり羨ましいんだね、カバネ
樺涅:違う
尾先:俺も賛成だ
霊感が強いのは重宝するだろう
銀色:だったらお前が連れて行け!
尾先:呪術は専門外だ
銀色:んだと!?狐だろうが!
尾先:興味なくてな
銀色:グッ……!!
未那実:今日のことで色々知ったけど
気をつけるだけじゃ駄目なの?
骸:今は大丈夫だけど
目が付けられているのが問題かな
一人で対処できないヤツが来たらって思うとね
その点、銀色は強いから大丈夫
銀色:お前の方が強いだろうが!
骸:無意識に結界張って、歩く要塞みたいな人に言われたくないな
気づいてる?銀色って時々、透明人間になるんだよ
未那実:えっ?
樺涅:結界が強過ぎて認識できないほど
境界がブレるの?
尾先:いや、嘘だろ?
骸:それを無意識でやるのが銀色だよ
尾先:おいおい…バケモノかよ
銀色:……おい、餓鬼
未那実:私のこと?
銀色:あぁ、俺の弟子になるか?
未那実:えっ、いや、どうすればいいの?
銀色:親もいねぇ、住む場所無ぇ
だったら自立するまでは弟子にしてやるよ
骸:諦めたみたいだね
銀色:これ以上ゴネたら、何言われるかわからねぇからな
未那実:…えっと、私は
銀色:お前は俺に近い
呪術に関わりが深いんだろうな
だったら力の扱い方やその他諸々教えてやるってことだ
ただ、俺は一箇所に留まれねぇ
海外生活も多いぞ
未那実:……行く、お願いします!
銀色:……はぁ
まぁ、そういう未来か
尾先:なんとか収まったようだな
樺涅:今回はオサキの依頼ってことでいいよね?
銀色の報酬はその子
銀色:いや、おい、巫山戯んな
樺涅:ふーん
銀色:おい、お前、そんなキャラか?
樺涅:はい、これがウチの請求
尾先:あぁ……いや、おい、巫山戯んな
骸:仲が良くて何よりだよ
さて、名前どうしようか
未那実:名前?
骸:こっちに関わるなら名前は捨てないとね
名は縛りや契約の力があるから
公にするもじゃないよ
未那実:そっか、新しく生まれ変わるみたいなもんか
骸:強いね、それでいいよ
銀色:俺の弟子だろ?だったらお前は織紙だ
未那実:オリガミ?
銀色:可愛く、七夕の織姫の織でも使え
紙は、ちり紙だがな
未那実:何それ、ちょっと言い方酷いんだけど
銀色:俺が銀色なのは、折り紙の銀が好きだからだ
偽名なんざ、そんなもんだ
未那実:織紙……わかった
それでいいよ
銀色:はぁー、ちょっと遊びに来たつもりが、とんだ拾い物だ
明日の昼に此処に来い
色々準備もあるだろうからな
未那実:……はい
骸:さ、一件落着ってことで
帰る時は棚に触らないようにね
危ないモノあるから、さ
【間】
尾先:あれでよかったのか?
骸:銀色が良いって言ったなら良いんだよ
尾先:そうか
骸:銀色はね、強いんだ
それこそ、日本の十本指に入るよ
尾先:どういうことだ?
骸:特殊な人間がいるとして、その中でも最も優れてる
十人の内の一人ってこと
尾先:じゃあお前も、その一人だな
骸:ハハッ、僕からすればオサキもそうなんだけど
尾先:俺が?そんなわけないだろ
骸:そう、今は、ね
尾先:……
骸:惹かれ合うように、出逢うのかもね
尾先:……あぁ、そうかもな
樺涅:十本指、私は入らない?
骸:あはっ、カバネの立ち位置は難しそうだ
尾先:じゃあな、俺も帰る
骸:うん、またね
樺涅:厄介ごとは持ってこないでね
尾先:善処はしてやるよ
そして、数年後ーー。
織紙:クソ、死ね
尾先:お前……
織紙:なんでいるのよ
尾先:逆に聞きたいくらいなんだが?
骸:やぁ、二人とも
いつからそんなに仲悪くなったんだい?
織紙:やっほー!骸ちゃん!
相変わらず可愛いわ
尾先:お前はいつからそんなに仲良くなったんだ?
