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第一章
第七話 出会いの刻
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ある一室で、煙草の箱を眺めながらーー。
尾先:……ふぅ
煙草の箱を、机の引き出しに仕舞う
するとタイミングを見計らった様に電話が鳴り響くーー。
尾先:ん、茜…?どうした?
あぁ、今日は散々だったな
だが、本物の心霊スポットというのは、あぁいう場所なんだよ
……、怖くて眠れない…
それは知らんが、え?何か話せ?
あのな、話せる話も怪談話だ
寝れないことに追い討ちかけるぞ
…骸?あぁ…それも怪談話だ
追々話そうと思っていたが……
いいだろう、暇つぶし程度で、アイツとの出会い、話してやる
だが、寝れなくなっても文句言うなよ
骸と出会ったのは…確かーーー
【間】
尾先:悪霊退散!!…ふぅ
これで大丈夫だ
どうだ?背中の痛みは無いだろう?
じゃあこの口座に入金してくれ、じゃあな
お礼を言い、家を出る老人
尾先:はぁ……
客を見送り、煙草に火をつける尾先
尾先:なんでこんなこと、しなきゃいけないんだ……
骸:悪霊退散~~って?
尾先:!?誰だ!?
悪霊!?…いや、妖の類か?
…人間……?
骸:アハハ、今時悪霊退散は聞かないね
中々、面白い除霊をするじゃないか
尾先:いつからそこにいた?
骸:無駄、僕には効かない
尾先:何…?解ったのか?
骸:ふぅーん、ちゃんと除霊できるじゃないか
けど、残念……僕は人間です
尾先:嘘だろ?そんな得体の知れないのにか?
骸:じゃあ自己紹介をしよう!
はい、どうぞ?
尾先:……、オサキ
長い木と書いてオサキだ
骸:あはは、偽名だね
僕とお揃いだ
じゃあ次は僕の番
僕の名前は骸
これはあだ名であり、ハンドルネームであり、二つ名だったり、通り名だったり、異名と
まぁそんなもんだよ
尾先:そんなこと、一々説明しなくても分かる
人間と言ったが、じゃあなんで、お前はそんなに人じゃないんだ?
骸:何が、人じゃないのかな?
尾先:全部だ
雰囲気も中身も外面もな
骸:外見への誹謗中傷は今、五月蝿いよ
ネット社会じゃ炎上案件だ
尾先:面と向かって言っている分いいだろ
自覚もあるように見えるが?
骸:ハハハ!まぁ…ね?
じゃあ、ちょっと失礼して
尾先:ん?なん…だ…?
ッッ!!…ゼェッ…やめ…ろ!!
骸:はい、おしまい
尾先:ッ!はぁ…はぁ……
その目…!
骸:へぇ、君…
尾先:止めろ!
骸:半々か
尾先:ッ…あぁ、"クダ"
骸:主人が殺されそうだったのに動かなかったのかい?
あぁ、違うね、格が違いすぎる
僕が本気じゃ無いってこと解ってたんだ?
賢い狐じゃないか
尾先:なんでお前が普通に喋れるんだよ…
クソ、クダまで意味無しか
骸:ねぇ今僕は、オサキに興味深々なんだけど
ふか~くお話しない?
尾先:俺は御免蒙りたいが
俺も気になることはある
骸:アハハ!じゃあお茶とお菓子も用意しよう
尾先:ここは俺の家なんだが
【間】
骸:一問一答にしよう!
質問したら答えて交代
尾先:じゃあ俺から質問させてもらう
骸:じゃんけんーー
尾先:あ?
骸:ポイっと、はい僕の勝ち
尾先:……お前な…
骸:悪霊退散ってどんな気持ちでやってるの?
尾先:勝ち取って最初にそれかよ!?
…お前はお祓いとか除霊はしないのか?
骸:時と場合による、それに今は僕の番なんだけど
質問したから次も僕の番だね
尾先:厳しいな…
まぁ、つまりはアレだ
何かしてやらないと安心しないからだ
骸:なるほど
尾先:悪霊退散とでも言って、それっぽい除霊をする
結果、除霊はしているわけだから
症状もなくなって、余計に信じて効果も出る
骸:ニーズに合わせた支援方法ってわけだ
尾先:福祉とか教育業界っぽい言い方だな
骸:へぇ、浮世離れしてそうだけど、案外そうでもないのかな?
尾先:そこはお前もそうだろ
こんなことやってはいるが、現実にも目を向けないとな
骸:悪霊やその類は、現実じゃないと?
尾先:……まぁな
骸:はい、じゃあ次はオサキの番
尾先:お前の番じゃなかったのか?
骸:質問したよ、3回も
尾先:あ?…あー……、なるほど
色々気にはなるが…
その目はなんだ?
骸:六道ってわかる?
尾先:あぁ、天道、地獄道とかのアレだろ?
骸:そう、僕は特殊な体質なんだ
家系じゃないよ
突然変異が正しいかもしれない
僕はね…全部視えるんだ
尾先:全部?
骸:うん、全部
オサキも視える方だけど
僕はもっと視えるよ
尾先:なるほどな
その目に関しては、よくわかった
じゃあさっきのヤツはーー
骸:察しがいいね、その通り
到底、人間が見て良いものじゃない
だから、見るとさっきみたいになるんだ
尾先:あれでも軽い方だろ
じゃあ、お前は
骸:次は僕の番
尾先:あぁ…そうだった
骸:んー、何を聞こうかなぁ
あ、じゃあその煙草
それ何?
