オサキ怪異相談所

てくす

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第一章

第七話 出会いの刻

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ある一室で、煙草の箱を眺めながらーー。

尾先:……ふぅ

煙草の箱を、机の引き出しに仕舞う
するとタイミングを見計らった様に電話が鳴り響くーー。

尾先:ん、茜…?どうした?
   あぁ、今日は散々だったな
   だが、本物の心霊スポットというのは、あぁいう場所なんだよ
   ……、怖くて眠れない…
   それは知らんが、え?何か話せ?
   あのな、話せる話も怪談話だ
   寝れないことに追い討ちかけるぞ
   …骸?あぁ…それも怪談話だ
   追々話そうと思っていたが……
   いいだろう、暇つぶし程度で、アイツとの出会い、話してやる
   だが、寝れなくなっても文句言うなよ
   骸と出会ったのは…確かーーー



【間】




尾先:悪霊退散!!…ふぅ
   これで大丈夫だ
   どうだ?背中の痛みは無いだろう?
   じゃあこの口座に入金してくれ、じゃあな

お礼を言い、家を出る老人

尾先:はぁ……

客を見送り、煙草に火をつける尾先

尾先:なんでこんなこと、しなきゃいけないんだ……

骸:悪霊退散~~って?

尾先:!?誰だ!?
   悪霊!?…いや、妖の類か?
   …人間……?

骸:アハハ、今時悪霊退散は聞かないね
  中々、面白い除霊をするじゃないか

尾先:いつからそこにいた?

骸:無駄、僕には効かない

尾先:何…?解ったのか?

骸:ふぅーん、ちゃんと除霊できるじゃないか
  けど、残念……僕は人間です

尾先:嘘だろ?そんな得体の知れないのにか?

骸:じゃあ自己紹介をしよう!
  はい、どうぞ?

尾先:……、オサキ
   長い木と書いてオサキだ

骸:あはは、偽名だね
  僕とお揃いだ
  じゃあ次は僕の番
  僕の名前は骸
  これはあだ名であり、ハンドルネームであり、二つ名だったり、通り名だったり、異名と
  まぁそんなもんだよ

尾先:そんなこと、一々説明しなくても分かる
   人間と言ったが、じゃあなんで、お前はそんなに人じゃないんだ?

骸:何が、人じゃないのかな?

尾先:全部だ
   雰囲気も中身も外面もな

骸:外見への誹謗中傷は今、五月蝿うるさいよ
  ネット社会じゃ炎上案件だ

尾先:面と向かって言っている分いいだろ
   自覚もあるように見えるが?

骸:ハハハ!まぁ…ね?
  じゃあ、ちょっと失礼して

尾先:ん?なん…だ…?
   ッッ!!…ゼェッ…やめ…ろ!!

骸:はい、おしまい

尾先:ッ!はぁ…はぁ……
   その目…!

骸:へぇ、君…

尾先:止めろ!

骸:半々か

尾先:ッ…あぁ、"クダ"

骸:主人が殺されそうだったのに動かなかったのかい?
  あぁ、違うね、格が違いすぎる
  僕が本気じゃ無いってこと解ってたんだ?
  賢い狐じゃないか

尾先:なんでお前が普通に喋れるんだよ…
   クソ、クダまで意味無しか

骸:ねぇ今僕は、オサキに興味深々なんだけど
  ふか~くお話しない?

尾先:俺は御免蒙ごめんこうむりたいが
   俺も気になることはある

骸:アハハ!じゃあお茶とお菓子も用意しよう

尾先:ここは俺の家なんだが



【間】



骸:一問一答にしよう!
  質問したら答えて交代

尾先:じゃあ俺から質問させてもらう

骸:じゃんけんーー

尾先:あ?

骸:ポイっと、はい僕の勝ち

尾先:……お前な…

骸:悪霊退散ってどんな気持ちでやってるの?

