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拷問
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暗殺組織であるアントライオンは軍から情報を得るつもりですが、一応こちらにも駒が手に入ったことですから、口を割らせない手はありません。
魔法による精神干渉でも可能ではありますが、魔法で先に精神が壊れでもしたら勿体ないですし、ここは精神干渉を行わない方向でいきましょう。
人間の感情を観察するにもいい材料ですし。
「おい、どうして俺を生かしているんだ! 殺すならさっさと殺せ!」
この男は威勢がいいのでそうそう壊れないとは思いますが、念には念を入れて先に足は治療しておくとしましょう。
「超速再生魔法」
損失している膝下に新たな足が生えましたね。
男は何が起きたのか理解できていないのか、さっきの威勢はどこへやら。
「自分の足が生えてきたことに理解が追いついていないようですね」
「俺の足に何をしやがった……これは幻覚か、そうだ、幻覚に違いない! 幻覚作用のある香でも焚いているんだろ!」
「だったら立ち上がってみればいいじゃないですか。手首の拘束具は取りませんが」
自分の足で立ち上がってやっと本物の足だと認識できましたか。
人間とは随分疑り深いものなのですね。
自分の足だとわかった途端窓に向かって走り出すところは嫌いじゃありませんよ。
「ぐあぁあああっ痛ッ! どうしてこの窓程度破れねえんだよ! どうなってやがる」
頭から豪快に窓にぶつかったせいで余計な怪我を増やしてしまったようですね。
これを治す道理は私にはありません。
「全て無駄ですよ。結界を張っているのであなたはここから出られませんし、声一つ漏れることはありません」
「結界だと? 何を馬鹿げたことを……」
「あなたが信じる信じないは私にとってどうでもいいこと。私があなたを生かしている理由はただ一つ、アントライオンの上層部について知っていることの全てを聞かせていただくためです」
私の発言に全く動揺する素振りは見せません……か。
大戦で何万人もの人間を葬ってきたからわかります。
これは目は既に死をも覚悟している目。
ですが、その覚悟がいつまで続くか、私の実験に付き合ってもらえるのは僥倖というもの。
「話すつもりがないのならいくらでも我慢してもらって構いません。私の拷問は人のそれとは違いますから、どの程度我慢できるものなのか観察させてください。手加減がわかりませんので、定期的に回復させてあげます」
まずは痛覚を百倍ほど鋭敏にしましょうか。
そのあとはじっくり蟲を使い、手足・内蔵から食べてもらうというのはどうでしょう。
人間からすれば蟲というものは嫌悪対象になりやすく、その姿に圧倒されるはず。
「ではまずあなたの痛覚感度を上げます。その次は蟲に生きながら食べてもらいますね」
「どういうことだ?」
「簡単に言えば、あなたが受ける痛みが百倍ほどに増幅されるということです」
ほんの少し焦りが見えましたが、それも一瞬とは恐れ入ります。
これからこの男がどういう反応を示してくれるのか、実に興味深い。
蟲も特別に悪魔がよく使うものを召喚しましょう。
「痛覚拡張魔法、大蟷蟲召喚魔法 」
いつ見ても赤く輝く魔法陣には心が動かされます。
地獄と現世がほんの刹那繋がる瞬間。
逆に地獄に行くことができないのが残念です。
「なんだこりゃぁあああーーーーッ!」
「大袈裟ですね。ただの蟲ではありませんか。それもたった一匹で何を驚いているのですか」
「何が虫だよッッ! ただの化け物じゃねえか!! そもそも人と同じ大きさの虫なんざ存在しちゃならねえだろうがよぉぉおおおッ!」
そりゃ地獄の蟲ですから、地上における虫とは違うのは当たり前なのですが。
それにしてもこの怯えようは興味がそそられますね。
おそらく通常の拷問をしても口を割らず、ここまで怯えることはなかったでしょう。
死を覚悟しても尚感じる恐怖、それが異界の生物を前にすると如実にあらわれるものなのですね。
これは新しい発見です。
「この男の頭と胴体は食べてはいけません。手足なら好きなようになさい。くれぐれも殺さないように」
――――ギギギッ、ギギギッ――――
言葉が通じているのかはわかりませんが、ちゃんと足先からいくのはお利口さんですね。
大蟷蟲の両腕は棘状の鎌ですから、それで手足を押さえつけられるだけでも相当な苦痛のはずです。
何せ感度百倍になっているのですから。