尾先:あぁ、これか
……いや、分かってるだろ?
骸:質問に質問で返したらダメらしいよ
尾先:さっきから調子狂うな
これは普通の煙草じゃない
厄除けの意味合いが強いモノだ
骸:へぇ、自家製だ
一本頂戴
尾先:一問一答をやめてくれたらな
お前のペースに巻き込まれる
骸:別に良いよ、拘ってないし
尾先:……、ほら
骸:ふむふむ、なるほど
あ、このまま質問してもいい?
尾先:あぁ、先に好きなだけ聞いてくれ
骸:なんで煙草型なの?
尾先:それに関しては二つ
習慣と家柄だな
骸:どういうこと?
尾先:あぁ、中学の頃から吸っている
骸:わぁ、不良ってやつだ
尾先:時と場所は弁えているし
これは百利あって一害も無しだ
本物じゃないからな、それが一つ
二つ目は祖父母と父親が愛煙家だった
そっちに関しては、本物も吸っていた
だから煙草型にしたんだと
骸:その影響ってことだね
尾先:あぁ、コレに関しては、依存性も中毒性もない
やめようと思えばやめられる
ただ、習慣になってしまったら
少し、口寂しさもあるな
……吸わないのか?
骸:あぁ、僕は良い子だから
尾先:はっ、なんだそれ
骸:これは大事に保管しておくよ
初めて見たし、持ってない
尾先:……お前は、なんなんだ?
骸:うん?僕は骸
これはあだ名であり、ハンドルネームであり、二つ名だったり
尾先:それはさっき聞いた
そうじゃない、お前は何者なんだ?
なぜ俺の家に入れた?なぜ此処にいる?
骸:あはは、質問が多いなぁ
そうだね…僕は
“怪異屋”とでも呼んでくれ
尾先:怪異屋?
骸:そこはオサキと変わらない
霊障に悩む人を助けたりしてるよ
尾先:嘘だろ?
骸:…僕の場合は、人も霊も助ける
あとはオサキみたいな同業の手伝いかな
ほら、僕ってよく視えるし
或いは、誰も助けないし
……見殺しにもする
尾先:……
骸:他には?
尾先:なんでそんなことを?
骸:怪異屋は僕が生きていく為に
お金を稼がないといけないからね
オサキもそれは分かるよね?
尾先:あぁ、仕事だからな
骸:僕の場合は仕事と趣味が一緒になってるんだ
尾先:趣味?
骸:そう、僕は蒐集家なんだ
尾先:蒐集家…?
骸:怪異…
そう呼ばれるモノ全てを集めたい
関わっているモノ全て
記憶も、情報も、物も、物じゃなくても
だから、コレも蒐集品
尾先:厄除け煙草
なるほどな、だから吸わないし保管するわけか
骸:これでいいかい?
尾先:俺に近づいたのは
そのお前の趣味のためってことか
骸:あぁ、そうだよ
尾先:集めてどうする?
話を聞く限り、良い趣味でも、集めていい代物でもない
お前は、それをどうするつもりだ
骸:……それは…
解らない、解らないんだ
何故、集めたいとこの衝動に駆られるのかも
集めた時に何がしたいのかも
僕は、ずっと…それも探している
尾先:……
骸:の、かもしれないね
真剣な表情かに見えたが、笑顔で答える骸
尾先:全く読めないな、偽名もそうだが、全然掴めない、歳も性別も本当のお前が何一つ見えない
怪異と関わる上では完璧なまでの存在だ
骸:あはは、照れるな
尾先:だからこそ、今までの話全てが
俺は嘘に思えてしまう
骸:自由さ、それは
尾先:だが、蒐集家ってのは本当なんだろうな
集めたい理由も本当はあるんだろうが
骸:アハハ、オサキ
僕は君が好きになりそうだよ
尾先:複雑な気持ちだな
質問も終わりだ
これ以上聞いても収穫はなさそうだ
骸:じゃあ、最後に僕からいいかい?
尾先:またくだらない質問か?
骸:質問というより、提案なんだけど
尾先:提案?
骸:うん
……僕と一緒に除霊に行かないかい?
【間】
除霊に向かう2人ーー
尾先:誰からの依頼だ?
骸:依頼じゃないよ
僕が偶々見つけたって感じかな
尾先:だったら別に除霊する必要ないだろ
何か被害があったワケでもないし
骸:うーん、そうなんだけどね
ほら、僕ってオサキに興味あるし
実際に見てみたいって感じで
尾先:さっき見てただろうが
骸:悪霊退散~ってやつ?
尾先:…悪い、忘れてくれ
骸:ま、アレは取り憑いた霊でしょ?
今回は、地縛霊だから
尾先:地縛霊ね
ただの地縛霊なら
特別なことも起こらないと思うが
骸:詳しく話そうか
僕が見つけた地縛霊は女の人
何か理由があるから縛られてるワケだけど、無言で何考えてるか解らないんだ
尾先:話したのか?
