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1. 婚約破棄
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レノワール王国王立学園。
ここは、レノワール王国の貴族子女と魔法士候補、そして一部の平民達が通う学園だ。
『貴族クラス』『魔法クラス』『特待生クラス』にそれぞれ分かれて三年間学び、卒業時には盛大なパーティーが催される。
「アリス・ハミルトン!!俺は今ここでお前との婚約破棄を宣言する!!」
その卒業記念パーティーの席で、王太子ジョナサンは高らかに叫んだ。
王太子に腰を抱かれ寄り添うのは伯爵令嬢のアンジェリカ。
パーティーに集う生徒達の好奇の視線が、銀髪の少女に向けられた。
名指しされた婚約者のアリス・ハミルトンは、藍色の瞳で壇上の二人を見つめる。
人目を憚らない寵愛ぶりだったので、二人の仲はアリスも知っていた。
もともと自分を嫌っているジョナサンだ。いずれ愛人を作るだろうと思っていたので驚きすらない。
「・・・・・・それは、私との婚約を解消し、そちらのご令嬢と婚約なさるという事でしょうか」
自分でも驚くくらい静かな声で、アリスが尋ねる。
「そうだ。お前は我が妃に相応しくない」
「私達の婚約は、先王陛下と現国王陛下が私を未来の王妃としてお認めになり、お決めになった事。それを覆す理由は何でございましょう」
「白々しい!お前の悪行はわかっているのだぞ!」
どこまでも冷静なアリスに苛立った王太子が声を荒げた。
「お前はアンジェリカに嫌がらせをしていたな」
「・・・・・・嫌がらせ?」
首を傾げるアリスに「とぼけるな!」とジョナサンが怒鳴る。
「すれ違う度に『身の程知らず』とか『調子に乗るな』と嫌味を言っていたそうじゃないか!アンジェリカの友人が証言しているぞ!」
「はあ・・・・・・」
アリスの視界に、意地の悪い笑みを浮かべている令嬢数人が見えた。
いつもアンジェリカにゾロゾロ付いて行っている令嬢達だ。
むしろ、その嫌味はアリスがその令嬢達に言われていたのだが。
「覚えがございませんわ。そちらのご令嬢達の記憶違いでは?」
そう言って令嬢達の方を見ると、他の生徒達の注目を浴びた彼女らは顔を赤くして狼狽えた。
「まあ!私のお友達になんて事を!!」
アンジェリカがわざとらしく口元に手を当てて叫ぶが、アリスは無視して続ける。
「そもそも、私はアンジェリカ様とはクラスが違いますし、わざわざ意地悪をしに近づくほど暇ではありません」
そう答えるとジョナサンは鼻で笑ってアリスを嘲笑う。
「ああ・・・・・・そうだな。お前は『貴族クラス』ではなく『魔法クラス』所属だからな。身分の卑しい者に混じって魔法の研究をするのに忙しいようだったな」
学園では、貴族階級の者は『貴族クラス』に振り分けられるが、魔力がある者には『魔法クラス』の選択肢も与えられる。
しかし、そのほとんどは『貴族クラス』を選択する。
『魔法クラス』には平民出身の魔法士が多く、平民と並んで学ぶのを嫌がる為だ。
一方で、魔法士になれば引くて数多なので、貴族階級でも実家が困窮していたり、嫡男でない者の中にはあえて『魔法クラス』を選ぶ者もいる。
アリスが『魔法クラス』を選んだのは、魔法の勉強が好きという事はもちろん、自分を嫌うジョナサンと顔を合わせる機会が減るからだが。
「『身分の卑しい者』などと・・・・・・。平民の方もいらっしゃいますが、皆さん将来は魔法士として国に貢献される方々です。もちろん『特待生クラス』の方々も、その能力の高さ故に各分野での活躍を期待され、こちらで学ぶ事を許可された方々。いずれ王となり、国民を慈しむ立場に立たれる方が、そのような事を口にされるのは如何なものでしょうか」
アリスからの指摘にジョナサンは言葉に詰まり、居合わせた平民の生徒たちは賞賛の眼差しでアリスを見つめる。
「・・・・・・う、うるさい!俺に指図をするな!・・・・・・た、たしかに、今の言い方は誤解を与えるな」
ジョナサンはそれだけ口にすると、居心地悪そうに目を泳がせる。
平民だけでなく、貴族の生徒達もそんなジョナサンを冷ややかに見ている。
(この女・・・・・・何でこんなに堂々としてるんだ。立場をわからせてやらないと)
顔色を変えないアリスをなんとか負かしたい、自分が優位に立ちたいジョナサンは、しばらく考える。
そして、何か思いついたのか、嘲りの笑みを浮かべてこう言った。
「侯爵家の者でありながら『貴族クラス』を選ばないとは・・・・・・さすがのお前にも、『貴族の恥晒し』の娘という自覚があったのか」
ここは、レノワール王国の貴族子女と魔法士候補、そして一部の平民達が通う学園だ。
『貴族クラス』『魔法クラス』『特待生クラス』にそれぞれ分かれて三年間学び、卒業時には盛大なパーティーが催される。
「アリス・ハミルトン!!俺は今ここでお前との婚約破棄を宣言する!!」
その卒業記念パーティーの席で、王太子ジョナサンは高らかに叫んだ。
王太子に腰を抱かれ寄り添うのは伯爵令嬢のアンジェリカ。
パーティーに集う生徒達の好奇の視線が、銀髪の少女に向けられた。
名指しされた婚約者のアリス・ハミルトンは、藍色の瞳で壇上の二人を見つめる。
人目を憚らない寵愛ぶりだったので、二人の仲はアリスも知っていた。
もともと自分を嫌っているジョナサンだ。いずれ愛人を作るだろうと思っていたので驚きすらない。
「・・・・・・それは、私との婚約を解消し、そちらのご令嬢と婚約なさるという事でしょうか」
自分でも驚くくらい静かな声で、アリスが尋ねる。
「そうだ。お前は我が妃に相応しくない」
「私達の婚約は、先王陛下と現国王陛下が私を未来の王妃としてお認めになり、お決めになった事。それを覆す理由は何でございましょう」
「白々しい!お前の悪行はわかっているのだぞ!」
どこまでも冷静なアリスに苛立った王太子が声を荒げた。
「お前はアンジェリカに嫌がらせをしていたな」
「・・・・・・嫌がらせ?」
首を傾げるアリスに「とぼけるな!」とジョナサンが怒鳴る。
「すれ違う度に『身の程知らず』とか『調子に乗るな』と嫌味を言っていたそうじゃないか!アンジェリカの友人が証言しているぞ!」
「はあ・・・・・・」
アリスの視界に、意地の悪い笑みを浮かべている令嬢数人が見えた。
いつもアンジェリカにゾロゾロ付いて行っている令嬢達だ。
むしろ、その嫌味はアリスがその令嬢達に言われていたのだが。
「覚えがございませんわ。そちらのご令嬢達の記憶違いでは?」
そう言って令嬢達の方を見ると、他の生徒達の注目を浴びた彼女らは顔を赤くして狼狽えた。
「まあ!私のお友達になんて事を!!」
アンジェリカがわざとらしく口元に手を当てて叫ぶが、アリスは無視して続ける。
「そもそも、私はアンジェリカ様とはクラスが違いますし、わざわざ意地悪をしに近づくほど暇ではありません」
そう答えるとジョナサンは鼻で笑ってアリスを嘲笑う。
「ああ・・・・・・そうだな。お前は『貴族クラス』ではなく『魔法クラス』所属だからな。身分の卑しい者に混じって魔法の研究をするのに忙しいようだったな」
学園では、貴族階級の者は『貴族クラス』に振り分けられるが、魔力がある者には『魔法クラス』の選択肢も与えられる。
しかし、そのほとんどは『貴族クラス』を選択する。
『魔法クラス』には平民出身の魔法士が多く、平民と並んで学ぶのを嫌がる為だ。
一方で、魔法士になれば引くて数多なので、貴族階級でも実家が困窮していたり、嫡男でない者の中にはあえて『魔法クラス』を選ぶ者もいる。
アリスが『魔法クラス』を選んだのは、魔法の勉強が好きという事はもちろん、自分を嫌うジョナサンと顔を合わせる機会が減るからだが。
「『身分の卑しい者』などと・・・・・・。平民の方もいらっしゃいますが、皆さん将来は魔法士として国に貢献される方々です。もちろん『特待生クラス』の方々も、その能力の高さ故に各分野での活躍を期待され、こちらで学ぶ事を許可された方々。いずれ王となり、国民を慈しむ立場に立たれる方が、そのような事を口にされるのは如何なものでしょうか」
アリスからの指摘にジョナサンは言葉に詰まり、居合わせた平民の生徒たちは賞賛の眼差しでアリスを見つめる。
「・・・・・・う、うるさい!俺に指図をするな!・・・・・・た、たしかに、今の言い方は誤解を与えるな」
ジョナサンはそれだけ口にすると、居心地悪そうに目を泳がせる。
平民だけでなく、貴族の生徒達もそんなジョナサンを冷ややかに見ている。
(この女・・・・・・何でこんなに堂々としてるんだ。立場をわからせてやらないと)
顔色を変えないアリスをなんとか負かしたい、自分が優位に立ちたいジョナサンは、しばらく考える。
そして、何か思いついたのか、嘲りの笑みを浮かべてこう言った。
「侯爵家の者でありながら『貴族クラス』を選ばないとは・・・・・・さすがのお前にも、『貴族の恥晒し』の娘という自覚があったのか」
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