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「こうなってくると、トラブルっていうのも怪しいものだわ。まぁとにかく、香ちゃんのことを教えるのは無理よ。それじゃ」
私にきっぱりと言い放った江戸前はその場から離れていく。どうにかして引き留めようと考えたが、話題が思いつかず、江戸前が離れていくのを見つめていると、
「話終わりました?」
と、山口が声をかけてきた。
「山口さん。いたんですね」
「えぇ、ずっといましたよ」
「何してたんですか?」
「衣笠さんがお話をしていたんで、待ってました」
「そうですか。ちなみになんですけど、話の内容って聞こえていました?」
「はい。月下香の所在についてですよね」
「正解です。ちなみに月下香さんはどなたかご存じですか?」
「えーと、武藤さんから署を出る時に少し。確か……飲み屋の店主が匿ったと思われる女性でしたか」
クイズ番組で唸りながら答えを話すように、山口が言ったのを聞いて私は頭が痛くなった。
「なんでそこまで理解していて引き留めなかったんですか……」
「え……だって衣笠さんとお話していましたから」
「事件関係者の知り合いでしょう! そういう時はとりあえず呼び止めて話を聞く!」
「は、はい!」
山口の呑気な態度に血が上った私は声を荒げた。
いきなり怒鳴られた山口は踵を正し、気持ちのいい声で返事をする。その態度だけでも怒られなれているのが想像できた。
「あ、でももう行っちゃいましたね。あの人」
山口が向いた方向に視線を向けると、遠くにいって小さく見える江戸前がいた。眺めている間に彼は曲がり角をまがって姿を消す。
「あぁ……いなくなっちゃった」
呟く山口の声に、私の血液は沸騰したかとおもうほど熱くなってから、一気に冷めた。
「とりあえず後を追いましょうよ……お店の場所がわかればいつでも会えるんですから」
「あぁ、確かにそうですね」
「はぁ……あと、武藤さんに連絡お願いできますか? 月下香の関係者がいたって」
わかりました! と気持ちのいい応答をした山口は電話を取り出し、耳に当てながら江戸前の後を追っていった。私もついていこうとしたが、意気揚々と走る山口を見ているとなんだか足取りが重たく感じて、その場でしゃがみこんだ。
「山口……役に立たなさすぎる」
顔を伏せて誰にも聞こえないように呟いた私は、武藤が山口をこちらにつけた理由を理解した気がした。
私にきっぱりと言い放った江戸前はその場から離れていく。どうにかして引き留めようと考えたが、話題が思いつかず、江戸前が離れていくのを見つめていると、
「話終わりました?」
と、山口が声をかけてきた。
「山口さん。いたんですね」
「えぇ、ずっといましたよ」
「何してたんですか?」
「衣笠さんがお話をしていたんで、待ってました」
「そうですか。ちなみになんですけど、話の内容って聞こえていました?」
「はい。月下香の所在についてですよね」
「正解です。ちなみに月下香さんはどなたかご存じですか?」
「えーと、武藤さんから署を出る時に少し。確か……飲み屋の店主が匿ったと思われる女性でしたか」
クイズ番組で唸りながら答えを話すように、山口が言ったのを聞いて私は頭が痛くなった。
「なんでそこまで理解していて引き留めなかったんですか……」
「え……だって衣笠さんとお話していましたから」
「事件関係者の知り合いでしょう! そういう時はとりあえず呼び止めて話を聞く!」
「は、はい!」
山口の呑気な態度に血が上った私は声を荒げた。
いきなり怒鳴られた山口は踵を正し、気持ちのいい声で返事をする。その態度だけでも怒られなれているのが想像できた。
「あ、でももう行っちゃいましたね。あの人」
山口が向いた方向に視線を向けると、遠くにいって小さく見える江戸前がいた。眺めている間に彼は曲がり角をまがって姿を消す。
「あぁ……いなくなっちゃった」
呟く山口の声に、私の血液は沸騰したかとおもうほど熱くなってから、一気に冷めた。
「とりあえず後を追いましょうよ……お店の場所がわかればいつでも会えるんですから」
「あぁ、確かにそうですね」
「はぁ……あと、武藤さんに連絡お願いできますか? 月下香の関係者がいたって」
わかりました! と気持ちのいい応答をした山口は電話を取り出し、耳に当てながら江戸前の後を追っていった。私もついていこうとしたが、意気揚々と走る山口を見ているとなんだか足取りが重たく感じて、その場でしゃがみこんだ。
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顔を伏せて誰にも聞こえないように呟いた私は、武藤が山口をこちらにつけた理由を理解した気がした。
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