骸:話しかけたんだけどね
興味なし、って感じかな
まぁ、オサキの言う通り
被害も今の所ないんだけどさ
ほら、時々いるから
尾先:霊感持ち、か
骸:そうそう
僕が思うに、彼女から干渉している素振りはなかったから
霊感持ちか、偶々チャンネルが合った人が、数回目撃してるって感じかも
尾先:被害がないならそっとしておけばいいものを
骸:そうもいかない
見える人が増えてる
尾先:なるほど、そういうことか
骸:うん、このままいくと被害が出る
そういうパターンだと思う
尾先:縛られる理由もわからん
話もしてくれない
強制的に除霊する手もあるが
骸:まぁ一緒に見てみようと思って
尾先:あまりいい事じゃないな
骸:もうすぐだよ
【間】
尾先:見た感じ、何かあっても大丈夫な様にも見えるがな
人通りも車も少ない
事故になり得る心配も少ない
骸:場所的にはね
尾先:自殺する場所にも適さない
骸:連れて行くパターンだってあるでしょ?
尾先:こちらを無視するのについて行くか?
骸:お目当てがいるかもでしょ?
尾先:まぁな
だが、地縛霊だ
そう簡単に動けるはずもないが
骸:近くに土地神もいないからね
案外、動けるのかも
尾先:…お前、どこまで見えるんだ
骸:言ったでしょ?全部視えるって
尾先:…そうだったな
骸:いた
尾先:あれか?
骸:うん、やっぱり動いてない
尾先:ちょっと待て
…よし、人は居ないな
骸:さて、話してみるかい?
尾先:あぁ、一度な
霊に近寄り話す尾先
尾先:なぁ、お前は何故、此処にいる?
しかし、反応がない
尾先:話せないのか?
……!?これは
骸:さて、オサキ
ここで更に情報を与えようか
尾先:何?まだ何かあるのか?
骸:ご覧の通り、彼女は僕たちを無視する
霊が視える人間って珍しいし
霊からしても視える人間は有効活用できる
取り憑くのにも都合が良い
尾先:あぁ、そうだな
霊を祓えるか、強力な守護霊がいるなら別だが、ただ霊感があるだけの人間なら最悪、殺される可能性もある
骸:だけど、彼女はそれをしない
何かを待っているのか
ただ、此処にいる事が重要なのか
それとも、もう満足しているのか
尾先:それが解らないんだろう?
骸:僕が除霊した方がいいと思う理由の一つ
ただの霊感持ちの人間や、チャンネルが合った人間が
最近増え出した、ということ
正確に言えば、チャンネルが合う人間が、だけど
尾先:なんだと?
骸:この場所でのみ、チャンネルが合う様になってきている
つまり、彼女の目撃情報が増え始めている
尾先:なんで、それを先に言わなかったんだ
被害はないにしろ、それはそれで危険だ
骸:そしてーー
彼女に最近、名前が出来た
尾先:何……?
骸:気づいたでしょ?その顔の左側
尾先:…あぁ
骸:左側半分が腐っているのか
もう目も爛れ落ちそうだ
肌の色も変色して緑色になってるね
それを見た人たちが、こう呼んでいる
緑子、ってね
尾先:名付けしたのか…?
骸:流石、オサキ
名付けの基本を知ってるね
ハハッ、まぁ当たり前か
そして、僕が除霊した方がいいと思う理由の二つ
つまり彼女はただの地縛霊じゃなくて
もう既にーーー
骸:誰かを呪い殺すだけの力を持っているよ
尾先:っ!?
不気味な笑顔をこちらに向ける霊
尾先:なっ!
骸:カハッ…
急に吐血する骸
尾先:骸!!
おい、しっかりしろ!
(急に血を吐くだと?攻撃されたのか…)
骸:ハハハ!凄いね、やっとこっちを向いた
尾先:何してる!お前、呪われたのか!?
骸:いやぁ…ゴホッ、ゴホッ…名付けの力は凄いや
ずっと無視するんだもん
なるほど、名前を付けてあげたら喜ぶなんて…
まるで子供じゃないか
尾先:何を言っている…?
名前を付けただと?
骸:あぁ、僕が付けてあげたんだ
尾先:な…に?
先程まで吐血し、倒れていたが立ち上がる骸
骸:名前の無い霊に名を与えてみたかった
どうなるんだろうって
今までにも機会はあった
だけど、今した事に後悔はない
だって君がいるから、ねぇオサキ
尾先:お前、何を言っている!
名付けしただと!?
お前みたいな奴が名前を付けたらどうなるか
解らないって言うのか!?
骸:知ってるさ
意味の無いものに意味を与える
なるほど、こんな感じなんだ…
そう言うと、不敵に笑う骸
尾先:お前!一体何がしたいんだ!
全部嘘だったのか?
俺をここまで連れてきて何がしたい?
自分の趣味に巻き込むなよ!
骸:全部が全部、嘘じゃないさ
チャンネルが合う人間が増えたのは本当
名前を付けたのが僕ってだけ
それ以外は本当だよ?
尾先:っ!
(…おかしい、血を吐いて倒れていたが、コイツ……なんでこんなに平気そうなんだ?しかも、あの地縛霊も動いてない…)
……!?、動いてない?
骸:ハハハハ!気づいた?
これは僕の結界みたいなものだよ
だから大丈夫
さぁ、この限られた時間の中で
話をしよう、尾先仁狐
尾先:…何?
骸:長い木でオサキ
いいや、違う
尾の先に仁義の仁、それに狐で
尾先仁狐、だよね
尾先:知っていたのか?
