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なるようにしかならないものだから
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とうとうこの日がやってきてしまった。
事前に義父様から
陛下が「面を上げよ」と言うまで顔を上げては行けない。
返事は「御意」。
何か褒められたら「身に余るお言葉、恐悦至極に存じます」。
陛下に集中して、決して余計なことは考えないように。
と言うのを何度も繰り返し伝えられ、練習も沢山した。
大丈夫だよ、きっと。
長く感じるかもしれないけど、終わったらあっという間だったって思うだろうから頑張って集中しようと思う。
俺は公爵家で序列が上なので先に行って先に終わるし、それに、公爵家からお伝えすべき事があるので義父様も一緒だし、大丈夫大丈夫。
1人だったら心細いけど義父様居るし、最悪何かあったら義父様が何とかしてくれるだろうし。
「そんなに緊張しなくて大丈夫だよ、ガイ君。陛下から、第2王子殿下の事と龍の狩場の事でのお褒めの言葉とそのお礼に叙爵と領地拝領を堅苦しい場と言葉で言われるだけだから。」
「ふふふ、その堅苦しいのが嫌なんですけれど。」
待合室で義父様と2人でその時を待つ。
部屋の奥で青色系統でまとめた衣装の人が居る。あの人が多分、海の街のお貴族様なんだろうな。
時間が近づき待合室から扉の前まで義父様と移動する。
さっき緊張しなくても大丈夫って言われたけど、大きくて重厚な扉を前にすると勝手に緊張してきてしまう。
1度息を吐いてから、吸う。
うん、大丈夫。義父様がすぐそばに居るし、中には義母様も義兄様もイルも居る。
扉が開いて、俺は義父様と並んで赤い絨毯の上を歩く。
真っ直ぐ前だけを見て歩いて、少しだけ前を歩く義父様が止まり俺も真横に止まって、片膝を着いて敬意を表す。
歩いて来た道を挟むようにして今日の見届け人が並んでいる。家柄と役職の高い順から陛下に近い前から順に。視界の端っこに義母様と義兄様達が見えた。
でもそっちを向いてはいけない。
名前が呼ばれて、義父様が言っていたようにお堅い言葉でお褒めの言葉と褒美を頂く。義父様や義母様たちとたくさん練習をした感謝のお言葉を口にしてようやく「面をあげよ」と言われて顔を上げた。
俺たちが膝まづいた少し先に3段ほどの階段があって、壇上に国王陛下は居た。
国王陛下と王妃殿下、第1王子殿下と第2王子殿下が揃って椅子に座られていた。
装飾で過度に飾られている訳でも無いが、高級だと人目でわかるどちらかと言うとシンプルな衣装。指輪やネックレス等も最低限。陛下の椅子は豪華仕様でおそらくあれが玉座と言うものなんだろう。
陛下の佇む存在感と俺を見定めようとする鋭い眼差しに畏怖の念が知れずと湧いてくる。
これが、この国の王様。
この方達がロイヤルファミリー。
右端にいつもの黒い人。左端には俺が助けたであろう白い人。俺が見た時は白いふわふわの球体だったけど、ロイヤルファミリーはお顔もロイヤルだね?
陛下は視線を義父様に向けて口を開いた。
「してルアン。何か報告があると聞いているが。」
お、お義父様を名前呼び!?
それともこれが普通なの?
俺が吃驚している間に義父様はさっさと俺の年齢について報告をし終えていた。
それについて陛下は何か進言するでもなく「まぁ、拾われ子だからね。」との一言で終わった。
呆気なく終わってよかった。
もうそろそろ終わりかなと思った時陛下が「最後になるが」と口を開いた。
「当日までのお楽しみと伝えてあった褒美の事だが、騎士団団長の任に暫くサミュエルをと思うのだがどうだろうか。2年ほど付きっきりで教えて貰う事にはなると思うが、世間知らずなサミュエルも王宮の外を知るいい機会にもなるしと思ってな。どうだろうか。」
・・・へ?サミュエル様って第2王子殿下の?何で?
どうだろうかって聞いてるけどこの場で言うって事はもう決まってるんだよね?え?でも護衛とか色々問題あるよね?
