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割ろうとは微塵も思ってなかったよ

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樹液の出る樹木と言うのは生き物が集まりやすいのである。例え雪が降り積もる季節であってもね!

という事で、俺はその後も上の方に鳥の巣がある可能性やキノコのある可能性等、ぶっちゃけ俺の視力じゃ見えないから 見える範囲で っていうのには該当してないけど 食べられるもの を最初の樹木に関して粗方挙げた後、次に細い蔦が絡まった木に移ろうとしたところでニラーさんに「もういいもういい!ここで今日の日程を終わらせる気か!」と中断された。

食べられるもの って言うから片っ端から挙げてあげようと思ったのになぁ。
まぁいいか。さっきのキノコは家に帰ったらイルに焼いてもらおうっと♪

もっと奥にも行くようなのでまた最後尾を着いていく。
先程よりも木の生えてる密集度が高くなり種類が変わり、陽射しが入り辛くなり暗く寒い場所まで進んできた。

ここでニラーさんが声を張り上げる。

「では、次にここで実際に食べられるものを持って来て下さい。中には危険な物もあるかも知れないので絶対に口にせず持って来る事!見える範囲以外は禁止!」

わぉ、口にせずって所めっちゃ俺の事見てた?そしてまさかの自由行動!
とりあえず危険が無いかサッと索敵。ふふん、俺はちょっと怪しい反応があった辺りで白キノコでも採取しようかな~♪

「ねぇ、僕も一緒に行っていい?」

1人で歩き出そうとしたその時、入団希望者の1人と思われる少年に声をかけられた。









「うわぁ、凄い!白キノコが5個も!こんな高級品食べた事ないから持って帰ったら家族の皆喜んでくれるよ!」
「んふふふふ!これね、そのまま食べても美味しいけど軽く炙ってお塩付けて食べても美味しいんだよ!俺何回も食べた事あるからこれも持って帰りなよ!」

俺が先程採取したイルに焼いてもらう予定のキノコ以外全部を上げた。だって食べたかったらまた採取りにくれば良いんだしね!

彼の名前はネルソン。鼠族の平民だが、暗器の扱いに自信があり騎士団入団を希望しているとの事。同じ平民だからお互い砕けた口調になっている。12人兄弟の長男で3つ子だと言っていた。

3つ子!鼠族は多胎妊娠が多いって聞いたけどその通りなんだ!3つ子、2子、4つ子、3つ子の12人兄弟なんだって、なんだかもう想像がつかない!

彼の家族は住んでた村が盗賊に襲われて泣く泣く首都に安寧と仕事を探しに来たそうだ。大きくなければ魔物や盗賊に襲われて無くなる村も少なくは無い。逆に盗賊の群れが大きくなって村の形になっている所もあるし。

正直に言おう。この国って大きいとこ以外治安が悪い!
いや大きくても裏に入ればめっぽう治安は悪い!

「本当にいいの?うわぁ、ありがとう!・・・このすぐ近くで魔獣が冬眠してるのにこんなに騒いじゃって大丈夫かと心配になっちゃうよ。」
「意外と起きて来ないものだよ?起きたばっかは俺達みたいに寝惚けてるから変に巣穴から出て討伐される危険があるよりかは無視して寝続けちゃった方がいいだろうし、完全に目が覚めちゃったら春になるまでご飯にあり付けるか不安だしね~。」
「そっかぁ確かに!ねぇさっきも凄い詳しかったけどどうして?」
「それは~、俺が国境付近の山林の村出身だからかな!魔獣も魔物も少なくは無かったし、生き延びる事に付いては詳しいかもね。」
「・・・想像してたより凄かった。」
「え、どんなの想像してたの?」
「なんかぁ、ちっちゃ可愛い系だから体験としてよりも知識として詳しいのかと思って。」
「あー、俺読書してると気付いたら寝てるタイプ」
「それ僕も!」
「「あはははっ」」

2人して顔を見合わせて笑いあった。

すっっっっっっっっっっごい楽しい!
何これっ。レスト副団長やジェントルドみたいに はぁやれやれ感無いし!ミッキィやニールみたいな弟を見る目 みたいな感じも無いし、エディスやリックステンみたいに持ち上げられる感じも無いし!それらに不満があった訳じゃないけど、なんだろうこの同等感というかなんと言うか!友達ってこういう感じなのかな!?

