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三日後。朝も早い内から家に蘭丸の窓を叩く。窓を開けると「失礼します」と一言述べて部屋の中に入って来た。
「急な訪問、失礼します」
蘭丸が来たのは十二月晦が愛を「回収」する準備が整ったのを伝えに来たのだと思っていた。すると予想通り蘭丸は愛を学校にやるのは今日が最後だということを俺に伝える。わざわざ早朝に俺の家まで伝えに来たのは名目だけでも彼氏でいたからだろう。
「あまり驚いた様子がありませんね」
「まぁ、なんとなくそろそろだとは思っていたから」
十二月晦は数日のうちと言っていた。そして今日は金曜日だ。家の学校は土曜が休みだから連休前に行動を起こすのだろうとなんとなく予想していた。
休日を挟めば翌週に愛がいなくても違和感が薄くなる。後は適当な理由をつけて暫く休んでから復学すれば様子に多少変化があったとしても、こんなものだったかと印象がぼやけるはずだ。十二月晦ならそれぐらい徹底しそうなものだとは予想していた。
「つまり、今日をもって愛とはお別れ、次に出会うのは愛の姿をしたAの複製なわけだ」
俺は少しだけ皮肉っぽく言った。俺の中では愛が消えてしまうという事実がまだまだ割り切れていなかったから。だから俺の発言に表情のない蘭丸が困った様子で言葉に詰まっていたのも皮肉を読み取ったからだと感じていた。
しかし、話は予想外の方向に向かう。
「翔琉様はもう愛に会うことはありません。もっと正確にいうと愛の姿をしたAに会うことはできないのです」
「どういうことだ?」
「本日をもって愛は別の学校に転校します。そして転校先でAとして生きていく予定です」
「転校……?」
予想していなかった言葉に俺は呆気にとられていた。だが考えたら合理的だ。
一度姿を見せた相手が見た目はそのまま別人になっていたらどうしたって違和感が残る。十二月晦だってそこは懸念していたはずだ。だから本人が言っていたように、何かしらの手を使って自然に入れ替えようとしているもんだと考えていた。しかしそんな面倒なことを考えなくても、違和感なんて学校を変えてしまえばそれだけで解決してしまうのだ。そこでは誰も愛のことなんて知りようがないのだから。
「……十二月晦は前から考えていたのか?」
「それはわかりません。私も先程聞かされたばかりで、しかしマスターの編入手続きも済んでいることから転校することは前から考えられていたのだと思います」
「成る程ね」
十二月晦の目的を聞いた時、彼女のAに対する執着心は異常だった。十二月晦からすれば重要なのはAがいた教室の再現ではなく、A本人だけなのだ。だからAの足枷になりえるものはすべて捨てていく。少しでもAが作られたと気付く要素があればすべてが無駄になってしまうからだ。そう考えるならば、クラスや友達、そして協力した俺は真っ先にAから離すべき存在ということか。
十二月晦のやり口は実に効率的で合理的だ。だがそこには人の心を感じなかった。愛にだって今までの生活で関わった人たちがいる。それなのになんの連絡もなしにいきなり転校したらみんなはどう思うだろうか。
そしてなにより問題なのはAの気持ちだ。
例え似せた記憶だとしても、彼女にだって生前に当たる記憶があるはずだ。なのに気が付いたら知らない学校で知らない人間に囲まれる彼女の心境はどんなものか。
もちろんAの性格を考えればその状況でも上手くやっていくだろう。でもそれにだって結構な労力をつかうはずだ。十二月晦がどう考えているのかは俺にはわからないが、少なくともそういうところには目を向けていないように見えた。それが俺には酷く苛立ちを感じさせていた。
「大丈夫ですか? 翔琉様」
蘭丸が気遣いの声を掛ける。気が付けば自分も知らぬ間に拳を握りしめていた。握っていた拳を解き、蘭丸に心配させないよう出来るだけ平静を務める。
「大丈夫だよ。ありがとう蘭丸」