え?ナニコレ。陛下のジョーダンですか?
「ええと、あの、その、ええと?」
あれ、俺これ不敬罪にならない?大丈夫?
義父様もお顔が呆けてるよ?俺、どうしたらいい?
「はっはっはっはっ。まぁ、この話は後で詰めようでは無いか。」
俺もしかして陛下にからかわれてる?
そうこうしているうちに終わって俺と義父様は待合室に戻ってきた。
「え、義父様、どういう事、ですか?」
「ああ、私も吃驚だ。後で陛下に真相を伺ってみるよ。」
「お願いします。」
義父様も知らなかったんだね、そうだよね、あんな顔してたもんね。
「あの場で言うって事はもう確定事項って事で受け取っちゃって問題ないんですよね?」
「ああ、そう思って大丈夫、のはずだ。」
俺は最終確認をしたけど、やっぱり確定事項なんだと気持ちが沈んだだけだった。
ああ、だから騎士団枠で何人か呼ばれてたのか。レスト副団長もこの為に騎士団枠だったのね、今やっと合点がいった。
まぁ、確定事項なら仕方ないよ。今更何言っても覆ることはないだろうし、言うつもりもないしね。
この後の授与式はすぐ終わるはずだから、イル達を待って一旦帰って着替えて夕方また登城して夜会で美味しい物食べて。うんうん、美味しい物食べて忘れよ。何とかなるよ、なるようにしかならないしね!
「夜会ってどんな食事が出るのかな~。楽しみだなぁ。」
「はは、ガイ君は気持ちの切り替えが早いね。」
「考えても仕方の無いことは考えない主義なんです。だって美味しいものは美味しく食べたいですし?」
騎士団として何回か夜会の警備に出たことあるけど、どうせ食べれるわけでもないし見ないようにしてたんだよね。あー楽しみ!
「王宮主催だからね、豪華だよ。前回の夜会ではねぇ、」
俺は義父様に夜会の食事の素晴らしさを沢山聞いた。
端から端まで全部食べたいけど、それは無理だしなぁ。
ふふふ、今回は踊らなくても良いし楽しみだなぁ。
事前に義父様から
陛下が「面を上げよ」と言うまで顔を上げては行けない。
返事は「御意」。
何か褒められたら「身に余るお言葉、恐悦至極に存じます」。
陛下に集中して、決して余計なことは考えないように。
と言うのを何度も繰り返し伝えられ、練習も沢山した。
大丈夫だよ、きっと。
長く感じるかもしれないけど、終わったらあっという間だったって思うだろうから頑張って集中しようと思う。
俺は公爵家で序列が上なので先に行って先に終わるし、それに、公爵家からお伝えすべき事があるので義父様も一緒だし、大丈夫大丈夫。
1人だったら心細いけど義父様居るし、最悪何かあったら義父様が何とかしてくれるだろうし。
「そんなに緊張しなくて大丈夫だよ、ガイ君。陛下から、第2王子殿下の事と龍の狩場の事でのお褒めの言葉とそのお礼に叙爵と領地拝領を堅苦しい場と言葉で言われるだけだから。」
「ふふふ、その堅苦しいのが嫌なんですけれど。」
待合室で義父様と2人でその時を待つ。
部屋の奥で青色系統でまとめた衣装の人が居る。あの人が多分、海の街のお貴族様なんだろうな。
時間が近づき待合室から扉の前まで義父様と移動する。
さっき緊張しなくても大丈夫って言われたけど、大きくて重厚な扉を前にすると勝手に緊張してきてしまう。
1度息を吐いてから、吸う。
うん、大丈夫。義父様がすぐそばに居るし、中には義母様も義兄様もイルも居る。
扉が開いて、俺は義父様と並んで赤い絨毯の上を歩く。
真っ直ぐ前だけを見て歩いて、少しだけ前を歩く義父様が止まり俺も真横に止まって、片膝を着いて敬意を表す。
歩いて来た道を挟むようにして今日の見届け人が並んでいる。家柄と役職の高い順から陛下に近い前から順に。視界の端っこに義母様と義兄様達が見えた。
でもそっちを向いてはいけない。
名前が呼ばれて、義父様が言っていたようにお堅い言葉でお褒めの言葉と褒美を頂く。義父様や義母様たちとたくさん練習をした感謝のお言葉を口にしてようやく「面をあげよ」と言われて顔を上げた。
俺たちが膝まづいた少し先に3段ほどの階段があって、壇上に国王陛下は居た。
国王陛下と王妃殿下、第1王子殿下と第2王子殿下が揃って椅子に座られていた。
装飾で過度に飾られている訳でも無いが、高級だと人目でわかるどちらかと言うとシンプルな衣装。指輪やネックレス等も最低限。陛下の椅子は豪華仕様でおそらくあれが玉座と言うものなんだろう。
陛下の佇む存在感と俺を見定めようとする鋭い眼差しに畏怖の念が知れずと湧いてくる。
これが、この国の王様。
この方達がロイヤルファミリー。
右端にいつもの黒い人。左端には俺が助けたであろう白い人。俺が見た時は白いふわふわの球体だったけど、ロイヤルファミリーはお顔もロイヤルだね?