骸:何もせず会いに行くほど僕も馬鹿じゃないよ
憑物筋の家系で、幼少から霊と関わりがある
一度、霊体とーー
尾先:黙れ、それ以上はいい
何がしたいんだ
名付けして、呪われて
このままなら被害が増えるだけだ
骸:僕は、全部視えるんだ
尾先:……
骸:オサキ、さっき聞いたよね、僕に
僕が蒐集家だと言ったら、集めてどうする?って
尾先:あぁ
骸:僕は、ね?オサキ
味わいたいんだ、全部
尾先:味わいたい、だと?
骸:悪霊に取り憑かれたことはあるかい?
自分が自分じゃない感覚を味わったことは?
四肢が千切れそうな痛みを
内臓が外側に出そうな不快感を
頭が真っ白になって、何も考えられなくなって
生と死が混在する世界を見たことはあるかい?
尾先:何を言っている…?お前は一体……
骸:人面犬に会った不気味さを
口裂け女をポマードなんて呪文で追い払う優越感を
ターボババアと走る疾走感を
尾先:っ……
骸:牛鬼に影を舐められ、身体が燃える体験を
人魚の肉を食べて不死になる不安を
件に予見された不幸を目の当たりにした絶望を
きさらぎ駅で迷う孤独感を
呪いにかかった閉塞感を
尾先:お前……
骸:あぁ、怪異だけじゃない
UMAも、宇宙人も、この際纏めて味わおう
雪男に殴られる喜びを
ネッシーに食べられる安心感を
ツチノコを見つけた虚無感を
UFOにアブダクションされる期待感を
身体を改造されても文句は言えない
だけど、記憶を消された時の怒りをーー
骸:君は、味わったことがあるかい?
味わいたいと思わないかい?
自分の身体で、脳で、六感で
全部、全部全部、僕は知りたい、味わいたい
そして、誰かが味わっているのを
僕は
骸:視てみたい
尾先:狂ってる…!!
骸:そうさ、オサキ
僕は狂っているんだ
自分で自分を視た時から
あの時から!僕は!
尾先:自分の趣味嗜好に巻き込むな
死にたきゃ勝手に死ね
骸:大丈夫、君は人間が大好きだから
そして、僕は人間だから
祓ってくれないと死んじゃうよ
尾先:…クソが
そして、時間が動き出す
骸:じゃあ、一足先に味わっておくよ
ゴホッ、フフ…
名付け親に対する呪いの痛みを、ね
アハハ!じゃあオサキ
あとは頼んだよ
そう笑いを浮かべながら倒れる骸
尾先:クソ…全く胸糞悪い話だ
すまないが、お前には消えてもらう
何故、此処にいるのか知らないが
そう成ってしまったら終わりだ
…いや、名前を付けられるのを待っていたのか?
はは、はははっ…そうだな
そういうことなんだな、骸
全部視えてんだから当たり前か
……笑ってたもんな、お前…
嬉しかったか?名前が付けられて
だがな、相手が悪かったな
……喰え、“クダ”
【間】
一服している尾先
骸:へぇ、そんな除霊をするんだ
尾先:色々ツッコミたいとこがあるんだが
まぁいい、クダを使ったのは餌代だ
骸:餌代、ね
尾先:お前のおかけで、大層な悪霊化したからな
餌に使わせてもらった
お陰で色々と浮いたよ
骸:それはいいよ
今回はオサキの事を見れれば
僕の目的は達成したわけだからね
尾先:集めてる記憶、情報ってことか
骸:あとは、さっきも言った通り
名付け親としての呪い、悪霊からの攻撃の味
フフ、しっかり楽しめたよ
尾先:そこだ
なんでお前はピンピンしてんだ?
血まで吐いて倒れたくせに
骸:僕は、そういった類のものは効かないんだ
ただ、効かないなら経験できないからね
ある程度は自分で調整して楽しむこともできる
尾先:バケモノかよ……
骸:僕を殺したいなら
銃で頭を撃ったり、刃物で心臓を刺したり
なんて、人間の様に扱ってくれると、あっさり死んじゃうけどね
尾先:そうなる場面も少ないだろうな
お前は常に掴めないから
骸:アハハ、試してみるかい?
尾先:いや、いい
今日は疲れた……
骸:今度は同業としてよろしくね、オサキ
尾先:俺はあまり関わりたくないがな
…まぁ、関わらないといけないんだろうが
骸:オサキの秘密、というより家系の問題かな
尾先:まぁな
……いい
骸:ん?
尾先:関わってやる
暇つぶし程度でな
骸:よろしくね、オサキ
尾先:はぁ…俺は今まで色々見てきたが
お前が一番怖い、どんな怪異よりもな
骸:アハハハ、それは褒め言葉だよ
尾先:禁煙するか…
骸:習慣になってるのに?
尾先:どうやら厄除けにならないからな
骸という厄を祓えなかった
骸:僕は人間だからね
それに誹謗中傷は炎上案件だよ
尾先:あぁ、そうだったな
……帰るか
骸:楽しい夜だった
オサキと居れば退屈しなさそうかも
尾先:程々にしてくれ
今日みたいなことは勘弁だ
【間】
そして、時は戻り、現在
尾先:これが骸との出会いだ
その後もアイツとは色々関わってきたが、やっぱり今もアイツの本心は掴めない
ただ、同業として、味方としてなら
アイツは一番に信用できる
だが、仲良くしようと思うなよ
言葉を借りるなら
いつ、お前が苦しむ様を味わうか分からんからな
どうだ?寝れないことに拍車がかかったんじゃないか?