骸:色々あって、関わって行くうちに
尾先:じゃあ俺もそっくりそのまま返す
織紙:もう、師匠がインドに行っちゃって
久々の帰国だったのにつまんないから来ちゃった
骸:ウチは溜まり場じゃないよ、織紙
樺涅:ん、じゃあこれ
骸:あぁ!そうか
尾先:なんだ?
骸:じゃあ、仲良くなるついでに
3人で面白いことでもしない?
樺涅:先生、私も
尾先:面白いことって……また除霊かよ…
織紙:骸ちゃんとなら何処にでも行くわ!
オサキはそこら辺で殺されてなさい
骸:ハハ、じゃあ、行こうか
二人の仲が良くなる未来だといいね
天命 終
樺涅:……これがそう見えるの?
骸:確認だよ、一応ね
樺涅:先生って、時々意地悪だよね
知ってるくせに、解ってるくせに
知らないふりをする
骸:何故だか、解るかい?
樺涅:興味ない
骸:はっきりと物事を言うのは良くないんだ
特に僕たちの場合は、ね
樺涅:そう……
銀色:話は終わったかい?
骸:やぁ、久しぶりだね銀色
樺涅:ほら、知り合いだった
銀色:まぁなぁ
帰ってきたついでに寄っただけだ
茶ぁとか、そういう気遣いは無しだ
樺涅:ごめんなさい
最初から出す気なかった
銀色:いい子を育ててるなぁ、骸?
骸:あはは、誰に似たんだろうね
銀色:いや、お前んとこなら大丈夫だろうけどな
普通は出されたモンなんか口付けんからなぁ
樺涅:そんなことはしない
ちょっと印象悪すぎ
骸:警戒はこの業界じゃ日常茶飯事だから
悪く思わないことだよ
銀色:骸は特化というより、全般だからなー
まぁ、俺に使うなんて馬鹿な真似もせんだろう
樺涅:それで、要件は?
銀色:いや、だからなぁ?
寄っただけなんだよ、本当に
面白い話でもあれば飛びつくが
何もないなら俺の土産話が良いか?
骸:あー、最近面白い人に会ったよ
オサキって言ってさ
銀色:オサキ?……憑物筋か?
あそこは絶えたと聞いていたが、生き残りがいたのか
骸:生き残りというか元凶というか
銀色:ふぅん?
ソイツとは一度会ってみたいな
骸:まぁ、すぐにでも会えるんじゃない?
樺涅:未来でも見えてる?
骸:流石にそんな力は、この眼に無いよ
銀色:こういう業界、お得意のヤツさ
言えば叶ったりするんだよ
悪い意味が多いがな
樺涅:アナタは何?凄く黒いんだけど
銀色:あぁ、俺か?
俺はなァ……
【間】
尾先:25万……まぁ安くはないか
地縛霊に関しては、まぁ…うーん
骸のやつ……いや、頼りたくはねぇな……
出張するのはいいんだが、はぁ…
未那実:ねぇ、オッサン
アンタ、妖怪に憑かれてるよ
尾先:あ?誰だ?
未那実:祓ってあげようか?
尾先:おいおい、高校生くらいか?
補導の時間は過ぎてるぞ、家に帰れ
未那実:ねぇ!本当に妖怪が……
尾先:知ってるよ、これは俺の所有物だ
未那実:はぁ?
尾先:あと、俺は二十代だ
オッサンじゃねーよ
未那実:うっせーよ!その妖怪を祓ってやるって……
尾先:はぁ……霊感があるのはわかったが
話しかける相手は選べ
未那実:ウッ……ちょっ……
尾先:俺は憑いてる霊体を使役できる
祓って貰わなくて結構
これは俺のモノだ
尾先の発する異様な圧に嘔吐する未那実
未那実:ウッ……オェっ…
尾先:分かったら帰れ、不良少女
未那実:ちょ……と、待ちなさ……い!
【間】
銀色:と、まぁ呪い関係は俺の得意とするところだ
誰かを殺したくなったら頼っていいぞ?
即死だろうが、ジワジワ殺そうがお手のものだ
まぁ、金はたんまり貰うがな?
樺涅:頼らないから、大丈夫
銀色:誰にでもは売らねーよ?骸んとこのお前だから売るんだ
樺涅:じゃあ、霊や妖怪は殺せる?
銀色:あー……まぁ、うん
モノによるな
樺涅:そう
じゃあ、私は?
