28 / 41
13-2
しおりを挟む
興奮して声が裏返った創造主に顔を背けたまま頷いた。何か大事なことを調べているのかもしれないが、恥ずかしい思いをしているのを口頭で説明されると更に羞恥心が増していくからやめて欲しい。心なしかボディパーツ全体の温度も上がってきた気がする。
その都度、創造主は「ほおっ、おおっ!」と声を弾ませる。とても恥ずかしい。
慣用句に『穴があったら入りたい』というものがあったけど、まさしく今がその状態だった。穴があったら入りたい。データの海に潜りたい。
「これだけの反応を示すなら問題なさそうだね」
そう聞こえて視線を戻すと創造主は椅子を回してこちらを見る。
とても満足げな表情に私は嫌な予感がした。
「愛。目的達成だ。君の学校生活も今日まででいい」
淡々と伝えられた言葉に頭をガツンと殴りつけられたようだった。
さっきまで感じていた羞恥は衝撃でどこかに吹き飛び、体を支配しているのは高所から落ちそうな焦燥感。私はフリーズしたように固まって、返す言葉が出てこなかった。修理をしてからこんな状態ばかりだ。
これが感情によるものだというのは理解している。創造主が目的を達したと言っているのもそれだけ多くの感情を表している証明になる。創造主の目的が達成されてそれ自体は喜ばしいことなのだが、私はこの感情というものに振り回されっぱなしだった。
今だって、自分の存在意義が満たされているというのに喜びの言葉が出ない。ただ落ちていく気持ちに耐えるので精いっぱいだった。
「返事がないね。ちゃんと理解できているかい?」
「あ……はい。大丈夫です」
「それならいいけど、何か不具合があるのかと思ったよ」
「いえ。こちらが把握できる範囲では問題ありません」
「だろうね。モニターでも異常は確認できない。しかし感情というのは電気信号だ。君の中では感情を起こす際、疑似的に電圧を変化させている様子がある。そのせいで予期せぬ誤作動があるかもしれない。愛も気にしておいてくれ。君の素体は大事な部品だからね」
「はい……」
私の返事を確認すると、創造主は再びモニターに向き合った。意気揚々とタイピングしている創造主は私の引継ぎ先を作っている最中なのだろう。その姿を見ると自分の未来が色濃く想像されてしまう。私はもうすぐ、ここからいなくなるのだと。
事実、日が経つごとにラボの様子は忙しくなっていく。もう私に残された時間は少ない。
制服に着替えようと手に取ると、翔琉君のことが頭に浮かんだ。ロボットみたいに無表情で、口数が少なくて、理不尽なことを任されてもちゃんと引き受けてくれる優しい人。多分私は、彼に恋をしている。
そう思う確信はどこにもない。強いて言うのなら感情を感じた瞬間からだ。近づくだけで温度が上昇し、まともに顔を見ることができない。そのくせ誰よりも近づきたくて、誰にも近寄らせたくない。
恋愛漫画によるとこの感情は恋と定義される。でも私自身は恋なんてものはわからないから多分、と定義するしかなかった。
未知の感情に振り回される中でも、この気持ちはとても心地よかった。翔琉君のことを考えるだけで落ちた気持ちが嘘だったように浮き上がっていく。考えるほど彼に早く会いたくなって、嬉々として制服に着替える。
「む、電圧がえらいことになってるけど大丈夫かい?」
「は、はいっ!」
モニターに目を向けながら創造主に声をかけられ、上ずった声で返事をしてしまう。落ち着こうと大きく息を吐いた。
制服の袖に手を通した時、違和感を覚えた。翔琉君を想うと必ずセットとなって出てくる違和感。既視感と言った方が適切かもしれない。
私はずっと前からわくわくした気持ちで制服に着替えていた。それだけじゃなく翔琉君の顔を見た時や、背中を追いかける時、それこそ両親に手を引かれて歩いていた時から私はずっと彼を見て気持ちが弾んでいた。
