上 下
157 / 167

介護、再び

しおりを挟む
「ん、・・・ふぁ~あ。」

目が覚めてすぐあくびが出る。

ん、腰が重……重いぃぃぃ。

「あ、ガイ起きた?大丈夫?」

イルが俺をベッドの外から覗き込んで聞いてくる。

「ん・・・・?あれ、今何時?」

窓から見える空は赤く染まり始めている。
一晩中抱かれていて、寝付いたのが太陽が登りかけた頃だったから、ええと、もしかしなくても夕日!?

「もう暫くしたら夕食の時間だけど、今、お腹すいてるよね?」
「ん、お腹空いてるけど、空いてない。」
「何か食べておかないと。」

そう言って、スープを持ってくる。

「待って、イル、起き上がれない。」

腰が痛いというか、ギシギシする感じがして、無理に起き上がろうとすると腰やっちゃいそうな、危ない感じ。

「痛い?ごめん無茶させ過ぎたかな?」
「とか言いながら滅茶苦茶笑顔なんだけど?」

イルはスープの入った器をサイドテーブルに置いて俺をベッドヘッドに寄り掛かるように抱き上げて座らせる。

「これ飲んだらトイレ行こうね。」

イルが凄い笑顔。イルってなんでか分からないけど俺の世話するの大好きなんだよね。なんでだろう?

「はい、あーん。」
「あーむ。」

イルが具沢山のスープをスプーンに掬って俺の口元に持ってきてくれるから、躊躇無くパクッと咥えて、もぐもぐゴックンする。

「美味しぃ。」

沢山の野菜とお肉をじっくり煮込んだスープは深みがあって、具材もトロトロに柔らかくて、とにかく美味しい。

「イルが作ってくれてたスープとよく似てる。」

そう、俺が寝込んだ時にイルが作ってくれるスープも、野菜やお肉をトロトロになるまで煮込んだシンプルな味付けのスープ。素朴な感じが体に染み渡るんだよね。

「あ、分かる?さすがガイだね。実際に作ったのはシェフだけど、俺が指示を出したんだ。」
「!?そうなの?分かった俺って凄くない?」

イルがすごく嬉しそうにスプーンを差し出すからパクパクと食べてあっという間に器が空になった。

お腹は空いてたけど、食べたい欲はあまり無かったのに、ふふ、イルのスープって凄いなぁ。

「もう少し食べれそう?」
「うん、おかわりっ。」

俺は結局イルの給仕でスープを2杯平らげた。

「よく食べました。」

イルは俺の頭を軽く撫でて片付けに行く。
と言っても適当に扉近くのテーブルに置いておけば侍従が片付けてくれるんだけどね。

そのあとは宣言通りトイレに連れていかれて………だから介護にはまだ早いと思うんだけどなぁ。

すんごい笑顔でお世話されるの、少し恥ずかしい。
俺が恥ずかしいとか思ってるからそれがイルに伝わって嬉しがってるのかな?え、俺が恥ずかしがるとイルは嬉しいの??