銀色:無理
樺涅:じゃあ、頼らない
骸:ハハッ!仲良くなったようで嬉しいよ
樺涅:……そう見える?先生
銀色:にしても、……はぁ、人魚に肉人かぁ?
あと三尸虫も無いな?
樺涅:そこまで見えるの?
銀色:呪い関連に関わってるとな
目も肥えるんだよ、ある程度はな
龍脈も弄ったりするもんで……感度ビンビンだ
樺涅:言葉が汚い
骸:おじさんだから、勘弁してあげて
銀色:言うなぁ~骸ォ
骸:けど、間違いなく呪術やそれに関連したことで、銀色以上は居ないよ
色々あって日本にもあまり滞在できないし
樺涅:そうなの?
銀色:基本は海外飛び回ってるからな
というより、一箇所に留まるとダメなんだ
樺涅:へぇ
【間】
尾先:…………
未那実:…………
尾先:なんで付いてくるんだよ
未那実:はぁ?帰り道が同じだけでしょ?
尾先:はぁ……
未那実:ねぇ、占ってあげようか?
尾先:かまってちゃんか?
生憎、占いとかそんなもんに頼る人種じゃないんでな
未那実:いいから、ねぇ、見てあげる
尾先:あのな、いい加減
未那実:あれ?アンタ、家族が……
尾先:おい
未那実:え?
尾先:何、見たんだ?
未那実:えっ、いや、なんだろ……
尾先:もう口に出すな、いいか?
未那実:はぁ?何よ?聞いたり、言うなって言ったり
尾先:俺の過去の断片を見たな?
それができるってことは逆もあり得るな?
未那実:いや、ちょっと、何、いきなり
尾先:お前、誰かに同じような占いしたか?
未那実:えっ、少しだけ
尾先:占いについて学んだことは?
未那実:そんなことある訳ないでしょ?
尾先:未来について確定したことは?
未那実:はぁ?どういう意味?
尾先:未来を見て、話したことは?
未那実:一人…だけ、もうすぐ結婚するって話はしたけど
尾先:どんな風に?
未那実:だから!2年後に結婚するって言ったの!
尾先:『かもしれない』とは言わなかったのか?
未那実:はぁ?
尾先:結婚するかもしれない、結婚相手が見つかるかもしれない
そんな言い方じゃなくて、結婚するって言ったのか?
未那実:うん、そうだけど
尾先:はぁ……まぁ、そのくらいなら大丈夫なのか…
未那実:ねぇ、さっきから何?
尾先:お前、死ぬぞ?
未那実:……えっ?
【間】
骸:なんで日本に帰ってきたの?
銀色:あぁ、久々の里帰りついでに
龍脈巡ってやろうかと思ったりな
あとは、まぁ観光か
樺涅:嘘っぽい
銀色:そんなことは無いんだがな~
骸:じゃあ、当分は日本に?
銀色:あぁ、今回はそのつもりだが
こればっかりは分からんからな
骸:それもそうか
ん?
銀色:電話か?
骸が携帯を持ってるのは意外というか、似合わないというか
骸:ある程度、連絡がついた方がいい時もあってね
時代に合わせていかないと
なんでもできるって訳でもないし
じゃあちょっと失礼するよ
電話を取る骸
その主は尾先だった
尾先:骸か?やっと繋がった
骸:やぁ、オサキ
何?何かあった?
尾先:いや、俺の話じゃないんだが
占いや呪いについて少しな
骸:タイミング完璧だね
尾先:は?どういうことだ?
骸:今さ、その件に関してプロというか
凄く、凄ーい人がいるんだよ
尾先:……楽しそうだな?
骸:アッハ!分かるかい?
尾先:あぁ
銀色:俺の話でもしてるのか?
骸:あぁ、ちょっと待ってね
場を整えておくから……
樺涅:また何かありそう
お茶、用意した方がいいかな
銀色:こりゃ想定外に長居になりそうだ
茶ァ、貰おうか
樺涅:ふふっ、淹れてあげる
銀色:あぁ、頼む
【間】
骸:いらっしゃい
尾先:邪魔する
未那実:ウッ……何…ここ
樺涅:こっち、座って
銀色:どうも
尾先:……あぁ、アンタか?
銀色:オサキなんだってな、お前
大変だったな
尾先:知ってるのか?
