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第四章 精霊

一節 水の巫女

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一節

 杜に帰ると、オッサンから野菜を受け取り調理場に持って行った。朝食をつい一時間前くらいに食べたから、そこまで腹が減っていたりとかはなかった。とりあえず自分の荷物を置いて、いつものように魔法の練習をすることにした。外の開けた場所に出ると、ひたすら魔法を撃ち続けた。離れたところに石塊を作ってそれをひたすら土弾で撃ってみたり、広い範囲に水の塊を作って落としてみたり・・・。竜巻を起こしてバ〇クロス!!なんて・・・。

 バンバン撃っていても息切れをしたりすることはない。ただ、ちょっとだけ疲労感があるくらいなものだ。気づくと、太陽が空の最高点よりちょっと傾いたくらいのところにあった。時間感覚的にももう昼だろう。そう思い、杜に帰る。そして、今朝貰った野菜を調理しようと、調理場に言ったその時。
「あ、ユーリさん。おかえりなさいです。」
「・・・アリア?なんで居るの・・・?」
「いちゃ・・・だめですか・・・?」
「いや、そうじゃなくて。その、帰らなくても大丈夫なの?」
実は今朝、送り届けてもらうときに、アリアも一緒に荷車に乗っていたのだ。てっきりオッサンと一緒に村に帰っていたのかと思ったら、杜の調理場にいるもんだから少し驚いた。
 一汗流した後(流してない)、家に帰ったら美少女が昼食を作って待ってくれてるなんて・・・。最高じゃあないか。
「ええ、私は大丈夫です。」
「そっか。・・・ところでその料理はアリアが作ってくれたの?」
「はい。・・・お口に合うといいのですが・・・。」
「いや、昨日とか今朝とか食べさせてもらった料理も美味しかったから、大丈夫だよ。」
「いえ、あんな料理を作れる方に食べていただけるだけで・・・。光栄です」
俺はどこまで謙遜されているんだろうか・・・。

 昼食を食べ終えたころ、入り口の方でコンコンッというノック音が聞こえた。
「あ、俺出てくるよ。」
と、アリアに一声かけ、入り口の方に向かった。「はーい」と一声かけ、ドアをガチャリと開ける。そるとそこには、青っぽい肌をした耳が鰓みたいになっている女性が立っていた。
「「・・・どちら様でしょうか?」」
被った。
「えっと、僕は中 優里といいます。何か御用でしょうか?」
「・・・ウンディーネ様は居られますか?」
「いえ、居ませんよ。数日間杜を空けると言ってました。」
女性はしばらく考え込むと、ゆっくりと口を開いた。
「・・・ところで貴方は一体何者なのですか?」
「何者・・・と言われましても。諸事情で杜に匿ってもらった者です・・・かね?と、逆に貴女はどちら様で?」
「ふむ・・・。ああ、すまない。自己紹介が遅れたな。私はマー族の水の巫女。アストラだ。」
「・・・マー族・・・?水の巫女・・・?」
「・・・そんなことも知らないのか・・・?」

 どうやら、エレメンティウムの国々には、それぞれ妖精がいて、その長が代々巫女をやるということらしい。水の国はマー族という妖精の種族で、水に強いんだとか。マーってマーメイドとかマーマン的な意味なのか・・・。

「ここのところ、何やら嫌な気配とか、自然の魔力が弱まってきたように感じてだな・・・。来てみたんだが・・・。魔力が弱まっていたように感じたのはウンディーネ様が杜を空けたからのようだな・・・。」

 でも、よく考えてみると、リムが外出先を言わなかったことや、どのくらいで帰るなんてことを言わなかったのが少し不思議に思えた。

「えっと・・・。アストラさんはその、行先とか聞いてないんですか?」
「そもそも杜を空けていることすら知らなかったのだ。知るはずがなかろう。・・・ただ・・・。」
「ただ・・・?」
「数百年に一度、四大精霊様方が集まられると聞いたことがある。それやもしれん。」
「・・・なるほど。それは集まる場所とかってわかったりします・・・?」
「いや、私も昔聞いたことがあるくらいで、詳しい話は知らん。」
「わかりました、有難うございます。」
「こっちもすまんな。また何かあったらこちらからも声をかけるし、そっちからも聞いてくれ。」

そういうと、アストラさんは森の中に消えていった。今日だけでも知らないワードが出てきて、多少混乱している。各国に妖精がいるというのは、精霊がいるからまだ呑み込めたが、リムの行き先などについてはほとんど情報がないのがどうにも引っかかる。うーん・・・。ただ、ここで考えていてもどうにもならないような話だよな・・・。

 ・・・というか、アストラさんはこっちからも声を掛けてくれって言ってたけど・・・。
アストラさんどこの人か聞いてねぇ・・・。
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