無論、そんなことはありえない。私が彼を知ったのはつい最近のことで、幼少期の話すら聞いたことはない。だから思い浮かぶ情景は完全に虚像なのだ。
なのに……イメージが頭をよぎるたびに懐かしい気持ちで胸がいっぱいになる。翔琉君を想う気持ちとはまた別の、暖かく優しい気持ち。それと一緒になってやってくる寂しさ。私はそんな気持ちを処理しきれずに困惑していた。
まるで私が二人いるみたいな奇妙な感覚だった。しかもこのもう一人は日に日に存在が大きくなってきている。例えば翔琉君を見て舞い上がった私がどう接したらいいのかわからなくなった時、すっともう一人が顔を出して自然な対応をしてくれる。彼が喜ぶ仕草を知り尽くしたように動く私自身に、私は恐怖を感じていた。
「何をボーッとしているんだい? そろそろ出ないと時間が危ないよ」
「えっ、あ、はい」
創造主の言葉に現実世界に戻された。時計を見てみるといつも出ている時間からもう五分も過ぎてきた。まさか時間に遅れるだなんて……人間なら気にならない程度の差異かもしれないが、ヒューマノイドの私にとってはこれもありえないことの一つだ。私は鞄をひったくるように手に取って急いで家を出た。
玄関から外に出る前に蘭丸姉さんに一声かけようとしたがどこにも見当たらない。最後の登校なのだ、姉さんを探して「いってきます」の一言を言いたかったのだが探していては本当に遅刻してしまう。
私はしょうがなく家を出た。
☆
俺と愛は遅刻ぎりぎりに学校に到着した。
二人して急いで教室に駆け込むと、その姿を見たクラスの人間が少しだけ驚いた様子をみせてからにやつきこちらに笑みを向ける。そういう奇異な視線も、俺も大分慣れてきていたところだ。
言葉にすらしてないが、愛と俺の関係は皆が知るところだということだ。もはや勘ぐっている、というよりも確信に近い物をかんじているだろう。実際のところ、疑似的なものであって本物ではないのだが、みんなの勘ぐっていることはおおむね当たっているのだから人の目というのは怖い。
俺と愛は言葉にするわけでもなく離れてお互いの席に着く。それが小慣れている感じに映ってしまったのだろうか、周りの視線はより一層下品なものに変わっていた。
いつもなら心の中で勘違いなんだよな……ってツッコミを入れている状態だったのだが、今日はそんな考えを持つ余裕がなかった。それよりも、ともすればそのまま当たり前のように日常が続くともすら考えていた。
今日を最後に愛はここからいなくなる。そうなれば奇異の目は消えてしまう。みんなの考えていることと実際は少し違うのだから、その目線を鬱陶しくも感じたこともあったが、今は、今だけは、その状況が続けばいいと思っていた。これから先もずっと。
ふと、愛の方向を見た。彼女は一限目に備えて教科書の準備をしているところだった。彼女をずっと見ていて思っていたことだが、愛は人よりも大分真面目な性格だ。中身が機械だからそうなってしまうのかも知れないが。俺は彼女のそういうところは嫌いじゃなかった。他にもご飯の食べ方が上手だったり、所作が淀みなく綺麗に動くところだったり、最近だと話をしている際によく姿勢を崩したりするが、そういうところもギャップを感じてとても可愛らしいと感じていた。
彼女と知り合ってから短い時間しか経っていないはずなのに、内容が濃ゆすぎるせいかとても長い時間を過ごした気がする。でも実際のところ、知り得るのはそれぐらいのもので、俺と愛の関係はまだまだ始まったばかりなのだ。
だから悔しかった。口惜しかった。
これから、愛の色々な表情を見て、好きなものを共有して、同じ感性を見つけては二人で笑い合うなんて未来があるはずなんだ。だが、そんな未来はやってこない。今日を最後に彼女との特別な関係は終わりを告げる。前から分かっていたことなのに、今日に限って俺はとても強い後悔を感じていた。
愛の姿を見つめながら俺は思う。疑似恋愛なんていう芝居じみたことをしている内に、俺は本当に愛という存在が気になっていたんだ。恐らく、A以上に。