ですが、足先をバリバリと音を立てて食べ始めるほうに意識がいっていてそれどころではないようです。
人間の防御反応というのは痛みをなくすのですね。
「さあ、楽になりたければ組織のことを全て吐きなさい。そうすればひと思いに殺してあげますよ」
「誰が話すかよ! 痛みは感じねえ! このまま死ねたら本望だ」
「これは誤算でした。しかし、恐怖からくる防御反応で痛みがわからないのは理解しました。ですが、それも慣れればまた違ったものになるでしょう。超速再生魔法」
今食べられた足をすぐさま回復させ、蟲の餌を増やしてあげました。
地獄の蟲は食欲旺盛ですから、何度でも食べてくれることでしょう。
彼がいつまで無痛でいられるか見ものです。
「お前……何してくれてんだ……」
「私としても、あなたがいつまで我慢できるのか見てみたい。ぜひ頑張ってください。言っておきますが、あなたがこれで死ぬことはありません。都度、私が回復させますから。あなたに残された道は一つだけ、全てを吐いて死ぬことだけです」
ほほぅ、これが絶望を味わった人間の表情なのですね。
ただの死は絶望へは直結していない。
覚悟がある者には、死よりも厳しい永遠を与えるほうが効果的ということ。
一つ勉強になりました。
「俺は本当に何も知らないんだッ! 本当だって! だからひと思いに殺してくれ! 頼む、頼むよ――後生だから殺してくれぇええあああぎぎゃぁあアアアアアアアッ」
もう痛みを感じ始めたのですか。
痛がることで大蟷蟲にとってはさらに生きの良い獲物になっているだけなのは黙っておきましょう。
死を覚悟したはずの大の大人が痛みで涙を流すとは、とても残念な光景です。
人間は痛み、喜び、悲しみ、あらゆる場面で涙を流すようですが、その中でも痛みで流すことはあまりないらしいのですが。
――――――――――十三分。
長いのか短いのかよくわかりませんね。
最後のほうは発狂していましたし、正確には十分くらいでしょうか。
それでも一応こちらも得るものはありましたから良しとしましょう。
「アントライオンの頭領の名はブライアン・ハート。他にも幹部の名前を言っていましたね。拠点の場所も知っていれば申し分なかったのですが」
それは少将にでも尋ねればいいでしょう。
シャーロット・エインズワースの話では軍がどれだけの情報を得ているか不明ですが、今回の情報が無駄になることを祈るだけです。
魔法による精神干渉でも可能ではありますが、魔法で先に精神が壊れでもしたら勿体ないですし、ここは精神干渉を行わない方向でいきましょう。
人間の感情を観察するにもいい材料ですし。
「おい、どうして俺を生かしているんだ! 殺すならさっさと殺せ!」
この男は威勢がいいのでそうそう壊れないとは思いますが、念には念を入れて先に足は治療しておくとしましょう。
「超速再生魔法」
損失している膝下に新たな足が生えましたね。
男は何が起きたのか理解できていないのか、さっきの威勢はどこへやら。
「自分の足が生えてきたことに理解が追いついていないようですね」
「俺の足に何をしやがった……これは幻覚か、そうだ、幻覚に違いない! 幻覚作用のある香でも焚いているんだろ!」
「だったら立ち上がってみればいいじゃないですか。手首の拘束具は取りませんが」
自分の足で立ち上がってやっと本物の足だと認識できましたか。
人間とは随分疑り深いものなのですね。
自分の足だとわかった途端窓に向かって走り出すところは嫌いじゃありませんよ。
「ぐあぁあああっ痛ッ! どうしてこの窓程度破れねえんだよ! どうなってやがる」
頭から豪快に窓にぶつかったせいで余計な怪我を増やしてしまったようですね。
これを治す道理は私にはありません。
「全て無駄ですよ。結界を張っているのであなたはここから出られませんし、声一つ漏れることはありません」
「結界だと? 何を馬鹿げたことを……」
「あなたが信じる信じないは私にとってどうでもいいこと。私があなたを生かしている理由はただ一つ、アントライオンの上層部について知っていることの全てを聞かせていただくためです」
私の発言に全く動揺する素振りは見せません……か。
大戦で何万人もの人間を葬ってきたからわかります。
これは目は既に死をも覚悟している目。
ですが、その覚悟がいつまで続くか、私の実験に付き合ってもらえるのは僥倖というもの。
「話すつもりがないのならいくらでも我慢してもらって構いません。私の拷問は人のそれとは違いますから、どの程度我慢できるものなのか観察させてください。手加減がわかりませんので、定期的に回復させてあげます」