尾先:勝ち取って最初にそれかよ!?
   …お前はお祓いとか除霊はしないのか?

骸:時と場合による、それに今は僕の番なんだけど
  質問したから次も僕の番だね

尾先:厳しいな…
   まぁ、つまりはアレだ
   何かしてやらないと安心しないからだ

骸:なるほど

尾先:悪霊退散とでも言って、それっぽい除霊をする
   結果、除霊はしているわけだから
   症状もなくなって、余計に信じて効果も出る

骸:ニーズに合わせた支援方法ってわけだ

尾先:福祉とか教育業界っぽい言い方だな

骸:へぇ、浮世離れしてそうだけど、案外そうでもないのかな?

尾先:そこはお前もそうだろ
   こんなことやってはいるが、現実にも目を向けないとな

骸:悪霊やその類は、現実じゃないと?

尾先:……まぁな

骸:はい、じゃあ次はオサキの番

尾先:お前の番じゃなかったのか?

骸:質問したよ、3回も

尾先:あ?…あー……、なるほど
   色々気にはなるが…
   その目はなんだ?

骸:六道ってわかる?

尾先:あぁ、天道、地獄道とかのアレだろ?

骸:そう、僕は特殊な体質なんだ
  家系じゃないよ
  突然変異が正しいかもしれない
  僕はね…全部視えるんだ

尾先:全部?

骸:うん、全部
  オサキも視える方だけど
  僕はもっと視えるよ

尾先:なるほどな
   その目に関しては、よくわかった
   じゃあさっきのヤツはーー

骸:察しがいいね、その通り
  到底、人間が見て良いものじゃない
  だから、見るとさっきみたいになるんだ

尾先:あれでも軽い方だろ
   じゃあ、お前は

骸:次は僕の番

尾先:あぁ…そうだった

骸:んー、何を聞こうかなぁ
  あ、じゃあその煙草
  それ何?

尾先:あぁ、これか
   ……いや、分かってるだろ?

骸:質問に質問で返したらダメらしいよ

尾先:さっきから調子狂うな
   これは普通の煙草じゃない
   厄除けの意味合いが強いモノだ

骸:へぇ、自家製だ
  一本頂戴

尾先:一問一答をやめてくれたらな
   お前のペースに巻き込まれる

骸:別に良いよ、拘ってないし

尾先:……、ほら

骸:ふむふむ、なるほど
  あ、このまま質問してもいい?

尾先:あぁ、先に好きなだけ聞いてくれ

骸:なんで煙草型なの?

尾先:それに関しては二つ
   習慣と家柄だな

骸:どういうこと?

尾先:あぁ、中学の頃から吸っている

骸:わぁ、不良ってやつだ

尾先:時と場所は弁えているし
   これは百利あって一害も無しだ
   本物じゃないからな、それが一つ
   二つ目は祖父母と父親が愛煙家だった
   そっちに関しては、本物も吸っていた
   だから煙草型にしたんだと

骸:その影響ってことだね

尾先:あぁ、コレに関しては、依存性も中毒性もない
   やめようと思えばやめられる
   ただ、習慣になってしまったら
   少し、口寂しさもあるな
   ……吸わないのか?

骸:あぁ、僕は良い子だから

尾先:はっ、なんだそれ

骸:これは大事に保管しておくよ
  初めて見たし、持ってない

尾先:……お前は、なんなんだ?

骸:うん?僕は骸
  これはあだ名であり、ハンドルネームであり、二つ名だったり

尾先:それはさっき聞いた
   そうじゃない、お前は何者なんだ?
   なぜ俺の家に入れた?なぜ此処にいる?

骸:あはは、質問が多いなぁ
  そうだね…僕は
  “怪異屋”とでも呼んでくれ

尾先:怪異屋?

骸:そこはオサキと変わらない
  霊障に悩む人を助けたりしてるよ

尾先:嘘だろ?

骸:…僕の場合は、人も霊も助ける
   あとはオサキみたいな同業の手伝いかな
   ほら、僕ってよく視えるし
   或いは、誰も助けないし
   ……見殺しにもする

尾先:……

骸:他には?

尾先:なんでそんなことを?

骸:怪異屋は僕が生きていく為に
  お金を稼がないといけないからね
  オサキもそれは分かるよね?

尾先:あぁ、仕事だからな

骸:僕の場合は仕事と趣味が一緒になってるんだ

尾先:趣味?

骸:そう、僕は蒐集家なんだ

尾先:蒐集家…?

骸:怪異…
  そう呼ばれるモノ全てを集めたい
  関わっているモノ全て
  記憶も、情報も、物も、物じゃなくても
  だから、コレも蒐集品

尾先:厄除け煙草
   なるほどな、だから吸わないし保管するわけか

骸:これでいいかい?

尾先:俺に近づいたのは
   そのお前の趣味のためってことか

骸:あぁ、そうだよ

尾先:集めてどうする?
   話を聞く限り、良い趣味でも、集めていい代物でもない
   お前は、それをどうするつもりだ

骸:……それは…
  解らない、解らないんだ
  何故、集めたいとこの衝動に駆られるのかも
  集めた時に何がしたいのかも
  僕は、ずっと…それも探している

尾先:……

骸:の、かもしれないね

真剣な表情かに見えたが、笑顔で答える骸

尾先:全く読めないな、偽名もそうだが、全然掴めない、歳も性別も本当のお前が何一つ見えない
  怪異と関わる上では完璧なまでの存在だ

骸:あはは、照れるな

尾先:だからこそ、今までの話全てが
   俺は嘘に思えてしまう

骸:自由さ、それは

尾先:だが、蒐集家ってのは本当なんだろうな
   集めたい理由も本当はあるんだろうが

骸:アハハ、オサキ
  僕は君が好きになりそうだよ

尾先:複雑な気持ちだな
   質問も終わりだ
   これ以上聞いても収穫はなさそうだ

骸:じゃあ、最後に僕からいいかい?

尾先:またくだらない質問か?

骸:質問というより、提案なんだけど

尾先:提案?

骸:うん
  ……僕と一緒に除霊に行かないかい?



【間】



除霊に向かう2人ーー

尾先:誰からの依頼だ?

骸:依頼じゃないよ
  僕が偶々見つけたって感じかな

尾先:だったら別に除霊する必要ないだろ
   何か被害があったワケでもないし

骸:うーん、そうなんだけどね
  ほら、僕ってオサキに興味あるし
  実際に見てみたいって感じで

尾先:さっき見てただろうが

骸:悪霊退散~ってやつ?

尾先:…悪い、忘れてくれ

骸:ま、アレは取り憑いた霊でしょ?
  今回は、地縛霊だから

尾先:地縛霊ね
   ただの地縛霊なら
   特別なことも起こらないと思うが

骸:詳しく話そうか
  僕が見つけた地縛霊は女の人
  何か理由があるから縛られてるワケだけど、無言で何考えてるか解らないんだ

尾先:話したのか?

骸:話しかけたんだけどね
  興味なし、って感じかな
  まぁ、オサキの言う通り
  被害も今の所ないんだけどさ
  ほら、時々いるから

尾先:霊感持ち、か

骸:そうそう
  僕が思うに、彼女から干渉している素振りはなかったから
  霊感持ちか、偶々チャンネルが合った人が、数回目撃してるって感じかも

尾先:被害がないならそっとしておけばいいものを

骸:そうもいかない
  見える人が増えてる

尾先:なるほど、そういうことか

骸:うん、このままいくと被害が出る
  そういうパターンだと思う

尾先:縛られる理由もわからん
   話もしてくれない
   強制的に除霊する手もあるが

骸:まぁ一緒に見てみようと思って

尾先:あまりいい事じゃないな

骸:もうすぐだよ



【間】



尾先:見た感じ、何かあっても大丈夫な様にも見えるがな
   人通りも車も少ない
   事故になり得る心配も少ない

骸:場所的にはね

尾先:自殺する場所にも適さない

骸:連れて行くパターンだってあるでしょ?