今日は早く休め、どうせお前の所には、悪霊なんて来ないからな、あぁ、おやすみ
電話を切り、煙草の箱を開け、一本取りだす
尾先:久しぶりにってやつか
それに火をつけ、一服する尾先
尾先:ふぅー…こんなもんだったか?
骸:おや?珍しいじゃないか
禁煙してたはずなのに
尾先:骸!?お前…いつの間に
骸:アハハ、出会った頃を思い出しそうだよ
尾先:…お前…はぁ、やっぱ吸うもんじゃないな
骸:じゃあ、早速本題
懐かしいついでに、これまた懐かしいことを、やってみないかい?オサキ
尾先:骸、お前まさか
骸:僕と一緒に除霊しに行かないかい?
尾先:ッ…あぁ、分かった
暇つぶし程度に付き合ってやるよ
出会いの刻 終
尾先:……ふぅ
煙草の箱を、机の引き出しに仕舞う
するとタイミングを見計らった様に電話が鳴り響くーー。
尾先:ん、茜…?どうした?
あぁ、今日は散々だったな
だが、本物の心霊スポットというのは、あぁいう場所なんだよ
……、怖くて眠れない…
それは知らんが、え?何か話せ?
あのな、話せる話も怪談話だ
寝れないことに追い討ちかけるぞ
…骸?あぁ…それも怪談話だ
追々話そうと思っていたが……
いいだろう、暇つぶし程度で、アイツとの出会い、話してやる
だが、寝れなくなっても文句言うなよ
骸と出会ったのは…確かーーー
【間】
尾先:悪霊退散!!…ふぅ
これで大丈夫だ
どうだ?背中の痛みは無いだろう?
じゃあこの口座に入金してくれ、じゃあな
お礼を言い、家を出る老人
尾先:はぁ……
客を見送り、煙草に火をつける尾先
尾先:なんでこんなこと、しなきゃいけないんだ……
骸:悪霊退散~~って?
尾先:!?誰だ!?
悪霊!?…いや、妖の類か?
…人間……?
骸:アハハ、今時悪霊退散は聞かないね
中々、面白い除霊をするじゃないか
尾先:いつからそこにいた?
骸:無駄、僕には効かない
尾先:何…?解ったのか?
骸:ふぅーん、ちゃんと除霊できるじゃないか
けど、残念……僕は人間です
尾先:嘘だろ?そんな得体の知れないのにか?
骸:じゃあ自己紹介をしよう!
はい、どうぞ?
尾先:……、オサキ
長い木と書いてオサキだ
骸:あはは、偽名だね
僕とお揃いだ
じゃあ次は僕の番
僕の名前は骸
これはあだ名であり、ハンドルネームであり、二つ名だったり、通り名だったり、異名と
まぁそんなもんだよ
尾先:そんなこと、一々説明しなくても分かる
人間と言ったが、じゃあなんで、お前はそんなに人じゃないんだ?
骸:何が、人じゃないのかな?
尾先:全部だ
雰囲気も中身も外面もな
骸:外見への誹謗中傷は今、五月蝿いよ
ネット社会じゃ炎上案件だ
尾先:面と向かって言っている分いいだろ
自覚もあるように見えるが?
骸:ハハハ!まぁ…ね?
じゃあ、ちょっと失礼して
尾先:ん?なん…だ…?
ッッ!!…ゼェッ…やめ…ろ!!
骸:はい、おしまい
尾先:ッ!はぁ…はぁ……
その目…!
骸:へぇ、君…
尾先:止めろ!
骸:半々か
尾先:ッ…あぁ、"クダ"
骸:主人が殺されそうだったのに動かなかったのかい?
あぁ、違うね、格が違いすぎる
僕が本気じゃ無いってこと解ってたんだ?
賢い狐じゃないか
尾先:なんでお前が普通に喋れるんだよ…
クソ、クダまで意味無しか
骸:ねぇ今僕は、オサキに興味深々なんだけど
ふか~くお話しない?
尾先:俺は御免蒙りたいが
俺も気になることはある
骸:アハハ!じゃあお茶とお菓子も用意しよう
尾先:ここは俺の家なんだが
【間】
骸:一問一答にしよう!
質問したら答えて交代
尾先:じゃあ俺から質問させてもらう
骸:じゃんけんーー
尾先:あ?
骸:ポイっと、はい僕の勝ち
尾先:……お前な…
骸:悪霊退散ってどんな気持ちでやってるの?
尾先:勝ち取って最初にそれかよ!?
…お前はお祓いとか除霊はしないのか?
骸:時と場合による、それに今は僕の番なんだけど
質問したから次も僕の番だね
尾先:厳しいな…
まぁ、つまりはアレだ
何かしてやらないと安心しないからだ
骸:なるほど
尾先:悪霊退散とでも言って、それっぽい除霊をする
結果、除霊はしているわけだから
症状もなくなって、余計に信じて効果も出る
骸:ニーズに合わせた支援方法ってわけだ
尾先:福祉とか教育業界っぽい言い方だな
骸:へぇ、浮世離れしてそうだけど、案外そうでもないのかな?
尾先:そこはお前もそうだろ
こんなことやってはいるが、現実にも目を向けないとな
骸:悪霊やその類は、現実じゃないと?
尾先:……まぁな
骸:はい、じゃあ次はオサキの番
尾先:お前の番じゃなかったのか?
骸:質問したよ、3回も
尾先:あ?…あー……、なるほど
色々気にはなるが…
その目はなんだ?
骸:六道ってわかる?
尾先:あぁ、天道、地獄道とかのアレだろ?