「そうですか……それでは、要件は伝えたので私は戻ります」
「あぁ、わかった」
俺は立ち上がって窓を大きく開けてあげると蘭丸はゆっくりと外に出た。そのまま走っていくかと思った蘭丸は窓を出たところで停止した。
「どうかしたか?」
「今日は、愛と出かけるのでしょうか?」
「え……あ、」
突然の質問にまぬけな声を漏らしてしまったが、今日が愛に出会える最後の日。その日には愛といっしょに街を歩く約束をしていた。蘭丸には愛との約束なんて一言も話していなかったのだが……。
「愛から聞いたのか?」
「ええ、とても楽しそうに話していましたよ」
抑揚のない声で蘭丸は答えたが、クスリと微笑むようなニュアンスが感じ取れる。見た目は変哲のないドローンでも愛にとっては姉にあたる存在だ。個人的な話をする機会も多いのだろう。そこで愛の方から漏らしてしまったといったところか。
それ自体は別に構わないのだが、こうやって伝えられると不思議な気まずさで体が痒くなる。むず痒くてすぐにでもかきむしってしまいたいところだったが、それすら笑われてしまいそうだと思ったので我慢した。
それにしても――楽しそうに、か。
「愛はどうしてるんだ?」
「私が出る時は学校の準備をしていましたけど、時間的にもう出ているかもしれませんね」
「そっか。じゃあ俺も準備をするよ」
「わかりました。それではお元気で」
丁寧に挨拶を交わした蘭丸は止まることなく去っていった。
お元気で。再会を約束しない挨拶はもう出会うことはないということを意味していた。愛と俺との接点がなくなれば会う必要もなくなるのだから当然のことだが、言葉にされると終わりが近づいてきていることを実感してしまう。窓から流れる風に物哀しい物を感じて、俺は窓を閉めた。
蘭丸が家を出てからほどなくして愛から連絡がきた。どうやら家の前までついたようだった。既に準備を終えて朝飯を食べていた俺はおかずといっしょに急いで白米を口に放り込んで家を出た。
「おはようございます」
いつもと変わらぬ挨拶。しかし愛の表情は微笑みに満ちている。愛の命――機械的にいうならば活動時間はもう数えるほどしかない。それなのに彼女の立ち振る舞いは悲壮感すら感じない。ただ当たり前のように笑顔を見せてこちらに微笑みかけていた。
「ん、おはよ」
頬張った朝飯を飲み込んでから挨拶を交わす。愛に釣られてしまったのか、自然と笑顔になっていた。こうしているとなんだか本当の恋人みたいで、なんとも気恥ずかしい。
変に意識してしまって愛の顔を見れなくなった俺は視線をそらして家を出た。すると愛は言うまでもなく自然と横に並んで歩く。
特に会話をすることもなく通学路を歩いていたが、それがとても気まずかった。これが愛と学校に通う最後になる。しかし自分からそのことを言うのは気が引けてしまう。かといって言わなければ話が進まないし、デートの話題だって触れやしない。でもやっぱり自分からは……。
といった具合で思考がループしていた俺は沈黙を続けていた。
「翔琉君、今日は特別な日なんですけど。何が特別かわかりますか?」
「えっ?」
気まずい沈黙を破ったのは愛の一言だった。
笑みを浮かべたままの愛は下から覗き込むようにこちらの顔を見る。
「で、デートのことか?」
どう言ったものか少し悩んでから言うと、愛は「正解ですっ」と声を弾ませた。
「私、この学校に通うのは今日が最後になるみたいなんです。だから今日は、約束した通り一緒にでかけましょう」
「それはもちろん、いいんだけど」
どうしてそんなに楽しそうなんだ。
今の愛はいうなれば余命幾許もない患者のようなものだ。しかもこの患者は全身ドナー登録まで済ませてしまっている。今日を最後に愛の記憶はデータとして抜き取られて、体は別の相手に明け渡すことになるんだぞ。彼女がそのことを知らないはずがないのに、なのにどうしてそこまで楽しそうにできるんだ。
