仮題)僕の母様は元騎士団長

れると

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僕の母様と父様

7.父様と母様が出来ました。

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「ねぇねぇイル、なんて呼ばせる?なんて呼ばせたい?」

「ガイに合わせるよ。」

「えー、どうしようかな。やっぱり母様、父様かなあ?」

僕がお二人の養子になりたいと申し出てからおふたりでなんて呼ばせるか談義に花を咲かせている。

傍から見たら盛り上がってるのはガイウスさんだけにしか見えないけども、イルヴェスさんもそんなガイウスさんを微笑ましく見ていて、僕たちのことを受け入れてくれているのが感じ取れる。

元々、誘いを受けていた側だけど、いざ申し出て拒絶されたらどうしようという不安が少しだけどあった。
でも、実際はそんなこと全く無くて、こうやって喜んでくれているのを見ると心の底からホッとしてる。

ミッキィさん達がこの街での手続きを終えて戻ってきた。奴隷商人たちと僕たち兄弟以外の人達はこの街でおさらばだ。

ガイウスさん達、ええと、母様たちの邸はここから馬を走らせてすぐらしいので、今日のうちに向かうみたいだ。

邸・・・?帰るではなく向かう・・・?

少し疑問が残る会話だったけれど、急ぐという言葉に疑問はしまってみんなに着いていく。

ルナはミッキィさんと、僕はイルヴェスさん、ええと父様の馬に一緒に乗ることになった。

正直、まだ喋った事が無いのだ。嫌われていはいないだろう事は何となく分かるけど、母様が「バランスがあんま良くないけどこれが一番だよね?」という発言にみんなが肯定したのでこうなった。

ミッキィさんは眠っているルナを起こすことなく紐と布で手早く抱っこして一緒に騎乗している。
「愚弟の世話がこんなところで役に立つとはですよぉ」なんて言っていたけどあまりの素早さにただただ感嘆の息しか出なかった。首が揺れないよう布を上手に使ってるところがもう玄人の域だと思う。

「さ、俺たちも乗ろうか。馬に乗ったことは?」

「は、初めてです。」

初めて声掛けられた!と緊張しながらも答えると、父様は僕を前に乗っけて後ろに乗り込んだ。
そして落馬しないように大きな布で僕と父様を結んだ。

「少し駆けるけどもう暗くなるし、視界からの恐怖心はないと思うけど、揺れ方が今までとは違うからね。無理そうだったら片手で支えるから言って。」

「分かりました。」

正直なところ、僕は馬に乗った高さで既に少し怖い、けどそんな事言ってられないので素直に頷く。

大丈夫、すぐだって言ってたし。きっとあっという間に到着するはず。

と思ったらそんな事無かった。

揺れが、今まで体感したことの無い、縦にぐわんというか、ガクガクとも違うし、駆けてるから風で目が乾燥するから目をつぶると馬の動きが分からなくて振動を受け流すこともできずにダイレクトに体に響く。だから目を開けて必死に馬の動きに着いていかなくちゃなんだけど、上手に合わせることが出来ない。

もう諦めて目を瞑って必死に耐えていると、父様の左手が僕のお腹に回る。
ぎゅっと押されて、元々僕の背中と父様のお腹と隙間が出来ないように結んでいたが、僕の体重を父様に預けるように手で促される。

「体を密着させて、動き合わせて。」

声を発して居ないのに僕の事を察してくれた父様に密着して、馬からの振動にどう動いているのか、動きを真似て衝撃を逃す。
これがやっぱり物凄く難しい。駆けてるからちょっと前屈みになってるし、体の動かし方がどこに力を入れていいか分かんなくて四苦八苦した。

父様も手綱を操るのに、僕のお腹から腕を外す時もあって、不安もあったけど必死に乗っていた。

建物が近づいてきて、馬がゆっくり歩くようになって、止まってしばらくしたら建物の前で待っていた10人ほどの人達が声をそろえて「お待ちしておりました」と出迎えてくれた。

周りの人達がどんどん下乗していくのを見て体がおかしな事に気がつく。

え、どうしよ、足がぷるぷるする、多分腰もお腹もやばい。やばい、無事に降りることが出来たとしても、歩けない、っていうか多分立っていられないかも。

どうしよどうしよと焦っている間に父様は僕と繋いでいた布をしゅるっと解き、ミッキィさんを呼ぶ。ミッキィさんは出迎えてくれた1人にルナを預けて来てくれた。

「あー、初めてだったなら仕方ないですよぅ。」

と言われて、ふわっと風に包まれて体が浮いたと思ったら、そのままミッキィさんの腕の中に収まった。

風魔法だ、初めて見た。ミッキィさん、見た目細いの魔法も使えて、僕の事軽々と持ち上げてすごい力持ち。

「え、ぁ、大丈夫です、僕自分で歩けますから!」

運ばれてる自分に恥ずかしさを覚えて申し出ても「はいはい、無理はダメですよ~」っと降ろしてくれない。

12歳にもなって抱っことか恥ずかしすぎる!
でも正直、自分の足で歩く事に自信が持てなかったので、抱っこしてくれてるのがミッキィさんで助かった。

僕たちを追い越して行った父様が追い越し際に頭をポンポンされてなんだか心が暖かくなる。

ぽけーっとその後ろ姿を眺めていると、母様の隣に立った父様が出迎えてくれた数人に何かを支持すると慌ててその人たちが動き出す。

母様と父様は、きっと多分、すごい偉い人。
こんな立派なお屋敷に、使用人と思われる人達に、レオンさんと同じ服を着た人は騎士団だろうし、ええーと、その人たちの上にいる人だから多分このお屋敷の主って事?

僕、すごい人に養子になりたいって言っちゃったのかな?大丈夫かな?

あれ、そういえば母様って、母様の耳も尻尾もない、あれなんて言う種族だったか聞いたっけ?僕が知ってる種族ではトリだけど、トリっぽくは無さそう。
ルナは、うん、いつの間にか母様の腕の中ですやすや寝てる。

頭で色々考えてたら、風で冷えた体がミッキィさんの体温でぬくぬくと暖まってきたと同時に強烈な睡魔に襲われる。

う、ダメだここで寝ちゃ。起きてきちんと挨拶して、それから、、、。

癖なのか、ミッキィさんが心地よいテンポで背中をトントン優しく叩いてくる。

そんな子供じゃないのに、と思いながらも気持ちのいいテンポにうとうとと、しばらく必死に睡魔に抗っていた思考も遂に降参して意識を手放した。
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