銀色:あぁ、あそこにも龍脈があっただろ?
知らんかもしれんが
尾先:いや、知っている
……本題に入るが大丈夫か?
骸:うん、その女の子のこと、かな?
尾先:あぁ
樺涅:ねぇ、この子……同類?
尾先:樺涅と、という意味か?
樺涅:そうね、それでいい
尾先:俺も聞いた話であって解らんが
未那実、さっきの話をしてくれ
未那実:その前に、なんなの?コイツら
骸:あらら、不良少女だ
銀色:おーおー、威勢がいいねぇ
俺たちに囲まれてソレが言えるかぁ?
未那実:えっ、ちょっと、まって
何……こいつら……
尾先:見えたか?
未那実:嘘……でしょ?
なんで、生きてる……の?
銀色:ほぉ?目が良いな?
俺はまだしも、骸のまで見えてんのか?
未那実:黒過ぎて…何も見えない……
見えるモノがみえない…?
樺涅:先生、これって
骸:うん、かなり霊感が強いね
今まで苦労してそうだ
はい、じゃあ衒らかすのは終わり
未那実:ウッ……
樺涅:あ、ちょっと待って
尾先:……
未那実:オェッ……
樺涅:大丈夫?
銀色:見える割に耐性がないんだなぁ
骸:で、話はなんだい?
尾先:この状態じゃ喋れねぇか
俺もさっき会ったばかりだから
詳しくはわからないんだが
骸:あれ?ナンパ?
尾先:だったら、どれだけ良かったか……
銀色:だろうなぁ、この感じなら
ナンパより面倒くせぇモン、引き当てたな
尾先:それで、最初は俺のクダを祓うとか言い出してな
無視してたんだが
樺涅:無視できることじゃなさそうだけど?
ちょっと見せたでしょ?
尾先:……あぁ、そうだけどな
骸:カバネ、そこは突っ込まなくていいよ
樺涅:あ、そう
尾先:次は占うと言い出して、それで俺の過去の断片を見やがった
ソレができるってことはで詰めたんだが
銀色:天命漏らしか
尾先:察しがいいな
銀色:お前じゃ対処ができないレベル、或いは
面倒くさくなっただけかもしれんが
頼る相手が、骸って時点で難問だろ
骸も俺がいるってことで嬉々としていたしな
状況を見て判断するに間違いはないはずだ
骸:流石、と言いたいところだけど
天命漏らしにしては元気だね、この子
未那実:天命……漏らし…?
尾先:お前がやった、未来を確定して伝えることは禁忌なんだよ
俺が説明しても意味がなさそうだったからな
骸に解らせてもらった方が話が入ると思ったってのが
まぁ、俺の思惑だな
樺涅:先生、めんどくさいのに絡まれた
お金いっぱい貰おう
骸:確か欲しいモノがあるんだっけ?カバネ
樺涅:ちょうどいいカモが来た
尾先:お前ら……いや、そうなるよなぁ……
銀色:ハハハ!楽しい話もここまでにしとこうぜ
顔色もいい、どうやら既に留まったか
そう言い、未那実に顔を近づける銀色
未那実:ちょ、顔が……近い
銀色:色気付いてんじゃねぇよ餓鬼
はーん、なるほどォなァ?
さては過去に強い方か
未那実:過去に強い?
銀色:オサキを見て、まず過去を先に見たんだろう?
過去を見ることに長けてるってこったな
未来もそこそこ見えてはいるようだが、まだ甘いな
未那実:私、見えるよ
オッサンの未来だって……えっ?
何これ……
銀色:死にたいのか?俺の未来なんぞ見たら
それこそ、吐くだけじゃ済まんぜ
未那実:ヒッ……
樺涅:銀色の未来を見たら駄目だよ
アナタはまだ普通だから
取り込まれて戻れなくなる
少し近いけど
未那実:普通……?近い?
樺涅:まだそこまで黒くないから
黒くなったら戻れない
未那実:意味分かんない
骸:一般人が知ることじゃない
今すぐにでも忘れた方がいい
取り返しがつかなくなる前に
ってことだよ
未那実:は、はぁ…?
銀色:……なるほどなぁ
難儀、不運、可哀想、地獄だ
お前に当て嵌める言葉はどれも負だなぁ
未那実:私を……見た?