俺は彼女の本心を問い詰めたい気持ちでいっぱいになっていた。だが決して口には出さない。愛が明るく振舞っているのに、こっちの方から重たい話題を出してしまったら何かが壊れてしまいそうだと思ったから。だから俺も、愛に合わせて明るく振舞うことにした。
「――じゃあ、放課後になったら行こうか。アテもなくぶらぶらと」
「はいっ。すごく楽しみですっ」
愛は頷き目を細める。その姿にどきりと心臓が脈打った。
☆
いつもと変わらない朝。私もいつもと同じように決まった時間に目を覚ました。
「目を覚ました」といっても私の場合は寝ているわけではない。ただ決められた時間まで活動を止めてコンセントから内蔵されたバッテリーに電力を送り込む。そして既定の時間になったら起動を開始する。ヒューマノイドである私の起床は人間とは全く意味合いが違っていた。
目を覚まして視覚情報を獲得するとまたしてもいつも通りのラボの光景が映し出される。その中でただ一つだけ違った事があった。私の眼前で創造主たる十二月晦五月がこちらを見ていた。
「おはよう愛。今日も調子は良さそうだね」
「おはようございます」
私が返事を返すと創造主は「うん」と頷き机に設置されてあるモニターに目を通した。画面には私の情報。電源の残量や各部パーツが正常に動作しているかどうか、肌に使用しているウレタンゲルの状態等々……あらゆる情報が私に繋げた回線を通してリアルタイムに表示されている。
その中でも創造主は人工知能、人間でいうところの脳に当たる部分を入念に確認していた。
時折こちらを見ては、全身をくまなく観察される。ちなみに私は充電に入る際、高電圧が体に流れる、だから衣服を着用していたら発火、炎上する恐れがある。何が言いたいかというと寝起きの私は一糸纏っていない状態であって――その視線に耐えかねて私は視線を逸らした。
「お……おお……」
すると直後に創造主は感嘆の声を漏らす。いったいなにが起きているのかはわからないが、こういう辱めは控えて欲しい。
「愛。君は今とてつもなく強い羞恥を感じているネッ!」
「は、はい……」
「急な訪問、失礼します」
蘭丸が来たのは十二月晦が愛を「回収」する準備が整ったのを伝えに来たのだと思っていた。すると予想通り蘭丸は愛を学校にやるのは今日が最後だということを俺に伝える。わざわざ早朝に俺の家まで伝えに来たのは名目だけでも彼氏でいたからだろう。
「あまり驚いた様子がありませんね」
「まぁ、なんとなくそろそろだとは思っていたから」
十二月晦は数日のうちと言っていた。そして今日は金曜日だ。家の学校は土曜が休みだから連休前に行動を起こすのだろうとなんとなく予想していた。
休日を挟めば翌週に愛がいなくても違和感が薄くなる。後は適当な理由をつけて暫く休んでから復学すれば様子に多少変化があったとしても、こんなものだったかと印象がぼやけるはずだ。十二月晦ならそれぐらい徹底しそうなものだとは予想していた。
「つまり、今日をもって愛とはお別れ、次に出会うのは愛の姿をしたAの複製なわけだ」
俺は少しだけ皮肉っぽく言った。俺の中では愛が消えてしまうという事実がまだまだ割り切れていなかったから。だから俺の発言に表情のない蘭丸が困った様子で言葉に詰まっていたのも皮肉を読み取ったからだと感じていた。
しかし、話は予想外の方向に向かう。
「翔琉様はもう愛に会うことはありません。もっと正確にいうと愛の姿をしたAに会うことはできないのです」
「どういうことだ?」
「本日をもって愛は別の学校に転校します。そして転校先でAとして生きていく予定です」
「転校……?」
予想していなかった言葉に俺は呆気にとられていた。だが考えたら合理的だ。
一度姿を見せた相手が見た目はそのまま別人になっていたらどうしたって違和感が残る。十二月晦だってそこは懸念していたはずだ。だから本人が言っていたように、何かしらの手を使って自然に入れ替えようとしているもんだと考えていた。しかしそんな面倒なことを考えなくても、違和感なんて学校を変えてしまえばそれだけで解決してしまうのだ。そこでは誰も愛のことなんて知りようがないのだから。