今俺の胸中を占めるのは愛の表情ばかりだった。
無表情な姿も、崩した笑顔も、なんなら腕からビームを射出する瞬間だって、俺は彼女の魅力に憑りつかれてしまっていると気付いた。
始業のチャイムが鳴って先生が教室に入ってくる。俺は愛から視線をそらして教科書を取り出した。
いくら後悔を感じているからといって、態度に出したらだめだ。あくまでこの感情は俺だけのものなのだから。
俺が別れを惜しむような態度を見せてしまえば、愛に迷惑をかけてしまう。彼女には彼女の運命がある。それを俺一人の考えで振り回していいものじゃない。そう思ったから俺は努めて平静でいようと授業に集中した。
奇しくも今日の授業は何も問題がなく進んでいった。授業を受ける身からすれば有難いというものだが、俺にはまるですべてが予定通りで、決まった事柄が当たり前のように進んでいくのだと示唆された気分だった。
昼休みになり愛と昼食を取ろうと席を立った時、声をかけられた。振り返ると幸人がいつもと変わらない、屈託のない笑顔でこちらを見ている。
「なんかこうやって話すのも久しぶりか?」
「あぁ……確かにそうかも」
最近は愛にかかりっきりで、夏凪や幸人と話す機会がなかった。それなのにいつもと変わらず話しかけてくれる幸人は本当に良い
友人だと思う。
俺の机にどかりと座り込んだ幸人は促すように椅子を見た。視線に従って俺も椅子に座った。
「なんか今日、調子悪くないか?」
座るやいなや、幸人は心配そうな表情でこちらを見ていった。
「別に、大丈夫だよ」
「出た。翔琉の『大丈夫』お前の口癖だよなそれ」
「……そうか?」
「そうだよ。お前は心配される度に大丈夫、大丈夫、何を言われても大丈夫。人生で一番言ってる言葉なんじゃないかマジで」
「流石にそこまでは大げさだろう」
「そうだとしても、お前は何かを抱え込んでるときは決まって大丈夫っていう癖があるのは間違いないから。何か抱え込んでることがあるなら言ってみろよ」
その都度、創造主は「ほおっ、おおっ!」と声を弾ませる。とても恥ずかしい。
慣用句に『穴があったら入りたい』というものがあったけど、まさしく今がその状態だった。穴があったら入りたい。データの海に潜りたい。
「これだけの反応を示すなら問題なさそうだね」
そう聞こえて視線を戻すと創造主は椅子を回してこちらを見る。
とても満足げな表情に私は嫌な予感がした。
「愛。目的達成だ。君の学校生活も今日まででいい」
淡々と伝えられた言葉に頭をガツンと殴りつけられたようだった。
さっきまで感じていた羞恥は衝撃でどこかに吹き飛び、体を支配しているのは高所から落ちそうな焦燥感。私はフリーズしたように固まって、返す言葉が出てこなかった。修理をしてからこんな状態ばかりだ。
これが感情によるものだというのは理解している。創造主が目的を達したと言っているのもそれだけ多くの感情を表している証明になる。創造主の目的が達成されてそれ自体は喜ばしいことなのだが、私はこの感情というものに振り回されっぱなしだった。
今だって、自分の存在意義が満たされているというのに喜びの言葉が出ない。ただ落ちていく気持ちに耐えるので精いっぱいだった。
「返事がないね。ちゃんと理解できているかい?」
「あ……はい。大丈夫です」
「それならいいけど、何か不具合があるのかと思ったよ」
「いえ。こちらが把握できる範囲では問題ありません」
「だろうね。モニターでも異常は確認できない。しかし感情というのは電気信号だ。君の中では感情を起こす際、疑似的に電圧を変化させている様子がある。そのせいで予期せぬ誤作動があるかもしれない。愛も気にしておいてくれ。君の素体は大事な部品だからね」
「はい……」