銀色:俺はお前以上に過去も未来も見えるぞ
お前より遥かに占いについても知ってる
オママゴトじゃねーからな
尾先:聞いてもいいのか?
銀色:それはコイツ次第だろうな
とても軽く口にすることじゃねーわな
骸:銀色がそう言うなら、そうなんだろうね
さて、どうしようか
記憶を消すなんて大層なことやるにしても準備もしてないし
樺涅:食べる?
骸:いや、それだと負荷が大き過ぎて
この子が廃人だよ
樺涅:そっか
未那実:何?なんの話をしてるの?
骸:キミをどうするか、だよ
このまま放り出したら死ぬだろうし
キミのプライベートに首を突っ込むのも
キミの許可なしじゃ、やりたくないって
未那実:あなた達は何なの?
普通じゃない
骸:あぁ…自己紹介がまだだったね
先に会ったのはオサキか
尾先:俺は話したからいい
骸:じゃあ僕だね
僕の名前は骸
これはあだ名であり、ハンドルネームであり
二つ名だったり、通り名だったり、異名と
まぁそんなもんだよ
それと……
未那実:えっ……ひっ……な、に……
アッ……
骸:はい、おしまい
こんな眼を持っているよ
未那実:はぁ……はぁ……
何……今の……
骸:ん?
未那実:凄く……
骸:キミ……危険だね
未那実:……え?
樺涅:私は樺涅
先生の所で一緒に住んでる
不老不死
未那実:えっ、不老不死?
樺涅:そう、死なないの
未那実:嘘でしょ?
骸:本当だよ
未那実:……いい、見ないでおく
銀色:賢明な判断だ
俺は銀色、同じく偽名だ
呪術、占いとかそっち方面の専門
人を殺したい時は俺に言え
金は貰うがな
未那実:何それ、誰でも殺せるの?
銀色:人なら、な
未那実:じゃあ、その人殺してみてよ
尾先:は?何で俺を
銀色:無理だな
未那実:はぁ?
銀色:人なら、と言った筈だ
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未那実:何よ、ここにいる全員が人じゃない訳?
骸:見方によっては人じゃないし
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未那実:意味、わかんない
骸:じゃあ、次はキミの番だね
未那実:……未那実、高二
銀色:はぁー!若いなぁ
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未那実:……いいよ、全部話して
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未那実:だって、こんな人かも分からない人たちに話した所でどうなるって言うの?
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未那実:分かったようなこと言わないで
樺涅:そう、じゃあいいけど
尾先:許しも得たところで、話してもらおうか
銀色:じゃあ、俺から言うが
自分で言いたきゃ自分で言え
未那実:わかった
銀色:現状、こいつに家族はいないようだ
家も無いからラブホみたいなところに住んでるな?
金は、その占い紛いと除霊紛いで稼いでいるようだが
見たところ天命漏らしは既でで終わってる
そこは命拾いしたと言ってもいいが
除霊紛いで、霊には目を付けられていることには違いないだろう
タイミング良かったと言えるな
未那実:マジで見えてるの?
銀色:間違ってるか?
未那実:当たり過ぎてて怖いだけ
骸:家族がいない?死別?
銀色:いや、虐待だろうな
尾先:逃げ出したってことか
銀色:親達は探してもいないだろう
捜索願いも出てないだろうし
学校も行ってる気配ないしな
樺涅:学校……
骸:羨ましいかい?
樺涅:ううん
未那実:……ねぇ、なんでちゃんと言わないの?全部見たんでしょ?
銀色:それはまた後で教えてやる
そんでまぁ、今ここで対処すれば命は助かるだろう
ただ、保護はどうする?
結局、聞く耳なきゃ死ぬぜ
骸:未来は?
銀色:見たくねぇな
骸:それは、どうして?もう見たんでしょ?
銀色:見てねぇ
骸:銀色、嘘は良くないね
改変しようとしてないかい?
銀色:……
尾先:そこの話は、俺にはよく分からんが
命が助かるってことは死ぬ可能性もあるわけだ
銀色:あぁ、天命漏らしは人だけじゃないからな
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銀色:吸うだけ吸ってバイバイだな
尾先:あぁ、目は付けられているんだったな
銀色:あとは機会を窺っていた、ということだな
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“いつでもやれる”で放置してたんだろ
骸:時間が無限にある分、急ぎじゃないからね
悪戯に近いモノだよ、人の命なんて玩具だ
未那実:ねぇ、そろそろ教えて
私、死ぬの?