骸:そう、僕は特殊な体質なんだ
家系じゃないよ
突然変異が正しいかもしれない
僕はね…全部視えるんだ
尾先:全部?
骸:うん、全部
オサキも視える方だけど
僕はもっと視えるよ
尾先:なるほどな
その目に関しては、よくわかった
じゃあさっきのヤツはーー
骸:察しがいいね、その通り
到底、人間が見て良いものじゃない
だから、見るとさっきみたいになるんだ
尾先:あれでも軽い方だろ
じゃあ、お前は
骸:次は僕の番
尾先:あぁ…そうだった
骸:んー、何を聞こうかなぁ
あ、じゃあその煙草
それ何?
尾先:あぁ、これか
……いや、分かってるだろ?
骸:質問に質問で返したらダメらしいよ
尾先:さっきから調子狂うな
これは普通の煙草じゃない
厄除けの意味合いが強いモノだ
骸:へぇ、自家製だ
一本頂戴
尾先:一問一答をやめてくれたらな
お前のペースに巻き込まれる
骸:別に良いよ、拘ってないし
尾先:……、ほら
骸:ふむふむ、なるほど
あ、このまま質問してもいい?
尾先:あぁ、先に好きなだけ聞いてくれ
骸:なんで煙草型なの?
尾先:それに関しては二つ
習慣と家柄だな
骸:どういうこと?
尾先:あぁ、中学の頃から吸っている
骸:わぁ、不良ってやつだ
尾先:時と場所は弁えているし
これは百利あって一害も無しだ
本物じゃないからな、それが一つ
二つ目は祖父母と父親が愛煙家だった
そっちに関しては、本物も吸っていた
だから煙草型にしたんだと
骸:その影響ってことだね
尾先:あぁ、コレに関しては、依存性も中毒性もない
やめようと思えばやめられる
ただ、習慣になってしまったら
少し、口寂しさもあるな
……吸わないのか?
骸:あぁ、僕は良い子だから
尾先:はっ、なんだそれ
骸:これは大事に保管しておくよ
初めて見たし、持ってない
尾先:……お前は、なんなんだ?
骸:うん?僕は骸
これはあだ名であり、ハンドルネームであり、二つ名だったり
尾先:それはさっき聞いた
そうじゃない、お前は何者なんだ?
なぜ俺の家に入れた?なぜ此処にいる?
骸:あはは、質問が多いなぁ
そうだね…僕は
“怪異屋”とでも呼んでくれ
尾先:怪異屋?
骸:そこはオサキと変わらない
霊障に悩む人を助けたりしてるよ
尾先:嘘だろ?
骸:…僕の場合は、人も霊も助ける
あとはオサキみたいな同業の手伝いかな
ほら、僕ってよく視えるし
或いは、誰も助けないし
……見殺しにもする
尾先:……
骸:他には?
尾先:なんでそんなことを?
骸:怪異屋は僕が生きていく為に
お金を稼がないといけないからね
オサキもそれは分かるよね?
尾先:あぁ、仕事だからな
骸:僕の場合は仕事と趣味が一緒になってるんだ
尾先:趣味?
骸:そう、僕は蒐集家なんだ
尾先:蒐集家…?
骸:怪異…
そう呼ばれるモノ全てを集めたい
関わっているモノ全て
記憶も、情報も、物も、物じゃなくても
だから、コレも蒐集品
尾先:厄除け煙草
なるほどな、だから吸わないし保管するわけか
骸:これでいいかい?
尾先:俺に近づいたのは
そのお前の趣味のためってことか
骸:あぁ、そうだよ
尾先:集めてどうする?
話を聞く限り、良い趣味でも、集めていい代物でもない
お前は、それをどうするつもりだ
骸:……それは…
解らない、解らないんだ
何故、集めたいとこの衝動に駆られるのかも
集めた時に何がしたいのかも
僕は、ずっと…それも探している
尾先:……
骸:の、かもしれないね
真剣な表情かに見えたが、笑顔で答える骸
尾先:全く読めないな、偽名もそうだが、全然掴めない、歳も性別も本当のお前が何一つ見えない
怪異と関わる上では完璧なまでの存在だ
骸:あはは、照れるな
尾先:だからこそ、今までの話全てが
俺は嘘に思えてしまう
骸:自由さ、それは
尾先:だが、蒐集家ってのは本当なんだろうな
集めたい理由も本当はあるんだろうが
骸:アハハ、オサキ
僕は君が好きになりそうだよ
尾先:複雑な気持ちだな
質問も終わりだ
これ以上聞いても収穫はなさそうだ
骸:じゃあ、最後に僕からいいかい?
尾先:またくだらない質問か?
骸:質問というより、提案なんだけど
尾先:提案?
骸:うん
……僕と一緒に除霊に行かないかい?
【間】
除霊に向かう2人ーー
尾先:誰からの依頼だ?
骸:依頼じゃないよ
僕が偶々見つけたって感じかな
尾先:だったら別に除霊する必要ないだろ
何か被害があったワケでもないし
骸:うーん、そうなんだけどね
ほら、僕ってオサキに興味あるし
実際に見てみたいって感じで
尾先:さっき見てただろうが
骸:悪霊退散~ってやつ?
尾先:…悪い、忘れてくれ
骸:ま、アレは取り憑いた霊でしょ?