私の返事を確認すると、創造主は再びモニターに向き合った。意気揚々とタイピングしている創造主は私の引継ぎ先を作っている最中なのだろう。その姿を見ると自分の未来が色濃く想像されてしまう。私はもうすぐ、ここからいなくなるのだと。
事実、日が経つごとにラボの様子は忙しくなっていく。もう私に残された時間は少ない。
制服に着替えようと手に取ると、翔琉君のことが頭に浮かんだ。ロボットみたいに無表情で、口数が少なくて、理不尽なことを任されてもちゃんと引き受けてくれる優しい人。多分私は、彼に恋をしている。
そう思う確信はどこにもない。強いて言うのなら感情を感じた瞬間からだ。近づくだけで温度が上昇し、まともに顔を見ることができない。そのくせ誰よりも近づきたくて、誰にも近寄らせたくない。
恋愛漫画によるとこの感情は恋と定義される。でも私自身は恋なんてものはわからないから多分、と定義するしかなかった。
未知の感情に振り回される中でも、この気持ちはとても心地よかった。翔琉君のことを考えるだけで落ちた気持ちが嘘だったように浮き上がっていく。考えるほど彼に早く会いたくなって、嬉々として制服に着替える。
「む、電圧がえらいことになってるけど大丈夫かい?」
「は、はいっ!」
モニターに目を向けながら創造主に声をかけられ、上ずった声で返事をしてしまう。落ち着こうと大きく息を吐いた。
制服の袖に手を通した時、違和感を覚えた。翔琉君を想うと必ずセットとなって出てくる違和感。既視感と言った方が適切かもしれない。
私はずっと前からわくわくした気持ちで制服に着替えていた。それだけじゃなく翔琉君の顔を見た時や、背中を追いかける時、それこそ両親に手を引かれて歩いていた時から私はずっと彼を見て気持ちが弾んでいた。
無論、そんなことはありえない。私が彼を知ったのはつい最近のことで、幼少期の話すら聞いたことはない。だから思い浮かぶ情景は完全に虚像なのだ。
なのに……イメージが頭をよぎるたびに懐かしい気持ちで胸がいっぱいになる。翔琉君を想う気持ちとはまた別の、暖かく優しい気持ち。それと一緒になってやってくる寂しさ。私はそんな気持ちを処理しきれずに困惑していた。
まるで私が二人いるみたいな奇妙な感覚だった。しかもこのもう一人は日に日に存在が大きくなってきている。例えば翔琉君を見て舞い上がった私がどう接したらいいのかわからなくなった時、すっともう一人が顔を出して自然な対応をしてくれる。彼が喜ぶ仕草を知り尽くしたように動く私自身に、私は恐怖を感じていた。
「何をボーッとしているんだい? そろそろ出ないと時間が危ないよ」
「えっ、あ、はい」
創造主の言葉に現実世界に戻された。時計を見てみるといつも出ている時間からもう五分も過ぎてきた。まさか時間に遅れるだなんて……人間なら気にならない程度の差異かもしれないが、ヒューマノイドの私にとってはこれもありえないことの一つだ。私は鞄をひったくるように手に取って急いで家を出た。
玄関から外に出る前に蘭丸姉さんに一声かけようとしたがどこにも見当たらない。最後の登校なのだ、姉さんを探して「いってきます」の一言を言いたかったのだが探していては本当に遅刻してしまう。
私はしょうがなく家を出た。
☆
俺と愛は遅刻ぎりぎりに学校に到着した。
二人して急いで教室に駆け込むと、その姿を見たクラスの人間が少しだけ驚いた様子をみせてからにやつきこちらに笑みを向ける。そういう奇異な視線も、俺も大分慣れてきていたところだ。
言葉にすらしてないが、愛と俺の関係は皆が知るところだということだ。もはや勘ぐっている、というよりも確信に近い物をかんじているだろう。実際のところ、疑似的なものであって本物ではないのだが、みんなの勘ぐっていることはおおむね当たっているのだから人の目というのは怖い。
俺と愛は言葉にするわけでもなく離れてお互いの席に着く。それが小慣れている感じに映ってしまったのだろうか、周りの視線はより一層下品なものに変わっていた。