銀色:お前がやろうとしていたのは天命漏らしだ
占い師になりてぇなら学ばなきゃいけない
というより、自衛の為の知識だよ
未那実:身を守る為の?
銀色:あぁ、占い師じゃなくてもだ
怪異と関わるんだったら知らなきゃ死ぬ
尾先:それを知りもしないで俺に言うから
お前は運が良かったと言うべきか……
骸:今回の場合は、良かったで済まそうか
尾先:納得できないけどな
未那実:それで、何なの?その天命漏らしって
言っちゃいけないことがあるの?
骸:過去、現在、未来
生きている今も、死後のことも
全ての時間は等しく流れていて
それを見ることができる人間がいる
その見方に違いがある、それが占いだったり、天啓だったり
未那実:天啓?
尾先:神なんかにお告げをされた奴らだ
占い師以外に、予言者、未来予知なんてのも
聞いたことがあるだろう?
樺涅:それら全てに禁忌があって
天命漏らしはその一つ
本来、未来なんて誰にも解らない
解ったとしても話しちゃいけない
未那実:何で駄目なの?
教えてあげて、それがなんで悪くなるの?
結婚のことだって、病気になるって教えるのだって
誰かの為になることじゃない!
銀色:知りもしない、確定していない未来を話すってことはなァ
前借りなんだよ
未那実:前借り……?
骸:寿命だよ
知らない未来を知ったら、その分寿命が削られる
話した方も、話された方もね
未那実:嘘……
じゃあ、私がやってたことって
樺涅:アナタはまだ大丈夫
だけど、それでも危なかった
未那実:……
銀色:対人だった場合は、まだいい方だ
遣り様はいくらでもあるからな
だが、さっきも言ったが妖怪や霊にやられてみろ
何十年、何百年先の未来を話せば
どうなるか解るな?
しかも、相手は寿命なんざ削られても屁でもねぇ
未那実:死ぬ……
尾先:あぁ、そうなるな
それで力も碌に知らずに除霊もしていた
何件かは運良く対処していたのかもしれんが
目も付けられているみたいだからな
遅かったら最悪の未来だったな
未那実:わた……し、他の人も巻き込んで……
樺涅:良かったね、誰も巻き込まなくて
無知は人を殺すよ
未那実:……
銀色:俺が占いをよく知っていると言ったな
お前の過去を話す時も確定して言わなかっただろ?
そういうことなんだよ、過去も未来も確定はしない
占いを受けたことはあるか?
ほぼ、どいつも当たり障りないことを言うだろう
それは天命漏らしを行わない為なんだよ
骸:もし、逆に確定して話すような占い師がいたとしたら
それは無知な愚か者か、死にたがりか
人の寿命を奪う怪異かもね?
それと、知識がある本物を見分ける指標にもなるね
未那実:何も知らなかった……私は…馬鹿だ
尾先:……
樺涅:それで?先生
この子、どうするの?
骸:うん、僕の家は樺涅がいるし
尾先:おい、待て、俺の家も無理だぞ
そんな余裕なんてねぇよ
銀色:おいおい、待て、なんで俺を見てるんだ?
樺涅:あぁ、そっか
呪術の専門だった
銀色:いや!おい!なんで!
骸:未来を見たんでしょ?銀色
銀色:お前!骸!見えねぇ未来を話すな!
未那実:何の話……?私別に一人でいいんだけど
樺涅:アナタはもっと学ぶべき
学校にも行く気がないんだったら
こっちの事知った方がいい
骸:やっぱり羨ましいんだね、カバネ
樺涅:違う
尾先:俺も賛成だ
霊感が強いのは重宝するだろう
銀色:だったらお前が連れて行け!
尾先:呪術は専門外だ
銀色:んだと!?狐だろうが!
尾先:興味なくてな
銀色:グッ……!!
未那実:今日のことで色々知ったけど
気をつけるだけじゃ駄目なの?
骸:今は大丈夫だけど
目が付けられているのが問題かな
一人で対処できないヤツが来たらって思うとね
その点、銀色は強いから大丈夫
銀色:お前の方が強いだろうが!
骸:無意識に結界張って、歩く要塞みたいな人に言われたくないな
気づいてる?銀色って時々、透明人間になるんだよ
未那実:えっ?