「……十二月晦は前から考えていたのか?」
「それはわかりません。私も先程聞かされたばかりで、しかしマスターの編入手続きも済んでいることから転校することは前から考えられていたのだと思います」
「成る程ね」
十二月晦の目的を聞いた時、彼女のAに対する執着心は異常だった。十二月晦からすれば重要なのはAがいた教室の再現ではなく、A本人だけなのだ。だからAの足枷になりえるものはすべて捨てていく。少しでもAが作られたと気付く要素があればすべてが無駄になってしまうからだ。そう考えるならば、クラスや友達、そして協力した俺は真っ先にAから離すべき存在ということか。
十二月晦のやり口は実に効率的で合理的だ。だがそこには人の心を感じなかった。愛にだって今までの生活で関わった人たちがいる。それなのになんの連絡もなしにいきなり転校したらみんなはどう思うだろうか。
そしてなにより問題なのはAの気持ちだ。
例え似せた記憶だとしても、彼女にだって生前に当たる記憶があるはずだ。なのに気が付いたら知らない学校で知らない人間に囲まれる彼女の心境はどんなものか。
もちろんAの性格を考えればその状況でも上手くやっていくだろう。でもそれにだって結構な労力をつかうはずだ。十二月晦がどう考えているのかは俺にはわからないが、少なくともそういうところには目を向けていないように見えた。それが俺には酷く苛立ちを感じさせていた。
「大丈夫ですか? 翔琉様」
蘭丸が気遣いの声を掛ける。気が付けば自分も知らぬ間に拳を握りしめていた。握っていた拳を解き、蘭丸に心配させないよう出来るだけ平静を務める。
「大丈夫だよ。ありがとう蘭丸」
「そうですか……それでは、要件は伝えたので私は戻ります」
「あぁ、わかった」
俺は立ち上がって窓を大きく開けてあげると蘭丸はゆっくりと外に出た。そのまま走っていくかと思った蘭丸は窓を出たところで停止した。
「どうかしたか?」
「今日は、愛と出かけるのでしょうか?」
「え……あ、」
突然の質問にまぬけな声を漏らしてしまったが、今日が愛に出会える最後の日。その日には愛といっしょに街を歩く約束をしていた。蘭丸には愛との約束なんて一言も話していなかったのだが……。
「愛から聞いたのか?」
「ええ、とても楽しそうに話していましたよ」
抑揚のない声で蘭丸は答えたが、クスリと微笑むようなニュアンスが感じ取れる。見た目は変哲のないドローンでも愛にとっては姉にあたる存在だ。個人的な話をする機会も多いのだろう。そこで愛の方から漏らしてしまったといったところか。
それ自体は別に構わないのだが、こうやって伝えられると不思議な気まずさで体が痒くなる。むず痒くてすぐにでもかきむしってしまいたいところだったが、それすら笑われてしまいそうだと思ったので我慢した。
それにしても――楽しそうに、か。
「愛はどうしてるんだ?」
「私が出る時は学校の準備をしていましたけど、時間的にもう出ているかもしれませんね」
「そっか。じゃあ俺も準備をするよ」
「わかりました。それではお元気で」
丁寧に挨拶を交わした蘭丸は止まることなく去っていった。
お元気で。再会を約束しない挨拶はもう出会うことはないということを意味していた。愛と俺との接点がなくなれば会う必要もなくなるのだから当然のことだが、言葉にされると終わりが近づいてきていることを実感してしまう。窓から流れる風に物哀しい物を感じて、俺は窓を閉めた。
蘭丸が家を出てからほどなくして愛から連絡がきた。どうやら家の前までついたようだった。既に準備を終えて朝飯を食べていた俺はおかずといっしょに急いで白米を口に放り込んで家を出た。
「おはようございます」
いつもと変わらぬ挨拶。しかし愛の表情は微笑みに満ちている。愛の命――機械的にいうならば活動時間はもう数えるほどしかない。それなのに彼女の立ち振る舞いは悲壮感すら感じない。ただ当たり前のように笑顔を見せてこちらに微笑みかけていた。
