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18.郷に入っては郷に従うよ

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家に帰ってからのお話し合いの結果「先ずは食事量を増やすところから」に落ち着いた。

あのブレアの「え」という発言にはモヤモヤが残るけど。でも、ダメって訳じゃなさそうで安心した。とりあえず、トレーニングの前に肉を付ける事!ブレアから出された課題はこれだった。それと何度も無理をせず少しづつを強調された。

僕も突然ブレアみたいになれるだなんて思ってない。言われた通り無理をせずに少しづつやっていくつもりだ。

夕食のメニューも心做しかお肉が多い気がする。もしかして僕が今より筋肉がつくように応援してくれている!?

ここに来てから僕の食事量を把握してもらっているコックさん達は本当に凄い。今日の食事量も無理のない程度に少しづつちょっと多い量みたいだった。
うん、プロってすごいね。

そして食事中にブレアに「明後日、父上と兄上と義姉さんが帰ってくるんだ。」と言われて固まってしまった。

今までこれが普通に感じてたけど、ブレアって次男だものね。そりゃあ、ご両親とお兄さんやお姉さんがいるよね?

「ん?あれ、お母さんは?っていうか皆どこに行ってたの?」

   「ああ、母上は既に亡くなっている。父上たちは、」

「待って僕それ初耳なんですけど!!重要事項!僕まだお義母様の墓前にご挨拶してないです!今すぐしなくちゃだよ!」

ガタっと立ち上がるとブレアは慌てて「待て待て待て!」と僕を止める。

「話は最後まで聞け。そもそも母上の墓はここには無い、というか墓自体がそもそも無い。」

「え?なんで!?どういう事!?」

お墓が無い!?そんなことがあるの!?

「共同墓地なんだ。うちの領は特に殆どが農村地帯だろう?大体の人が、亡くなったら自然に帰るという考えなんだ。そして、皆無くなったら同じ山の麓に入るんだ。」

「入る・・・?」

「そう、亡くなったら入るんだ。ここの領の者はそう言う。山の神とか伝説?とか色々理由があるんだが、まぁそんな事で無い墓前に報告なんかは出来ない。」

「う?ん、お墓が無いことは理解したけど、ごめん。他がさっぱりで、えぇーと?」

「まぁ、その辺については別にな。私もしっかり理解してる訳では無いし、言い伝えとかではっきり分かってないことも多いしな。ただ昔からそういう習わしなんだって事は確かだ。」

「そうなんだ?」

亡くなったらお墓を立てて埋葬するものだと漠然と思ってたけどそんな事無いんだ。所変われば品変わるってこういう事なんだね。でも、そっかぁ。じゃぁ、お義母様にはもうご挨拶出来ないんだ。

しゅん、と耳も尻尾も気落ちしているとブレアが慌てたように言葉を付け足す。

「いや、年に2回報告の儀というものがあって、1ヶ月後辺りに今年の収穫のお礼と報告をその山の麓でやるんだ、同時に先祖も称えてな。だからその時にと思っていたんだ。」

「そっかぁ。じゃぁその時までお預けなんだね。じゃぁ、お義父様達はどこへ行っていたの?」

今出来ないことは仕方ないので、その時が近づいたらあたふたすればいい。

「おぉ、潔いのかなんなのか。ごほん、父上達だが、今年の収穫量の見込みと冬前の社交界の為に王都に行っていたのだが、それが明後日帰ってくると連絡があった。」

「へーえ。ぼ、僕はどうすればいい?」

自国の貴族界について全く知らない僕が嫁に訪れた貴族界の事など知る由もなく。社交界ってシーズンでもあるのかな?とぼんやり考えた。

いやいやそんな事より僕はお義父様達と何をどうしたらいいのか。先ずはご挨拶なんだけれども。

「とりあえず、私と一緒に出迎えて、まぁあとは流れで。」

「流れで!?そんなアバウトな!?」

「どうせ簡単な挨拶で終わる。食事は一緒に取る形になるが、嫌なら別々にするし。」

「それくらいは大丈夫だよ!?最初は緊張してただけなんだから!僕、そんなにビビり猫じゃないよ!」

「あぁ、すまない。最初のおどおどしてたのが可愛くて。」

「ちょっとぉ!!」

僕の人生最大の緊張を可愛くてって酷くない!?

「ふはっ、私には今みたいに怒って太くした尻尾をブンブン振っているのも可愛くて仕方ないのだ。」

恥ずかしくてかっと顔に熱が上り、咄嗟に尻尾に意識を集中して沈めて、ガタンと椅子に座り何事も無かったかのように食事を続けた。

もぅ!何でもかんでも僕のこと可愛いって酷くない!?僕の方が歳上なんだよ!?こうなったらしっかり体力つけて、筋肉もつけて、かっこいい所を沢山作らないと!

僕は決意を新たに美味しい食事を完食した。


☆。.:*・゜☆。.:*・゜


翌日、トレーニングの前に基礎体力をと言うことでブレアと食後の庭園散歩をしている。

こうしてじっくり植物を観察するのは初めてだ。庭師のヒルズ夫妻の2人で主に管理しているんだって。今日は奥さんのエマさんに色々と質問をしながら庭園を散歩している。

僕は植物なんて今まで食べられる実がなる木以外は興味がなかったけど、花言葉があったり、庭師が手を入れて新しい色の花を咲かせたり、新しい種類の果実を作ったり、数年に1度だけ花が咲くものがあったり、知らない事が山ほどあって、植物って面白い!と素直に思った。

1番凄いと思ったのは、真冬の満月の夜にだけ咲く花があるらしい。

らしい、というのはエマさんも含めて実際に見たことが無いからだ。ただ、3代前のこの国の王様が他の国に行った時に実際に見たという文書が残っているんだって。

そんな感じでエマさんに草花について色々教えて貰っていたら、ブレアのお仕事の時間になってしまった。

ブレアはまだエマさんと庭園に居てもいいって言うんだけど「僕、ブレアのお嫁さんだよ?ブレアのお手伝いをして当然でしょ?」って言って一緒に執務室に向かったんだ。

そうだ、ブレアの執務室には本が沢山あったから、植物に関わる本が無いか聞いてみよう!

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