樺涅:結界が強過ぎて認識できないほど
境界がブレるの?
尾先:いや、嘘だろ?
骸:それを無意識でやるのが銀色だよ
尾先:おいおい…バケモノかよ
銀色:……おい、餓鬼
未那実:私のこと?
銀色:あぁ、俺の弟子になるか?
未那実:えっ、いや、どうすればいいの?
銀色:親もいねぇ、住む場所無ぇ
だったら自立するまでは弟子にしてやるよ
骸:諦めたみたいだね
銀色:これ以上ゴネたら、何言われるかわからねぇからな
未那実:…えっと、私は
銀色:お前は俺に近い
呪術に関わりが深いんだろうな
だったら力の扱い方やその他諸々教えてやるってことだ
ただ、俺は一箇所に留まれねぇ
海外生活も多いぞ
未那実:……行く、お願いします!
銀色:……はぁ
まぁ、そういう未来か
尾先:なんとか収まったようだな
樺涅:今回はオサキの依頼ってことでいいよね?
銀色の報酬はその子
銀色:いや、おい、巫山戯んな
樺涅:ふーん
銀色:おい、お前、そんなキャラか?
樺涅:はい、これがウチの請求
尾先:あぁ……いや、おい、巫山戯んな
骸:仲が良くて何よりだよ
さて、名前どうしようか
未那実:名前?
骸:こっちに関わるなら名前は捨てないとね
名は縛りや契約の力があるから
公にするもじゃないよ
未那実:そっか、新しく生まれ変わるみたいなもんか
骸:強いね、それでいいよ
銀色:俺の弟子だろ?だったらお前は織紙だ
未那実:オリガミ?
銀色:可愛く、七夕の織姫の織でも使え
紙は、ちり紙だがな
未那実:何それ、ちょっと言い方酷いんだけど
銀色:俺が銀色なのは、折り紙の銀が好きだからだ
偽名なんざ、そんなもんだ
未那実:織紙……わかった
それでいいよ
銀色:はぁー、ちょっと遊びに来たつもりが、とんだ拾い物だ
明日の昼に此処に来い
色々準備もあるだろうからな
未那実:……はい
骸:さ、一件落着ってことで
帰る時は棚に触らないようにね
危ないモノあるから、さ
【間】
尾先:あれでよかったのか?
骸:銀色が良いって言ったなら良いんだよ
尾先:そうか
骸:銀色はね、強いんだ
それこそ、日本の十本指に入るよ
尾先:どういうことだ?
骸:特殊な人間がいるとして、その中でも最も優れてる
十人の内の一人ってこと
尾先:じゃあお前も、その一人だな
骸:ハハッ、僕からすればオサキもそうなんだけど
尾先:俺が?そんなわけないだろ
骸:そう、今は、ね
尾先:……
骸:惹かれ合うように、出逢うのかもね
尾先:……あぁ、そうかもな
樺涅:十本指、私は入らない?
骸:あはっ、カバネの立ち位置は難しそうだ
尾先:じゃあな、俺も帰る
骸:うん、またね
樺涅:厄介ごとは持ってこないでね
尾先:善処はしてやるよ
そして、数年後ーー。
織紙:クソ、死ね
尾先:お前……
織紙:なんでいるのよ
尾先:逆に聞きたいくらいなんだが?
骸:やぁ、二人とも
いつからそんなに仲悪くなったんだい?
織紙:やっほー!骸ちゃん!
相変わらず可愛いわ
尾先:お前はいつからそんなに仲良くなったんだ?
骸:色々あって、関わって行くうちに
尾先:じゃあ俺もそっくりそのまま返す
織紙:もう、師匠がインドに行っちゃって
久々の帰国だったのにつまんないから来ちゃった
骸:ウチは溜まり場じゃないよ、織紙
樺涅:ん、じゃあこれ
骸:あぁ!そうか
尾先:なんだ?
骸:じゃあ、仲良くなるついでに
3人で面白いことでもしない?
樺涅:先生、私も
尾先:面白いことって……また除霊かよ…
織紙:骸ちゃんとなら何処にでも行くわ!
オサキはそこら辺で殺されてなさい
骸:ハハ、じゃあ、行こうか
二人の仲が良くなる未来だといいね
天命 終
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