「ねぇあそこ桃が成ってるよ!」

ネルソンが少し奥の方を指さした。
木々の間に1本だけ瑞々しい桃の実を付けた色の濃い木が見えた。

「桃って季節が違いすぎるよ。あれきっとミミックかトレントだから近づかない方がいいよ。」
「確かに雪の積もった山に桃が成ってるって変だよね。」

ミミックは擬態する魔物のこと。あれがミミックなら桃の木に真似てるって事だね。トレントは動く木人ってやつで擬態が少し出来るから桃だけ真似てるのかなって感じ。どっちにしても桃を餌にして鳥や人間、小動物を捕らえて食べちゃうから一般人には死者も出る危険度の高めな魔物である。

「あー、でも近づいてる人居るね。おかしい事に気付いてないのかなぁ、ちょっと注意してくるね。」

俺はネルソンを置いて近づいてる人に声をかけに行った。

遠くからだから最初分からなかったけど、近付いてみて団員じゃないと気付いて良かったよ。団員だったら指導だよ?こんなのに気づけないなんてさ。どう考えても討伐の雰囲気で近づいたんじゃないしね!

「あのぅ、すみません。あれ採るつもりならミミックかトレントだから止めた方がいいですよ?」
「ああ?あれは俺が見つけたから横取りすんじゃねーよ。」

注意しただけなのに何故キレられた??・・・そうか!俺採ったもの全部特殊なポーチにしまっちゃって手ぶらだからまだ採取してないと思われたんだね!?

んもー、最近の若者はせっかちさんで心が狭いなぁ。心と時間に余裕は必須だよー?

「いえ、この時期に桃っておかしくありません!?あれ魔物ですってば。近づいたら危険ですってば!」
「そう言って俺が諦めたらあの桃取りに行くんだろう!?」

そう言って俺を押し退けて彼はずんずん進んで行く。

「んもう!この時期桃がまだ木に成ってたら腐って中身はドロドロのはずだよ!」

話を聞かない奴と話が通じない奴って本当に面倒臭い!

心の中でも文句を言いつつ彼のあとを追う。

すぐ対応出来るように瞬足と腕力強化、炎の魔術を発動可能状態にして双剣の右のみすぐ出せる状態にしておく。

彼があと10歩程進んだら実を取れるだろう位置まで近づいた時、魔物がバッと襲いかかって来た。
動きが早い!トレントだ!

「っ!!」

ビビって固まる彼の襟首を左手で掴んで俺より後ろに引き右手の剣に炎を纏わせ、真っ直ぐ繰り出して来た鋭利な枝を切り落とし、瞬時に落とした枝を灰にする。

彼の襟首を離して転けられても邪魔なので風魔法で後ろに運ぶ。

その間にも2本3本と鋭利な枝が突き出されてくるのでいなしつつ、切り落とし、燃して、段々と距離を詰めて、よしここだっ!

パキンっ!

トレントの左手に当たる部分の枝の上辺りから口を通って右手の枝部分にあたる下を切り落とすように炎を纏った剣を振り下ろし、燃やし切った。

「・・・ぱきん??」


「大丈夫ですかっ?」
「ガイ君っ怪我してない?」

指導員が尻餅を着いてる彼を、ネルソンが俺を心配してやって来てくれた。

「うん、俺も彼も大丈夫だよ。」

そして俺は色々な意味で燃え尽きたトレントに近付いて音の原因を拾う。

「ガイ君、近付いて大丈夫なの!?」

ネルソンは心配性だなぁと思いつつ俺は全て拾い集めて振り返って、拾ったそれらを掌に乗せて見せた。

「なんかぁ、トレントの魔石割っちゃったっぽいんですけどぉ」

「「「・・・」」」

皆が口を開けて固まった。

あ、俺これ知ってるよ。
目が点になるってやつでしょ!?

・・・唖然とする?開いた口が塞がらない?ってやつかもしれないね!?
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