「ん、おはよ」
頬張った朝飯を飲み込んでから挨拶を交わす。愛に釣られてしまったのか、自然と笑顔になっていた。こうしているとなんだか本当の恋人みたいで、なんとも気恥ずかしい。
変に意識してしまって愛の顔を見れなくなった俺は視線をそらして家を出た。すると愛は言うまでもなく自然と横に並んで歩く。
特に会話をすることもなく通学路を歩いていたが、それがとても気まずかった。これが愛と学校に通う最後になる。しかし自分からそのことを言うのは気が引けてしまう。かといって言わなければ話が進まないし、デートの話題だって触れやしない。でもやっぱり自分からは……。
といった具合で思考がループしていた俺は沈黙を続けていた。
「翔琉君、今日は特別な日なんですけど。何が特別かわかりますか?」
「えっ?」
気まずい沈黙を破ったのは愛の一言だった。
笑みを浮かべたままの愛は下から覗き込むようにこちらの顔を見る。
「で、デートのことか?」
どう言ったものか少し悩んでから言うと、愛は「正解ですっ」と声を弾ませた。
「私、この学校に通うのは今日が最後になるみたいなんです。だから今日は、約束した通り一緒にでかけましょう」
「それはもちろん、いいんだけど」
どうしてそんなに楽しそうなんだ。
今の愛はいうなれば余命幾許もない患者のようなものだ。しかもこの患者は全身ドナー登録まで済ませてしまっている。今日を最後に愛の記憶はデータとして抜き取られて、体は別の相手に明け渡すことになるんだぞ。彼女がそのことを知らないはずがないのに、なのにどうしてそこまで楽しそうにできるんだ。
俺は彼女の本心を問い詰めたい気持ちでいっぱいになっていた。だが決して口には出さない。愛が明るく振舞っているのに、こっちの方から重たい話題を出してしまったら何かが壊れてしまいそうだと思ったから。だから俺も、愛に合わせて明るく振舞うことにした。
「――じゃあ、放課後になったら行こうか。アテもなくぶらぶらと」
「はいっ。すごく楽しみですっ」
愛は頷き目を細める。その姿にどきりと心臓が脈打った。
☆
いつもと変わらない朝。私もいつもと同じように決まった時間に目を覚ました。
「目を覚ました」といっても私の場合は寝ているわけではない。ただ決められた時間まで活動を止めてコンセントから内蔵されたバッテリーに電力を送り込む。そして既定の時間になったら起動を開始する。ヒューマノイドである私の起床は人間とは全く意味合いが違っていた。
目を覚まして視覚情報を獲得するとまたしてもいつも通りのラボの光景が映し出される。その中でただ一つだけ違った事があった。私の眼前で創造主たる十二月晦五月がこちらを見ていた。
「おはよう愛。今日も調子は良さそうだね」
「おはようございます」
私が返事を返すと創造主は「うん」と頷き机に設置されてあるモニターに目を通した。画面には私の情報。電源の残量や各部パーツが正常に動作しているかどうか、肌に使用しているウレタンゲルの状態等々……あらゆる情報が私に繋げた回線を通してリアルタイムに表示されている。
その中でも創造主は人工知能、人間でいうところの脳に当たる部分を入念に確認していた。
時折こちらを見ては、全身をくまなく観察される。ちなみに私は充電に入る際、高電圧が体に流れる、だから衣服を着用していたら発火、炎上する恐れがある。何が言いたいかというと寝起きの私は一糸纏っていない状態であって――その視線に耐えかねて私は視線を逸らした。
「お……おお……」
すると直後に創造主は感嘆の声を漏らす。いったいなにが起きているのかはわからないが、こういう辱めは控えて欲しい。
「愛。君は今とてつもなく強い羞恥を感じているネッ!」
「は、はい……」
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