「ガイ、腰揉んであげるね。まだ辛いでしょ?」
「え、そこまでしなくていいよ。明日には戻ってるだろうし。」
「ふふ、俺がやりたいんだよ、ガイ。」

そう言ってベッドにうつ伏せに寝かせられて、イルが跨ってくる。

俺のシャツを捲って、腰の上部にぴとっと肉球の感触がする。

「んっ、肉球だぁ。気持ちいい。」

ぴとっと当てられた肉球は最初冷たかったが、俺の腰をむにむにと揉んでいく内に暖かくなって、今ではじんじんポカポカと暖かさが気持ちいい。

「イルはさぁ、なんで俺の世話するのが好きなの?」
「んー?大好きなお嫁さんだから?」

何となく疑問を投げてみたらはぐらかされた?いやでも本心だろうけど。

「ふふ、ガイはさぁ。辛いことがあると隠そうとするじゃん?熱出た時とかも怪我した時とかも。」
「そうかなぁ?」
「そうだよ。いつも大丈夫、放って置けば治るって言ってさぁ。」
「ぁぁ、そうかも?」
「それでさ、ガイが俺と付き合って休みに日に熱出したじゃん。その時もすんごい辛そうなのに、大丈夫って言っててさぁ。なんか助けてあげたいっていうか、俺が直してやるって思った。」
「ぶ、何だそれ。」
「でも、それが結果的には俺の仕事にも繋がったでしょ?子供や老人向けの効能が弱めの薬とかね。」
「ああ、確かに。」
「だから、ね、ふふ。助けてあげたいって思ってたけど、結局俺が助けられたのかな?」
「ええ、聞かれても分かんないよ!」
「ふふふふ。」

イルは俺へのマッサージを辞めてぎゅうっと抱きしてめて来る。俺の首の後ろに鼻先を押し当てて、クンクンクンクン匂いを嗅がれる。

「はぁ、ガイの匂い好き。」
「俺匂いあるの?」
「あるよ。獣人に比べたら薄いけどね。」

そう言って、首、襟足、耳の裏等クンクン嗅がれる。

「んっ。」

吐息が耳にかかると変な声が出てしまう。

「今日は抱かないよ?」
「わかってるよ。変なところ嗅がないでよ。」
「変なところは嗅いでない。」

そう言いながらイルは俺をくるっとひっくり返して仰向けにして首元や胸等クンクンしていき、満足したのか俺はそのまま抱き枕にされて、夜が過ぎていった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

応募資格は、「治癒師、十三歳、男限定???」

若松だんご
BL
【お知らせ】 このたび、pixivさまで開催されていた、「ゆるキュンBLマンガ原作コンテスト3」で佳作を受賞しました。 しかーし! 書籍化、コミック化などの展開はありませんので、こちらに投稿している分は、非公開などせずにこのまま置いておきます。 ―――――――――――  ――俺のお仕えする殿下のお身体を診てあげてほしい。  治癒師のじいちゃんの弟子として暮らしていたリュカ。そのじいちゃんの患者だったオッサンから、仕事の依頼が来た。なんでも、オッサンの仕える相手は、皇太子殿下で。体が弱ってるのに、治療を嫌がってるらしい。……ガキかよ。  ――殿下と同い年のキミなら。キミにならきっと殿下もお心を開いてくれると思うんだ。  なんかさ。そう言われちゃったら、頑張るしかないじゃん? でも。  なんで、「治癒師、十三歳、男限定」なんだ???  疑問に思いつつも、治癒師として初仕事に胸踊らせながら皇宮を訪れたリュカ。  「天女みたいだ……」  皇宮の庭園。そこにたたずむ一人の少年。少年の目はとんでもなく青くて透き通ってて、湖面のようで、夏の空のようで宝石のようで……。見惚れるリュカ。だけど。  「必要ない」  少年、ルーシュン皇子は、取り付く島もない、島影すら見えないほど冷たくリュカを突き放す。  ……なんだよ。こっちはせっかく、わざわざここまで来てやったのに!   リュカの負けず魂に火がつく。  こうなったら、なにが何でも診てやらあっ! たとえそれが茨の道でも、危険な道でも、女装の道でも……って、え? 女装ぉぉぉっ!? なんでオレ、皇子の「閨事指南の姫」なんかにされてるわけっ!?  「いやなら、治療を降りてもいいんだぞ?」  居丈高にフフンと鼻を鳴らす皇子。  ええい、ままよ! こうなったら、意地だ! ヤケだ! 皇子の面倒、とことん診てやらあっ!  素直になれない皇子と、感情一直線治癒師の中華(っぽいかもしれない)物語。

モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中

risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。 任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。 快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。 アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——? 24000字程度の短編です。 ※BL(ボーイズラブ)作品です。 この作品は小説家になろうさんでも公開します。

ようこそ異世界縁結び結婚相談所~神様が導く運命の出会い~

てんつぶ
BL
「異世界……縁結び結婚相談所?」 仕事帰りに力なく見上げたそこには、そんなおかしな看板が出ていた。 フラフラと中に入ると、そこにいた自称「神様」が俺を運命の相手がいるという異世界へと飛ばしたのだ。 銀髪のテイルと赤毛のシヴァン。 愛を司るという神様は、世界を超えた先にある運命の相手と出会わせる。 それにより神の力が高まるのだという。そして彼らの目的の先にあるものは――。 オムニバス形式で進む物語。六組のカップルと神様たちのお話です。 イラスト:imooo様 【二日に一回0時更新】 手元のデータは完結済みです。 ・・・・・・・・・・・・・・ ※以下、各CPのネタバレあらすじです ①竜人✕社畜   異世界へと飛ばされた先では奴隷商人に捕まって――? ②魔人✕学生   日本のようで日本と違う、魔物と魔人が現われるようになった世界で、平凡な「僕」がアイドルにならないと死ぬ!? ③王子・魔王✕平凡学生  召喚された先では王子サマに愛される。魔王を倒すべく王子と旅をするけれど、愛されている喜びと一緒にどこか心に穴が開いているのは何故――? 総愛されの3P。 ④獣人✕社会人 案内された世界にいたのは、ぐうたら亭主の見本のようなライオン獣人のレイ。顔が獣だけど身体は人間と同じ。気の良い町の人たちと、和風ファンタジーな世界を謳歌していると――? ⑤神様✕○○ テイルとシヴァン。この話のナビゲーターであり中心人物。

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

【完結】お嬢様の身代わりで冷酷公爵閣下とのお見合いに参加した僕だけど、公爵閣下は僕を離しません

八神紫音
BL
 やりたい放題のわがままお嬢様。そんなお嬢様の付き人……いや、下僕をしている僕は、毎日お嬢様に虐げられる日々。  そんなお嬢様のために、旦那様は王族である公爵閣下との縁談を持ってくるが、それは初めから叶わない縁談。それに気付いたプライドの高いお嬢様は、振られるくらいなら、と僕に女装をしてお嬢様の代わりを果たすよう命令を下す。

異世界に転生したら竜騎士たちに愛されました

あいえだ
BL
俺は病気で逝ってから生まれ変わったらしい。ど田舎に生まれ、みんな俺のことを伝説の竜騎士って呼ぶんだけど…なんだそれ?俺は生まれたときから何故か一緒にいるドラゴンと、この大自然でゆるゆる暮らしたいのにみんな王宮に行けって言う…。王宮では竜騎士イケメン二人に愛されて…。 完結済みです。 7回BL大賞エントリーします。 表紙、本文中のイラストは自作。キャライラストなどはTwitterに順次上げてます(@aieda_kei)

Switch!〜僕とイケメンな地獄の裁判官様の溺愛異世界冒険記〜

天咲 琴葉
BL
幼い頃から精霊や神々の姿が見えていた悠理。 彼は美しい神社で、家族や仲間達に愛され、幸せに暮らしていた。 しかし、ある日、『燃える様な真紅の瞳』をした男と出逢ったことで、彼の運命は大きく変化していく。 幾重にも襲い掛かる運命の荒波の果て、悠理は一度解けてしまった絆を結び直せるのか――。 運命に翻弄されても尚、出逢い続ける――宿命と絆の和風ファンタジー。

【完結】守護霊さん、それは余計なお世話です。

N2O
BL
番のことが好きすぎる第二王子(熊の獣人/実は割と可愛い) × 期間限定で心の声が聞こえるようになった黒髪青年(人間/番/実は割と逞しい) Special thanks illustration by 白鯨堂こち ※ご都合主義です。 ※素人作品です。温かな目で見ていただけると助かります。

処理中です...