【完結】売られた先の長閑な田舎の百姓貴族の次男様に溺愛されてます

れると

文字の大きさ
上 下
14 / 51

14.呪いの公爵家

しおりを挟む
「ふむ、やはりどれも丈は良いのだが、身幅がな。よし、これとこれとそこのやつ今少し詰めれるか?」

「「「はい!」」」

僕は今、ブレアと使用人3人の前でファッションショーをさせられている。

ブレアは僕の服の確認に行ったのではなくて、自分がサイズアウトした服、俗に言うお古を持ってきたのだ。

ルーランが「恋人には自分の服を着せたがるものなんですよ。彼シャツと言うやつですね!」と言われたけど全くもって理解できない。っていうか彼シャツって何。

使用人の方たちは、さささっと余裕のありすぎた肩幅や身幅を詰めていき、あっという間に僕にピッタリのサイズにしてしまった。

「すごい。そういう職の人みたい。」

「お褒めに預かり光栄ですわ。」

僕がぼそっと呟いた言葉に笑顔で返事をしてくれる。こういう所もプロなんだよね、すごい。

幾つか僕のサイズに合わせてくれた洋服のうち、ブレアの好みでシンプルな白いシャツに濃いめの紫のボタンベスト、シックな濃い灰色のパンツになった。

「僕、ブレアの服ちゃんと着れてる?服に着せられてる状態じゃないよね?大丈夫かな?」

「うむ、大丈夫だ。これはこれで私は嬉しいが、今度きちんと新しいの仕立てような。」

「え、でも僕お仕事らしいお仕事してないのに、申し訳な、」

「大丈夫だ、ちゃんと当初提示した仕事を立派に熟しているぞ?」

「え、何かお仕事貰ったっけ?」

「まずお風呂のお供だろ?それから夜のお供だろ?」

「あー!!!」

そうでしたね!それが最初に貰ったお仕事でした!!

まだ部屋にいる使用人達に聞かれたくなくて大きな声でブレアの言葉に被せたつもりだったけど、効果が無かったようで皆さんニコニコと僕たちの会話を聞いている。

恥ずかしいからやめてよもう!!!

「では、私たちはこれで失礼致します。」
「「失礼致します。」」

と一部始終を微笑ましく見守っていた使用人達は声を揃えて退室して行った。ドアが閉まる直前に「仲が良すぎるわぁ」というような声が聞こえた気がしたけど気の所為と思うことにした。

部屋に残ったのはブレアと僕と、着なかった残りの服をまとめて片付けようとしているルーラン。

「さて、今日のスケジュールだが、」

「はいっ。」

今日は何をするのかな?っとワクワクしながらブレアの方を向く。

「っと、その前に、」

ちゅっ。

「へ?」

今、僕の唇にブレアの唇が触れた?
フレンチキスっていうやつ?

反応出来ずにぽけっとしていると、ブレアは更に顔中の至る所に唇を触れてきた。

「ちょちょ、ちょっと待ってブレア!」

「ん?どうした?」

どうした?じゃないよ!
ムスッとしながら「今日の!スケジュール!」と先を促した。

ルーランが服をまとめて僕の部屋に持って戻っていく際に「キーリー様愛されてるー。」と言われたのは聞こえないふりをした。

「そうだな、ちょっと急な書類仕事があってだな。それの手伝いをして欲しい。簡単な読み書き計算は出来るのだろう?」

「合点承知!ブレアは執務室持ってるの?」

「ああ。気に入ってくれると嬉しいが。」

「っすごい楽しみ!早く行こう!」


軽く軽食を取って向かったブレアの執務室は、艶のあるダークブラウンの家具で統一された、それはそれは素晴らしい執務室だった。

待ってこんなの、絵本に出てくる公爵様の執務室じゃない!?素敵すぎるよ。

「ちょっとおじさん臭いかな?」

僕が部屋を見て固まってしまったからか、不安げな声を出すブレア。

「えっ、全然!?むしろ昔読んだ絵本に出てくる公爵様の執務室みたい!」

10代の執務室にしては大人びすぎてる気がするけど、っていうかそもそも10代で執務室って凄くない?