まずは痛覚を百倍ほど鋭敏にしましょうか。
そのあとはじっくり蟲を使い、手足・内蔵から食べてもらうというのはどうでしょう。
人間からすれば蟲というものは嫌悪対象になりやすく、その姿に圧倒されるはず。
「ではまずあなたの痛覚感度を上げます。その次は蟲に生きながら食べてもらいますね」
「どういうことだ?」
「簡単に言えば、あなたが受ける痛みが百倍ほどに増幅されるということです」
ほんの少し焦りが見えましたが、それも一瞬とは恐れ入ります。
これからこの男がどういう反応を示してくれるのか、実に興味深い。
蟲も特別に悪魔がよく使うものを召喚しましょう。
「痛覚拡張魔法、大蟷蟲召喚魔法 」
いつ見ても赤く輝く魔法陣には心が動かされます。
地獄と現世がほんの刹那繋がる瞬間。
逆に地獄に行くことができないのが残念です。
「なんだこりゃぁあああーーーーッ!」
「大袈裟ですね。ただの蟲ではありませんか。それもたった一匹で何を驚いているのですか」
「何が虫だよッッ! ただの化け物じゃねえか!! そもそも人と同じ大きさの虫なんざ存在しちゃならねえだろうがよぉぉおおおッ!」
そりゃ地獄の蟲ですから、地上における虫とは違うのは当たり前なのですが。
それにしてもこの怯えようは興味がそそられますね。
おそらく通常の拷問をしても口を割らず、ここまで怯えることはなかったでしょう。
死を覚悟しても尚感じる恐怖、それが異界の生物を前にすると如実にあらわれるものなのですね。
これは新しい発見です。
「この男の頭と胴体は食べてはいけません。手足なら好きなようになさい。くれぐれも殺さないように」
――――ギギギッ、ギギギッ――――
言葉が通じているのかはわかりませんが、ちゃんと足先からいくのはお利口さんですね。
大蟷蟲の両腕は棘状の鎌ですから、それで手足を押さえつけられるだけでも相当な苦痛のはずです。
何せ感度百倍になっているのですから。
ですが、足先をバリバリと音を立てて食べ始めるほうに意識がいっていてそれどころではないようです。
人間の防御反応というのは痛みをなくすのですね。
「さあ、楽になりたければ組織のことを全て吐きなさい。そうすればひと思いに殺してあげますよ」
「誰が話すかよ! 痛みは感じねえ! このまま死ねたら本望だ」
「これは誤算でした。しかし、恐怖からくる防御反応で痛みがわからないのは理解しました。ですが、それも慣れればまた違ったものになるでしょう。超速再生魔法」
今食べられた足をすぐさま回復させ、蟲の餌を増やしてあげました。
地獄の蟲は食欲旺盛ですから、何度でも食べてくれることでしょう。
彼がいつまで無痛でいられるか見ものです。
「お前……何してくれてんだ……」
「私としても、あなたがいつまで我慢できるのか見てみたい。ぜひ頑張ってください。言っておきますが、あなたがこれで死ぬことはありません。都度、私が回復させますから。あなたに残された道は一つだけ、全てを吐いて死ぬことだけです」
ほほぅ、これが絶望を味わった人間の表情なのですね。
ただの死は絶望へは直結していない。
覚悟がある者には、死よりも厳しい永遠を与えるほうが効果的ということ。
一つ勉強になりました。
「俺は本当に何も知らないんだッ! 本当だって! だからひと思いに殺してくれ! 頼む、頼むよ――後生だから殺してくれぇええあああぎぎゃぁあアアアアアアアッ」
もう痛みを感じ始めたのですか。
痛がることで大蟷蟲にとってはさらに生きの良い獲物になっているだけなのは黙っておきましょう。
死を覚悟したはずの大の大人が痛みで涙を流すとは、とても残念な光景です。
人間は痛み、喜び、悲しみ、あらゆる場面で涙を流すようですが、その中でも痛みで流すことはあまりないらしいのですが。
――――――――――十三分。
長いのか短いのかよくわかりませんね。
最後のほうは発狂していましたし、正確には十分くらいでしょうか。
それでも一応こちらも得るものはありましたから良しとしましょう。
「アントライオンの頭領の名はブライアン・ハート。他にも幹部の名前を言っていましたね。拠点の場所も知っていれば申し分なかったのですが」
それは少将にでも尋ねればいいでしょう。
シャーロット・エインズワースの話では軍がどれだけの情報を得ているか不明ですが、今回の情報が無駄になることを祈るだけです。
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