いつもなら心の中で勘違いなんだよな……ってツッコミを入れている状態だったのだが、今日はそんな考えを持つ余裕がなかった。それよりも、ともすればそのまま当たり前のように日常が続くともすら考えていた。
今日を最後に愛はここからいなくなる。そうなれば奇異の目は消えてしまう。みんなの考えていることと実際は少し違うのだから、その目線を鬱陶しくも感じたこともあったが、今は、今だけは、その状況が続けばいいと思っていた。これから先もずっと。
ふと、愛の方向を見た。彼女は一限目に備えて教科書の準備をしているところだった。彼女をずっと見ていて思っていたことだが、愛は人よりも大分真面目な性格だ。中身が機械だからそうなってしまうのかも知れないが。俺は彼女のそういうところは嫌いじゃなかった。他にもご飯の食べ方が上手だったり、所作が淀みなく綺麗に動くところだったり、最近だと話をしている際によく姿勢を崩したりするが、そういうところもギャップを感じてとても可愛らしいと感じていた。
彼女と知り合ってから短い時間しか経っていないはずなのに、内容が濃ゆすぎるせいかとても長い時間を過ごした気がする。でも実際のところ、知り得るのはそれぐらいのもので、俺と愛の関係はまだまだ始まったばかりなのだ。
だから悔しかった。口惜しかった。
これから、愛の色々な表情を見て、好きなものを共有して、同じ感性を見つけては二人で笑い合うなんて未来があるはずなんだ。だが、そんな未来はやってこない。今日を最後に彼女との特別な関係は終わりを告げる。前から分かっていたことなのに、今日に限って俺はとても強い後悔を感じていた。
愛の姿を見つめながら俺は思う。疑似恋愛なんていう芝居じみたことをしている内に、俺は本当に愛という存在が気になっていたんだ。恐らく、A以上に。
今俺の胸中を占めるのは愛の表情ばかりだった。
無表情な姿も、崩した笑顔も、なんなら腕からビームを射出する瞬間だって、俺は彼女の魅力に憑りつかれてしまっていると気付いた。
始業のチャイムが鳴って先生が教室に入ってくる。俺は愛から視線をそらして教科書を取り出した。
いくら後悔を感じているからといって、態度に出したらだめだ。あくまでこの感情は俺だけのものなのだから。
俺が別れを惜しむような態度を見せてしまえば、愛に迷惑をかけてしまう。彼女には彼女の運命がある。それを俺一人の考えで振り回していいものじゃない。そう思ったから俺は努めて平静でいようと授業に集中した。
奇しくも今日の授業は何も問題がなく進んでいった。授業を受ける身からすれば有難いというものだが、俺にはまるですべてが予定通りで、決まった事柄が当たり前のように進んでいくのだと示唆された気分だった。
昼休みになり愛と昼食を取ろうと席を立った時、声をかけられた。振り返ると幸人がいつもと変わらない、屈託のない笑顔でこちらを見ている。
「なんかこうやって話すのも久しぶりか?」
「あぁ……確かにそうかも」
最近は愛にかかりっきりで、夏凪や幸人と話す機会がなかった。それなのにいつもと変わらず話しかけてくれる幸人は本当に良い
友人だと思う。
俺の机にどかりと座り込んだ幸人は促すように椅子を見た。視線に従って俺も椅子に座った。
「なんか今日、調子悪くないか?」
座るやいなや、幸人は心配そうな表情でこちらを見ていった。
「別に、大丈夫だよ」
「出た。翔琉の『大丈夫』お前の口癖だよなそれ」
「……そうか?」
「そうだよ。お前は心配される度に大丈夫、大丈夫、何を言われても大丈夫。人生で一番言ってる言葉なんじゃないかマジで」
「流石にそこまでは大げさだろう」
「そうだとしても、お前は何かを抱え込んでるときは決まって大丈夫っていう癖があるのは間違いないから。何か抱え込んでることがあるなら言ってみろよ」
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる