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土曜日。休日だというのにいつもと同じ時間に目覚めていた。今日は愛と水族館に行く約束をした日だ。思い起こせば女子と二人きりで遠出をすることなんてAを含めても一度もなかった。そのせいか緊張していて、早く目覚めてしまっていたのだ。
あらかじめ交換していた愛の連絡先に確認のメッセージを残す。まだ電話をするには早い時間だったが、こういう時にSNSという機能は便利だ。何の気兼ねもなく連絡を送ることが出来る。といっても愛の場合はそもそも眠っているのかどうかすら定かではないのだけど。
そう考えていると、やはり彼女は起き続けているのかすぐに返信が返ってきた。
『わかりました。今から向かいます』
「えぇ……マジかよ」
確認の連絡だったはずだが、催促されたと勘違いしたのか愛はそう言った。
『ゆっくりでいい。準備が出来たら連絡する』
連絡した手前、あと言葉を素直に受け取る彼女に対してどう伝えたものかわからずに、苦心した結果こう返信した。急いで夜間着を脱ぎ捨てて準備を整える。そのあいだにもスマホを確認していたが、既読されているだけで返信はこなかった。
準備を終えたのは返信をしてから三十分経った時だった。スマホを確認してみても相変わらず返信はない。途中で何かあったのだろうか?
「……」
五分が経った。いくらなんでも遅すぎる。
『今どこにいる?』
簡潔に連絡を送るとすぐに返信が来た。
『翔琉君の家の前です』
「えっ!?」
急いで部屋から出て家の玄関を開けると、そこには愛の姿があった。
「おはようございます」
「いつからいたんだ?」
「二十分ほど前からです」
「なんだよ……それなら連絡してくれたらよかったのに」
「連絡すると言われたので待機してました」
当たり前のように言う愛はいつもの調子だった。このあいだ人間味のあるところを見て少し油断していたが、やはりこいつは機械だ。ロボットだ。二次なんちゃらヒューマノイドだ。
「まぁいいや。大分早いけど出発しようか」
「わかりました」
そのまま玄関のドアを閉めて俺と愛は出かけた。
水族館には電車で一駅、そこからバスに乗って移動する。だが時間が予定よりも大分早く、順当についたら開園時間まで結構な時間を待たされる計算だ。だから途中で寄り道をして時間を潰す流れになった。
家の近所は市街地で、これといった商業施設がないので隣町の駅前まで移動した。小規模ながらも店が多く、早い時間から空いている店があって人通りはそれなりにあった。
「どこに向かうんですか?」
「そうだな……」
愛に言われて俺は駅の入口から周辺を見た。真っ先に目に入ったのはファーストフード店だった。そういえば、愛との連絡でバタついたのもあって朝食を取っていない。水族館といったらそれなりに歩くだろうし、何か腹に入れておかないとしんどそうだ。
そう思うと急激に空腹感がやってきた。
「とりあえず飯にしよう」
「わかりました」
愛は頷いて俺の後をついてくるように移動した。
ファーストフード店に入ってカウンターに向かう。入ったのはバーガーチェーン店で朝専用のメニューがあったからそれにした。
愛は飲み物だけ頼み、会計を終わらして席につく。
「そういえば、食べ物って食べれるのか?」
「えぇ、栄養補給は出来ませんが食べることはできます」
「へえぇぇ、食べたものはどうなってるんだ?」
「おおむね人間と同じです。内蔵された消化酵素と消化液で字義的に胃液を再現して栄養を抽出します。取り出した栄養素は溜まり次第創造主に取ってもらいます」
「す、すごいな……」
いったいどういう仕組みになっているのか、凄く気になるけど詳しく聞いたところで理解できないのは目に見えていた。話をしている間に店員がやってきて、頼んだ商品を机に置いていく。袋を開けて早速パクつくと、肉の旨味が口に広がって幸せな気持ちになった。
咀嚼しながら愛の方を見ると、ストローを咥えてアイスティーを飲んでいる。彼女の仕草は正体を知っている俺から見ても人間そのもので、彼女を知らない人間に「実はこの娘はロボットなんだ」と言っても到底信じてもらえなさそうだと感じた。
「本当に食べたり飲んだりできるんだな」
「はい。創造主がこれが出来ないと日常生活に影響があると判断されたようです」
「味とかはわかるのか?」
「口に含んだ成分がなんなのかは理解できます。それを味だと判定するのならわかる、ということになります」
「うーん……じゃあ、美味しいとか、そういう感覚は?」
「美味しい? それはどのような感覚でしょうか」
「え……うううん……なんていえばいいのかな、こう、幸せを感じるっていうか……」
「幸せ……」
カップを机に置いた愛は考え込んだまま動かなくなってしまった。どうやら困らせてしまったようだ。
よく考えてみれば、言葉が浮かばずに『幸せ』となんとなく言ってしまったが、これは分類すると感情にあたるものだ。愛には感情がないのだから、この例えは良くなかった。だが愛は言下に答えずに考えてくれている。
それから愛が口を開くのは少ししてからだった。
「すいません。よくわかりませんでした」
「だよね。考えさせてごめん、今のは俺が悪かった」
「いえ?? 翔琉君は何も悪いことをしてないと思います。それに学習もありました」
「学習ってなにを?」
「ここで飲んだアイスティーは特別だということです」
「……? 何か特別なものが入ってたっけ?」
「成分的には特に変化はありません。しかし、この飲み物はこの瞬間しか飲めません」
愛の言っていることがわからないまま怪訝な表情を浮かべていると、彼女はカップを取ってこちらを見る。
「味そのものが特別なわけではなくて、翔琉君、貴方と一緒に飲むから特別なのだと気付きました」
陽に照らされたせいなのか。それとも彼女自身がそうしたのか。愛は見た目相応の笑顔をこちらに見せた。そんな気がした。俺はただ、その瞬間に見た彼女の姿が眩しくて、歴史的な名画に感動するかのように、目の前に佇む彼女の姿に憑りつかれたように見つめていたせいで、実際に笑ったのかどうかなんて考える余裕がなかった。
「……なにかおかしなことを言ってしまいましたか?」
「あ、あぁ? いや、そんなことないと思う、むしろ」
むしろ、とても人間らしかった。
そう続けようとした言葉を飲み込んだ。今日ここに来たのは愛が感情を学習するためだ。だからここでそう言ってしまうと、目的を達したものとして解散してしまうんじゃないかと思った。少し前の俺ならそれでも別に良かったと思っていたんだろうが、今の俺には解散してしまうのがとても勿体ないことに感じてしまっていた。
どうやら俺は知らぬ間に、愛という存在に関心を持っていたようだった。
「むしろ、なんですか?」
「むしろ……的を射ていると思った」
「やはりそうでしたか。この特別感は物体によるものではなくて状況がもたらしたものなのですね」
「うん、そうだと思う」
愛の言葉に頷きながら、心臓の鼓動が早くなるのを感じていた。いったいどうしたことなんだろう。彼女の姿がまともに見れない。喉が渇く。気がはやる。これはまるで、Aと一緒にいる時みたいな感情だ。
関心があると自覚した瞬間こうなるなるなんて、なんて単純で簡単な男なんだ。俺ってやつは。
「ところでさ……今日は制服じゃないんだな」
「あ、はい。今日の予定に備えて用意されていた支給品です。どこかおかしなところがありましたか?」
「いや、全然」
というか似合ってる。凄く似合ってる。
落ち着いたブラウンのキャミワンピースに白のロングTシャツを重ね着した姿は艶がある長い黒髪に凄く合わさっていた。愛は人間ではないせいか、動きが綺麗で正確だ。それが清楚な格好と重なる事でとても育ちのいいお嬢様のような所作に見える。それに崩れない表情は落ちつきがあるように見せる。改めて見ると、彼女はとんでもなく美人なんだとわからされた。話題にすらする気がなかった服装が、とても気になってしまっているのがその証拠だ。
「では、似合っているでしょうか?」
「う……」
心中で考えていることをずばりと問われてしまい、俺は少しだけ動転した。
素直に答えればいいだけの話なのだが、意識しているせいかなんだか口に出すのが気恥ずかしい。喉元まで出かけている言葉を形にするのに苦労していた。
その様子を愛はじっと見つめて俺の答えを待っている。まるで尋問されているようだ。
「どうでしょうか? 個人的には翔琉君の好みに合わせたデートに最適な衣服だと認識しているのですが」
「俺の好みって……どうしてそんなことを知ってるんだ?」
「データ内に入ってました。衣服や人柄に好きな食べ物。服装や女性の好みなど、それらを参照するに問題はないと思うのですが……」
愛は自分の姿をまじまじと見つめながら言った。データを入れたのは間違いなく十二月晦だろう。あいつめ、人の許可なくなんてものを教え込んでいるんだ。彼女の思惑通りにどぎまぎしているのがとても悔しい。しかし効果テキメンだ。
「うん、まぁ……正解だよ、データ通り……」
「それは似合っている、ということですね」
「~~~~っ」
ぼかして伝えたはずだが、どうやら愛は逃がしてくれないらしい。
「……うん、まぁ、似合ってるよ」
とうとう観念した俺は、言葉に詰まりながらも愛に伝えた。恥ずかしくて彼女の顔を直視できずに視線を逸らしていたが、なかなか反応が返ってこないので愛の顔をちらりと見た。
彼女は問い詰めてきた時と同じようにこちらを見つめていた。だけどさっきまでと少し違って、目蓋を少しだけ広げて電源が切れたように表情が固まっていた。彼女の様子に気を取られていると、俺の視線に気づいた愛が表情を戻す。
「すみません、やはり少しおかしいようです」
「おかしいって?」
「翔琉君の口から『似合っている』と聞こえた時、機能全般がフリーズしたみたいになりました。しかし実際はそんなことはなく正常に機能していた。端的に言えば呆けていた、状態になってました」
「……それのなにがおかしいんだ?」
「機能不全ではないのに動きを止めてしまうなんて、機械としては十分におかしなことです。それに翔琉君の言葉がさっきからメモリ内でリピートされていて……やはり修理に向かうべきなのでしょうか」
あらかじめ交換していた愛の連絡先に確認のメッセージを残す。まだ電話をするには早い時間だったが、こういう時にSNSという機能は便利だ。何の気兼ねもなく連絡を送ることが出来る。といっても愛の場合はそもそも眠っているのかどうかすら定かではないのだけど。
そう考えていると、やはり彼女は起き続けているのかすぐに返信が返ってきた。
『わかりました。今から向かいます』
「えぇ……マジかよ」
確認の連絡だったはずだが、催促されたと勘違いしたのか愛はそう言った。
『ゆっくりでいい。準備が出来たら連絡する』
連絡した手前、あと言葉を素直に受け取る彼女に対してどう伝えたものかわからずに、苦心した結果こう返信した。急いで夜間着を脱ぎ捨てて準備を整える。そのあいだにもスマホを確認していたが、既読されているだけで返信はこなかった。
準備を終えたのは返信をしてから三十分経った時だった。スマホを確認してみても相変わらず返信はない。途中で何かあったのだろうか?
「……」
五分が経った。いくらなんでも遅すぎる。
『今どこにいる?』
簡潔に連絡を送るとすぐに返信が来た。
『翔琉君の家の前です』
「えっ!?」
急いで部屋から出て家の玄関を開けると、そこには愛の姿があった。
「おはようございます」
「いつからいたんだ?」
「二十分ほど前からです」
「なんだよ……それなら連絡してくれたらよかったのに」
「連絡すると言われたので待機してました」
当たり前のように言う愛はいつもの調子だった。このあいだ人間味のあるところを見て少し油断していたが、やはりこいつは機械だ。ロボットだ。二次なんちゃらヒューマノイドだ。
「まぁいいや。大分早いけど出発しようか」
「わかりました」
そのまま玄関のドアを閉めて俺と愛は出かけた。
水族館には電車で一駅、そこからバスに乗って移動する。だが時間が予定よりも大分早く、順当についたら開園時間まで結構な時間を待たされる計算だ。だから途中で寄り道をして時間を潰す流れになった。
家の近所は市街地で、これといった商業施設がないので隣町の駅前まで移動した。小規模ながらも店が多く、早い時間から空いている店があって人通りはそれなりにあった。
「どこに向かうんですか?」
「そうだな……」
愛に言われて俺は駅の入口から周辺を見た。真っ先に目に入ったのはファーストフード店だった。そういえば、愛との連絡でバタついたのもあって朝食を取っていない。水族館といったらそれなりに歩くだろうし、何か腹に入れておかないとしんどそうだ。
そう思うと急激に空腹感がやってきた。
「とりあえず飯にしよう」
「わかりました」
愛は頷いて俺の後をついてくるように移動した。
ファーストフード店に入ってカウンターに向かう。入ったのはバーガーチェーン店で朝専用のメニューがあったからそれにした。
愛は飲み物だけ頼み、会計を終わらして席につく。
「そういえば、食べ物って食べれるのか?」
「えぇ、栄養補給は出来ませんが食べることはできます」
「へえぇぇ、食べたものはどうなってるんだ?」
「おおむね人間と同じです。内蔵された消化酵素と消化液で字義的に胃液を再現して栄養を抽出します。取り出した栄養素は溜まり次第創造主に取ってもらいます」
「す、すごいな……」
いったいどういう仕組みになっているのか、凄く気になるけど詳しく聞いたところで理解できないのは目に見えていた。話をしている間に店員がやってきて、頼んだ商品を机に置いていく。袋を開けて早速パクつくと、肉の旨味が口に広がって幸せな気持ちになった。
咀嚼しながら愛の方を見ると、ストローを咥えてアイスティーを飲んでいる。彼女の仕草は正体を知っている俺から見ても人間そのもので、彼女を知らない人間に「実はこの娘はロボットなんだ」と言っても到底信じてもらえなさそうだと感じた。
「本当に食べたり飲んだりできるんだな」
「はい。創造主がこれが出来ないと日常生活に影響があると判断されたようです」
「味とかはわかるのか?」
「口に含んだ成分がなんなのかは理解できます。それを味だと判定するのならわかる、ということになります」
「うーん……じゃあ、美味しいとか、そういう感覚は?」
「美味しい? それはどのような感覚でしょうか」
「え……うううん……なんていえばいいのかな、こう、幸せを感じるっていうか……」
「幸せ……」
カップを机に置いた愛は考え込んだまま動かなくなってしまった。どうやら困らせてしまったようだ。
よく考えてみれば、言葉が浮かばずに『幸せ』となんとなく言ってしまったが、これは分類すると感情にあたるものだ。愛には感情がないのだから、この例えは良くなかった。だが愛は言下に答えずに考えてくれている。
それから愛が口を開くのは少ししてからだった。
「すいません。よくわかりませんでした」
「だよね。考えさせてごめん、今のは俺が悪かった」
「いえ?? 翔琉君は何も悪いことをしてないと思います。それに学習もありました」
「学習ってなにを?」
「ここで飲んだアイスティーは特別だということです」
「……? 何か特別なものが入ってたっけ?」
「成分的には特に変化はありません。しかし、この飲み物はこの瞬間しか飲めません」
愛の言っていることがわからないまま怪訝な表情を浮かべていると、彼女はカップを取ってこちらを見る。
「味そのものが特別なわけではなくて、翔琉君、貴方と一緒に飲むから特別なのだと気付きました」