尾先:こちらを無視するのについて行くか?

骸:お目当てがいるかもでしょ?

尾先:まぁな
   だが、地縛霊だ
   そう簡単に動けるはずもないが

骸:近くに土地神もいないからね
  案外、動けるのかも

尾先:…お前、どこまで見えるんだ

骸:言ったでしょ?全部視えるって

尾先:…そうだったな

骸:いた

尾先:あれか?

骸:うん、やっぱり動いてない

尾先:ちょっと待て
   …よし、人は居ないな

骸:さて、話してみるかい?

尾先:あぁ、一度な

霊に近寄り話す尾先

尾先:なぁ、お前は何故、此処にいる?

しかし、反応がない

尾先:話せないのか?
   ……!?これは

骸:さて、オサキ
  ここで更に情報を与えようか

尾先:何?まだ何かあるのか?

骸:ご覧の通り、彼女は僕たちを無視する
  霊が視える人間って珍しいし
  霊からしても視える人間は有効活用できる
  取り憑くのにも都合が良い

尾先:あぁ、そうだな
   霊を祓えるか、強力な守護霊がいるなら別だが、ただ霊感があるだけの人間なら最悪、殺される可能性もある

骸:だけど、彼女はそれをしない
  何かを待っているのか
  ただ、此処にいる事が重要なのか
  それとも、もう満足しているのか

尾先:それが解らないんだろう?

骸:僕が除霊した方がいいと思う理由の一つ
  ただの霊感持ちの人間や、チャンネルが合った人間が
  最近増え出した、ということ
  正確に言えば、チャンネルが合う人間が、だけど

尾先:なんだと?

骸:この場所でのみ、チャンネルが合う様になってきている
  つまり、彼女の目撃情報が増え始めている

尾先:なんで、それを先に言わなかったんだ
   被害はないにしろ、それはそれで危険だ

骸:そしてーー
  彼女に最近、名前が出来た

尾先:何……?

骸:気づいたでしょ?その顔の左側

尾先:…あぁ

骸:左側半分が腐っているのか
  もう目も爛れ落ちそうだ
  肌の色も変色して緑色になってるね
  それを見た人たちが、こう呼んでいる
  緑子、ってね

尾先:名付けしたのか…?

骸:流石、オサキ
  名付けの基本を知ってるね
  ハハッ、まぁ当たり前か
  そして、僕が除霊した方がいいと思う理由の二つ
  つまり彼女はただの地縛霊じゃなくて
  もう既にーーー



骸:誰かを呪い殺すだけの力を持っているよ

尾先:っ!?

不気味な笑顔をこちらに向ける霊

尾先:なっ!

骸:カハッ…

急に吐血する骸

尾先:骸!!
   おい、しっかりしろ!
   (急に血を吐くだと?攻撃されたのか…)

骸:ハハハ!凄いね、やっとこっちを向いた

尾先:何してる!お前、呪われたのか!?

骸:いやぁ…ゴホッ、ゴホッ…名付けの力は凄いや
  ずっと無視するんだもん
  なるほど、名前を付けてあげたら喜ぶなんて…
  まるで子供じゃないか

尾先:何を言っている…?
   名前を付けただと?

骸:あぁ、僕が付けてあげたんだ

尾先:な…に?

先程まで吐血し、倒れていたが立ち上がる骸

骸:名前の無い霊に名を与えてみたかった
  どうなるんだろうって
  今までにも機会はあった
  だけど、今した事に後悔はない
  だって君がいるから、ねぇオサキ

尾先:お前、何を言っている!
   名付けしただと!?
   お前みたいな奴が名前を付けたらどうなるか
   解らないって言うのか!?