陛下は視線を義父様に向けて口を開いた。
「してルアン。何か報告があると聞いているが。」
お、お義父様を名前呼び!?
それともこれが普通なの?
俺が吃驚している間に義父様はさっさと俺の年齢について報告をし終えていた。
それについて陛下は何か進言するでもなく「まぁ、拾われ子だからね。」との一言で終わった。
呆気なく終わってよかった。
もうそろそろ終わりかなと思った時陛下が「最後になるが」と口を開いた。
「当日までのお楽しみと伝えてあった褒美の事だが、騎士団団長の任に暫くサミュエルをと思うのだがどうだろうか。2年ほど付きっきりで教えて貰う事にはなると思うが、世間知らずなサミュエルも王宮の外を知るいい機会にもなるしと思ってな。どうだろうか。」
・・・へ?サミュエル様って第2王子殿下の?何で?
どうだろうかって聞いてるけどこの場で言うって事はもう決まってるんだよね?え?でも護衛とか色々問題あるよね?
え?ナニコレ。陛下のジョーダンですか?
「ええと、あの、その、ええと?」
あれ、俺これ不敬罪にならない?大丈夫?
義父様もお顔が呆けてるよ?俺、どうしたらいい?
「はっはっはっはっ。まぁ、この話は後で詰めようでは無いか。」
俺もしかして陛下にからかわれてる?
そうこうしているうちに終わって俺と義父様は待合室に戻ってきた。
「え、義父様、どういう事、ですか?」
「ああ、私も吃驚だ。後で陛下に真相を伺ってみるよ。」
「お願いします。」
義父様も知らなかったんだね、そうだよね、あんな顔してたもんね。
「あの場で言うって事はもう確定事項って事で受け取っちゃって問題ないんですよね?」
「ああ、そう思って大丈夫、のはずだ。」
俺は最終確認をしたけど、やっぱり確定事項なんだと気持ちが沈んだだけだった。
ああ、だから騎士団枠で何人か呼ばれてたのか。レスト副団長もこの為に騎士団枠だったのね、今やっと合点がいった。
まぁ、確定事項なら仕方ないよ。今更何言っても覆ることはないだろうし、言うつもりもないしね。
この後の授与式はすぐ終わるはずだから、イル達を待って一旦帰って着替えて夕方また登城して夜会で美味しい物食べて。うんうん、美味しい物食べて忘れよ。何とかなるよ、なるようにしかならないしね!
「夜会ってどんな食事が出るのかな~。楽しみだなぁ。」
「はは、ガイ君は気持ちの切り替えが早いね。」
「考えても仕方の無いことは考えない主義なんです。だって美味しいものは美味しく食べたいですし?」
騎士団として何回か夜会の警備に出たことあるけど、どうせ食べれるわけでもないし見ないようにしてたんだよね。あー楽しみ!
「王宮主催だからね、豪華だよ。前回の夜会ではねぇ、」
俺は義父様に夜会の食事の素晴らしさを沢山聞いた。
端から端まで全部食べたいけど、それは無理だしなぁ。
ふふふ、今回は踊らなくても良いし楽しみだなぁ。
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