今回は、地縛霊だから
尾先:地縛霊ね
ただの地縛霊なら
特別なことも起こらないと思うが
骸:詳しく話そうか
僕が見つけた地縛霊は女の人
何か理由があるから縛られてるワケだけど、無言で何考えてるか解らないんだ
尾先:話したのか?
骸:話しかけたんだけどね
興味なし、って感じかな
まぁ、オサキの言う通り
被害も今の所ないんだけどさ
ほら、時々いるから
尾先:霊感持ち、か
骸:そうそう
僕が思うに、彼女から干渉している素振りはなかったから
霊感持ちか、偶々チャンネルが合った人が、数回目撃してるって感じかも
尾先:被害がないならそっとしておけばいいものを
骸:そうもいかない
見える人が増えてる
尾先:なるほど、そういうことか
骸:うん、このままいくと被害が出る
そういうパターンだと思う
尾先:縛られる理由もわからん
話もしてくれない
強制的に除霊する手もあるが
骸:まぁ一緒に見てみようと思って
尾先:あまりいい事じゃないな
骸:もうすぐだよ
【間】
尾先:見た感じ、何かあっても大丈夫な様にも見えるがな
人通りも車も少ない
事故になり得る心配も少ない
骸:場所的にはね
尾先:自殺する場所にも適さない
骸:連れて行くパターンだってあるでしょ?
尾先:こちらを無視するのについて行くか?
骸:お目当てがいるかもでしょ?
尾先:まぁな
だが、地縛霊だ
そう簡単に動けるはずもないが
骸:近くに土地神もいないからね
案外、動けるのかも
尾先:…お前、どこまで見えるんだ
骸:言ったでしょ?全部視えるって
尾先:…そうだったな
骸:いた
尾先:あれか?
骸:うん、やっぱり動いてない
尾先:ちょっと待て
…よし、人は居ないな
骸:さて、話してみるかい?
尾先:あぁ、一度な
霊に近寄り話す尾先
尾先:なぁ、お前は何故、此処にいる?
しかし、反応がない
尾先:話せないのか?
……!?これは
骸:さて、オサキ
ここで更に情報を与えようか
尾先:何?まだ何かあるのか?
骸:ご覧の通り、彼女は僕たちを無視する
霊が視える人間って珍しいし
霊からしても視える人間は有効活用できる
取り憑くのにも都合が良い
尾先:あぁ、そうだな
霊を祓えるか、強力な守護霊がいるなら別だが、ただ霊感があるだけの人間なら最悪、殺される可能性もある
骸:だけど、彼女はそれをしない
何かを待っているのか
ただ、此処にいる事が重要なのか
それとも、もう満足しているのか
尾先:それが解らないんだろう?
骸:僕が除霊した方がいいと思う理由の一つ
ただの霊感持ちの人間や、チャンネルが合った人間が
最近増え出した、ということ
正確に言えば、チャンネルが合う人間が、だけど
尾先:なんだと?
骸:この場所でのみ、チャンネルが合う様になってきている
つまり、彼女の目撃情報が増え始めている
尾先:なんで、それを先に言わなかったんだ
被害はないにしろ、それはそれで危険だ
骸:そしてーー
彼女に最近、名前が出来た
尾先:何……?
骸:気づいたでしょ?その顔の左側
尾先:…あぁ
骸:左側半分が腐っているのか
もう目も爛れ落ちそうだ
肌の色も変色して緑色になってるね
それを見た人たちが、こう呼んでいる
緑子、ってね
尾先:名付けしたのか…?
骸:流石、オサキ
名付けの基本を知ってるね
ハハッ、まぁ当たり前か
そして、僕が除霊した方がいいと思う理由の二つ
つまり彼女はただの地縛霊じゃなくて
もう既にーーー
骸:誰かを呪い殺すだけの力を持っているよ
尾先:っ!?
不気味な笑顔をこちらに向ける霊
尾先:なっ!
骸:カハッ…
急に吐血する骸
尾先:骸!!
おい、しっかりしろ!
(急に血を吐くだと?攻撃されたのか…)
骸:ハハハ!凄いね、やっとこっちを向いた
尾先:何してる!お前、呪われたのか!?
骸:いやぁ…ゴホッ、ゴホッ…名付けの力は凄いや
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なるほど、名前を付けてあげたら喜ぶなんて…
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尾先:何を言っている…?
名前を付けただと?
骸:あぁ、僕が付けてあげたんだ
尾先:な…に?
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骸:名前の無い霊に名を与えてみたかった
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尾先:お前、何を言っている!
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骸:知ってるさ
意味の無いものに意味を与える
なるほど、こんな感じなんだ…
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尾先:お前!一体何がしたいんだ!
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俺をここまで連れてきて何がしたい?
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骸:全部が全部、嘘じゃないさ
チャンネルが合う人間が増えたのは本当
名前を付けたのが僕ってだけ
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尾先:っ!
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骸:ハハハハ!気づいた?
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尾先:知っていたのか?
骸:何もせず会いに行くほど僕も馬鹿じゃないよ
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尾先:黙れ、それ以上はいい
何がしたいんだ
名付けして、呪われて
このままなら被害が増えるだけだ
骸:僕は、全部視えるんだ
尾先:……
骸:オサキ、さっき聞いたよね、僕に
僕が蒐集家だと言ったら、集めてどうする?って
尾先:あぁ
骸:僕は、ね?オサキ
味わいたいんだ、全部
尾先:味わいたい、だと?
骸:悪霊に取り憑かれたことはあるかい?