「見ていい?見ていい?」

「ああ。ここは昨日の叔父さんの使ってた執務室をそのまま譲り受けたんだ。だから俺にしては大人びた執務室なんだ。」

「へー、そうなんだぁ。あれ、僕この本のタイトルと全く同じ絵本読んだことあるよ。」

僕が背伸びしても上まで手が届かない大きな本棚の中に懐かしいタイトルを見つけた。でも、僕が読んだことあるのはこんなにしっかりした本じゃなくて、絵が多くて文字も少ない、目の前にある本の半分の厚さもない子供向けの絵本だ。

「お、キーリーは"呪いの公爵家"を知っているのか。これは元々絵本ではなくてな、原作を読んだ人が子供にも素晴らしい物語を、と絵本にして広めたんだ。絵本の方が有名になってしまったが、元は目の前にある本が最初だぞ。」

「へー、そうだったんだぁ。あ、ねぇこれ僕読んでみたい!読んでいい?」

「ああ、もちろんだ。もし難しいところがあれば教えてやろう。ただし、」

「ただし?」

「今日のお仕事を終えてからな?」

「イエッサー!」

僕は元いた国の国境の門番の兵士の如く、握った右手を左肩に置いて、よく聞いていた門番の兵士の返事を口にした。

ブレアから与えられた仕事は、とある地域の収穫量と出荷量、消費量などの資料を見て提出された在庫と計算した在庫に差異が無いか確認する仕事だった。

こういうの得意なんだよね~と思いながらサクサクと進めていたら、僕の計算の速さにブレアが驚いていてちょっといい気持ちだった。

ふふん、僕ね計算は得意なんだよ!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

お荷物な俺、独り立ちしようとしたら押し倒されていた

やまくる実
BL
異世界ファンタジー、ゲーム内の様な世界観。 俺は幼なじみのロイの事が好きだった。だけど俺は能力が低く、アイツのお荷物にしかなっていない。 独り立ちしようとして執着激しい攻めにガッツリ押し倒されてしまう話。 好きな相手に冷たくしてしまう拗らせ執着攻め✖️自己肯定感の低い鈍感受け ムーンライトノベルズにも掲載しています。

親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話

gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、 立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。 タイトルそのままですみません。

異世界へ下宿屋と共にトリップしたようで。

やの有麻
BL
山に囲まれた小さな村で下宿屋を営んでる倉科 静。29歳で独身。 昨日泊めた外国人を玄関の前で見送り家の中へ入ると、疲労が溜まってたのか急に眠くなり玄関の前で倒れてしまった。そして気付いたら住み慣れた下宿屋と共に異世界へとトリップしてしまったらしい!・・・え?どーゆうこと? 前編・後編・あとがきの3話です。1話7~8千文字。0時に更新。 *ご都合主義で適当に書きました。実際にこんな村はありません。 *フィクションです。感想は受付ますが、法律が~国が~など現実を突き詰めないでください。あくまで私が描いた空想世界です。 *男性出産関連の表現がちょっと入ってます。苦手な方はオススメしません。

急に運命の番と言われても。夜会で永遠の愛を誓われ駆け落ちし、数年後ぽい捨てされた母を持つ平民娘は、氷の騎士の甘い求婚を冷たく拒む。

石河 翠
恋愛
ルビーの花屋に、隣国の氷の騎士ディランが現れた。 雪豹の獣人である彼は番の匂いを追いかけていたらしい。ところが花屋に着いたとたんに、手がかりを失ってしまったというのだ。 一時的に鼻が詰まった人間並みの嗅覚になったディランだが、番が見つかるまでは帰らないと言い張る始末。ルビーは彼の世話をする羽目に。 ルビーと喧嘩をしつつ、人間についての理解を深めていくディラン。 その後嗅覚を取り戻したディランは番の正体に歓喜し、公衆の面前で結婚を申し込むが冷たく拒まれる。ルビーが求婚を断ったのには理由があって……。 愛されることが怖い臆病なヒロインと、彼女のためならすべてを捨てる一途でだだ甘なヒーローの恋物語。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 扉絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(ID25481643)をお借りしています。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

処理中です...