【完結】売られた先の長閑な田舎の百姓貴族の次男様に溺愛されてます

れると

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26.オリヴィアさんと

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色とりどりの花が綺麗に整列して咲き誇っている庭園のガゼボで、僕とオリヴィアさんが向かい合わせで座っている。テーブルの上にはパステルカラーのお菓子がケーキスタンドにこれまた綺麗に鎮座している。
ほわほわと湯気の立つ、金の細い線で装飾がされた白いカップには、お花の香りがする紅茶が注がれている。なんの香りだろう?こんな素敵な香りのする紅茶は初めて。

どれも美味しそうだけど、手を付けるのも勿体無い気がする。だってそれは小さい時に読んだ絵本の挿絵のような、わくわく感みたいなものがあって、それを壊してしまうのがどこか勿体なく感じてしまっているのだ。

「ふふ。さぁ、見てないで好きなもの食べて。見てるだけじゃ勿体ないわ。」

じっと眺めていたいだけの僕は、オリヴィアさんの言葉でそれもそうだと納得した。だって何より作ってくれた人達に失礼だものね。でも、もうちょっとだけ眺めていたい気もする。

「なんだか、昔読んだ絵本の挿絵みたいで感動しちゃいました。」

食べない方が勿体ない。昔は色々絵本を読んで、到底口にできるものじゃ無かったりしたから、どんな味なのかな、美味しそうだなと思って読んでいた。今は食べられる機会にあるんだもの。折角だから堪能しなくちゃそれこそ勿体ないよね。
カップケーキ、焼き菓子等目に付いた物を取り分けてもらって早速口に運んだ。

「っ!!何これ、想像してたのよりすっごく美味しい!です!」

前回のお茶会はビビって参加して結局最後まで緊張しっぱなしだったから、美味しかった記憶はあるけどそれよりもっていう感じだったけれど、今回のはただのお茶会って訳じゃないんだけど、オリヴィアさんが優しいのは知ってるし、変に気持ちが強ばることが無くてすごく楽しいし味もよく分かって更に嬉しい。何を食べても美味しい。

「お口に合ったようで何よりだわ。さて、じゃぁ本題に入ろうかしらね。」

そう、今日はただのお茶会ではなく、オリヴィアさんに玄関の花瓶と花瓶に生ける花について相談したいと言われて来たのだ。もちろん最初は断った。僕にはセンスなんて無いし、色の合わせ方や、適切な花の種類も分からない。でも、オリヴィアさんは「折角一緒にわいわい出来る人が増えたんだもの。一緒にやりましょう。」と半ば強引に開催されたのだ。

気持ちの切り替えとお口直しに紅茶を1口飲む。

「ん、待って何これ。凄く美味しい!こんな美味しいの初めて飲みました!あ、玄関の花瓶でしたね、あとお花っ!」

あまりの美味しさに口をついて出てしまって、恥ずかしさに本題を口にした。

玄関扉内側の両隣のフラワースタンドに花瓶とそれに生けたお花があるのは知っていたけれど、オリヴィアさんが生けていて、なんでも花瓶も都度都度変えているらしい。知らなかった。

「ふふふ、キーリーは何色のお花が好き?今回はお花から選んでいきましょうか。今の花瓶はもう使えないからね。」

「え、なんでですか?欠けたりしちゃってましたっけ?」

あまりお花に興味が無いのでそこまで気にして見てはいないけれど、3日ほど前に変わったそれは、確か白ベースの金縁に金でお花の模様が入った花瓶だったはず。お花は、えーと、可愛い色のお花が沢山詰まってたかな!

「ウィリアムがね、花に花生たのか?って揶揄うから今度は文句言わせないように気合い入ってるのよ。」

お花模様の花瓶にお花を生たのかって事か。僕には見ても何も違和感無かったけれど、見る人が見ればそう思うのかな。
あれ気合いが入ってるってもしかして僕すごい期待されてるの?滅茶苦茶ハードルが高くなってしまったんだけれども!文句を言わせないもの作るってことでしょ!?

「僕それ足引っ張っちゃいません?」

「そんな事ないわ、私には無い新しいセンスに期待を膨らませているわ!」

オリヴィアさんの期待値が高くて怖い。僕、本当にお花の事なんてこれっぽっちも分からないんだけれど。

しかも今は秋の終わり、冬の前。一年中温暖な気候と言っても咲いてくれるお花の数は減っていく一方のはずで、不安しかない。

「す、すみません。僕お花の事はさっぱりなのですが、えと、とりあえず今咲いていて飾れるお花ってどういうのがありますか?」

事前に伝えてはあるのだが、僕はお花に関しては無知ですよと再度アピールしつつ、飾れるお花を確認する。

「そうねぇ、今ここから見えてる物は今が最盛期、少し向こうの柵の辺りのはこれから咲くお花ね。見に行きましょうか。」

肯定の意を示してオリヴィアさんと連れ立って庭園のお散歩をした。少し離れてルーランとオリヴィアさんの侍女が着いてくる。

これからお花が減っていく季節だからなぁと思ってはいたけれど、僕の想像を超えるほどの様々なお花が綺麗に咲き誇っていた。大きな1輪を据えるものや、小さなお花が集まって大きく見せているもの、1つの茎に1輪ずつ付けているものと様々で、咲き方も上を向いていたり下を向いていたり、様々な場所に顔を向けている。それに同じ種類でも少しづつ違くてそれぞれ個性があって見ていて飽きない、すごく楽しい!

そういえば玄関に飾られているお花も全て綺麗に咲き誇っていたと思う。ん?こういうのってあまり見たことないけれど有りなのかな?

僕は今思いついたアイディアを早速オリヴィアさんに伝えてみた。

「まぁ!すごく良いアイディアだと思うわ!私には思いつかなったわ、やってみましょう!」

オリヴィアさんの反応に僕も気持ちがどんどん上がっていく。
最初は無理だと思っていたけれど、やってみると想像以上に楽しい!!!

僕たちは早速温室へと足を向けた。
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