仮題)僕の母様は元騎士団長

れると

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僕のやるべき事

22.笑顔が大事

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こんなんだったっけ?

1度来たはずの教会はちらっと見たはずの記憶と違っていて、白とは言い難い薄汚れた灰色の壁が所々剥がれかけていて、閑散としている。

教会の人が出迎えてくれて、母様に僕たちが今日ここに来たことについての感謝を述べている。

今日ここに来たのは母様と僕である。他にもエディスやミッキィ、護衛の人達が居るけども。ルナはちゃんばらと言うなの剣術をするのだと、父様は別のお仕事で不在である。あ、一応母様はお仕事なので僕は付き添い?の立場である。

中に入るとどんよりとした雰囲気で礼拝に訪れている人は2人しか見られなかった。

よくある教会の造りで両開きのドアを潜ると、真っ直ぐ奥に続く通路があって主祭壇に行き着く。
通路の横には木で出来た5人座りの長椅子が左右に2個ずつ5列並んでいる。高い天井には光を取り込むためか、天窓が幾つかあって通路の左右にも縦長の窓があり、教会内に光を落としていた。

中も広くなく、領内で1番大きい町の教会なのにちょっとみすぼらしいと言うか、大きさも小さいというか、こんなものなのだろうか。

主祭壇の右奥にはドアがあって、その奥に案内される。この奥が教会に勤める方達の住居兼孤児院との事だ。

その奥は教会より少し小さい位の大きさで、天井は教会のそれより低く、木で出来た長机と長椅子が並んでいた。

10数人の子供が石を机の上に並べて遊んでいた。

「じゃぁソラ。俺たち奥で話聞いて来るから、ここに居る子供たちと遊んでて。」

「えっ、あっ、」

いやいや僕も一緒にと思ったが、母様はミッキィとレオンを連れて行ってしまった。

なんて事!?僕別に遊びに来たつもりじゃないのに!

1人でぽつんとしていても仕方がないので、子供たちの近くに寄っていく。

「こんにちは。」

「「「こんにちはー。」」」

挨拶すると数人の子供が返事をしてくれてホッとする。ここに集まってる子達はどう見ても僕より歳下だ。

「ねぇ、これ何してるの?」

「知らないのー?」
「お貴族様って知らないんだねー。」
「お貴族様なのにねー。」
「「「ねー。」」」

この子達の言い様に少しムッとする。

「知らないから教えてくれる?」

「えー、どうしよっかなー。」
「俺今やってるから無理ー。」
「教えられなーい、分かんなーい。」

「じゃぁ見ててもいい?」

この子達から教えて貰うのは無理そうだと思い見学を申し出る。

「まぁいいけどー。」
「邪魔しないでねー。」
「でもルール知らないのに見ててもつまらいよねー?」
「確かにー。」

ダメと言われなかったことにホっとして、近くの長椅子に腰を下ろす。

子供たちの石遊びを見ていると、それは石取りゲームのようで、山になった石を順番に取っていき最後の1個を取った人が負けのようだ。

あー、これ僕も村に居た頃近所の子達とやったなぁ。

ぼけ~っとその様子を眺めていると、外に繋がるドアと部屋の更に奥に繋がるドアからそれぞれ歳上の子供たちがやって来た。

「お洗濯終わったー?一緒に遊んでー!」

「お前らもっと綺麗に食えよ、洗うの大変だろうが。」

外から来た子には遊んでーと小さい子が群がり、奥の部屋から出てきた子は皿洗いをしていたようだ。

「あ?なんか知らない奴がいる。誰?」

そのうちの1人が僕の事に気付いたので、挨拶に向かった。

「こんにちは。本日は母様のお仕事の付き添いで来ました、ソラ・リンクスです。どうぞ宜しく。」

嫌な事されても笑顔が大事と母様に教わったことを頭に入れてニコニコと挨拶する。
すると1人が僕のことを指さして声をあげた。

「コイツ!俺たちと一緒に助け出されたのに、兄弟だけ領主様に引き取られたヤツのうちの一人だ!」

僕は一緒の村の子供たちも、僕が大きくなるにつれて父様に連れられていたから正直顔も名前もよく覚えては無いし、出身が別なら尚更だ。
でも、あの時一緒に助け出された子供たちの中には、僕達のことを覚えていて、何であの二人だけって思われることくらい分かっていたつもりだった。

「は?何だよ、今の俺たちの生活ぶりを笑いに来たのかよ!そりゃ奴隷として売られるよりは全然良い生活かもしれないけどよ!」

だけど正直ここまで敵視されるとは思っていなかった。

「いや、僕は違くて、その、」

「同じだったのに!何で!俺たちと何が違ったんだよ!?お前らだけ、良いもの着て、良いもの食べて、暖かいベッドで寝て、何しにここへ来たんだよ!」

そう言って、僕よりガタイのいい彼が僕に飛びかかろうとした。
それを近くに居たエディスが取り押さえる。

それを見て父さんの言葉がふと過ぎる。

ここで舐めらたらダメだ。

ふぅ、良し。
心の中で気合いを入れて口を開いた。

「何が違ったかなんて僕にも分からない。でも、僕は一緒に助け出された子達がどういう生活をしているか知りたくてここに来た。もし、孤児だからという理由で不遇があれば、何かしたいと思っている。」

「俺らの生活は寄付で賄っている。食事、衣服、寝具、全てが足りない、全てが欲しい!」

「今、1番欲するものは?」

「仕事だ!」

「仕事……。」

先程挙げられたものでは無くて少し戸惑う。

「分かった。ただ僕には決定権は無い。なので持ち帰らせて貰って母様と父様に相談させてもらう。」

「ああ。」

彼の目はまだ鋭いが、敵意は薄れた気がする。

「エディス、大丈夫離してあげて。」

「っ、しかし、」

ガチャ。

その時、奥のドアが開いて母様達が戻って来た。

僕達の有様を見て「何を仕出かしたんじゃお前らはー!」と子供たちに叫ぶ黒いローブの初老のおじいさん。
母様は「え?何があったの?」とポカンとしている。

「ええと、色々?ありました。あはは。」

どうしたら良いのか咄嗟に判断出来なかったけど、とりあえず笑っておこう!
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