骸:知ってるさ
  意味の無いものに意味を与える
  なるほど、こんな感じなんだ…

そう言うと、不敵に笑う骸

尾先:お前!一体何がしたいんだ!
   全部嘘だったのか?
   俺をここまで連れてきて何がしたい?
   自分の趣味に巻き込むなよ!

骸:全部が全部、嘘じゃないさ
  チャンネルが合う人間が増えたのは本当
  名前を付けたのが僕ってだけ
  それ以外は本当だよ?

尾先:っ!
   (…おかしい、血を吐いて倒れていたが、コイツ……なんでこんなに平気そうなんだ?しかも、あの地縛霊も動いてない…)
   ……!?、動いてない?

骸:ハハハハ!気づいた?
  これは僕の結界みたいなものだよ
  だから大丈夫
  さぁ、この限られた時間の中で
  話をしよう、尾先仁狐

尾先:…何?

骸:長い木でオサキ
  いいや、違う
  尾の先に仁義の仁、それに狐で
  尾先仁狐、だよね

尾先:知っていたのか?

骸:何もせず会いに行くほど僕も馬鹿じゃないよ
  憑物筋つきものすじの家系で、幼少から霊と関わりがある
  一度、霊体とーー

尾先:黙れ、それ以上はいい
   何がしたいんだ
   名付けして、呪われて
   このままなら被害が増えるだけだ

骸:僕は、全部視えるんだ

尾先:……

骸:オサキ、さっき聞いたよね、僕に
  僕が蒐集家だと言ったら、集めてどうする?って

尾先:あぁ

骸:僕は、ね?オサキ
  味わいたいんだ、全部

尾先:味わいたい、だと?

骸:悪霊に取り憑かれたことはあるかい?
  自分が自分じゃない感覚を味わったことは?
  四肢が千切れそうな痛みを
  内臓が外側に出そうな不快感を
  頭が真っ白になって、何も考えられなくなって
  生と死が混在する世界を見たことはあるかい?

尾先:何を言っている…?お前は一体……

骸:人面犬に会った不気味さを
  口裂け女をポマードなんて呪文で追い払う優越感を
  ターボババアと走る疾走感を

尾先:っ……

骸:牛鬼に影を舐められ、身体が燃える体験を
  人魚の肉を食べて不死になる不安を
  件に予見された不幸を目の当たりにした絶望を
  きさらぎ駅で迷う孤独感を
  呪いにかかった閉塞感を

尾先:お前……

骸:あぁ、怪異だけじゃない
  UMAも、宇宙人も、この際纏めて味わおう
  雪男に殴られる喜びを
  ネッシーに食べられる安心感を
  ツチノコを見つけた虚無感を
  UFOにアブダクションされる期待感を
  身体を改造されても文句は言えない
  だけど、記憶を消された時の怒りをーー



骸:君は、味わったことがあるかい?
  味わいたいと思わないかい?
  自分の身体で、脳で、六感で
  全部、全部全部、僕は知りたい、味わいたい
  そして、誰かが味わっているのを
  僕は



骸:視てみたい

尾先:狂ってる…!!

骸:そうさ、オサキ
  僕は狂っているんだ
  自分で自分を視た時から
  あの時から!僕は!

尾先:自分の趣味嗜好に巻き込むな
   死にたきゃ勝手に死ね

骸:大丈夫、君は人間が大好きだから
  そして、僕は人間だから
  祓ってくれないと死んじゃうよ

尾先:…クソが

そして、時間が動き出す

骸:じゃあ、一足先に味わっておくよ
  ゴホッ、フフ…
  名付け親に対する呪いの痛みを、ね
  アハハ!じゃあオサキ
  あとは頼んだよ

そう笑いを浮かべながら倒れる骸

尾先:クソ…全く胸糞悪い話だ
   すまないが、お前には消えてもらう
   何故、此処にいるのか知らないが
   そう成ってしまったら終わりだ
   …いや、名前を付けられるのを待っていたのか?
   はは、はははっ…そうだな
   そういうことなんだな、骸
   全部視えてんだから当たり前か
   ……笑ってたもんな、お前…
   嬉しかったか?名前が付けられて
   だがな、相手が悪かったな
   ……喰え、“クダ”




