仮題)僕の母様は元騎士団長

れると

文字の大きさ
上 下
11 / 24
僕の母様と父様

11.養子への道程

しおりを挟む
お祖母様はそれから、母様が現れるまで貴族について色々なことを教えてくださった。

首都に学校があることや、正式に養子になるまでの手続きや、魔力鑑定などなど。

初めこそ僕たち兄弟を見定める鋭い視線に恐さしか感じなかったけれど、話してくれるととても優しい人なんだと言葉の節々に感じ取ることが出来た。

僕には初めて知る事ばかりだったので驚きと共に聞いていたら、母様がお昼前にミッキィさんに連れられてきたのでお祖母様と隣の部屋に篭ってしまわれた。

そーいえば、母様はお祖母様に似ていなかった。
結局何の種族なんだろう?
母様に聞こうにもタイミングが合わず中々聞けていない。他の人に聞くのも違うと思うし。

この部屋に残ったのは、父様とルナと僕、エディスさんと、今日初めて紹介されたアランさんとそれから数人の護衛さん。

母様とお祖母様はミッキィさん達と隣の部屋に行ってしまったし、これからどうするのだろうかと父様の顔を伺う。

「まぁ、暫くはみっちりお説教くらってると思うから、のんびり過ごそうか。ところでソラ、学校の事ははゆっくり考えればいいよ。途中編入も出来るし、途中で行くのやめてもいいし、なんなら行かなくてもいいし、きっちり通うのも有りだし。」

「はい、お気遣いありがとうございます。ルナ、しっかり座ってられたね、偉い偉いっ。」

正直、学校に通わせて欲しいとは思っていない。ここから首都だと通いでは行けないし、何より僕が母様たちに着いてきた理由は学校では無いし。うん、行かなくていっかな。

ずっとイスに座っていられたルナを褒めながらそんな事を考える。

「にいに、学校行くの?」

「んー?多分行かないかな。行きたいとは思ってない。」

のんびり過ごすと言っておきながら何やら仕事の話らしいことをアランさんと始めてしまった父様なので、これからどうするのだろうとエディスさんを見る。

「僕も学校は通っていましたよ。」

「あっ、そうなんですね。」

「「・・・。」」

「す、すみません。てっきり学校の話が続いているのかと思いまして、」

「いえ、僕こそ声に出さなくてすみません、これからどうするのかと思いましてっ、」

暫くの間のあと、勘違いに気付いてお互いにあわあわと謝りはじめてしまった。

「そ、そうですね。もう少ししたら昼食のお時間ですので、それまで、ええと、どうしましょうか?」

いや、僕に首を傾げられても困っちゃうんだけど。

「エディス。とりあえず、ソラとルナに必要なものをリストアップして、優先順位や時間のかかるもの等考慮して順番決めて、周りの人を使いつつ実行。」

「かしこまりました!」

僕たちの様子をいつの間にか見ていた父様から飛んできた指示、それに歯切れよく返事をするエディスさん。

さながらとある組織の上司と部下のようだ。

あ、実際その通りか。
こういうの初めて目の当たりにするからつい前読んだ本の内容みたいだなぁと思ってしまった。

「ええと、そしたら先ずはお洋服が必要ですね。それから魔力鑑定もしなくてはなりませんし、それから読み書きもどれくらいできるか確認しないと、それでえーと、」

バンッ!

エディスさんが僕たちを見ながら必要なものを指折り確認している最中で、扉が勢いよく開かれた。

お祖母様とやつれた顔の母様とミッキィさんの3人が入って来て「そろそろ昼食の時間だな」とお祖母様が仰った。

お昼もお祖母様と一緒って事はマナーとか見られそうだから、僕の泣け無しの知識を総動員して、それからルナはまだ小さいからって大目に見てもらおう、そうしよう。

そんな事を考えていたらふらふらと母様がやって来て「ソラ!俺に血をくれ!」と突拍子もない事を言ってお祖母様に叩かれていた。

「え、ええと、痛いのは嫌ですがどうして僕の血が必要なのでしょうか?」

「あ、はい。説明がなくてすみません。えっとね、その養子になってもらうには魔力が必要なんだけど、ソラ魔術操作やった事ないかなって思って。インクに魔力乗せるのってある程度操作出来ないと難しいから、血判なら血に魔力が含まれてるし、それの方がいいかなって思って、ね。」

僕に謝っているのか、お祖母様に謝っているのか分かりかねたけど、とりあえず理由は分かった。

「そうなると、僕のだけじゃなくてルナも必要ですよね?」

「う、うん、そうだね。」

「いいよ、僕、かーさまがかーさまになってくれるなら血ぃあげるー。」

話を聞いていたけど理解出来ていないと思っていたルナが母様に駆け寄っていいよ、と返事をした。

まだ5歳で話の理解をしているのかしていないのかは分からないけども、意外と的を得た回答をしている事に驚きを覚える。

「ソラは?」

ルナを抱き上げながら僕に問うてきた母様に肯定の返事を返したらお祖母様の一声で昼食の時間になった。

マナーについては指摘されることもなく、寧ろ「平民だったとは思えない知識だな」と褒められた。僕は父様を見て覚えたから、なんだか父様を褒められたような気がして誇らしくなった。

ルナも「こぼさず食べられて偉いな」と褒められて嬉しそうだったし、何故か母様が「流石ソラとルナだね!!」と自慢げだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

急に運命の番と言われても。夜会で永遠の愛を誓われ駆け落ちし、数年後ぽい捨てされた母を持つ平民娘は、氷の騎士の甘い求婚を冷たく拒む。

石河 翠
恋愛
ルビーの花屋に、隣国の氷の騎士ディランが現れた。 雪豹の獣人である彼は番の匂いを追いかけていたらしい。ところが花屋に着いたとたんに、手がかりを失ってしまったというのだ。 一時的に鼻が詰まった人間並みの嗅覚になったディランだが、番が見つかるまでは帰らないと言い張る始末。ルビーは彼の世話をする羽目に。 ルビーと喧嘩をしつつ、人間についての理解を深めていくディラン。 その後嗅覚を取り戻したディランは番の正体に歓喜し、公衆の面前で結婚を申し込むが冷たく拒まれる。ルビーが求婚を断ったのには理由があって……。 愛されることが怖い臆病なヒロインと、彼女のためならすべてを捨てる一途でだだ甘なヒーローの恋物語。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 扉絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(ID25481643)をお借りしています。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

婚約破棄 ~家名を名乗らなかっただけ

青の雀
恋愛
シルヴィアは、隣国での留学を終え5年ぶりに生まれ故郷の祖国へ帰ってきた。 今夜、王宮で開かれる自身の婚約披露パーティに出席するためである。 婚約者とは、一度も会っていない親同士が決めた婚約である。 その婚約者と会うなり「家名を名乗らない平民女とは、婚約破棄だ。」と言い渡されてしまう。 実は、シルヴィアは王女殿下であったのだ。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

完結·助けた犬は騎士団長でした

BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。 ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。 しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。 強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ…… ※完結まで毎日投稿します

処理中です...