陽に照らされたせいなのか。それとも彼女自身がそうしたのか。愛は見た目相応の笑顔をこちらに見せた。そんな気がした。俺はただ、その瞬間に見た彼女の姿が眩しくて、歴史的な名画に感動するかのように、目の前に佇む彼女の姿に憑りつかれたように見つめていたせいで、実際に笑ったのかどうかなんて考える余裕がなかった。
「……なにかおかしなことを言ってしまいましたか?」
「あ、あぁ? いや、そんなことないと思う、むしろ」
むしろ、とても人間らしかった。
そう続けようとした言葉を飲み込んだ。今日ここに来たのは愛が感情を学習するためだ。だからここでそう言ってしまうと、目的を達したものとして解散してしまうんじゃないかと思った。少し前の俺ならそれでも別に良かったと思っていたんだろうが、今の俺には解散してしまうのがとても勿体ないことに感じてしまっていた。
どうやら俺は知らぬ間に、愛という存在に関心を持っていたようだった。
「むしろ、なんですか?」
「むしろ……的を射ていると思った」
「やはりそうでしたか。この特別感は物体によるものではなくて状況がもたらしたものなのですね」
「うん、そうだと思う」
愛の言葉に頷きながら、心臓の鼓動が早くなるのを感じていた。いったいどうしたことなんだろう。彼女の姿がまともに見れない。喉が渇く。気がはやる。これはまるで、Aと一緒にいる時みたいな感情だ。
関心があると自覚した瞬間こうなるなるなんて、なんて単純で簡単な男なんだ。俺ってやつは。
「ところでさ……今日は制服じゃないんだな」
「あ、はい。今日の予定に備えて用意されていた支給品です。どこかおかしなところがありましたか?」
「いや、全然」
というか似合ってる。凄く似合ってる。
落ち着いたブラウンのキャミワンピースに白のロングTシャツを重ね着した姿は艶がある長い黒髪に凄く合わさっていた。愛は人間ではないせいか、動きが綺麗で正確だ。それが清楚な格好と重なる事でとても育ちのいいお嬢様のような所作に見える。それに崩れない表情は落ちつきがあるように見せる。改めて見ると、彼女はとんでもなく美人なんだとわからされた。話題にすらする気がなかった服装が、とても気になってしまっているのがその証拠だ。
「では、似合っているでしょうか?」
「う……」
心中で考えていることをずばりと問われてしまい、俺は少しだけ動転した。
素直に答えればいいだけの話なのだが、意識しているせいかなんだか口に出すのが気恥ずかしい。喉元まで出かけている言葉を形にするのに苦労していた。
その様子を愛はじっと見つめて俺の答えを待っている。まるで尋問されているようだ。
「どうでしょうか? 個人的には翔琉君の好みに合わせたデートに最適な衣服だと認識しているのですが」
「俺の好みって……どうしてそんなことを知ってるんだ?」
「データ内に入ってました。衣服や人柄に好きな食べ物。服装や女性の好みなど、それらを参照するに問題はないと思うのですが……」
愛は自分の姿をまじまじと見つめながら言った。データを入れたのは間違いなく十二月晦だろう。あいつめ、人の許可なくなんてものを教え込んでいるんだ。彼女の思惑通りにどぎまぎしているのがとても悔しい。しかし効果テキメンだ。
「うん、まぁ……正解だよ、データ通り……」
「それは似合っている、ということですね」
「~~~~っ」
ぼかして伝えたはずだが、どうやら愛は逃がしてくれないらしい。
「……うん、まぁ、似合ってるよ」
とうとう観念した俺は、言葉に詰まりながらも愛に伝えた。恥ずかしくて彼女の顔を直視できずに視線を逸らしていたが、なかなか反応が返ってこないので愛の顔をちらりと見た。
彼女は問い詰めてきた時と同じようにこちらを見つめていた。だけどさっきまでと少し違って、目蓋を少しだけ広げて電源が切れたように表情が固まっていた。彼女の様子に気を取られていると、俺の視線に気づいた愛が表情を戻す。
「すみません、やはり少しおかしいようです」
「おかしいって?」
「翔琉君の口から『似合っている』と聞こえた時、機能全般がフリーズしたみたいになりました。しかし実際はそんなことはなく正常に機能していた。端的に言えば呆けていた、状態になってました」
「……それのなにがおかしいんだ?」
「機能不全ではないのに動きを止めてしまうなんて、機械としては十分におかしなことです。それに翔琉君の言葉がさっきからメモリ内でリピートされていて……やはり修理に向かうべきなのでしょうか」
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