自分が自分じゃない感覚を味わったことは?
四肢が千切れそうな痛みを
内臓が外側に出そうな不快感を
頭が真っ白になって、何も考えられなくなって
生と死が混在する世界を見たことはあるかい?
尾先:何を言っている…?お前は一体……
骸:人面犬に会った不気味さを
口裂け女をポマードなんて呪文で追い払う優越感を
ターボババアと走る疾走感を
尾先:っ……
骸:牛鬼に影を舐められ、身体が燃える体験を
人魚の肉を食べて不死になる不安を
件に予見された不幸を目の当たりにした絶望を
きさらぎ駅で迷う孤独感を
呪いにかかった閉塞感を
尾先:お前……
骸:あぁ、怪異だけじゃない
UMAも、宇宙人も、この際纏めて味わおう
雪男に殴られる喜びを
ネッシーに食べられる安心感を
ツチノコを見つけた虚無感を
UFOにアブダクションされる期待感を
身体を改造されても文句は言えない
だけど、記憶を消された時の怒りをーー
骸:君は、味わったことがあるかい?
味わいたいと思わないかい?
自分の身体で、脳で、六感で
全部、全部全部、僕は知りたい、味わいたい
そして、誰かが味わっているのを
僕は
骸:視てみたい
尾先:狂ってる…!!
骸:そうさ、オサキ
僕は狂っているんだ
自分で自分を視た時から
あの時から!僕は!
尾先:自分の趣味嗜好に巻き込むな
死にたきゃ勝手に死ね
骸:大丈夫、君は人間が大好きだから
そして、僕は人間だから
祓ってくれないと死んじゃうよ
尾先:…クソが
そして、時間が動き出す
骸:じゃあ、一足先に味わっておくよ
ゴホッ、フフ…
名付け親に対する呪いの痛みを、ね
アハハ!じゃあオサキ
あとは頼んだよ
そう笑いを浮かべながら倒れる骸
尾先:クソ…全く胸糞悪い話だ
すまないが、お前には消えてもらう
何故、此処にいるのか知らないが
そう成ってしまったら終わりだ
…いや、名前を付けられるのを待っていたのか?
はは、はははっ…そうだな
そういうことなんだな、骸
全部視えてんだから当たり前か
……笑ってたもんな、お前…
嬉しかったか?名前が付けられて
だがな、相手が悪かったな
……喰え、“クダ”
【間】
一服している尾先
骸:へぇ、そんな除霊をするんだ
尾先:色々ツッコミたいとこがあるんだが
まぁいい、クダを使ったのは餌代だ
骸:餌代、ね
尾先:お前のおかけで、大層な悪霊化したからな
餌に使わせてもらった
お陰で色々と浮いたよ
骸:それはいいよ
今回はオサキの事を見れれば
僕の目的は達成したわけだからね
尾先:集めてる記憶、情報ってことか
骸:あとは、さっきも言った通り
名付け親としての呪い、悪霊からの攻撃の味
フフ、しっかり楽しめたよ
尾先:そこだ
なんでお前はピンピンしてんだ?
血まで吐いて倒れたくせに
骸:僕は、そういった類のものは効かないんだ
ただ、効かないなら経験できないからね
ある程度は自分で調整して楽しむこともできる
尾先:バケモノかよ……
骸:僕を殺したいなら
銃で頭を撃ったり、刃物で心臓を刺したり
なんて、人間の様に扱ってくれると、あっさり死んじゃうけどね
尾先:そうなる場面も少ないだろうな
お前は常に掴めないから
骸:アハハ、試してみるかい?
尾先:いや、いい
今日は疲れた……
骸:今度は同業としてよろしくね、オサキ
尾先:俺はあまり関わりたくないがな
…まぁ、関わらないといけないんだろうが
骸:オサキの秘密、というより家系の問題かな
尾先:まぁな
……いい
骸:ん?
尾先:関わってやる
暇つぶし程度でな
骸:よろしくね、オサキ
尾先:はぁ…俺は今まで色々見てきたが
お前が一番怖い、どんな怪異よりもな
骸:アハハハ、それは褒め言葉だよ
尾先:禁煙するか…
骸:習慣になってるのに?
尾先:どうやら厄除けにならないからな
骸という厄を祓えなかった
骸:僕は人間だからね
それに誹謗中傷は炎上案件だよ
尾先:あぁ、そうだったな
……帰るか
骸:楽しい夜だった
オサキと居れば退屈しなさそうかも
尾先:程々にしてくれ
今日みたいなことは勘弁だ
【間】
そして、時は戻り、現在
尾先:これが骸との出会いだ
その後もアイツとは色々関わってきたが、やっぱり今もアイツの本心は掴めない
ただ、同業として、味方としてなら
アイツは一番に信用できる
だが、仲良くしようと思うなよ
言葉を借りるなら
いつ、お前が苦しむ様を味わうか分からんからな
どうだ?寝れないことに拍車がかかったんじゃないか?
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尾先:骸!?お前…いつの間に
骸:アハハ、出会った頃を思い出しそうだよ
尾先:…お前…はぁ、やっぱ吸うもんじゃないな
骸:じゃあ、早速本題
懐かしいついでに、これまた懐かしいことを、やってみないかい?オサキ
尾先:骸、お前まさか
骸:僕と一緒に除霊しに行かないかい?
尾先:ッ…あぁ、分かった
暇つぶし程度に付き合ってやるよ
出会いの刻 終
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