【間】



一服している尾先

骸:へぇ、そんな除霊をするんだ

尾先:色々ツッコミたいとこがあるんだが
   まぁいい、クダを使ったのは餌代だ

骸:餌代、ね

尾先:お前のおかけで、大層な悪霊化したからな
   餌に使わせてもらった
   お陰で色々と浮いたよ

骸:それはいいよ
  今回はオサキの事を見れれば
  僕の目的は達成したわけだからね

尾先:集めてる記憶、情報ってことか

骸:あとは、さっきも言った通り
  名付け親としての呪い、悪霊からの攻撃の味
  フフ、しっかり楽しめたよ

尾先:そこだ
   なんでお前はピンピンしてんだ?
   血まで吐いて倒れたくせに

骸:僕は、そういった類のものは効かないんだ
  ただ、効かないなら経験できないからね
  ある程度は自分で調整して楽しむこともできる

尾先:バケモノかよ……

骸:僕を殺したいなら
  銃で頭を撃ったり、刃物で心臓を刺したり
  なんて、人間の様に扱ってくれると、あっさり死んじゃうけどね

尾先:そうなる場面も少ないだろうな
   お前は常に掴めないから

骸:アハハ、試してみるかい?

尾先:いや、いい
   今日は疲れた……

骸:今度は同業としてよろしくね、オサキ

尾先:俺はあまり関わりたくないがな
   …まぁ、関わらないといけないんだろうが

骸:オサキの秘密、というより家系の問題かな

尾先:まぁな
   ……いい

骸:ん?

尾先:関わってやる
   暇つぶし程度でな

骸:よろしくね、オサキ

尾先:はぁ…俺は今まで色々見てきたが
   お前が一番怖い、どんな怪異よりもな

骸:アハハハ、それは褒め言葉だよ

尾先:禁煙するか…

骸:習慣になってるのに?

尾先:どうやら厄除けにならないからな
   骸という厄を祓えなかった

骸:僕は人間だからね
  それに誹謗中傷は炎上案件だよ

尾先:あぁ、そうだったな
   ……帰るか

骸:楽しい夜だった
  オサキと居れば退屈しなさそうかも

尾先:程々にしてくれ
   今日みたいなことは勘弁だ


【間】



そして、時は戻り、現在

尾先:これが骸との出会いだ
   その後もアイツとは色々関わってきたが、やっぱり今もアイツの本心は掴めない
   ただ、同業として、味方としてなら
   アイツは一番に信用できる
   だが、仲良くしようと思うなよ
   言葉を借りるなら
   いつ、お前が苦しむ様を味わうか分からんからな
   どうだ?寝れないことに拍車がかかったんじゃないか?
   今日は早く休め、どうせお前の所には、悪霊なんて来ないからな、あぁ、おやすみ

電話を切り、煙草の箱を開け、一本取りだす

尾先:久しぶりにってやつか

それに火をつけ、一服する尾先

尾先:ふぅー…こんなもんだったか?

骸:おや?珍しいじゃないか
  禁煙してたはずなのに

尾先:骸!?お前…いつの間に

骸:アハハ、出会った頃を思い出しそうだよ

尾先:…お前…はぁ、やっぱ吸うもんじゃないな

骸:じゃあ、早速本題
  懐かしいついでに、これまた懐かしいことを、やってみないかい?オサキ

尾先:骸、お前まさか

骸:僕と一緒に除霊しに行かないかい?

尾先:ッ…あぁ、分かった
   暇つぶし程度に付き合ってやるよ



出会いの刻 終



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